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編集ノート (2025. 4.27)
『TRIZ 実践と効用』シリーズは、 (株) 創造開発イニシアチブ(SKI) (代表取締役: 堀田政利氏) が2004年に刊行を開始したものです。その巻(1)はDarrell Mann著の『体系的技術革新』で、三菱総研のユーザグループ14人の協力を得て、中川が監訳し、2004年6月に刊行しました。巻(2)は、Mann他著の『新版矛盾マトリックス Matrix2003』で、中川訳、2005年4月刊です。その後も巻(3)、巻(4)の準備をしておりましたが、堀田氏の健康上の理由で、2012年にSKIが廃業になり、出版権・著作権を中川が引き継ぎました。
2014年に、中川が個人事業として、クレプス研究所(CrePS Institute)を興し、『TRIZ 実践と効用』シリーズの出版を再開しました。再開後、原著の改訂を反映した改訂版巻(1A)、巻(2A)、および巻(3)、巻(4)を半年間で刊行し、その7年後に巻(5)を刊行しました。刊行後、販売サイトや販売形態にいろいろ変化がありましたので、以下には2025年4月の現時点での状況で記述しておきます。
現在、出版・販売中の書籍・資料は、表記の主要翻訳書5巻に、データシート (M) および簡略版書籍(3S)を加えた以下の7件です。
なお、「TRIZ 実践と効用』シリーズの全体に関わるページ(「親ページ」)は以下のようです。
内容面の親ページ(販売面の副ページ) 『TRIZホームページ』内
販売面の親ページ 「クレプス研究所 のサイト」内
http://crepsinst.jp/
Amazonサイト (https://www.amazon.co.jp)内 中川 徹のプロフィール(著作一覧)ページ
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Stores サイト内 クレプス研究所のページ (https://creps-institute.stores.jp/)
(M)の販売
以下には、上記の各件ごとに、書誌情報、(案内ページの)構成概要、および(監)訳者中川の前書きを掲載します。
巻(1A) 体系的技術革新(改訂版) (Mann) | 巻(2A) 新版矛盾マトリックス (Mann) | 巻(3) 階層化TRIZアルゴリズム (Ball) | 巻(3S) 階層化TRIZアルゴリズム(入門編) (Ball) | 巻(4) IT とソフトウエアにおける問題解決アイデア集 | 巻(5) イノベーションを成功させる組織の力 | 英文ページ |
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巻(1A) 体系的技術革新(改訂版) 新版矛盾マトリックス Matrix 2010 採用 (Darrell Mann著; 中川徹監訳)
書誌情報:
訳書名: TRIZ 実践と効用 (1A) 体系的技術革新(改訂版) 新版矛盾マトリックス Matrix 2010 採用
原書: "Hands-On Systematic Innovation",
Darrell Mann 著, CREAX Press, 2002年 5月 刊監訳: 中川 徹 (大阪学院大学名誉教授)
訳: 知識創造研究グループ
表紙デザイン: 後藤一雄
発行: クレプス研究所
出版日: 2014年 2月16日 (DL版)、 2014年 3月10日(製本版)
訳者一覧 (所属は初版出版当時(2004年6月)):
堀田 政利、福村 三樹郎、上田 宏、森久 光雄、川嶋 浩暉、冨樫 伸行 ((株) 創造開発イニシアチブ)、
三原 祐治、古謝 秀明 (富士写真フイルム (株))
粕谷 茂、伊本 善弥、坂巻 克己、野田 明彦 (富士ゼロックス (株))
保田 尚男、川久保 俊夫、杉山邦利、後藤 一雄 ((株) リコー)発行形態: 印刷製本版 B5版、502頁、定価(税抜) 7,000円
ISBN978-4-907861-01-8注: (1A) にはマトリックスシート(M)を無料折り込みサービス。
(1A+) は、(1A) に マトリックスシート(M) 5部を追加、定価 9,500円。
構成概要
原著の序文 (Mann)、日本語版(初版)のための著者序文 (Mann)、 監訳者ま えがき(中川)、
日本語改訂版への著者序文(Mann)、監訳者のまえがき(中川)、目次 (改訂版概要)
日本語改訂版での「新訳注」(中川)の例示 (10章 技術的矛盾・矛盾マトリックス の関連)改訂版(1A)(本体部)目次 (注:# 改訂版(1A)において初版(1)から大きく改良された部分)
第1章 はじめに TRIZの概要: ツールキット?手法?思想?
第2章 体系的創造性プロセスの概要
第3章 創造性の心理学
第4章 システム・オペレータ/9画面法
第5章 問題定義 − 問題探索ツール
第6章 問題定義 – 機能と属性の分析
第7章 問題定義 − Sカーブ分析
第8章 問題定義− 理想性/究極の理想解
第9章 解決ツールの選択
第10章 問題解決ツール − 技術的矛盾/発明原理 #
第11章 問 題解決ツール − 物理的矛盾
第12章 問題解決ツール − 物質-場分析/発明標準解
第13章 問題解決ツール − 技術進化のトレンド
第14章 問題解決ツール − リソース
第15章 問題解決ツール − 知識ベース/物理的効果
第16章 問題解決ツール − 発明問題解決のアルゴリズム (ARIZ)
第17章 問題解決ツール − トリミング
第18章 問題解決ツール − 理想性/究極の理想解
第19章 問題解決ツール − 心理的惰性の打破
第20章 問題解決ツール − 信頼性の向上と破壊分析
第21章 解決策を評価する
第22章 未来に向かって
補遺
付表1. 「問題を定義するための」シート集
付表2. 矛盾マトリックスのパラメータの一覧 (Matrix 2010) #
付表3. パラメータの改良に際して検討すべき発明原理 (Matrix 2010) #
付表4. 新版矛盾マトリックス Matrix 2010 (8頁分割表) #
索引
巻(1A) 日本語改訂版への監訳者のまえがき (中川 徹、2014. 2. 4)
原著とその日本語版は、「体系的技術革新」に関して、洞察に富む豊富で分かりやすい教科書として、世界でも日本でも多くの技術者や実践者に評価されてきました。旧ソ連でゲンリッヒ・アルトシュラーが開発・樹立したTRIZ(「発明的問題解決の理論」)をベースにして、それに西側の多くの技法や思想を取り入れて、まとまった体系として記述しています。
本書のすごいところは、著者らが2000年に開始した (1985年以降の) 米国特許の全件の分析(スクリーニングした約1割のものの詳細分析)の成果に基づいて、TRIZの知識ベースを刷新して記述していることです。ただ、原著初版(2002年5月)の段階では、その研究の中間段階にありましたから、矛盾マトリックスについてはアルトシュラーの古典版マトリックスを説明・掲載しておりました。2003年3月に研究の全貌が発表され、新版矛盾マトリックスMatrix 2003が公表されています(和訳出版2005年)。著者らの研究は、その後もソフトウエア開発分野、ビジネスのマーケッティングと実施の分野、生物のもつしくみなどの分野に拡大しつつ継続されてきて、技術分野ではMatrix 2010を開発しました。
今回、日本語の改訂版を出すにあたり、全章を再検討しました結果、矛盾マトリックスを古典版から最新版(Matrix 2010)に置き換えることが、ぜひ必要・有益であると判断しました。これを著者に提案し、快諾を得ました。矛盾マトリックス一覧表(折込)、およびパラメータの説明(付表2、3) はMatrix 2010 に統一していますが、第10章のテキストは最小限の変更にとどめ、古典版での説明の中に最新版での情報を挿入しております。またその他には、第11章の物理的矛盾の説明に少しの補足を加えただけで、その他の章ではほとんど変更の必要を認めませんでした。
TRIZが日本に紹介されてから、18年ばかりになります。この間にいろいろな本が出され、ソフトツールが導入され、企業での導入・適用・推進が行われ、大学での授業が試みられ、TRIZ協会ができ、毎年の国際シンポジウムが開催され、などしてきました。世界的にも、多数の国で企業実践がありますし、国際会議も複数のものが毎年開催されています。TRIZは随分広まったともいえます。しかし、まだまだ本当に定着していないと思います。「イノベーション」というキャッチフレーズがもてはやされているのに、それを確実に実現する科学的な方法にほとんど目が向けられていない。TRIZとそれを発展させた「体系的(技術)革新」がその基盤を作っている。それがもっと認識され、活用されるようにしていかねばならないと思っています。本書は、技術革新とイノベーションを、身近な問題から、技術・非技術の高度な問題にまで適用・実践して行けるようにする科学的方法に関しての、最も信頼のおける教科書です。沢山の方に読んでいただきたいと願っています。
この『TRIZ 実践と効用』のシリーズの発行元でありました株式会社創造開発イニシアチブが、堀田政利社長の引退に伴い2012年末に廃業しました。私がその出版権を引き継ぎましたが、いろいろな出版社に再出版してもらうことができませんでした。そこで、私が新しく「クレプス研究所(CrePS Institute)」を立ち上げて、出版することにしました。販売・実務体制は全く弱体ですので、印刷版のPOD(Print on Demand)作成とインターネットでの
ダウンロード販売とを中心にした形態での出版にいたします。具体的なやり方は、『TRIZホームページ』(http:// www.osaka-gu.ac.jp/php/nakagawa/TRIZ/) とクレプス研究所サイト (http://crepsinst.jp/) での案内を参照ください。 [注: 青字部分: 2025. 4.28 修正(中川)]本書日本語改訂版の出版にあたり、初版の翻訳を担当下さった(旧)「知識創造研究グループ」の皆さん、特に堀田政利さんに感謝いたします。また、改訂版にMatrix 2010の収録を許可いただき、身に余る序文を寄せてくださった著者Darrell Mann 氏に深く感謝いたします。
この本を手に取って読んでくださっている読者のあなたに、お役に立てることを祈って。
2014年 2月 4日 中川 徹
巻(2A) 新版矛盾マトリックス Matrix 2010 (技術一般用) (Darrell Mann著; 中川徹訳)
書誌情報:
書名: TRIZ 実践と効用 (2A) 新版矛盾マトリックス Matrix 2010 (技術一般用)
原書: "Matrix 2010: Re-updating the TRIZ Contradiction Matrix"
著者: Darrell Mann著
出版社: IFR Press, United Kingdom
出版日: 2009年11月訳者: 中川 徹 (大阪学院大学 名誉教授)
デザイン: 後藤 一雄
発行所: クレプス研究所
発行日: 2014年 4月17日発行形態: 印刷製本版、B5版、150頁、定価(税抜)2,600円。
ISBN978-4-907861-03-2注: (2A) にはマトリックスシート(M)を無料折り込みサービス。
(2A+) は、(2A) に マトリックスシート(M) 5部を追加、定価 5,100円。構成概要
原著の序文 (Mann)、訳書初版への訳者ま えがき(中川)、
原書改訂版への著者序文(Mann)、訳書改訂版への訳者まえがき(中川)、同左追記(中川)
目次 (改訂版概要)改訂版(2A)(本体部)目次
第1章 導入と背景
第2章 データ収集の方法
第3章 生物学からの解決策 #
第4章 無形のものの矛盾 #
第5章 物理的矛盾を解決する戦略
第6章 矛盾マトリックス2010年版 データ集
第7章 発明原理の組合せと解決戦略
第8章 発明原理集 (拡張版)
第9章 解決策が見つからなかった場合
第10章 未来に向かって
参考文献
付表 新版 矛盾マトリックス (Matrix 2010) (8頁分割表)
付録: 矛盾マトリックスのパラメータ一覧と発明原理 # --- 別掲(M)
矛盾マトリックスシート (Matrix 2010) # --- 別掲(M)[訳注: #印は、原著改訂版で追加された章 (および訳書改訂版で作成した付録)を示す。これ以外にも原著改訂版には本文の随所で推敲、追記が行なわれており、訳書にそれを反映している。]
巻(2A) 日本語改訂版への訳者まえがき (中川 徹、2011.12.14; 追記:2014. 4.14)
本書は 2005年に出版しました訳書 『TRIZ実践と効用 (2) 新版矛盾マトリックス (Matrix 2003)』の改訂版です。原著の初版 "Matrix 2003" から記述内容もデータも更新されて、原著改訂版 "Matrix 2010" が2009年11月に出版されました。その後2年遅れになりましたが、ここに和訳改訂版『TRIZ実践と効用 (2A) 新版矛盾マトリックス (Matrix 2010)』を、日本のTRIZユーザの皆さんにお届けすることができ、大変嬉しく思います。
Darrell Mannら4名共著の初版 『Matrix 2003』 は、世界でも、日本でも、多数のTRIZユーザから好評を得て来ました。この改訂版『Matrix 2010』も、世界と日本で活用されることと思います。
好評を得ている大元は、もちろん、TRIZの創始者アルトシュラーの構想の偉大さにあります。ユーザが抱えている問題を「改良したいパラメータと、その改良を妨げている (悪化する) パラメータとの間の対立 (矛盾)」として一般化して捉え、そのような対立を克服したアイデアを集めて来るとよい。世界中の特許を内容的に分析して、このデータ収集を行なえばよい、という構想です。アルトシュラーが約14万件の特許 (旧ソ連の著者証明という文書) を分析した結果を手作業でまとめて、 コンパクトな一覧表として1973年までに作り上げました。世界中のTRIZの解説書にそれが印刷され、(いまも) 使われています。
Darrell Mann らは、アルトシュラーの構想を現代化して、1985年以後の米国特許全件を対象に、パソコンを活用したデータ収集と (人の頭による) 分析を行いました。2002年までの特許データを使ってまとめたのが「Matrix 2003」でした。パラメータは39個から48個に増え、パラメータの定義、発明原理の定義、矛盾の解釈のしかたなどに一貫性を持たせています。その結果は、一覧表だけでなく、さまざまな観点での詳細情報を含めて、出版され、またソフトウェアツールとしても発売されました。それが、1973年版よりも内容豊富で、問題把握がしやすく、また、推奨してくる発明原理がより適切になっているのは当然のことです。TRIZの「矛盾マトリックス」を使うなら、1973年版でなく、2003年版を使うとよいでしょう。新版を使って得られるあなたのアイデアは、きっと本書の購入費よりも何桁か大きな値打ちを生み出すでしょう。もしまだ1973年版を薦めるTRIZリーダがあれば、新版に対する無知か、創始者アルトシュラーの心を理解しないのでしょう。
Darrell Mann は、研究チームを作って、この特許分析の研究をその後もずっと継続しています。新規の特許を分析 (リバースエンジニアリング) すると同時に、そのアイデアの発明原理が既発表の矛盾マトリックス (Matrix 2003) で推奨される発明原理群の中に含まれているかをチェックしてきました。そのチェックで合格率が徐々に下がり90%を切る状況になったので、今回の改訂・出版をしたといいます。大規模な研究を継続し、その最新の情報を公表してくれていることは、TRIZユーザにとって実にありがたいことです。
本書 『新版 Matrix 2010』の出版にあたって著者が大幅に追加した内容は、著者の序文に記述のとおりで、それぞれに貴重な洞察を含んでいます。この訳書では、追加の章または節の見出しに #印を付けて明示しました。著者序文にいう 5項目のうちの主要 3項目についてここに簡単に紹介いたします。
(1) 自然 (生物) からの知見: 自然、特に生物、は非常に多様に、また非常に高度に発展した、何階層ものシステムを成しています。人工知能で追求されているように、人間自身が技術発展の目標ですし、生物界には未知のことだらけです。生物から学ぼうという研究の流れは、旧ソ連圏のTRIZ研究にもあり、Mann の研究チームはそれを継承して、多数の学術文献を調査しています。本書で記述している例の一つは「ふにゃふにゃのクラゲがどのようにして貝の固い殻に穴を開けるのか?」です。私は、「酸で溶かすのだろう」と思っていました。生物学の最新の研究は「クラゲの針の細胞が0.7マイクロ秒で発射され、加速度は540万Gに達し、弾丸のように殻に穴を開ける。このために、細胞壁に蓄えたコラーゲンから一気にエネルギを放出する」というのです。クラゲは高速実行と先取り作用を解決策に採用したのです。Mann は当初、これらの事例を集めて、「生物界の情報から作った矛盾マトリックス」を分離して作ることを計画していました。
しかし、研究の結果、「生物界での矛盾とその解決策が、技術界でのものとあまり大きな違いがない」と分かってきた、といいます。そこで、この「Matrix 2010」に生物界の情報をも統合して入れ、「各パラメータを改良するのに、生物でよく見られる発明原理」という項目を記述しています。また、生物が技術界よりも特に活用している発明原理として、発明原理3「局所的性質」、発明原理31「多孔質材料」、発明原理25「セルフサービス」を挙げて説明しています。--ただ、「大きな違いがない」というのは、科学技術からの認識の途中段階であり、生物学がもっと進むと、やはりもっと違った認識が得られるのでないか、と私は期待します。
(2) 「無形のもの」の矛盾: Matrix 2010 に新しく採用したのは、「ポジティブな無形のもの」(例えば、幸福、「クール」、ワクワク感、など) と 「ネガティブな無形のもの」 (例えば、ストレス、フラストレーション、混乱など) です。これらの、感情に関わる無形の諸側面が、商品購入などの際の判断基準として、ますます広く認識されてきたからだといいます。本書には 5件の事例研究を挙げています。それらの中で、ユーザ (あるいは自己) の感情状態を分類・認識する方法についての二つの事例は興味深いものです。
(3) 物理的矛盾の扱い: TRIZの方法論は、「矛盾」の認識とその解決を中心テーマとしてきました。アルトシュラーが先に定式化したのが、二つの側面 (パラメータ) の間の対立 (矛盾) としての「技術的矛盾」であり、その解決ツールが「矛盾マトリックス」でありました。ただ、彼は、もっと確実な解決法を目指して、一つの側面に対して異なる (対立する) 要求があるという「物理的矛盾」をクローズアップしました。「物理的矛盾」を導出する (認識する) 方法が ARIZであり、それを解決する方法が「分離原理」と呼ばれる 3段階の思考法 (その第3段階で各種の発明原理を使う 、5.1節参照) として確立されました。そして、彼は物理的矛盾の解決法を技術的矛盾の解決法の上位に置き、弟子たちの多くも (いまも) それに従っています。
Mann は本書で、制約理論 (TOC) による図式を拡張して、物理的矛盾と技術的矛盾を同時に表示する簡単な図を示しました (5.2節)。その図の 5つの項目 (すなわち、一つの目標と、対立する2パラメータと、別のパラメータの対立する二つの要求) を結ぶ合計 6本のリンクについて、どれか一つのリンクを切る (対立を解消する) ことができればよいのだといいます。それらのリンクを切る問題には、それぞれこの Matrix 2010を適用すればよいのです。このようにして、Mann は「物理的矛盾と技術的矛盾は相互に変換ができ、同レベルにある」ことを示し、TRIZ専門家たちの永年の論争 (物理的矛盾と技術的矛盾の間の優位性の問題) に決着を与えています。傾聴すべき説明であり、解決の思考方法がずっと増えています。
なお、この訳書は (初版のときから) 原著に編集上の改良をしています。まず、章や節に階層的な番号を付けました。二つの重要な一覧表を作っています (表2 パラメータの一覧とそれを改良するときに検討すべき発明原理、表3 発明原理の一覧表)。物理的矛盾を解決する発明原理の参照図について、発明原理の番号表示だけだった原図に、発明原理の名称を入れた図を作成・追加しました (図14A)。文中の重要キーワードを選択して太字にしました。また随所に訳注および補足 ([ ]内に示す) をしています。
この訳書の作成にあたり、堀田政利氏と小西慶久氏 (創造開発イニシアチブ) の支援を得、また、後藤一雄氏(リコー)に表紙デザインをしていただきました。記して感謝いたします。
2011年12月14日
大阪学院大学 (吹田市) の研究室にて 中川 徹
訳者まえがき 追記 (2014. 4.14)
この訳書 (改訂版) は、前項の訳者まえがきのように、2011年末には原稿が完成して、(株) 創造開発イニシアチブ (堀田政利社長) より出版するべく準備をしておりました
。しかしその後、堀田社長の引退に伴い、2012年末に同社が廃業しましたため、出版できませんでした。私がその出版権を引き継ぎましたが、既存の出版社から出版してもらうことができないでいました。
このたび、私自身で新しく「クレプス研究所(CrePS Institute)」を立ち上げて、『TRIZ 実践と効用』のシリーズの出版を再開する次第です
。2月に刊行しましたその第一巻は、『(1A) 体系的技術革新 (改訂版) 新版矛盾マトリックス Matrix 2010 採用』
で、この第二巻『(2A) 新版矛盾マトリックス Matrix 2010 (技術一般用)』と対になるものです。前書(1A)では技術革新のための考え方の全体の中で矛盾マトリックスを学び、本書(2A) で矛盾マトリックスの最新版の考え方とデータの詳細を学びます。Matrix 2010 のデータを要約したものは両方に掲載しました。
これは、A2版のシート2枚3面からなる資料で、上記の巻(2A)の訳書改訂版において、著者Mann の記述を整理して、訳者中川が編集作成したものです。下記に、各面の縮小図版を示します。
この(M) は、巻(1A)と巻(2A)のそれぞれに、無償の折り込みサービスとして、添付します。
また、(M)は単体として、定価500円で Storesサイトで別途販売しています。送料は部数にかかわらず(多数の部数でも)180円210円です [改訂:2025. 5]。企業や大学などで、数人あるいは多数の人がそれぞれMatrixシート(M)を使って問題解決を図るのに利用することを想定しております。
また、巻(1A+) と巻(2A+) は、巻 (1A) と巻 (2A) にそれぞれ (M)を5部追加したオプションです。(M) シートA おもて: 矛盾解決Matrix2010 パラメータの一覧表 (パラメータ名、関連語、各パラメータの改良に際して検討するべき発明原理)
(M) シートA うら: 発明原理の一覧表 物理的矛盾を分離原理で解決する発明原理
(M) シートB おもて: 新版矛盾マトリックス(Matrix 2010) 40の発明原理
巻(3) 階層化TRIZアルゴリズム- 初心者から上級者までの図で学ぶ教材− (Larry Ball著; 高原利生・中川徹共訳)
書誌情報:
原書: 『Hierarchical TRIZ Algorithms』、
Larry Ball 著、
2005年 5月刊; (The TRIZ Journal 上に連載。2005年5月〜2006年 6月。)訳: 高原利生 ( )、 中川 徹 (大阪学院大学)
表紙デザイン: 後藤一雄 ・ 中川 徹訳ドラフト版発行: (株) 創造開発イニシアチブ、 2007年 9月刊 (CD-R版)
訳書発行: クレプス研究所 (千葉・柏)、 2014年 6月30日発行形態: 印刷製本版、 B5版、208頁カラー、定価(税抜) 4,200円
ISBN978-4-907861-05-6構成概要:
日本語版への著者序文(Ball)、訳者まえがき (中川)、読者からのメッセージ (池田和康)
本体部目次
序章: 基調講演「階層化TRIZアルゴリズム」 (Larry Ball) (第3回TRIZシンポジウム、2007. 8.31)
基調講演の紹介 (中川 徹)
基調講演 (スライドと講演) (Larry Ball; 高原利生・中川 徹訳)本論: 『階層化TRIZアルゴリズム』 ----- Larry Ball (高原利生・中川 徹訳)
はじめに
A. 市場を発見する
B. システム機能を明確にする
C. 物理現象を特定する
D. システムオブジェクトを特定する
E. システムを単純化する(究極の理想解)
F. 主な問題は何か?
G. 何が問題を引き起こすか?
H. 問題解決のためにノブを回せ
I. 得られた矛盾を解決する
J. 解決策を実現する
K. 付録. 機能を理想化する
L. 付録. ノブの一覧表
M. 付録. システムの進化
N. 付録. その他
著者紹介、訳者紹介
巻(3) 『階層化TRIZアルゴリズム』への訳者まえがき (中川 徹、2014年6月22日)
Larry Ball氏の貴重な教材、『階層化TRIZアルゴリズム』の日本語版を、このたび製本版
およびダウンロード版として、出版できる運びになり、大変嬉しく思います。ここには、本書出版までの(日本側での)経緯を書いておきます。(1) 著者Larry Ball氏がそのTRIZ教材を最初に公表したのは、2002年3月でした。WebサイトTRIZ Journal に、“Breakthrough Thinking”という膨大な本体資料とその解説とが発表されました。私はそれに注目し、解説の部分だけを和訳して、Webサイト『TRIZホームページ』(http://www.osaka-gu.ac.jp/php/nakagawa/TRIZ/)に掲載しました(
(2003. 3. 5))。
(2) 著者が大幅に改訂して、“Hierarchical TRIZ Algorithm”という新しいタイトルで、TRIZ Journal 上で2005年5月から連載を開始しました。毎月1章ずつで、2006年6月に連載を完了しました。連載開始の時点で、著者が全教材ダウンロード版の一括有償販売を行いましたので、私は早速入手しました。そして、著者の許可を得、また高原利生氏の協力を得て、『階層化TRIZアルゴリズム』という題名で和訳を開始しました。この教材の各章の「簡易版」のページをまず和訳して、2006年2月〜9月に『TRIZホームページ』に掲載しました
。「詳細版」のページの和訳は2007年1月〜7月の掲載です
。(これらはすべて無償公開です。)
(3) 2007年8月末の日本TRIZ協議会主催の第3回TRIZシンポジウムに Larry Ball 氏を招き、基調講演をしてもらいました。講演タイトルは「階層化TRIZアルゴリズム」で、スライドは同協議会のホームページ(『TRIZホームページ』内)に公開しています
。この基調講演について、私が(シンポジウムの)「Personal Report」で紹介しました
。また、同年11月に著者から基調講演スライドを文章できちんと解説したものが送られてきましたので、高原・中川で和訳し、『TRIZホームページ』に掲載しました
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。
(4) 2007年9月に、Larry Ball 著、高原・中川訳の『階層化TRIZアルゴリズム』を(それまでずっと支援してもらっていました)創造開発イニシアチブ社(SKI、堀田政利社長)からCD-R版として販売を開始しました
。2012年末に同社が廃業しましたので、その出版権を私が引き継ぎました。
(5) 2014年2月に私はクレプス研究所を興し、SKIから引き継いだ『TRIZ 実践と効用』シリーズの出版を再開しました
。そしてこのたび、同シリーズの第3巻として、本書、Larry Ball著、高原・中川訳の『階層化TRIZアルゴリズム』日本語版を出版する次第です
。
[注 (2025. 4.29): 出版・販売形態は、当初(2014. 2) とは変更があり、現在は 製本版(ソフトカバー、本文カラーの印刷物)のみを、Amazonサイトで販売しています。]
本書の出版にあたり、原著者Larry Ballさん、元のSKI社堀田政利さん、共訳者高原利生さん、メッセージを寄せてくださった池田和康さんに、改めて厚くお礼申し上げます。
本書が、企業で製品開発、市場開発、そして問題解決一般に携わっておられる多くの方の参考になり、新しい指針とツールになることを、願っています。TRIZの新しい理解のためにも。
2014年6月22 日 千葉・柏にて 中川 徹
[追記 (中川 徹、2014. 7.28): 本書巻(3)の内容のうち、(著者があらかじめ指定していた) 各章の導入部と「簡易版」の部分を集めて、巻(3S) 『 階層化TRIZアルゴリズム (入門編)- 初心者のための図で学ぶ教材−』を作りました。次項を参照ください。]
追記: 内容面の導入テキストについて(中川 徹、2025. 4.29)
本書は、著者がTRIZの解法の全体系を要素レベルに分解し、土台から再構築し直した新しい体系になっており、それを多数のイラストを用いて簡潔・明快に説明しています。ただ、(著者Larry Ballが20年をかけて創り出した)新しいものに馴染むには、やはり、受け手側に相応の(心の)準備と時間が必要です。著者は、本書(巻(3))の本体→簡易版(巻(3S)) →基調講演という順に、より簡潔で分かりやすく提示してくれています。私たち受け手は、その逆順で簡潔・容易なものから、段々と詳しい・本格的な内容に進む必要があります。この和訳書(巻(3))では、本内での掲載順に、つぎの記事を読むことをお勧めします。
読者からのメッセージ (池田和康)
(著者の)基調講演の紹介 (中川 徹)
著者の基調講演(説明文つきのスライド) (Larry Ball) (高原利生・中川 徹訳)
「入門編」(巻(3S)) [巻(3)の各章導入部] (Larry Ball) (高原利生・中川 徹訳)
巻(3) 本論 (Larry Ball) (高原利生・中川 徹訳)
巻(3S) 階層化TRIZアルゴリズム (入門編)- 初心者のための図で学ぶ教材− (Larry Ball著; 高原利生・中川徹共訳)
書誌情報:
本書は、巻(3)『階層化TRIZアルゴリズム』の内容のうち、著者が明示しております初心者向けの部分だけを抽出して、巻(3S)『入門編』 としたものです。
原書: 『Hierarchical TRIZ Algorithms』、 Larry Ball 著 ( 2005年 5月 刊)
訳: 高原利生 ( )、 中川 徹 (大阪学院大学)訳書発行: クレプス研究所 (千葉・柏)
発行日: 2014年 7月28日発行形態: 印刷製本版 、B5版、56頁カラー、定価(税抜) 1,200円;
ISBN978-4-907861-06-3構成概要:
はじめに (中川 徹) −初心者向けに書き直した導入 (1頁)
日本語版への著者序文 (Larry Ball) (7頁)
目次 (2頁)
『階層化TRIZアルゴリズム』 (Larry Ball 著、高原・中川訳) -- 各章の導入部と「簡易版」のページ (計 42頁)
著者・訳者紹介 (1頁)
巻(4) IT とソフトウエアにおける問題解決アイデア集 −TRIZの発明原理で分類整理− (Umakant Mishra 著、中川 徹監訳)
書誌情報:
原書: 『TRIZ Principles for Information Technology』、
Umakant Mishra 著、
2008年10月、 最終原稿監訳: 中川 徹 (大阪学院大学)
訳: 小西慶久、庄内 亨、堀田政利、前田卓雄
表紙デザイン: 後藤一雄 ・ 中川 徹訳ドラフト版発行: (株) 創造開発イニシアチブ、 2011年 9月刊 (CD-R版)
訳書発行: クレプス研究所 (千葉・柏)
発行日: 2014年 8月25日発行形態: 印刷製本版、 B5版、430頁、定価(税抜)4,000円;
ISBN978-4-907861-08-7構成概要:
日本語版のための著者序文 (Umakant Mishra)、 監訳者序文(その1、その2、その3) (中川 徹) 、読者からのメッセージ(笠原正雄、林 利弘、辻 尚美)
目次概要:
目次 兼 40の発明原理一覧
序論本体 1章〜40章
(各章に: 発明原理の説明、期待される効果、適用するとよい場合;
各サブ原理ごとに: 適用例の見出し項目(約10項目)(各項目ごとに具体事例数例)付録1. 発明原理の間の関係
付録2. TRIZ用語辞書TRIZの状況と情報源 (日本語版のための後書きに代えて) (中川 徹)
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索引 (IT/ソフト関連技術の階層的分類による索引) (中川 徹) (全2700項目、26頁)![]()
巻(4) 日本語版のための監訳者序文(その1、その2、その3) (中川 徹):
日本語版への監訳者序文 (1) (中川 徹, 2007年12月15日)
本書は広い意味のIT (情報通信技術) 分野で開発されてきた、さまざまな技術の要素を、革新的であったものから改善的なものまで収集網羅し、それらを分類整理して、その中のエッセンスを学びやすくしたものです。このようなエッセンスを学んで身につけると、皆さんが現在扱っているものを改善し、新しいものを開発し、さらに技術革新のための考え方を創り上げるのにきっと役立ちます。このアイデア集を手元において、ときどき読んでみると、あなた自身の問題解決のための新しい発想がどんどんと沸いてくることを実感されることでしょう。
ここで扱っている分野は、ハードウェアとソフトウェアだけでなく、プログラミング、データ処理、ストレージと管理、ネットワークと電気通信、インターネット技術、プロジェクト管理、プロセスと品質の管理、なども含んでいます。この序文ではIT/ソフト分野と略記します。これらの分野で、いま世界中で激しい開発競争が行われており、急激に発展していることは皆さんがよく知っておられることです。
ところが、IT/ソフト技術の大きな部分は、物理の世界 (ハードウェア) ではなく、情報の世界 (ソフトウェア) です。情報の世界は、自然法則が支配する物理の世界とは異なり、その多くが人間が作ってきた約束事から構成されています。 (文字も、言語も、インタネットの技術も約束事です)。人々がいろいろと試行し、多くの人が受け入れたものだけが定着するわけですが、何がなぜよいのかは必ずしもはっきりしません。情報科学がその原理を明らかにしようと努めているわけですが、情報量の理論、計算量の理論、情報隠蔽の原理、などいくつかのものが知られていますが、それだけでは実際の開発の指針になりません。このため、いろいろな改善や開発が、明瞭な指針がなくて試行錯誤と経験と世の中の大勢に従って行われているといってもよいでしょう。
広範な領域で膨大な試行錯誤が行われ、世界中で優れたものが蓄積されてきているとき、それらを見渡して何らかの指針を得るための方法は、ボトムアップに整理・分類して、エッセンスを考えることです。この方法は「帰納」と呼ばれ、自然科学全体を生み出してきました。最近注目されてきている研究に、世界中の特許を対象として、発明のアイデアのエッセンスをボトムアップに分類・整理した研究があります。旧ソ連でアルトシュラーらが行ったもので、TRIZ (トリーズ、「発明問題解決の理論」)として、冷戦終了後に西側世界にも知られるようになりました。そこでは、当初数十万、現在3百万にも及ぶ特許を分析して、帰納的に「40の発明原理」を抽出しました。
本書ができたきっかけは、2000年〜2004年にCREAX社 (ベルギー) がインドに研究所を創り、1985年以降の米国特許の全件をTRIZの観点から分析したことです。この大規模な研究はDarrell Mann のTRIZ教科書『体系的技術革新』(和訳: 中川徹監訳、創造開発イニシアチブ刊) を生み出しました。このとき、本書の著者Umakant Mishraは、分析システムの構築運営を担当するとともに、IT/ソフト分野の特許の分析をも担当したのです。IT/ソフト分野のすべての特許を調べ、その優れたものが、TRIZの発明原理 (および進化のトレンドなど) のどれを使ったといえるかを記録していきました。本書は、その膨大な記録を発明原理ごとにまとめ直し、観点が似た技術をグループ化して、簡潔な説明を加えたことによって生み出されたのです。
アルトシュラーが1960〜70年代初めに「40の発明原理」を体系づけたときには、機械・電気・化学などの分野の特許が主体であり、ITもソフトウェアもまだまだ未成熟でした。ところが、CREAX社の分析で分かったのは、IT/ソフト分野の特許 (その他の文献、ノウハウなど) も、そのアイデアのエッセンスは、40の発明原理を少し調整するだけできちんと納まることでした。本書の40の発明原理は、IT/ソフト分野に適したように微調整した表現になっています。(例えば、原理37の「熱膨張」を「拡大/縮小」と呼び換え、原理38の「強い酸化剤の利用」を「強化/質の向上」と呼び換えています。)
本書の面白さを知り、その意義を理解するには、(序論を跳ばしてもかまいませんから) 1章〜40章の任意の章を読んでみて下さい。発明原理の一つの名前が書いてあり、その意味の解説があり、それを使ったときに期待できる効果、そして適用するとよい場合を具体的に列挙しています。その後ろには、沢山のIT/ソフト技術の事例がグループごとにまとめられて並び、簡単にエッセンスが説明されています。これらの技術は、IT/ソフト分野で働いている人なら、実際にさわりあるいは話に聞いて知っているものがほとんどです。専門家でなくても、インターネットやパソコンに興味を持っているユーザならかなりの部分をご存知でしょう。個々の事例は、それを実現する技術的詳細を書いているのでなく、技術の目的やねらいを論じているのですから、専門でなくても大抵理解できます。それらの個々の技術、場合によってはちょっとした改良のアイデアが、実は発明原理で裏打ちできるのだ、と本書は説明しているのです。
読んでみれば、「IT/ソフトの技術を列挙して、発明原理というもので整理しただけで、IT/ソフト技術としては当たり前のことではないか」と思われる読者が多いことと思います。ところが、このような整理をしたのは、本書が初めてだろうと思います。IT/ソフトの分野で、技術項目を並べた事典、専門領域ごとにその根底にある原理を考え理論を組み立てている教科書は多くありますが、専門領域の垣根を越えて通ずる原理、そして実際に使われているさまざまな技術の基礎を成す原理をまとめたのは本書が初めてです。
さらに、IT/ソフト分野ではTRIZに関連した出版は本書が最初なのです。TRIZが日本に紹介されて10年余になり、TRIZ関連のシンポジウムやWebサイトでは、ようやく最近IT/ソフト分野へのTRIZの適用が報告されるようになりました。しかし、IT/ソフト分野専門の学会や雑誌などではまだまったくといってよいほど紹介されていません。IT/ソフト分野でTRIZが使えることを実証し、普及させていくのはこれからの仕事です。
ですから、本書を読んで、「IT/ソフト分野のほとんどすべての技術のエッセンスを、TRIZの発明原理というもので表現できる」と理解された方は、最先端の領域でものすごく大きな一歩を踏み出されたのです。発明原理を使った非常に多くの事例を本書で学び、事例の奥にあるエッセンスを繰り返し学んで身につけると、大変大きな力になります。広範なIT/ソフト分野のどこかの領域で活動されている技術者の皆さんにとっても、またユーザとして関心を持っておられる読者の皆さんにとっても、IT/ソフトの分野のさまざまな技術の事例が、これから自分で考えるときの助けになります。そこで、つぎのステップは、「自分の問題の解決に、発明原理の考え方を参考にする」ことです。これは、「身につけた考え方を適用/応用する」といういつものやり方です。
適用/応用するための簡便な方法は、本書を一通り読んで学んだ後に、折にふれて本書をぱらぱらと拾い読みすることです。自分が直面している問題が頭の中にある状況で本書を拾い読みしますと、本書の発明原理や諸事例の刺激により、新しいアイデアがふつふつと沸いてくることと思います。発明原理の一覧表 (目次がその役割をしています) やカード形式のものを使うとさらに便利かもしれません。
もう一歩進めると、「本書で身につけた発明原理の考え方を、IT/ソフト分野の問題解決に適用/応用するには、どのようなプロセスを踏むとよいか?」という問題がつぎに出てきます。これは現在はまだ十分に説明できていない研究課題です。他の技術分野での問題解決には、TRIZやそれをやさしく統合したUSIT (ユーシット、「統合的構造化発明思考法」) による方法が開発されていますので、それを適用すればよいと考えられます。それらの多くは、将来の発展(進化)の方向を考える方法、困難な問題、矛盾を含む問題を解決する方法などです。ただ、IT/ソフト分野の典型的な開発・改善のプロセスに、TRIZやUSITをどのように組み込むとよいのかは、まだまだこれからの研究課題なのです。
なお、本書の英文原稿は、Technical Innovation Center Inc. (TIC) (米国) から、レビュー用に仮出版されました (2007年4月)。原題は"TRIZ Principles for Information Technology" です。この表題および序論から明らかなように、著者は読者として、TRIZを学び、TRIZをIT/ソフト分野に拡張して行こうと考える人たちを主に想定しています。しかし、この日本語版は、新しい表題とこの序文が示しますように、IT/ソフト分野の人たち (そのほとんどはまだTRIZについて何も知らない人たち) を主たる読者と考えています。本書を読めば、IT/ソフトの技術を整理して理解しながら、自然にTRIZの発明原理が分かると考えるからです。このように読者対象を大きくシフトして考えていますが、本体部分はまったく変更の必要を感じませんでした。TRIZに関しては、著者の序論と、巻末に追加したTRIZの参考情報が役に立つでしょう。
本書の英文原稿の存在を知ってから1年半、いまようやく著者との正式契約を結び、翻訳作業を開始したところです。(株)創造開発イニシアチブの堀田政利が責任者となり、大阪学院大学の中川徹が監訳者をし、TRIZ専門の小西慶久とIT/ソフト専門の庄内亨、前田卓雄が翻訳者として加わって、翻訳を進めます。まだ出版社は決まっていませんが、2008年末までには出版できるようにしたいと考えております。どうぞご期待下さい。
2007年12月15日 中川 徹 (大阪学院大学)
日本語版への監訳者序文 (2) (中川 徹, 2011年 8月14日)
先の序文(1)を書きましてから、3年半が過ぎてしまいました。その間、著者が原著を二度推敲改訂し (2008年5月、同8月)、さらにプリントオンデマンド形式で英語版を自費出版しました (2010年1月)。私たちの和訳プロジェクトは、2008年8月に全章の初稿ができましたものの、正しく読みやすい訳出のための推敲に手間取り、いまようやく全章を仕上げることができました。CD-Rによる電子出版の形で皆さんにお届けする予定です。
原著の初稿から数えると 5年、改訂稿から3年過ぎておりますので、本書に出てくる OSの名前などには、やはり古さを感じられることだろうと思います。訳出が遅くなったことを、申し訳なく思っています。
しかし、賢明な読者の皆さんは、本書に記述されている考え方そのものは、いまも変わっていない、具体的な適用事例がどんどん追加されてきているのだ、とご理解いただけることと思っております。発明のアイデア、技術を発展させるもとになるアイデア、それらのエッセンスというのは変わらない。もっともっと普遍的なものだ、というのが、TRIZでの理解です。
最新のIT/ソフトのビジネスや技術や製品を思い浮かべてみて下さい。その新しさや素晴らしさのエッセンスは何だろう?と考えてみて下さい。そして、そのエッセンスは、本書に整理されている40の発明原理でいうとどれに対応するでしょうか?あるいは、まったく該当しないような発想でしょうか?
このようなエッセンスを考えることが、新しいビジネス/技術/製品について深く理解し、本書でいう「発明原理」の理解を進め、私たちの思考力を強くします。私たち自身が取り組もうとしている課題について深く理解するようになり、新しいアイデアを考え出すことができるようになっていきます。
IT/ソフトの分野で、新しい技術や製品の開発にTRIZの考え方を積極的に適用していくことがこの数年、海外でも国内でも実践され、発表されてきています。日本TRIZ協会主催のTRIZシンポジウムでの発表や、Darrell Mann の著作 (『Systematic (Software) Innovation』、2008年11月) などをご参照下さい。
なお、本書の索引は、原著ではIT用語の単純なアルファベット順でしたが、日本語版では独自に階層的な分類体系を作りました。読者の皆さんがIT技術のいろいろな面から考察されるときに、きっと有用であろうと思います。
また、後書きに代えて、「TRIZの状況と情報源」という文章を新しく書き起こしました。世界の状況日本の状況を書いております。その最後には最近の日本TRIZシンポジウムでのすぐれた発表を紹介し、実情の理解をいただけるようにしております。
激しい競争の中で急速に進歩しているIT/ソフト分野ですが、この分野での日本の先進性と国際競争力は厳しい状況に立たされています。本書が提案する「問題解決のアイデア集」、そしてもっと深い「発明原理」というエッセンスの理解が、皆さんのお役に立つことを願っております。
2011年 8月14日 中川 徹 (大阪学院大学)
日本語版への監訳者序文 (3) (中川 徹, 2014年 8月14日)
先の監訳者序文(2)を書きましてから、奇しくも丸3年の今日、この監訳者序文(3)を書き、日本語版の正式の「初版」の出版の段取りをしようとしております。この3年間の状況を説明して、出版の遅れを読者と関係者の皆様にまずお詫びしたいと思っております。
3年前、2011年の9月初旬には、訳書の本体も、巻末の索引 (IT /ソフトウェア技術の階層的分類)も、表紙も完成し、CD-R収録し、「CD-R版」が出来上がっておりました。
また、この過程で、完成稿の一部を何人かの方に読んでいただき、つぎの3人の方々から、「読者メッセージ」をいただき、今回の版に収録しました。笠原正雄先生は、通信・暗号の世界的な権威の先生ですが、当時大阪学院大学で研究室が隣同士でしたので、ご覧のように意義深いメッセージを頂戴しました。林利弘氏は、もとは日立製作所で情報処理部門・ソフトウエア工学・開発設計プロセス工学分野をリードし、当時は日本TRIZ協会の理事長として、日本でのTRIZ普及のために約10年にわたって尽力くださった方です。本書の翻訳プロジェクトの難航の歴史を一部ご存じで、メッセージを書いてくださっています。辻尚美さんは、派遣社員として大阪学院大学のセンターでユーザ技術サポートをしてくださっていた方で、TRIZにはまったく初めてのITユーザとしてコメントくださいました。これら3人の方に、改めてお礼申し上げます。
「CD-R版」は(株)創造開発イニシアチブ(SKI、堀田政利社長)から出版・販売しました。「CD-R版」としましたのは、商業出版社が得られず、何百部という単位で印刷・在庫することの経費的負担を避けるためでした。また、このころから堀田社長は引退を考えておられたようで、実際に2012年末にSKIを廃業されました。このため、「CD-R版」はほとんど販促活動をしないままで、停止しました。
2014年初頭から、私が直接「クレプス研究所」を立ち上げ、(SKIが出版した)『TRIZ 実践と効用』シリーズの出版を再開しました。その中で本書を、同シリーズ第4巻と位置付けて、ここに出版する次第です。
出版には、インターネット上のダウンロード販売サイト DLmarket を使い、デジタルのダウンロード(DL)版と、プリントオンデマンド形式の印刷製本版とを併用します。 [注(中川、2025.4.29): その後、印刷製本版のみで、Amazonサイトで販売しています。]
本書はIT/ソフト分野の技術者やユーザの人々にぜひ読んで貰えるとよいと思っています。きっとお仕事の役に立ちます。財政的な制約から商業出版や書店販売ができないのが残念ですが、読者の皆さんの口コミ、ご推薦をお願いする次第です。
最後になりましたが、今回序文を寄せてくださり過分な言葉をいただきました著者Mishra氏、そして、訳者グループの皆さん、特に多大なご尽力をいただきました堀田政利さんに厚く感謝いたします。
2014年 8月14日 中川 徹 (千葉・柏にて)
巻(5) イノベーションを成功させる組織の力―ICMM入門 (Darrell Mann著、 中川 徹訳)
書誌情報:
原書: Innovation Maturity Capability Model - An Introduction
Darrell Mann 著
IFR Press刊(2012年)
ソフトカバー、A5版、172頁和訳書: TRIZ 実践と効用 (5) イノベーションを成功させる組織の力―ICMM入門
訳: 中川 徹 (大阪学院大学 & クレプス研究所)訳
訳書発行: クレプス研究所 (2021年4月)
発行形態: 印刷製本版、ソフトカバー、B5版、128頁、定価(税抜) 1,800円
ISBN: 978-4-907861-11-7
構成概要:
原著の序文 (Mann)、 日本語版 訳者のまえがき (中川 徹)、
日本語版への原著者前書き: イノベーション能力成熟度モデル(ICMM)−10年の歩み (Mann)本体部
日本語版への著者後書き: イノベーション能力成熟度モデル(ICMM) − 未来へ (Mann)
著者紹介・訳者紹介本体部目次
第1章 はじめに
第2章 イノベーション能力成熟度モデル(ICMM)の哲学
第3章 イノベーション総論
第4章 S-カーブと非連続ジャンプ
第5章 (休憩1) 矛盾
第6章 (休憩2) ハイプサイクル
第7章 私はいま、どこにいるのか?
第8章 ICMM (イノベーション能力成熟度モデル)の5つのレベル
第9章 FAQ: よくある質問
第10章 さて、これから何を?
第11章 参考文献、文献目録、読書案内
第12章 グローバルな連絡先
巻(5) 日本語版への 訳者前書き (中川 徹、2021年4月9日)
いま世界中で、「イノベーション」が注目され、求められています。成功すれば、製品が売れ、ビジネスが急拡大し、産業構造が変わり、社会が変わり、人々の生活が大きく変わり、世界情勢さえ左右するものになるからです。各国の政府も、数多の大企業や中小の企業も、そして何億人かの科学者・技術者・事業家・ビジネスマン・農業者さまざまな人々が、あらゆる分野でそれを夢みて、また真剣に取り組んでいます。しかし、イノベーションを目指したプロジェクトのほとんどが失敗・不成功で、成功するのは2%程度だと(著者は)言います。「どうすれば、イノベーションを成功させる能力を作り上げることができるのだろうか?」というのが本書のテーマです。
イノベーションは、「品質管理」、「生産性向上」、「継続的改善」、「最適化」などの目標設定とは、本質的に違う、と著者は言います。いままでのものを改良していく延長線上にあるのではなく、いままで想定していたこと(常識の前提)を破って、新しい観点・発想・概念・技術などが必要なのです。
では、「発明」とか、「創造的問題解決」とは違うのかと、疑問になります。これらにはいろいろなレベルのものがありますから一概には言えませんが、「矛盾を解決したアイデア」であるなら、イノベーションの種にはなるでしょう。しかし、それが、実地に実現され、社会に受け入れられないと、イノベーションにはなりません。
著者の「イノベーション」の定義は簡潔であり、「成功したステップチェンジ(階段状の変化)」です。この定義の後半は、該当のもの(製品、サービス、技術など)の価値の変化をグラフにしたときに、非連続にジャンプしていることを意味し、上記の「矛盾の解決」による飛躍に対応しています。定義の前半は、その成果が社会(国民一般、市場)に受け入れられたこと、最も端的には、得られた利益が投入した全コストを上回ったこと、を意味します。成功したかどうかは、アイデアの段階や製品の市場投入の段階ではなく、投入後すくなくとも数年しないとわからないことです。
この定義のポイントの一つは、イノベーションのための方法や手段については何も限定していない(「発明」などの言葉がない)ことです。また、対象の分野・領域も限定していません。2000年頃には、技術分野に焦点がありましたから、私はイノベーションという外来語を避けて「技術革新」と訳したことがあります。いまは領域を限定しないで、イノベーションというのが一般的です。
上記の「成功した」という実績は、発明とか創造的問題解決による「アイデア」「解決策」の良さだけでは得られません。全体状況の分析とニーズ(需要)の把握、問題分析の矛盾の解決によるアイデア獲得、詳細な設計と改良、製造・物流、市場投入と販売・アフターサービス、などすべての過程を確実に実施していかなければできません。それは全社的な組織活動が、すべての段階で的確・迅速・果敢に行われて初めてできることです。技術・人材・設備・販売網・経営などの状況が整っており、経済環境・社会環境にも恵まれる必要があるでしょう。「アイデア・解決策」の段階では「常識の前提を破る」個人の創造性が求められ、その他のすべての段階でそれを実現する全社活動が求められるところに、イノベーションの成功の難しさがあります。(主として)「アイデア」から出発するイノベーションプロジェクトの2%程度しか成功しないのは、「常識破りのもの」を実現させねばならない全社活動のウエイトが大きいからでしょう。この意味で、「イノベーションを成功させるのは、組織の力だ」と本書は言うのです。では、「そのためには組織はどのような考え方で、どのように運営されるべきか?」というのが、その次の、本書の中心テーマです。
さて、ここで、本書訳出の経過を記しておきます。私は1997年に、TRIZ(発明問題解決の理論)を知り、以後、「創造的問題解決の方法」の研究・教育・普及に努力してきました。その中で、TRIZを現代化して、研究・著作・実践・指導している Darrell Mann の仕事に傾倒しました。彼の発表「TRIZ の現代化: 1985-2002年米国特許分析からの知見」(2003)を私の『TRIZホームページ』に掲載し、彼の著書2編を和訳出版しました(『体系的技術革新』(2004, 2014)、『矛盾マトリックス』(2004, 2014))。さらに、第1回TRIZシンポジウム (2005)でも基調講演をしてもらっています。その後Darrell Mannは、「Systematic Innovation」を標語にして、ソフト開発分野、ビジネス・マネジメント分野、イノベーション方法論一般、などに矢継ぎ早に論文・著作を出して行きました。私はそれらを到底追いきれませんでした。
昨年(2020年)秋に、コロナ禍でのオンライン開催の国際会議で、久しぶりにDarrell Mann の講演を聞き、その研究の進展の凄さと重要さを改めて認識しました。自分の学習不足を反省し、彼の助言を受けつつ取り掛かったのが(ビジネス関連は一旦横に置いて)、本書『Innovaton Capability Maturity Model』(2012) の和訳です。著者の了解のもとに、和訳原稿全文を4回に分けて『TRIZホームページ』に掲載しました。その掲載後、著者から改めて、日本語版への前書き(「ICMMの10年」)と、後書き(「ICMMの未来」)を書いて貰いましたので、本書の現在の進展状況と意義が非常によくわかるようになりました。
本書の概要を、章ごとに書くと、以下のようです。
第1章: イノベーションの定義、イノベーションが失敗する主な理由
第2章: 「イノベーション能力成熟度モデル(ICMM)」の作成の意図と経過、考え方
第3章: イノベーションの中核プロセス: 6ステップサイクル(感知・解釈・設計・決定・調整・応答)
第4章: 進化のS-カーブ、現行S-カーブから次のS-カーブへの飛躍、飛躍のための「英雄の「旅」」
第5章: 矛盾、「A or B」でなく「A and B」を探求する、矛盾の定義のテンプレートと解決策の考察法
第6章: ハイプサイクル: 技術のトリガー、ハイプ(誇大広告、過大評価)、幻滅、啓蒙、定着
第7章: (組織の)イノベーション能力の自己評価、25の質問表(5選択回答)、スコアリングの方法
第8章: ICMMの5つの能力レベル(種を蒔く、チャンピオンを作る、管理する、戦略化する、挑戦する)、
イノベーションの成果の5タイプ、能力→成果の関連、各レベルの特徴(一覧表)(組織の特徴、
次のレベルへの試練、該当する教科書や方法など)第9章: FAQ; 第10章: これからするべきこと; 第11章: 参考文献; 第12章: 連絡先
この構成で、7章までが準備、8章が本体で、(組織の)イノベーション能力の向上の段階に明確な区切りがあること、その各段階の特徴、次の段階に進むために克服するべき矛盾などを述べています。そのうちのレベル3までは、日本の大企業などで技術開発の体制として積み上げて行っているのに近いのですが、レベル4になると組織運営がずっと柔軟になり、課題と目標に応じて戦略的な再編が繰り返されていきます。詳しくは、本文を参照ください。
日本語版への前書きでは、2012年の出版以後の動きを述べています。特に2014〜2018年頃に、イノベーションの領域に進出してきたビッグファイブを中心としたコンサルタントたちが、継続的改善・生産性向上などをかかげ、矛盾の解決によるステップチェンジの重要性を理解しなかったので、イノベーションの世界は混乱し地に落ちたと論じます。ICMMモデルこそ、実地に使われ、その機能が実証されてきていると言います。
一方後書きでは、ICMMのレベル判定は、7章の記述から格段に進んで、どんな企業のICMMレベルも、外から客観的に測定できるようになったと言います。その方法は、公開の特許情報から、その「質」を自動的に解析できること、またその企業自身のあるいは周囲の各種の発話データを大量に集めて分析すると、組織内の士気・信頼関係・価値観などの質的情報を測定できると言います。そして、年間2000冊のビジネス教科書の内容を系統的に調査して、ICMMの各レベルと関連づける整理を行っています。これにより、ICMMのレベル間の飛躍の「旅」のための資料の蓄積が進んでおり、『英雄の旅』の本を2021‐2022年に2冊ほどを出版する予定と言います。
またすでに、昨年6月には『Hero's Start-Up Journey (英雄の起業の旅)』の本を出版しました。コロナ禍で沢山の人たちが解雇され、独自の起業を余儀なくされている。それをICMMのレベル0だと捉え、その人たちの起業が成功してビジネスとして成立する(すなわち、レベル1になる)ように、リードする本だと言います。[出版直後から、大変好評とのこと。私は日本語版の作成・出版を引き続き計画しております。]
このような中で、著者は今回の日本語版の出版を、喜び、期待してくれています。ありがたいことです。
今回の翻訳は私が単独で行いました。構文が複雑なこと、口語的慣用表現があることなどで、翻訳には苦労しました。(硬い)直訳でないように、(ごまかしの)意訳でないように、できるだけ著者の論述・論理に忠実に、そして読みやすく分かりやすいように、心掛けております。本文中の( )は著者の注釈的表現、[ ]は訳者の注です。章内の、節や見出しはすべて訳者が独自判断で付けたものです。強調のための太字も訳者がつけました。段落の区切りも少し増やしています。これらの編集作業を原著者が許容してくれていることは、ありがたいことです。もし、お気づきの改良点がありましたら、ご連絡ください。
表紙のアートワークは、著者自身の作成です(12章末尾を参照ください)。本件は、『TRIZ 実践と効用』シリーズの第5巻として、クレプス研究所から刊行します。書名は趣旨が分かりやすいように、『イノベーションを成功させる組織の力: ICMM入門』を選びました。 原書は
A6A5 サイズですが、訳書はB5サイズにしました。Amazonのサイトで販売(クレジットカード支払い)の予定です。『TRIZホームページ』で和訳の全文を先行掲載しましたが、製本出版の後もホームページ上では無料公開を続ける計画です。コロナ禍の危機の時代、大きな変動の時代の最中にあって、著者Darrell Mann教授のこの素晴らしい著作が、日本の皆さんに読まれ、日本発の多くのイノベーションが成功し、新しい時代・新しい世界の構築に寄与することを願います。特にその新しい時代が、平和で、格差が狭まり、豊かで、民主的で、明るく、創造的な活気のあるものであるようにと、祈ります。
2021年4月9日 千葉・柏の自宅で 中川 徹
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最終更新日 : 2025. 7.25 連絡先: 中川 徹 nakagawa@ogu.ac.jp