講義ノート: 創造的問題解決の方法論(13)
 解決策の生成法 (3) 
   解決策の体系化  および 
 講義のまとめ
  創造的問題解決の方法論
− 大阪学院大学情報学部 2年次「科学情報方法論」講義ノート (第13回講義)
  中川  徹 (大阪学院大学) , 2002年 1月17日
   [掲載: 2002. 7.15]   [ 注: 固定ピッチのフォントで読んで下さい]
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講義「科学情報方法論」(情報学部2年次)  第13回  講義資料
                                             2002年 1月17日   中川  徹

  解決策の生成法 (3) 解決策の体系化
    および  講義のまとめ
 

目標:  USITを中心にして, 解決策を組み合わせ, 一般化, 体系化する方法を学ぶ。また,
       本講義のまとめとして, 「創造的に問題を解決する方法」を概観し, 意義を再認識する。
 
 
前回:解決策の生成法 (2) 「壁」を破る方法 (ブレイクスルー) 

目標:    問題解決の核心は, 「壁」 (困難・矛盾) を打ち破って, 「ブレイクスルー」を達成す
         ることである。そのための具体的な考え方を, TRIZ, ASIT, USITから学ぶ。

要点:    TRIZでは, 「壁」のことを「矛盾」と呼び, 敢えて「矛盾」を明確化する。
           最も突き詰めた段階が「物理的矛盾」 (システムの一つの面に対して, 正・逆の対立
           する要求が同時にある場合) であり, この「にっちもさっちも行かない」状況を
             TRIZは「分離原理」で確実に解決できるといい, 多くの適用例がある。

         ASITは, 解決策が発明的である条件として, 「閉世界の制約」と「質的変化の要求」
           を見出した。簡易化した 5種の解決策生成技法をもつ。

         USITは5種の解決策生成技法をもつが, その最初の3種は, 
           「オブジェクトを複数化する」 (0, 2, 3,... , ∞, 1/2, 1/3, ... 1/∞)
           「各オブジェクトの属性の次元を変える」 (属性を使う/使わない, 空間・時間変化) 
           「機能をオブジェクト間で再配置する」 

         TRIZ, ASIT, USIT の適用事例を学んで, 「壁」を破る思考法を習得するとよい。


 

1.  USITの解決策生成技法 (その2)

  USITの 5種の解決策生成技法のうち, 前回に3種を話した。今回, 残り 2種。

    (1) オブジェクト複数化法:  オブジェクトを 「複数化」する。
    (2) 属性次元法:            オブジェクトの属性の「次元」を変える。
    (3) 機能配置法:            機能をオブジェクト間で「再配置」する。

    (4) 解決策組み合わせ法:    二つの解決策をいろいろな面から「組み合わせる」。
    (5) 解決策一般化法:        一つの解決策の中の用語・概念を「一般化」する。

    これらは「何を, どうする」の形で表現されている「オペレータ」である。
    (4)(5) は, システムの要素ではなく, 「解決策 (の要素)」に作用させる。

1.1  解決策組み合わせ法

  「解決策組み合わせ法」は, 複数の解決策に作用して,
      それらをさまざまに (空間的に, 時間的に, 部分としてなど) 組み合わせて,
        一つの新しい解決策を生成する。

    より詳しくは, つぎのようなガイドラインがある。

    (a) 複数の解決策を「機能的に」組み合わせる。
            ある解決策の機能を (別の解決策で) 強化する, 拡張する, 防止するなど。

    (b) 複数の解決策を「時間的に」組み合わせる。
            順次に, 事前に, 事後に, 交互に, サイクリックに, 逆順に  など。

    (c) 複数の解決策を「空間的に」組み合わせる。
            別の場所で独立的に, 横に並べて, 前後に繋いで, 上下にして,
            入れ子にして, 同じ場所で交互に   など。

    (d) 複数の解決策を「構造的に」組み合わせる。
           異なるレベルで, 異なる条件下で,  など。

    (e) 複数の解決策を「精神的に」組み合わせる。
           ハイブリッドにして, 妥協させて, バックグランドで, など。

  このように「組み合わせ法」は (前の3種の技法とは違った) 広い範囲をカバーする。

    このUSITの「解決策組み合わせ法」は, TRIZの「分離原理」によく対応する。
      「分離原理」 =     「矛盾する要求を分離し, 別々に満足させて, 組み合わせる。」
      「組み合わせ法」 = 「複数の解決策を (さまざまに) 組み合わせる。」

    「組み合わせ法」の方が (「分離原理」よりも) 考えやすい。
         組み合わせのいろいろなやり方を説明しやすい。考え出しやすい。
         「矛盾の認識」と「分離」のプロセスにこだわらないで先に進むことができる。

1.2  解決策一般化法

  「解決策一般化法」は, 解決策中の用語・概念を一般化させるものである。
        特に, 特定的な用語, 技術用語を, より広い, より総括的な用語で置き替える。
        この用語の置き替えによって, 概念が膨らむ (より広くなる)。連想ができる。

  何らかの解決策の具体案が浮かぶと, つぎの図式でアイデアを膨らましていく。

    例:  「額縁掛けの問題」において

      (壁からの振動があると, 額縁が傾きやすい)
        -->  額縁と壁の間にスポンジのようなものを入れよう。
        -->  ゴムでもよいね。柔らかい方がよい。
           ==>  壁からの振動を小さくするために, 額縁と壁の間にクッションを入れる。
        -->  クッションは額縁に貼りつけてもよいし, 壁に貼りつけてもよい。
           ==>  壁を柔らかくする。
           ==>  壁が柔らかくて, 額縁が滑りにくいとよいかも。
           ==>  壁と額縁の間の摩擦を大きくする。
        -->  額縁の下辺の後ろに, 粘着剤を塗る。
        -->  額縁の下辺と壁とを, 両面テープで軽く止める。
          ==>  壁の広い面が, くっつきやすければ, 額縁をペタッとくっつければよい。
            ==>  「くっつく壁」のイメージ
        -->  マジックテープのようなもので, 額縁を壁にくっつける。
        -->  磁石を額縁に仕込んで, 壁にくっつけてもよい。
                 ・・・・・

    このような「連想」的な発想のアイデアを大事にして, それを記述していく。
      記述の道具はいろいろ:
          黒板, ホワイトボード, 電子記録式のホワイトボード,
          模造紙, 模造紙とポストイットカード, ノート, ...

      途中で追加, 挿入, 書き換え, レイアウト変更, 図式化が容易なものが望ましい。

  この「解決策一般化法」の長所:

      連想を刺激し, 一般化と具体化との組み合わせで, アイデアが急速に膨らむ。強力。
      アイデアを広げることを助ける。
      得られる解決策が, 自然に体系化・階層化されて整理される。
      アイデアの抜け・落ちを見つけやすい。(網羅的にしやすい)
      USIT法のParticle法における「行動-性質ダイアグラム」と親近性がある。

 

1.3  USITの解決策生成法の適用例 (解決策の全体像の例)

  例1:発泡樹脂シートの発泡倍率の増大の問題
         出典: 中川  徹 『TRIZホームページ』, 1999年 7月。

    Particles法による「行動-性質ダイアグラム」を次のように得た。(講義 第10回)

    このダイアグラムをベースにして得た解決策は以下のようである。





    この事例は, Sickafus指導のUSITセミナーで中川が研修して作成したもの。
      セミナーでは分析完了段階で時間切れ, 数日後にこの解決策を書き下ろした。
        解決策のアイデアはセミナーの段階でほぼ頭の中にできていた。

    この事例では, USIT法の解決策生成技法をあまり意識的には使っていない。
      Particles法の「行動-性質ダイアグラム」で解決策のイメージが十分得られていた。

  例2.額縁掛けの問題」 (Sickafus (1997) & 中川  徹 (2001))
           出典:  中川  徹 『TRIZホームページ』, 2001年

    解決策の全体を, 連想関係/親近関係をベースにしてまとめると, つぎの図が得られた。


 

      [注意:  解決策が必ずしもこの図の順番で得られたわけではない。
              解決策の生成は, いろいろな解決策生成技法を繰り返し使って増強される。]

    問題 (困ること) の根本原因, およびそれを分析した結果の
      問題 (困ること) に関連する属性 (問題起因属性, 問題抑制属性) をベースにして,
          すべての解決策が考え出されている。

      <== 問題分析の結果が, 素直にまた確実に解決策生成に活用されている。
             この結果, 一つの問題に多くの解決策の候補が得られる。
              [これらの解決策の候補のうちのどれを使うとよいかは, 後に判断する。]

 

2.  USIT法の全体像 (フローチャートと適用法)

  いままでは問題解決の段階ごとに, 重要と考える諸方法を述べてきた。
    その中で, USIT法が, ほとんどすべての段階で重要な示唆を与えた。

  そこで, 最後に, USIT法における問題解決の全体像を述べる。
     USIT (Unified Structured Inventive Thinking, 統合的構造化発明思考法)

    出典: 中川  徹:「やさしいUSIT法を使ってTRIZのエッセンスを教え・適用し
   た経験」, TRIZCON2002投稿論文の和訳, 『TRIZホームページ』, 2002年1月。

  USIT法の全プロセスはつぎのフローチャートで表わされる。







    全プロセスは, 3段階 (問題定義, 問題分析, 解決策生成) からなり,
      それぞれに明確でわかりやすいガイドラインが与えられている。

  (I) 問題定義段階: (本講義 第5回§7, 第8回§3.2 参照)

    問題定義文:  解くべき問題を1-2行の文で定義する。
    図解:        問題状況を理解するための簡明な概念図
    根本原因:    問題 (困ること) を生じている根本の原因と考えられるもの (複数可)。
    オブジェクト群: 問題のシステムを構成するオブジェクトを列挙する。

  (II) 問題分析段階: (本講義 第9回§4, 第10回§3, 第10回§1)

    (a) 閉世界法:  現システムを 「オブジェクト-属性-機能」の概念をベースに分析。
          閉世界ダイアグラムの構築:  現システムの本来のデザインを機能分析する。
          定性変化グラフの 構築:  問題 (困ること) に関わる属性を分析する。

    (b) Particles法:  まず理想解をイメージして, 望ましい行動と性質を考える。
          現状のスケッチと「理想」をイメージしたスケッチを描く。
          違いのある部分にx印を書き, 魔法のParticlesだと考える。
          行動-性質ダイアグラムの構築:  Particlesに託したい「行動」を考え, 詳細化。
                                        Particleの望ましい「性質」の候補を列挙。

    (c) 空間・時間特性の分析:  空間および時間的な特徴・特異性を見出す。

  (III) 解決策生成段階: (本講義 第12回§4, 第13回§1, 第13回§2)

    (a) オブジェクト複数化法:  オブジェクトを「複数化」する。
    (b) 属性次元法:            オブジェクトの属性の「次元」を変える。
    (c) 機能配置法:            機能をオブジェクト間で再配置する。
    (d) 解決策組み合わせ法:    複数の解決策をさまざまの面から組み合わせる。
    (e) 解決策一般化法:        解決策の用語・概念を一般化し, 体系化する。

  これらの各段階を踏むことによって, 技術的な問題の創造的な解決策が多く得られる。
 

  USITは, フォード社のEd Sickafusによって開発され,
    1995年〜2000年の5年間で,
      同社の技術者1000名に 3日間トレーニングセミナーが行われ,
      多数の実地適用事例を持っている。
          適用分野は, 技術開発全般である。

  中川によるUSIT 3日間トレーニングセミナーは下記の要領で行う。

    この特徴は以下の点である。

      ・ 複数の企業からの技術者 10〜15名に対する 3日間のトレーニング。
      ・ 第1日午前が全体的な講義。以後 2日半は実地問題でのグループ演習。
      ・ 各参加者が実地の問題を持ち込み, その中から3-4件を選択して研修する。
      ・ 演習はUSITのプロセスに従い, 5セッションで行う。
      ・ 各セッションは, 講師説明, グループ別の演習, 全体での発表と指導よりなる。
      ・ 各人は, 一つの問題をグループで解決すると同時に, 全問題の解決過程も学ぶ。

  USITの評価は以下のようである。 (日本における評価)

    ・ USITはTRIZよりもはるかに学びやすい。
    ・ USITはグループの共同作業に適している。
    ・ USITは実地の技術問題に適用できる。
    ・ USITはコンセプトレベルの解決策を得るのにスムーズで強力である。
    ・ USITとTRIZソフトウェアツールとを一緒に使った良い実践法を
           明らかにする必要がある。
    ・ USITをよりよく理解するために, もっと事例報告や例題が必要である。

 

3.  TRIZの全体像と学び方

  上記のUSITはTRIZから発展した一つの問題解決法 (プロセス) であり,
    TRIZのエッセンスを適切に継承・発展させている。
       USITは (新しい世代の) TRIZの一部であると位置づけられる。

  ここで, TRIZの全体像を簡単に説明しておく。
     TRIZ (Theory of Inventive Problem Solving, 発明問題解決の理論)

  TRIZは, Genrich Altshuller (ゲンリッヒ・アルトシュラー)が開発・樹立した。
    旧ソ連で, 反体制として抑圧されながら, 民間で研究・開発したもの。

      1946年 着想,  1956年 最初の論文,
      1970-74年  バクー の研究所で講義 (確立期)
                  旧ソ連の各地に弟子たちがTRIZスクールを作り, 研究・教育。

      1990年以後  欧米にTRIZ専門家多数が移住し, 普及活動。

  TRIZは膨大な知識ベースと方法論を蓄積・体系化した。
      あまりにも膨大で多様 (歴史的に変遷・発展したから) なので,
          少し学んだだけでは本質が分からないことがある。
        (中川自身も, 4年半学習してきて) ようやくエッセンスが分かった。

    参考: 中川  徹: 「TRIZ(発明問題解決の理論)の紹介 - 創造的問題解決のための
        技術思想 -」, 『TRIZホームページ』, 2001年11月。

  全体像はつぎのようである。

    (1) 方法論(a)     技術に対する新しい見方
    (2) 方法論(b)     創造的な問題解決のための思考法
    (3) 知識ベース   上記の方法論(a)(b) を実装する多数の原理・事例の集積

    本講義では, 以下の項目についてTRIZの考えを説明してきた。

      ・ 「心理的惰性」(創造を阻む自分の内面の要因)           (講義第6回§5)
      ・ 技術的システムの捉え方, 技術システムの完全性の法則  (講義第7回§5, 第7回§6)
      ・ 技術システムの原因分析の例, 原因結果ネットワーク   (講義第8回§3, 第8回§4)
      ・ 技術システムの機能分析                              (講義第9回§3)
      ・ 「理想」の認識と技術システムの「理想性」            (講義第10回§2)
      ・ 問題解決の基本モデル, 「知識ベース」の枠組み,      (講義第11回§2, 第11回§3)
           「技術システムの進化のトレンド」, 技術の逆引き,   (講義第11回§4, 第11回§5)
            40の発明原理, アルトシュラーの矛盾マトリクス,    (講義第11回§6, 第11回§7)
            発明標準解                                     (講義11回§8)
      ・ 「矛盾」の克服, 「分離原理」                       (講義12回§2)

      [注: TRIZの主要な技法・事項のうち, 本講義でとりあげていないもの:
             「物質-場分析」:  簡潔な機能分析   (USITの閉世界法の方を推奨する)
             「ARIZ」:  問題を突き詰めて解決するための思考プロセス
                                                (USIT法で置き替える)
             「小さい賢人たちのモデリング」:  (USITのParticles法で置き替える)
             「多画面法」:   上位・下位システムを描き, 過去・現在・未来を図示する。]

    なお, 上記に明示した以上に, 本講義全体がTRIZの思想をベースにしている。

  TRIZのエッセンスは以下のように記述できる。
     出典:  中川  徹,「TRIZのエッセンス - 50語による表現」,
              『TRIZホームページ』, 2001年5月。
 
 

 TRIZの認識:
    「技術システムが進化する
          理想性の増大に向かって,
          矛盾を克服しつつ,
          大抵, リソースの最小限の導入により」

  そこで, 創造的問題解決のために,
      TRIZは, 弁証法的な思考を提供する,
          すなわち,
              問題をシステムとして理解し,
              理想解を最初にイメージし,
              矛盾を解決すること。

  TRIZ/USITなどの問題解決技法の学び方:

                         [SalamatovのTRIZ教科書の翻訳出版の案内 (含む: 序文) : 『TRIZホームページ』, 2000年11月, 中川]


 

4.  創造的問題解決の意義: 技術開発と社会への応用

  この講義の主題は, 「創造的に問題を解決するには, どうすればよいか?」であった。
    最後に, このような方法を学ぶことの意義, 特に実社会における意義を述べる。

  この講義で話した意味での「問題」は, どこにでもある。

      みんなの日常生活, 勉学のしかた, 自分の将来, 自分の進路, ...
      地域の交通事情, 老人介護, 住宅の耐震構造, 廃棄物のリサイクル, ...
      ソフトウェア開発の困難, 新製品の技術開発, 新製品の市場拡大, ...
      地雷の除去法, 砂漠化の防止と緑化, ...

  特に, 技術界・産業界では, 多くの新しい「問題」に日常的に直面している。

    どんな分野でも:  ソフトウェア分野, 情報機器分野, 電気・電子, 機械, ...
                     医療, 農業, ....

    どんな工程でも:  基礎研究, 応用研究, 技術開発, 製品開発, 市場開発, ...
                     企画, 設計, 製造, テスト, 運用, 保守, ....

  これらの「問題」の解決に, 「技術革新」が必要とされている。
    すなわち, 「問題」を「創造的」に解決することが求められている。

  これらの問題解決に, 従来の科学技術の蓄積を利用すべきなのは当然である。

    それには, 各分野の専門の知識と専門の技術が必要である。
       (情報学部の諸君には, 情報科学・情報工学とその応用の専門家になって欲しい。)
    また, 特定分野にとらわれない, 広い科学技術知識が望まれる。

  その上に, 「創造的問題解決」の一般的な方法論を身につけていることが望まれる。

    従来は, 「問題解決の方法論」が十分確立されていなかった。
        科学者も技術者も, それぞれに独学で, 自己流の方法論を身につけてきた。

    最近, (本講義で述べたように) 「問題解決の方法論」が明確になりつつある。
        これをマスターすると, 非常に広い範囲の「問題解決」を行えるようになる。

  現在は, まだ「創造的問題解決の方法論」を習得した人たちは少数だから,
    その少数の人々の周りで, 適用活動・普及活動・教育活動が必要である。
        この人たちが, 実績を作るとともに, 方法論自体を改良・発展させねばならない。

  日本でも, 欧米や韓国でも, 企業への導入活動が進展しつつある。

      いままでの約50年は, 「品質管理」や「品質向上」運動が産業界を向上させてきた。
          (その基礎は, 統計学 (データ解析) と組織論にあった。)

      最近, そして将来は, 「技術革新」の運動が技術界・産業界をリードするだろう。
          その基礎には, 「技術論」がなければならない。

  「技術」に対する深い認識を持った「創造的問題解決の方法論」がこれに答える。
      TRIZ (特に, USITなどを含んだ新世代のTRIZ) が, これを担える。

  新世代のTRIZはまた, その適用分野を拡張しつつある。

     非技術的な分野 (ビジネス, 社会問題など)
     創造性教育の分野  (幼稚園から, 小学校, 中学, 高校, 大学, 大学院, 社会人まで)

 

5.  本講義のまとめ

  本講義で扱った主題を一覧表にまとめておく。
 

(回)
 月日
 主題  内容
(1)
 2001.
   10. 4
導入: 
    科学・技術の研究と 
       学習の方法
     -- 経験と原理
本講義について (趣旨, 概要,留意点)
日常生活から科学・技術へ (「額縁掛け問題」のデモ)
科学と技術のアプローチの概要
観察→経験的知識→仮説→実験検証のアプローチ
(2)
    10.11
レポートの書き方 
  (本科目のレポート課題)

  (レポートの書き方)

本講義の成績評価のレポートについて
レポートの書き方    はじめに (重要性) 
    レポートの目的を明確にする 
    レポートの中身を作るための調査・研究
   執筆の準備と執筆活動
    レポートの形式と記述すべき項目
   文章の書き方の要点, まとめ, 参考文献
(3)
   10.18
 (続) 科学・技術の研究と
           学習の方法
            - 経験と原理
情報の収集
      (その1: 学術情報の
          図書・雑誌による収集)
原理・理論→科学的推論→応用のアプローチ
問題→分析→解決策→応用のアプローチ
-----------------------------
情報の収集 -- 書誌情報とインターネット
学術情報の図書・雑誌による情報収集
論文などにおける文献の記載形式
(4)
   10.25
情報の収集
    (その2: インターネットを
         利用した情報の収集)
WWWのしくみ
リンク集を用いたインターネット情報の収集
検索エンジンを用いたインターネット情報の収集
      (キーワード検索)
インターネットによる情報収集のためのリンク集
(5)
   11.  1
問題を見つけて絞り込む  はじめに
 「人生の大事な問題」についての捉え方
問題を捉えるための一つのヒント (プロジェクトX)
技術の世界で問題を捉えた種々の事例
問題を適切に捉えるための諸観点
問題の設定のしかた
問題の明確化のプロセス (USIT法の問題定義)
(6)
    11.15
 「発想」とは何だろう?: 
     試行錯誤とひらめきと
     創造性
はじめに:  「発想」とは何だろう?
「ひらめき」: 種々の逸話とその教訓
試行錯誤による実験
自由奔放に発想を促す技法: ブレインストーミング
「心理的惰性」: 創造を阻む自分の内面の要因
野口悠起雄の『「超」発想法』とその批判
(7)
    11.22
「システム」とは: 
   構成要素とその関係, 
   階層性, 技術システム
 「システム」という言葉
 「システム」の階層性
 「システム」として捉えた簡単な例
 「ブラックボックス」としての
      システムの働き (機能) の表現
技術的システムの考え方
 「技術システムの完全性の法則」 という考え方
(8)
   11.29
問題の分析 (1)
    問題 (困ること) の
      「原因」をつきとめる
問題の分析のはじめに: 
    何が「問題 (困ること)」なのか?
 「問題 (困ること)」が起こる原因は何なのか?
技術システムにおける原因分析の例
原因-結果のネットワークによる表現とその利用法
(9)
    12. 6
問題の分析 (2) 
    技術システムの
    機能と属性の分析
 「メカニズム」の理解, 専門領域の知識とその限界
システムの機能分析  (1) 簡単な記述ルールの表現法
    (2) 有益/有害な機能を区別する表現法
 「オブジェクト-属性-機能」による分析 (USIT法)
(10) 
    12.13
 問題の分析 (3) 
    空間と時間の特性,
    理想解からイメージする
空間と時間による特性の分析
 「理想」の認識と技術システムの「理想性」
      (TRIZにおける概念)
理想をイメージして問題解決する具体的技法
      (USITのParticles法)
(11)
   12.20
解決策の生成法 (1)
     知識ベースの活用
はじめに
問題解決の基本モデル
問題解決のための種々の「知識ベース」の枠組み
     (TRIZの全体像)
 「技術システムの進化のトレンド」とその利用
技術の逆引き: 目標機能から実現手段を求める
TRIZの「40の発明の原理」
 「アルトシュラーの矛盾マトリクス」
TRIZの「76の発明の標準解」
(12)
 2002.
     1.10
解決策の生成法 (2)
    「壁」を破る方法 
       (ブレイクスルー)
 「矛盾」の克服: TRIZの「分離原理」の考え方
「発明的解決策であるための二つの条件」: 
     イスラエルのASIT法
USITの解決策生成技法 (その1) 
(13)
    1.17
解決策の生成法 (3)
    解決策の体系化

      および
講義のまとめ

USITの解決策の生成技法 (その2) 
USIT法の全体像 (フローチャートと適用法)
TRIZの全体像と学び方
創造的問題解決の意義: 技術開発と社会への応用
本講義のまとめ

  本講義は, まったく初めて行った講義であった。
      毎回の講義資料は, 私にとって, 毎週の「研究レポート」の提出であった。

    ともかく「新しい講義」を作ることができたことを喜んでいる。
        「新しいモデル」になってほしいと思っている。

      この講義ノート全体を逐次『TRIZホームページ』で公表する計画である。

  諸君の「レポート」を楽しみにしている。
      1月24日(木) 午後3時締切り。
     教育支援システムCaddieでファイル提出のこと。

  レポートは感想を書いて返却する予定。
     (2月18日 ゼミIIオリエンテーションの日に)

                                                 -----  以上  -----
 
 
本連載のトップ 前回講義(12) 本ページの先頭 1.USITの解決策生成技法 (その2) 1.3 USITの解決策生成法の適用例 2. USIT法の全体像 (フローチャートと適用法) 3.TRIZの全体像と学び方 4. 創造的問題解決の意義: 技術開発と社会への応用 5 .本講義のまとめ

 
講義ノートトップ 1. 導入: 経験と原理 2. レポートの書き方 3. 情報収集(1) 書誌情報 4. 情報収集(2) インタネット 5. 問題を見つけて絞り込む 6. 発想とは
7. システムとは 8. 問題分析(1) 困ることの原因 9. 問題分析 (2) 機能・属性分析 10. 問題分析(3) 空間時間特性と理想解 11. 解決策生成(1) 知識ベース 12. 解決策生成 (2) ブレークスルー 13. 解決策生成(3) 解決策の体系化

 
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最終更新日 : 2002. 7.15   連絡先: 中川 徹  nakagawa@utc.osaka-gu.ac.jp