TRIZの考え方に基づく 地震の短期/直前予知の研究(2) |
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掲載: 2025. 9.15 |
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編集ノート (中川 徹、2025年 9月13日)
これは9月5日にTRIZシンポジウムで発表したものです。昨年12月の地震予知学会で発表した内容をベースにして、TRIZ関係の人たちに向けて話しています。(技術やビジネスの分野での)創造的な問題解決の方法を習得・実践しようとしている人たちですが、地震予知というテーマは専門ではありませんから、広く国民の皆さんに向けるつもりで、分かりやすく話しています。TRIZの考え方を基にしている最大の点は、地震予知の方法をいろいろ試行、実験して手掛かりが得られ始めた現段階で、それらの技術を発展させて社会実用をする「最終目標」をイメージし、その達成に必要な段階と課題をしっかり検討していることです。
本ページには、以下の資料を掲載しています。要旨とスライドは、英文ページも作っています。
発表の要旨 和文(1頁)(2025. 5.16)
、 英文(2頁)(2025. 6.19)
発表スライド 和文スライド(18枚) (本ページ) (2025. 7.31)
、 (pdf 4スライド/頁)
; 英文スライド (2025. 8. 8)
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本発表の要点:
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発表要旨
TRIZの考え方に基づく 地震の短期/直前予知の研究(2)
最終目標のビジョンを明確にして、研究・開発を進める中川 徹 (大阪学院大学 名誉教授)
概要
阪神・淡路大震災(1995年)と東日本大震災(2011年)の地震をまったく予想・予知できなかったことから、日本地震学会と政府は、「地震予知は現在の技術では不可能である。予知研究ではなく、地震の観測を重視し、地震のメカニズムの基礎研究と、地震の防災(減災)対策に努める」という方針を採っています。
国民には、「地震予知を可能にして、地震の(人的/社会的)被害をできる限り、減らしてほしい」という強い願望があります。
それでも地震予知の研究はつい最近まで(日本でも世界でも)暗中模索の状況にありました。
それがこの2〜3年で明確な手掛かりが分かってきました。GEONETデータの解析から地殻の変動の異常変化を見出す神山の方法と、地中深くの直流電場の変動を観測する筒井の方法が手掛かりです。私はこれらの方法を核にして、地震を短期/直前に予知する技術システムと社会的/国家的体制を開発・実用化することを、構想し始めました。まず、最終的な目標(「TRIZの究極の理想解」)のビジョンは、次表の3種の地震予知注意報・警報を、国の機関が公的に発出する体制を実地運用することです。
A. 地震予知 注意報 B. 地震予知 警報 C, 地震予知 緊急警報 発出の時期
予知地震の1年〜1月前
10日〜半日前
2時間〜10分前
前兆現象
p1 が観測され
p2 が観測され
p3 が観測され
地域、
規模、
時期x1 地域 、
規模 y1 程度、
今後 t1 頃x2 地域 、
規模 y2 程度、
今後 t2 頃x3 地域 、
規模 y3 程度、
今後t3 頃判断
可能性が高い
可能性が非常に高い
危険性が非常に高い
関係諸機関に
事前注意の態勢を整え
速やかに防災態勢を整え
緊急に防災態勢に移行
国民に
落ち着いて
身の周りの防災/避難を準備し
速やかに防災/避難し、身の安全を図る
今後の注意
地震予知警報に注意
(10日〜半日前に出す)緊急警報に注意 (2時間〜10分前)夜中のことも
地震発生時には
緊急地震速報が出される。神山の方法が、Aの注意報の発出に使えるでしょう。ただ、(陸上での三角網を使いますので)震源が海域の場合や、陸域の地下深くの場合に難点があり、数年〜数月前に異常を見出せるが、いつ地震が起こるかは(実績を積まないと)判断できない。
筒井の方法は、Cの緊急警報に有望です。数時間〜半時間前には異常を検出でき、震源が海域でもOK、遠距離(数百〜千km)でもOKです。ただ、震源の場所の推定に(追加の実験情報が必要で)困難があり、さらに、(ノイズの少ない)測定サイトを選定し、測定装置を設営するのが高額です。
なお、人工衛星を使って電離層の電気的異常を観測する方法(日置の方法、梅野の方法)も、直前(1-2時間程度前)予知の方法です。
問題は、10日〜半日前に出したい、Bの予知警報のために使える、信頼できる方法がまだ見当たらないことです。この警報は、人々と社会が防災/避難の体制を作るのに最も好都合なものなのですが。上記のA,B,Cの地震予知注意報・警報の技術システムを研究開発するには、プロジェクト研究が必要で、地震予知学会に「(一財)地震予知研究基金」を設立することを提案しています。
地震学会・学術界・メディア・政府などの理解を得、人的・財的支援を得る(長期的な)努力が必要です。
発表スライド ==> スライド PDF (4スライド/ページ)
1. はじめに: 背景と趣旨
2. 最終目標は地震予知注意報/警報の公的運用による減災
3. 地震予知の方法に対する要件 および 諸方法の状況と選択
4. 地震予知研究を推進するための5段階(提案)
5. 注目する 3方法: 段階1の成果と段階2への課題
6. 地震予知研究の現段階の課題
7. まとめ
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EQP News 2023 |
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最終更新日 : 2025. 9.14 連絡先: 中川 徹 nakagawa@ogu.ac.jp