TRIZフォーラム: 
TRIZの状況と情報源
中川 徹(大阪学院大学)、2011年 8月14日
出典: 『ITとソフトウェアにおける問題解決アイデア集 −TRIZの発明原理で分類整理』 Umakant Mishra 著、中川 徹 監訳 (2011年9月 出版予定) の「後書きに代えて」
掲載:2011.8.22

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編集ノート (中川 徹、2011. 8.19)     (掲載: 2011. 8.22)

本稿は、TRIZにまったく新しい読者のために、書きおろしたものです。ただし、TRIZの考え方については、別に学んでおられるものと想定しています。ここには、TRIZの現在の状況を世界および日本のスケールで概観し、情報源を明記し、また日本での適用・推進事例の優れたものを紹介しています。

本稿はもともと、別ページに案内しております、新しい訳書『ITとソフトウェアにおける問題解決アイデア集 −TRIZの発明原理で分類整理』 Umakant Mishra 著、中川 徹 監訳 (2011年9月 出版予定) において、その「後書きに代えて」 執筆したものです。この本は、IT/ソフト分野の人々が、TRIZのことを知らないでも読める本です。この本を読んでTRIZに関心を持った読者のためには、TRIZの基本的な理解について、著者が「序論」できちんと述べています。そこで、本稿は上記のねらいで記述し、「後書き」としたものです。

本ページでは、小見出しをつけて参照しやすくし、また、情報源のそれぞれにリンクを張りました。

以下のような構成です。

はじめに (本稿の位置づけと目的)

(1) TRIZの西側への導入

(2) 現在のTRIZの主要な流れ、日本への導入、各国の現状

(3) 世界と日本の、TRIZ推進組織とTRIZ国際会議

(4) TRIZの情報源 - (4a) TRIZ の Webサイト、  (4b) TRIZの教科書、 (4c) その他の参考情報

(5) 日本におけるTRIZの適用事例・推進事例

(5a) 全社的、総合的な活動の定着例、 (5b) 新商品開発への適用例、 (5c) IT/ソフト分野での適用事例、 (5d) 日本の大学での教育・研究例、 (5e) 草の根から全社活動への努力

 


TRIZの状況と情報源 (中川 徹、2011. 8.14)     (掲載: 2011. 8.22)

 

TRIZの状況と情報源   (日本語版への後書きに代えて)

はじめに (本稿の位置づけと目的):

TRIZについての基本的な解説は、著者Umakant Mishra の序論で的確に説明されております。また、IT/ソフトウェア分野の読者のための本書の位置づけは、まえがきの「日本語版のための序文(I)(II)」に書いております。そこで、ここには、1990年代後半から西側世界に本格的に紹介されてきたTRIZの状況とその情報源を簡単に説明して、TRIZについて関心をお持ちになった読者のためのガイドとさせていただきます。

(1) TRIZの西側への導入:

旧ソ連で ゲンリック・アルトシュラーが創始し、開発したTRIZは、冷戦終了後、1990年代初めから西側諸国に広がっていきます。アルトシュラーの多数の弟子たちが、米国や欧州に移住し、TRIZの知識ベースを便利なソフトウェアツールにし、また、コンサルタントとして企業の研究委託や技術者研修を行いました。日本には1996〜1997年に、米国経由で紹介されてきました。
1990年代の末頃は、そのソフトツールが大きな脚光を浴び、米・欧・日で多数の大企業が導入を試みました。ただ、TRIZの考え方そのものが十分に理解されなかったため、一時的なブームになった面があります。
2000年代以降各国で、TRIZの考え方を理解し、その思考プロセスを習得して、実地問題を解決しつつ実績を積み、組織活動に育てていく努力がなされてきています。その意味で現在のTRIZはずっと地に足がついたものになってきているといえます。

(2) 現在のTRIZの主要な流れ、日本への導入、各国の現状:

現在のTRIZには、いくつもの流れがあります。世界的には、ツールベンダおよびコンサルタント会社が主導的な役割をしています。その主なものはつぎのようです。

Invention Machine社 (米国) 大規模な特許の意味解析をベースにして、高度なTRIZ知識ベースを実装したソフトツール「Goldfire Innovator」 を主体として、TRIZの技術適用を広めています。

Ideation International 社 (米国): TRIZの理論的な拡張をベースにして、その思考プロセスをツール化 (「Innovation Work Bench」、「Directed Evolution」など) し、研究委託を中心にしてコンサルティグ活動をしています。

CREAX社 (ベルギー)Systematic Innovation 社 (英国): 西側のセンスでTRIZを消化し直し、より簡便なソフトツール (「CREAX Innovation Suite」, 「Matrix2003」など) を作り、新しい拡張を目指しています。

各国での普及の状況、また、企業と大学とコンサルタントとの関係なども、まちまちの状況にあります。

- 米国は、強いコンサルタント群 (主として旧ソ連出身グループ) がありますが、企業内ユーザ層と分離している感じがあり、大学の寄与が減退しています。
- 欧州は、大学が企業およびコンサンタントと積極的に連携を取ろうとしており、最近着実な歩みをしています。
- 日本は、企業ユーザが中心ですが、全社的な導入が定着したのは日立とパナソニックの二大グループだけで、多くの企業では草の根活動から組織活動にすることに苦労しています(後述)。
- 韓国は、2003年頃からサムソンなどの大企業が旧ソ連出身のTRIZ専門家たちを多数雇用し、実績を挙げつつ、全社推進をしています。現在、世界各国の中で企業内TRIZの普及状況は韓国がダントツであるといえます。
- マレーシア、台湾、中国なども政府が支援して積極的な導入を図っています。
- 非常に意外なのは、イランです。若い研究者たちによって、新聞・雑誌の連載コラムや、テレビの毎週のトークショウなどで、TRIZの考え方が定常的に流されていて、知識層は大抵TRIZを知っているといいます。

(3) 世界と日本の、TRIZ推進組織とTRIZ国際会議

つぎに、世界と日本の、TRIZ推進組織とTRIZ国際会議について整理します。

国際TRIZ協会 (MATRIZ): 旧ソ連で1989年に設立されたもので、旧ソ連圏の (およびその出身の) TRIZ専門家たちで形成しています。ロシア中心で運営されてきましたが、最近、TRIZ資格認定制度などをてこにして、西側各国にも浸透しようとしています。「TRIZ Fest」と呼ぶ国際会議を、最近隔年で夏に開くようになりました。

アルトシュラー協会 (Altshuller Institute for TRIZ Studies) (米国): 1998年に米国でTRIZコンサルタントたちが大同団結して設立したもので、アルトシュラーの認可を得ています。1999年から春に「Annual TRIZ Confereence (略称 TRIZCON)」を毎年開催してきました。西側世界でのTRIZの最も有力な国際会議でしたが、この5年程前から求心力を失ってきているのが残念です。

欧州TRIZ協会 (ETRIA): 2000年に、英・仏・独・蘭・伯(ベルギー) の 5ヶ国のTRIZリーダたちが集まって立ち上げました。2001年から毎年秋 (10-11月) に 「TRIZ Future Conference (略称 ETRIA TFC)という国際会議を、欧州各国の持ち回りで開催してきました。上記5ヶ国の他、イタリア、オーストリア、ルーマニアでも開催され、持ち回りは負担の軽減と担当国内での活発化という利点がありました。欧州だけでなく、世界各国に委員(窓口) を置いて、連携を取ろうとしています。TFC では、科学部門と実践部門とを持ち、発表論文の査読をして、学術的な面を高めようとしています。

日本TRIZ協会 (日本): 2004年に日本中のTRIZ関係者が協力していくための組織として、日本TRIZ協議会という任意団体を発足させました。翌2005年から毎年、「日本TRIZシンポジウムを開催してきています。その後、2007年末に、NPO法人日本TRIZ協会として認可を受けました。企業ユーザ、コンサルタント、大学人などがそれぞれ個人として参加する組織で、現在120〜140人の会員を持ちます。約20人のボランティアが運営委員となり、毎年総力体制でTRIZシンポジウムを開催しています。このシンポジウムは、国内・海外から発表を公募し、発表件数 40件程度、参加者数は100〜200人で、世界的にも活発なシンポジウムだと評価されてきています。

(4) TRIZの情報源 - (4a) TRIZ の Webサイト

TRIZの情報源としては、Webサイトが最も便利です (TRIZは後発の技術ですから、初期からWebを使っています)。前述のコンサルタント企業や国際組織もそれぞれWeb サイトを持っていますが、公共的なサイトとしてつぎの三つを紹介しておきます。

TRIZ Journal (米国): 1996年から、Ellen Domb が編集者となり、世界各国からの論文・記事を毎月数編〜10編掲載してきました。公共的で、学術的なサイトとして定評があり、TRIZにおける世界のハブサイトの役割を果たしました。2006年から、コンサルタント企業 Real Innovationの運営になり、ポータルサイトとしての活動をしましたが、徐々に論文数が減少してきました。現在、その再生策が検討されているところです。

アルトシュラー基金 (Altshuller Foundation) (ロシア): アルトシュラーの遺族が運営しているサイトです。アルトシュラーの膨大な数の (ロシア語の) 論文・遺稿を整理して、掲載してきています。ごく一部分が英訳されている段階です。

TRIZホームページ (英文名: TRIZ Home Page in Japan) (URL: http://www.osaka-gu.ac.jp/php /nakagawa/TRIZ/): 大阪学院大学の中川徹が、1998年11月に創設し、ずっと編集者として運営している公共サイトです。ボランティアによる個人の編集ですが、自分の記事だけでなく、世界および日本の多数の著者の論文・記事を掲載しており、その公共性が世界的に認められています。海外の論文を和訳し、また日本の記事を英訳して、和文ページと英文ページの並行したサイトを目指しています。TRIZCON と ETRIA TFC の多数の発表論文のレビュ (英文)、また日本TRIZシンポジウムの全発表論文の英文による詳しい紹介などが特長です。

 (4b) TRIZの情報源 - TRIZの教科書

つぎに、TRIZの教科書 (特に日本語の) について、記します。

『実際の設計選書, 「TRIZ入門」思考の法則性を使ったモノづくりの考え方』、V.R. Fey、E.I. Rivin著、畑村洋太郎、実際の設計研究会編著、日刊工業新聞社刊 (1997年12月)。 日本へのTRIZ導入の初期に書かれた本です。第1部が全体の導入、第2部がFey と Rivin による古典的TRIZの簡単な紹介、第3部は第2部に対する批判的検討です。この書は畑村教授の考え方が強く出ていて、第2部のTRIZの記述や提案が古いままであるのを、専門の機械分野の目から批判しています。これが初期のTRIZ「入門書」であったこと、そしていまも多く読まれていることは、日本のTRIZにとって不幸なことでありました。

『革新的技術開発の技法: 図解TRIZ』、三菱総研 知識創造研究部編著, 山田郁夫監修, 日本実業出版社(1999年7月)。日本へのTRIZ導入の初期に分かりやすく書かれた入門書ですが、いまは絶版になっています。

『"超"発明術TRIZシリーズ5: 思想編「創造的問題解決の極意」 』、Yuri Salamatov著、中川徹監訳、三菱総合研究所知識創造研究チーム訳、日経BP社 (2000年11月)。原書(英訳版) は1999年刊。古典的TRIZについて詳しく解説した教科書として世界的な評価を受けています。絶版。

『TRIZ 実践と効用(1) 体系的技術革新』 、Darrell Mann著、中川徹監訳、知識創造研究グループ訳、創造開発イニシアチブ刊 (2004年6月)。西側世界でTRIZを吸収し、一部に西側の考え方をも導入して記述しています。TRIZの全貌を分かりやすく解説しており、現在のTRIZに関する標準教科書です。著者は、1985年以後の米国特許をTRIZの目から全数分析する研究プロジェクト (CREAX社 2000〜2004年) を推進し、この教科書の基礎データとしています。

『TRIZ 実践と効用(2) 新版矛盾マトリックス (Matrix 2003) (技術一般用)』 、Darrell Mann、Simon Dewulf、Boris Zlotin、Alla Zusman共著、中川徹訳、創造開発イニシアチブ刊 (2005年4月)。アルトシュラーが1973年に作成した矛盾マトリックスに対して、1985年以降の米国特許の全数調査をして新しく作成した矛盾マトリックスです。最新データを基にして、ずっと使いやすくなっています。

『Systematic (Software) Innovation』、Darrell Mann 著、IFR社 (2008年11月)。体系的技術革新を唱える著者が、IT/ソフトウェア分野でのTRIZの使い方を記述したものです。本書(Umakant Mishra著) と相補的な役割が期待されるのですが、まだ訳出の目処が立ちません。

(4c) TRIZの情報源 - その他の参考情報

その他の参考情報:

TRIZ 教科書・参考書 (日本語) 一覧: 『TRIZホームページ』参照。2008年までで32編。

TRIZリンク集: 『TRIZホームページ』参照。世界約120件国内 約 100件の説明付きリンク集。

TRIZ適用事例集: 『TRIZホームページ』参照。総合目次の適用事例に約90件のリンクがあり、各リンクから適用事例の本文 (学会発表など) を辿ることができます。

(5) 日本におけるTRIZの適用事例・推進事例

さて、最後に日本におけるTRIZの適用事例、推進事例のすぐれたものを紹介しておきます。

(5a) 全社的、総合的な活動の定着例:

・ TRIZを全社的に導入し、定着させているのが日立グループです。1997年から、日立グループの広範囲な技術分野に渡って、分野に依らずに適用でき、具体的な課題解決が可能な方法として、QFD (品質機能展開)、KT (ケプナートレゴー法)、TRIZ、品質工学 (タグチメソッド) を「革新的エンジニアリング技術」と位置づけました。1999年にHiSPEER21という全社運動を開始しています。それぞれの技法ごとに全社および各部署に委員会をもち、新人教育を行い、課題解決プロジェクトを支援し、成果の発表・表彰を行なってきました。TRIZシンポジウム2011で有田節男の総括的な発表があります。いままでのTRIZ適用事例は4530件。素晴らしいことです。

・ 同様に、商品づくり、モノづくりのための「科学的手法」として、QFD、TRIZ、品質工学のセットを全社的に推進したのが、パナソニックコミュニケーションズ社でした。2003年からつい最近まで、多数のエキスパートを要請し活発な活動を行なって来ました。その考え方を、「マネジャーの為のTRIZ」という題で山口和也((有)MOST)がTRIZシンポジウム2010で講演しています。「科学的手法(QFD、TRIZ、品質工学他)とは儲ける道具であり!経営そのものであり!マネジメントそのものである!」と言っています。三つの手法、QFDとTRIZと品質工学の本質と使い方、三つの間で連携してはじめて実効がでることを明瞭に説明した優れた講演です。

(5b) 新商品開発への適用例

・ 実際に適用した例でその一部始終が報告されたものに、(株)コガネイ の事例があります。空気圧機器 (その他) の専門メーカで、従業員750人です。TRIZを初めて導入するにあたり、3件の課題について、QFD-TRIZ-品質工学-商品化まで一貫した適用を行い、これをただ一人のコンサルタントの指導のもとに、研修やドキュメント化を同期化させています。TRIZシンポジウム2008と2009で片桐朝彦らが発表した事例は、高速 2ポートバルブです。電磁弁の構造を大幅に変え、いろいろなアイデアを組み合わせた結果、同社の従来品に比べて、応答時間が1/2以下、最大流量が3倍以上、消費電力が1/2以下となりました。この結果、新商品は、コンベアで流れて来る製品の選別工程、ソフトウェア制御によるパルスブロー工程などでの適用で、供給が追いつかない程の引き合いを得ました。

・ 一人の開発技術者が、TRIZとUSITを学んで、新しい商品の開発を成功させた事例として、菅野比呂志 (東北リコー(株)) のTRIZシンポジウム2008での発表があります。デジタル孔版印刷機で、両面印刷を行なうことが課題でした。孔版印刷 (ガリ版印刷) は印刷後に定着段階がなく、インクが自然に紙に浸透して乾くのを待つ必要がありますから、汚さずに両面印刷することは、20年来何度か試みては果たせなかった課題てした。TRIZを学んでの第一のヒントは、現在のシステムをできるだけ変えずに解決せよという「最小問題」だったといいます。A3 の印刷機でA4を印刷するときは、製版には半ページ空白になりますから、そこに裏面のページを置けばよい、おもてを刷ってから反転させて裏を刷る。この着想を得て菅野は「できる」と思ったそうです。ローラの表面を細かいビーズ状にし、背の高いビーズを点在させることにより、紙の汚れを無くし (気がつかなくし) ました。新商品Satelio DUO 8 はA4版で240ページ/分の高速両面印刷機で、大変好評を受けたそうです。

(5c) IT/ソフト分野での適用事例

・ IT/ソフトウェア分野での適用事例として注目されるのは、福嶋洋次郎(松下電器産業、現パナソニック(株))のTRIZシンポジウム2008での発表です。「松下電器 本社R&D部門におけるTRIZ活動−システム・方式・ソフトウェア技術への適用−」という題です。パナソニックグループも全社的にTRIZを推進してきました。システムエンジニアリングセンターで、2003〜2007年度の5年間で151件の適用実績を持ちます。TRIZはハードウェア分野を中心に開発され、ソフト分野やビジネス分野に拡張してきていますが、福嶋らが経験したのもTRIZの発明原理や概念を少し拡張すれば、システム・方式・ソフトウェアという分野にもスムーズに適用できて、有効だったということです。Mishra の本書がより具体的にガイドを与えてくれていることです。

(5d) 日本の大学での教育・研究例

日本の大学でTRIZを教えているのは、中川徹が大阪学院大学の情報学部の学部生に創造的問題解決の方法として教えており、石濱正男が神奈川工科大学で学部と大学院生に自動車開発工学へのTRIZの適用を指導しており、また澤口学が早稲田大学大学院創造理工学研究科経営デザイン専攻でTRIZを主要な研究テーマとしています。これらの他に、非常勤の講義・演習として学部や大学院で教えているところが10校ほどありますし、いくつかの高専ではTRIZの教育が試みられています。

中川は学部学生とともに身近な問題での分かりやすい事例をつくることに努力しています。その中川でIT/ソフト技術に関わる例を一つ紹介します。問題は「マンションのオートロックドアで、不審者が住人の後について簡単に侵入できる」という危険です。これは誰でも体験している問題です。「なんだか不審な人だな」と感じても、その人に質問し、押し止めることができる住人はいません。これは人間心理の問題のようにも見えますが、社会ルールが確立していないともいえます。原因を突き詰めていくと、いまのオートロックドアのシステムでは、二つのグループが同時に入ってきたときの問題を解決していないからだと分かりました。そこで、「それぞれのグループでカード認証をし、そのときにグループ人数 (1人とか3人とか) を指定する。後続のグループは例えドアが開いているときでも別個にカード認証をする。」としました。これを技術的に保証するために、システムがドアの通過人数をカウントし (たとえば、画像認識で)、人数超過のときには写真を撮って警告します。来訪者はいままでと同様に住人をインタホーンで呼んで、人数を知らせたうえで開けて貰います。この際、住人用登録機と来訪者用登録機をドアの左右に離して設置すると、不審な動きを見分けられやすいという利点があります。このようにして、技術システムの改良により、社会ルールができ、住人の心理的負担の問題を解消させました。(まだ採用してくれたメーカはありませんが。)

(5e) 草の根から全社活動への努力

先に、日本の「多くの企業で、草の根活動から全社的活動にするのに苦労しています。」と書きました。それは、「○○という技法がいいらしいよ、○○会社での成功事例を聞いたよ。」というだけでは、日本の企業のトップは動かないからです。下から実績を積み上げて、少しずつ上層部の理解を獲得していかねばなりません。それには、TRIZという技法の本質を知り、成功例での QFD-TRIZ-品質工学の連携のような幅広い活動として、作り上げていくリーダシップが必要です。ただ、そのような活動をしていた人が、社内異動になる、定年退職すると、どうしても活動が鈍ります。企業の上層部がこのような技術革新のための科学的な方法があるのだということ理解し、社内活動をサポートし、より広範囲に適用推進していくことの有益さ・必要さを認識していただけるとよいと思います。(前記の山口和也の講演を参照下さい。)

以上、TRIZに関心を持たれた読者の皆さんの参考になれば幸いです。

                                2011年 8月14日
                                                                      中川 徹 (大阪学院大学)

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最終更新日 : 2011. 8.22.     連絡先: 中川 徹  nakagawa@ogu.ac.jp