地震予知研究-LinkedIn-2025-7-最終目標のビジョン

TRIZの考え方に基づく 地震予知研究:
(7)  最終目標のビジョン − 地震予知注意報/警報の公的運用

中川 徹 (大阪学院大学)、LinkedIn 英文掲載 2025. 3.28; 『TRIZホームページ』 英文ページ 2025. 3.29

和文掲載: 『TRIZホームページ』 (2025. 4. 1) 

掲載: 2025. 4. 1

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  編集ノート (中川 徹、2025年 4月 1日) 

これは私がLinkedInに連載している解説の第7部です。和訳してここに掲載します。

 

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  TRIZの考え方に基づく 地震予知研究:
    (7) 最終目標のビジョン − 地震予知注意報/警報の公的運用

中川 徹 LinkedIn  英文掲載 2025. 3.28
             『TRIZホームページ』 和訳掲載 2025. 4. 1

これは、「TRIZの考え方に基づく 地震予知研究」というテーマで、私がLinkedInに連載している記事の第7のものです。2024年12月に私が日本地震予知学会の学術講演会で発表した私の論文を反映しています。 ここにはまず、 TRIZの問題解決のやり方に従って、 地震予知研究の最終目標のビジョンを定義しておきます。

私たちの最終目標は、何らかの地震前兆現象を観測することで、差し迫った(被害を起こす可能性のある規模の)地震を予知し、適切な警報を、地震が発生する前に、公的にかつ人々に広く発表して、地震の被害や死傷者を減らすように、人々が行動を取れるようにすることです。

地震予知研究(またはその研究者)の責任は、被害をもたらす地震を事前に予知し、国の機関に対して、その予知結果を報告し、警告の発表を助言することです。一方、国の機関の責任は、国民や社会に対して、警告を公的にかつ一般に広く発表し、地震の被害や死傷者を軽減するための適切な行動をとるように、促し、指示することです。

私たちは地震の被害がいかに甚大かを知っていますから、地震予知の警告が、もし適切であれば、被害の一部を軽減するのに大いに貢献するものと期待しています。  しかし、その警告に応じて行動を起こすことは、国民と社会にとって重い負担となります 。  そのため、地震予知の警告は、予知された地震の地域・規模・時期の推定についても、また、警告の発表の内容・表現・発表時期などについても、すべての面で適切でなければなりません。

起こり得る地震を予知する確実性と、国民と社会が被害を軽減するための行動を取るのに必要な時間とを考慮して、地震予知の公式発表について、私は3段階を提案します(上図の表に示す)。

第1段階の発表は(A)「地震予知注意報」です。  これは予知した地震の1年前から1ヶ月前までに発表されるべきです(早すぎる発表も遅すぎる発表も避けるべきです)。発表の概要は表のとおりであり、つぎのように語りかけてもよいでしょう。

"これは、地震予知注意報の公式発表であり、本日、国の機関によって出されたものです。
現象P1が地震予知システムによって観測され、(国の専門家会議によって)起こり得る地震の前兆現象であることが確認されました。  地震が起こりそうなのは、X1の地域(およびその周辺)で、マグニチュードはY1程度(± 0.5)、時期は今後T1(例:3ヶ月先から1年先)と推定されています。
該当地域(X1地域とその周辺、またさらに広い範囲)の関係当局(政府・自治体、防災関係機関、その他多数)は、(地震防災ガイドラインで既に設定されていますように)予防措置を講じてください(勧告)。  該当地域の市民の皆さんは、平静を保ち、今後出される可能性のある地震予知警報に注意してください。 
警報は、より明確な前兆現象を観測した後、予知した地震の10日前から半日前までに、発表される(計画です)。"

第2段階の発表は、表に示す(B)「地震予知警報」です。  これは、予知された地震の10日前から半日前にかけて発表されます。 
この警報は、前兆現象P2の観測に基づくもので、地震(その場所、大きさ、時期の推定を修正したもの)が、まもなく(半日先から10日先までに)発生する可能性が非常に高い、ことを発表するものです。
関係機関には、被害回避・軽減のための準備措置を取ることを指示し、国民には、避難・防災の準備を促します。
今後出される可能性がある地震予知緊急警報に注意するよう促します。緊急警報は、直前タイプの前兆現象が観測された場合に、昼夜を問わず発表されるものです。

第3段階の発表は、(C)「地震予知緊急警報」です。  これは、緊急に出されるもので、予知された地震の2時間前から10分前に出されます。  このように予知地震の直前での発令の理由は、ある種の前兆現象は地震のごく直前にしかはっきりと現れず、その現象が現れ始めると、震源の断層での破壊の開始の引き金となるだろうことを示すからです。
緊急警報は、地震がすぐにも発生する危険性が高いことを発表しています。関係当局には、社会の被害を軽減するための緊急行動を直ちに取るよう指示いたします。関係地域の人々は、速やかに、被害を軽減するための行動を取り、安全を確保するために避難するように、勧告/指示します。
この緊急警報は、(地震の直前の前兆現象が確認されたときに直ちに発表するもので、)昼夜を問わず発表いたします。 

なお、実際に地震の発生が(震源付近の地震計で)検知されると、「緊急地震速報」が発表されるのは、現在の運用と同じです。  「地震予知緊急警報」が(その前に)発表されているのは、関係当局や国民が適切な行動を事前に取るために役立つでしょう。

 

上記の3段階の警告表示のすべてのための前提として、私たち日本地震予知学会が確立しておく必要があるのは、地震予知の信頼のおける諸方法、技術システム、および予知の検証実績です。

現段階での私の評価は、神山の方法が(A)地震予知注意報を出すのに使えるだろうと期待され、筒井の方法が(C)地震予知緊急警報を出すのに使えるだろうと期待されます。しかし、(B)地震予知警報を(地震の10日前から半日前までに)出すのに使えるだろうと期待できる方法を、まだ一つも見つけることができません。

また、異なる種々のタイプ(海溝型、内陸型、群発型、など)の被害地震(海溝型ではM7以上、内陸型ではM5.5以上)に対して、私たちの予知方法が適用できるかを、確認するべきです。さらに私たちは、地震学の最近の進歩について、特にその観測結果や地震発生プロセスの物理学について、注視して学ぶ必要があります。

これらの点は私たちが、科学的/技術的な面から解決・発展させるべきことです。

 

これらに加えて、議論し、解決し、確立しなければならない、より大きな論点・課題があります。それは、社会的側面の課題と、地震予知の方法を理解してもらうことです。

地震予知注意報/警報/緊急警報の発令は、社会全体に大きな衝撃を与えます。 従って、その発令のやり方は、国会やその他の機関で公に議論され、制度化されなければなりません。その議論をリードするのは(また、個々の注意報/警報/緊急警報の発令を決定するのも)、国の専門家会議(その中心は日本地震学会のリーダの人々)です。ですから、地震予知の諸方法は、地震学のコミュニティおよび学術界一般によく理解されていることが必要です。

さらに、地震予知の実際上の有効性は、社会の諸組織や一般の人々が、地震予知注意報/警報/緊急警報に対して、適切に対応するか(対応できるか)どうかに、かかっています。ですから、地震予知の諸方法やその(予知)能力が、メディアを通じて人々に理解されており、社会の諸組織に広く浸透しており、国や地方自治体で理解され承認されていることが、必要です。

これらすべての社会的課題は、私たちが科学的/技術的課題をもっともっと考えたのちに、また改めて議論することが必要です。

 

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最終更新日 : 2025. 4. 1    連絡先: 中川 徹  nakagawa@ogu.ac.jp