地震予知研究-LinkedIn-2024-1 | |
TRIZの考え方に基づく 地震予知研究 |
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掲載: 2024. 7.21 |
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編集ノート (中川 徹、2024年 7月19日)
私は、昨年12月の日本地震予知学会での発表に引き続き、「地震予知研究」の今後の進め方について、考察を進めています。そして、できるだけ多くの場で発表し、多くの皆さんの理解と協力を得たいと思い努力しております。
その一つとして、(地震予知学会の発表論文を英文では掲載しませんでしたので) 海外の人たちに向けて、LinkedInで英文での解説記事の連載を始めました(2024. 4.28)。私は、LinkedInには2009年以来、TRIZ関連で80編余の(解説)記事を投稿してきており、900人余の(一次)コネクト者がいます。その人たちに、TRIZ自体への寄与は少なくなるが、TRIZの考え方をベースにして「地震予知」という重要問題を今後追及していくことへの理解をいただきたいと思いました。また、世界中のTRIZの仲間を通じて、地震予知の研究を世界へ浸透させたいとも考えています。
LinkedInでは、多くの人に関心を持ってもらえるように、簡潔に書くことが求められます。既発表の論文のままでなく、各回のテーマを明確にし、新しい考察を含めて書くように努力しています。日本の皆さまにも読んでいただき、地震予知研究へのご理解とご協力をいただきたく、ここに和訳して掲載します。
概要は、先頭の図に描いたとおりです。テキスト形式でここに書いておきます。
日本における大地震: 東京(1923年)、神戸(1995年)、東日本(2011年)など。
日本では、広域の地震計ネットワークによる地震学的研究が進展。 日本全域で起こりうる地震を長期/中期的に確率論的に予測した。 しかし、1995年(Mw 6.9)と2011年(Mw 9.1)の地震は予知できなかった。
日本地震学会と政府は、地震の短期予知は現段階では不可能であるとして、 地震の短期予知の研究を忌避する宣言をした。
日本地震予知学会(2014年設立)は、電磁気的現象を重視して地震前兆を追究。
2022年12月、筒井稔の学会発表: 地中直流電場の観測で、 地震 (遠方750 km、M6.8) の直前/直後に急激な変動を観測した。 S/N比30以上、時間分解能1秒の鮮明なデータ。驚くべき成果である。
地震との相関性(および因果性)を証明し、「いつ、どこで、どれくらいの大きさの地震が起こりそうか」を推定する方法を確立する必要がある。
私は、筒井の方法で複数地点で並行して観測する研究プロジェクトを提案する。
さらに進んで、日本全国に数十カ所の観測点を持つ技術的(社会的/公的) システムを構築し、地震直前予知警報を運用することを目標にする。
地震予知研究フォーラム2024 | LinkedIn-4 | LinkedIn-5 | EQP: TRIZシンポ 中川発表 |
TRIZの考え方に基づく 地震予知研究
(1) なぜ、どのようにして、この難題に取り組む決心をしたか
中川 徹 LinkedIn 英文掲載 2024. 4.28
『TRIZホームページ』 和訳掲載 2024. 7.21
最近、私は地震予知 (Earthquake Prediction : EQP) の研究の分野で仕事をする決心をした。 私のバックグラウンドは地震学ではなく、物理化学、ソフトウェア工学、そして創造的な問題解決である。 私が「なぜ」「どのようにして」この決心をしたのかを、ここに説明しておきたい。
日本は大地震による災害にたびたび見舞われている。 特に、
関東大震災(1923年)では東京(特に下町)が焼け野原になり、
阪神・淡路大震災(1995年)では神戸とその周辺の都市構造が破壊され、
東日本大震災(2011年)では東日本の太平洋沿岸に津波が押し寄せ、福島原子力発電所の重大事故につながった。近い将来に(今後30年間で70%の確率で)、大きな地震(いわゆる「南海トラフ地震」)が予測されており、それは2011年以上の被害を中部から西日本の広域にもたらす恐れがある。
地震の発生を防げないことは知っているが、「地震による災害・被害を少しでも減らしたい」というのが、私たちすべての日本国民、そして世界の人々の願いである。 もちろん、この思いが私の決心の根底にある。
1995年の地震の1カ月後に、私は神戸近郊にある私の故郷(1950年代に住んでいた)を訪れ、甚大な被害を目の当たりにして本当にショックを受けた。
2011年の地震では、東京の下町にある鉛筆のようなビルの4階で大きく長い揺れを体験し、自宅まで28kmを歩いて帰らねばならなかった。
私はウェブサイト『TRIZホームページ』にフォーラムのページを立ち上げ、地震、津波、福島原発事故について報告したところ、海外のTRIZ仲間約100人から慰問と激励のメッセージが届き、ありがたいことであった。 これが私のウェブサイトでの、地震に関するページの第一段階 である。
日本地震学会(SSJ)は1880年に設立され、(戦前戦後を通して) 地震計と広範な地震計ネットワークを開発し、地震を観測/分析し、地殻の断層を発見するのに寄与した。 1965年から、日本政府の支援で、「地震予測研究の5カ年計画」のプロジェクトのシリーズが開始され、さまざまな地域における地震の長期/中期予測を、確率論的可能性として明らかにした。
しかし、このプロジェクトは、1995年の地震(Mw 6.9)や2011年の地震(Mw 9.1)を、まったく予測することができなかった。
この事実に直面した日本地震学会と政府は、「現在の知識・技術では地震の短期予知は不可能である。よって今後、地震の短期予知研究から離れて、地震の観測と分析を重視し、地震のより基本的な理解を進める」と宣言した。現在、この悲観的な方針が、日本の権威者たちによって広く浸透している。
しかし、多くの一般国民は、「地震の短期予知方法を実用化して、将来の地震の被害を大幅に軽減できればよい」と、願っている。
このような背景のもとで、2014年に日本地震予知学会(EPSJ)が設立され、私も2015年1月に入会した。 同学会は、地震学の研究者が20〜30名、それ以外の非専門家(私のような)やアマチュアを含めて、現在約100名の会員からなる小さな学会である。
地震予知学会の主なアプローチの一つは、地震の前兆現象の可能性として、電磁気的現象の観測(を重視していること)である。 このアプローチは、「機械的(力学的)方法から電磁気的方法に進化する」というTRIZの原理によく合致している。私は毎年地震予知学会の学術講演会に出席し、さまざまな発表を聞き、いくつかの本や文献を読んだ。 2015年、私は地震予知研究を紹介するフォーラムページ を『TRIZホームページ』上に立ち上げた。 しかし、私が当初期待していた方法は残念ながら立ち消えになり、他のさまざまな方法もずっと、私にはまだ効果的/信頼できるものとは思えなかった。
2022年12月と2023年12月に開催された地震予知学会の学会で、私は地震前兆を観測するための3つの新しい方法に注目した。それらは、
- 地中の直流電場の連続観測 (筒井稔、2022)、
- 日本全国のGEONET点間の日毎の水平/鉛直変化(移動)を導出し、ストレスが蓄積されている地域、特に移動速度が速いまたは速度上昇がある地域に注目する (神山眞他、2023)、
- GNSS観測点で検出される電離層の全電子量(TEC)の一時的な増加を観測する (日置幸介、2011, 2023)。
特に筒井は、地震(
1000750 km先、M6.8)の2.51.5時間前(1.5ではない)から9.5時間後までの、直流電場の急激な変動を、S/N比30以上、時間分解能1秒で観測した。
筒井の素晴らしいデータを見て、私が決心したのは、彼を支援して、差し迫った地震を予知するための信頼でき/実用的な方法として、筒井の方法を確立することであった。
筒井の方法には、科学とTRIZの考え方に合致した大きな利点がある。
震源域の地中深くで発生した電場は、地殻を通して全方位に伝わり、地中の観測機器に直接到達する。その信号は地表/地上を通らないから、自然ノイズや人工ノイズの混入がまったくない。
電場は地殻内の力学的応力の二次的効果として発生し、信号エネルギーが数桁減少するが(震源域内の信号を合わせて増大し)、さまざまな検出モードにおいてはるかに高い感度と時間分解能が得られる。
これは、機械的(力学的)技術から電磁気的技術への進化のメリットを示す典型的なケースである。電場は直接検出され、第3次/第4次/...の効果に変換されてはいない。
この方法の検出器が観測できる地震の信号は、どの方向からでも、近くても遠くても、陸地の地下でも海底の地下でも、ある程度の大きさの地震であれあば、高い感度で検出できる。
1秒という時間分解能は、(複数の場所で信号を観測した場合)地震の挙動(そして場所)を分析するのに有効である。
筒井の方法の今後の課題は、
地震との相関関係(さらに因果関係)を証明し、
予知する地震が、どこで(震源域)、いつ(時間差)、どれくらいの大きさ(マグニチュード)で発生するかを、推定する方法を確立することである。
そのためには、複数地点で並行して信号を観測することが不可欠である。
筒井の方法に関して現在困難なのは、
人工ノイズのない(少ない)場所に深さ150mの穴を掘り、長さ100mの直流ダイポール検出器を設置することである。
それには、ある程度の研究資金と専門知識を持った研究チームが各サイトに必要である。 現在、筒井稔名誉教授は、限られた個人資金で独りで研究を行っている。
そこで私が提案しているのは、
「地震予知学会内で研究プロジェクトを開始し、複数の研究グループが複数サイトで協力して、地下の電場の観測が地震前兆の観測に優れていることを証明する」ことである。
筒井の方法の利点や可能性を理解することが、このプロジェクトの第一の基礎でなければならない。
ただ実際には、研究活動の資金や人員を得ることが必要である。
これが日本の現状で、われわれにとって本当に難しい課題である。
複数サイトのプロジェクトが成功すれば、その次には、
日本全国に数十カ所の観測サイトのネットワークを構築し、
リアルタイムで信号を観測/解析する技術システムを構築し、
異なる地震予知方法を統合し、
学術的/社会的/公的なコンセンサスを得て、
日本における短期/直前地震予知警報システムを運用する
ことができるようになるだろう。
そのようなシステムが、南海トラフ巨大地震が発生する前にできあがり、実用化されることを願っている。
このような技術的・社会的システムを備えた方法は、地震災害に苦しんでいる世界の多くの国々にとっても有用であろう。
(付記) これらの目的で私は第3次の地震関連フォーラムの親ページを、「地震予知研究と防災(減災): 索引ページ」として、2023年6月6日に立ち上げました。
編集ノート 後記 (中川 徹、2024年 7月21日)
本件のテーマ(あるいは本ホームページ全体)に関連して、ご意見・ご感想・ご寄稿などをお寄せいただけますと幸いです。「読者の声」のページ、その他適切な形式で掲載せていただければ、ありがたいことです。
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最終更新日 : 2024. 7.21 連絡先: 中川 徹 nakagawa@ogu.ac.jp