地震予知研究-LinkedIn-2024-2

TRIZの考え方に基づく 地震予知の研究
    (2) 短期地震予知のための前兆現象の要件

中川 徹 (大阪学院大学)、LinkedIn 英文掲載 2024. 5.14

和文掲載: 『TRIZホームページ』 (2024. 7.18) 

掲載: 2024. 7.18

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  編集ノート (中川 徹、2024年 7月21日) 

これは私がLinkedInに連載している解説の第2部です。和訳して掲載します。

概要は、先頭の図に描いたとおりです。テキスト形式でここに書いておきます。

(0) 根本要件:(各種の地震に対して)現象Xが地震と関係し、 地震によって引き起こされ、短時間の後に地震が発生すること、...
==> 広範な観測・解析の後でないと、確認できない。

(T) 基本要件: 高いS/N比で、明確に観測・測定できること。
==>  測定法/測定装置を開発する必要がある。(一つの観測サイトで)

 (U)  確認要件:  多くの地震について、複数サイトで同様に観測でき、 予知したように地震が発生することを確認できること。
==>  複数の観測サイトでデータを蓄積し、地震との相関を確認する。

(V) 実用要件: 測定が自動的/安定的/連続的に行え、地震発生の予知方法 (いつ、どこで、どの規模で)が得られること。
==>  信頼できる技術システムを作り、実験データを徹底的に解析する。

(W)  高度要件:  システムとして統合し、地震からの因果関係を証明できること
==>  地震学、特に地震発生プロセスについて、高度な研究が必要。

(X)  社会的要件: 短期地震予知/警報システムを信頼できる形で運用する。
==>  学界、社会、政府などから認知/承認されることが必要。

 

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 TRIZの考え方に基づく 地震予知研究
       (2) 短期地震予知のための前兆現象の要件

中川 徹 LinkedIn  英文掲載 2024. 5.14
             『TRIZホームページ』 和訳掲載

 

地震を短期的あるいは直近に (例えば、地震の数年前から数分前までに)予知するためには、 どうしても何らかの前兆現象を観測する必要がある。

どのようなタイプの現象を期待できるのか?
その現象をどのようにして観測/測定できるのか?
それらが(ある種の)地震の信頼できる前兆現象だということを、どのようにして証明できるのか?
予知される地震が、どこで(どの地域で)、いつ(どの時間範囲で)、どれくらいの大きさ(マグニチュードの範囲)で発生するかを、どのようにして推定できるのか?

-- これらの問題を、われわれはいま考えなければならない。 理解や判断が異なれば、信頼性や有用性がまったく異なるさまざまな方法に導かれることになる。

 

地震の前兆の可能性がある現象には、既知のものや予想されるものなど、さまざまな種類がある。 例えば、

動物の行動の異常な現象、特異な形の雲、異常な発光現象、地面からの大きな音など、一般の人々によって観察/報告されているものがある。

多数/多様な観測データがあるのは、 前震、地下水位の変化、大気中のラドンのカウント数の増加、さまざまな周波数の電磁波の変動やノイズなど、人工衛星から観測した電離層の性質の変化など、がある。

これらの地震前兆候補について、それらが本当にどの程度地震と関係があるのか、また、将来の短期地震予知にどの程度役立つだろうかを、われわれは明らかにして行く必要がある。

 

良い地震前兆候補を選ぶためには、良い地震前兆であるという判断基準を、まず明確にしなければならない。 われわれはそのような基準を、複数のレベルに分けて考えている:

 

(0)  根本的でかつ最も高度なレベル:

現象Xが地震と関連している(相関関係); 
現象Xが地震によって引き起こされる(因果関係); 
現象Xがいくつかの(望ましくは多くの)タイプの地震で発生する; 
現象Xが地震の直接的な効果として(あるいは短い連鎖の効果として)発生する; 
現象Xが地震の直前に(地震の準備段階の最後近くで)発生する。

--- これらは地震の前兆現象としての根本的な判断基準であるが、その基準での合否を判断できるのは、体系的な観測(実験)をし、さまざまなタイプの地震の物理的プロセスに関する高度な研究を十分にした後のことである。

これが意味するのは、地震予測研究は「実験科学」のアプローチに従わなければならないということである。

すなわち、さまざまな候補現象を考えつき、
それらを注意深く観測/測定し、
それらが地震前兆現象としての根本的要件を満たすかどうかを明らかにし、
そして、地震短期予知の実用的で有用なシステムを構築する、
というプロセスを採らねばならない。

 

そこでこれから、実験段階での判断基準を考えよう。

 

(I)  基本レベル(単一の観測サイトの段階):

明瞭に観測/測定できること(客観的に、高感度で、できればデジタルで);

さまざまな自然ノイズや人工ノイズがない、あるいは区別できること(サイトの場所を適切に選ぶ、装置内のノイズを避ける/減らす、なんらかの適切な手順でノイズを消去する/減らす);

S/N比(信号/ノイズ)ができるだけ高いこと。  

--- これらの要件は、観測・測定実験に求められる基本的な(そして重要な)レベルである。 観測サイトでの観測データの蓄積により、地震との相関の程度が徐々に明らかになる。

 

 (U)  確認要件(複数の観測サイトの段階)

一つの地震について、複数の場所/装置で同時に、かつ同様に現象Xが観測される;

震源に近いほど強く観測される;

他の多くの地震についても同様に、現象Xが観測される;

Xを観測したほとんどの場合に、しばらくして(ある程度の短期間のうちに)実際に地震が発生したこと。  

--- これらの要件は、その現象Xがノイズではなく、意味のある信号であることを確認し、現象Xと(ある種の)地震との相関関係を検証・証明するために、重要である。

 

(V)  実用化のためにさらに望まれる要件 (広範な観測ネットワーク段階):

自動的で、安定した、連続測定が可能である;

予知する地震が発生する前に、その地震がどこで(地域)、いつ(時間範囲)、どんな大きさで(マグニチュードの程度)起こるか、などを推定する能力がある。

--- この方法を、有用/信頼できる技術として社会で運用するためには、これらの要件を満たす必要がある。 予知した地震が、いつ、どこで、どれくらいの大きさで、発生するのかを事前に推定する能力は、地震予知警報のためには必須の要件である。

 

ここで3つの点に注意しなければならない:

上記の要件のほとんどは、現在および将来の、測定の方法/装置/ネットワークなどに、依存する。だから、われわれはそのような測定方法をできる限り開発するべきであり、そしてまたそれらの限界を意識しておくべきである。

 

地震には多くのバリエーションがある (地質/地殻の構造、地殻の構成要素、地下の深度、など)。
そのため、地震のメカニズムやプロセスには種々の違いがあり、地震の直前/最中/直後に起こりうる現象にも違いがある、ことを予期しておかねばならない。
従って、一つの現象がいくつかの(全てではなく)タイプの地震で生じ、
     複数の現象がある一つのタイプの地震から生じ、さらに、
     一つの特定の地域でさえ(複数の)異なるタイプの地震が歴史的に発生したことを、
覚悟しておかねばならない。

われわれは、複数の地震予知方法を開発するべきである
それによって、さまざまなタイプの地震(の前兆)を観測することができ、
地震を異なるタイミング(たとえば、地震の数カ月前、数週間前、数日前、数時間前、数分前、など)で予知することができる。

 

上記に述べた(前兆現象の要件についての)基準のすべての因子を考慮して、
われわれは(複数の)地震予知方法を、探索/選択/開発していくべきである。
それらは、こんごの災害や被害を軽減するために、
最も実現性があり、汎用性があり、信頼性が高く、情報が多く、有益であると、期待されるものでありたい。

この点についての議論は、次の投稿に続く。

 

 

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最終更新日 : 2024.10. 7      連絡先: 中川 徹  nakagawa@ogu.ac.jp