TRIZ/USIT論文 
やさしいUSIT法を使ってTRIZのエッセンスを教え・適用した経験
中川  徹 (大阪学院大学), 2001年11月26日 (英文で学会投稿), 2001年12月28日(和訳)
英文発表予定: TRIZCON2002: 第4回Altshuller Institute TRIZ国際会議,  2002年 4月28-30日, セントルイス, ミズーリ州, 米国 
討論: Ed Sickafus(NTELLECK, 米国) 2001年11月27日, 12月30日 (訳: 中川)
発表用スライド: 中川  徹,  2002年 4月21日  (英文) 
[和文掲載: 2002. 1. 7] [英文掲載: 2002. 5.16] [英文スライド掲載: 2002. 5.16] 
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編集ノート(中川  徹, 2002年 1月 7日)

  本論文は, 標記のように2002年 4月に米国で開かれるAltshuller Institute主催の国際会議TRIZCON2002に投稿した英語論文を和訳したものである。原題は以下のようである。
     "Experiences of Teaching and Applying the Essene of TRIZ with Easier USIT Procedure" by Toru Nakagawa

   原論文は11月26日に学会に (原稿扱いだがほぼ完全な形で) 投稿した。日本でのUSITの理解と実践とを, 小生のUSIT 3日間トレーニングセミナーでの流れに沿って詳細・体系的に記述したものである。この論文を書きながら, 自分でもまた一段と, 「USITがTRIZのエッセンスをしっかりと取り入れている。 TRIZの一部ではなく, その全体をうまく反映できる問題解決プロセスになっている」 との感を深くした。

   原論文の投稿と同時に, USITの開発者Ed Sickafus博士にプレプリントとして送ったところ, 早速, 翌日に返事とコメントを頂いた。そのメッセージは以下のようであった。

Toru, great job.  I look forward to hearing your presentation.  I've inserted a few comments (mainly for our discussion) and a couple corrections.    All the best,                 Ed       (Nov. 27, 2001)
  今回, 原論文全体を和訳して, 本ホームページに一足先に発表することにした (英文のものは学会発表後に掲載の予定である)。 これに際して, 原論文に10.3節を挿入したとともに, Sickafus博士のコメントを注記の形で明示した。また, その後の中川とSickafus博士とのメールでの討論も, 同博士の許可を得て追記した。Sickafus博士との討論により, 一つ一つの項目の意味が明確になり, 読者の参考になることと思う。

  本論文の目次は以下のようである。

  1.   はじめに
  2.  日本におけるTRIZ/USITの背景
  3.  USIT 3日間トレーニングセミナー
  4.  USITの概要説明
  5.  解決すべき問題の選択
  6.  USITの問題定義段階
  7.  閉世界法による問題の分析
     7.1  オブジェクト, 属性, 機能
     7.2  閉世界ダイアグラムを構築する
     7.3  定性変化グラフ
     7.4  OAFダイアグラム
     7.5  閉世界法の意義
  8.  Particles法による問題の分析
     8.1  現在の状況のスケッチと理想的状況のスケッチ
     8.2  行動-性質ダイアグラム
  9.  空間・時間特性分析
10.  解決策生成法
    10.1  オブジェクト, 属性, 機能に対するオペレータ
    10.2  解決策の組み合わせと一般化
    10.3  解決策生成段階における分析結果の利用法
11.  解決策生成法の適用
12.  企業におけるTRIZ/USITの利用
13.  日本におけるUSITの評価と現状
参考文献
  なお, 本論文で説明しているUSIT3日間トレーニングセミナーを本年2月にも開催予定であり, また, ほぼ同様の内容を講義する (演習無しの) USIT1日セミナーも本年1月に開催予定です。読者の皆さんの参加をお待ちしています。詳細および今後の予定は, 中川の活動カレンダーを参照下さい。
追記 (中川  徹, 2002年5月16日)
本件の国際会議には, 年寄りの介護の用のため直前で出席を取り止めました。論文は報告集に印刷され, また, 論文と発表用スライドがAltshuller InstituteのWeb サイトに掲載されました。Altshuller Institute および Ed Sickafus 博士の許可を得て, 英文の論文 (討論を含む) および 発表用スライド (PowerPoint ファイル) を, 本サイトの英文ページに掲載します。
 
本ページの先頭 1. はじめに 2. 背景 3. 3日間セミナー 4. USIT概要 5. 問題の選択 6. 問題定義段階 7. 閉世界法の分析 8. Particles法の分析
9. 空間・時間特性 10. 解決策生成法 11. 解決策生成法の適用 12. 企業における利用 13. USITの評価と現状 参考文献 中川ETRIA論文 発表用スライド 英文ページ




 

要約

USIT (統合的構造化発明思考法) の3日間トレーニングセミナーを日本で実施した経験について詳細に報告する。異なる企業の技術者たちが同セミナーに参加し, 講義およびグループ演習を通じて訓練を受けた。グループ演習においては, 自分たちが持ち込んだ実地の問題に, USITをそのステップに従って適用し, 問題解決を行った。USIT法についてのわれわれの理解を,  3日間セミナーでの教育内容に則して, 体系的に記述する。USITの教え方, 適用法, および企業への導入法をも述べており, 参加者の反応も記した。
1. はじめに

TRIZ (発明問題解決の理論)[1] を企業に広範に普及させることには, 現在かなりの困難があるが, それを克服するために, 筆者はつぎの諸点を主張してきた [2]

本論文では, USITを教え, USITを実際の企業の問題に適用した諸経験を報告する。以下に, 筆者が指導したUSIT 3日間トレーニングセミナーのコースに従って, その経験を記述する。このセミナーでは, USITを初歩から教え, 参加者が持ち込んだ実地の技術問題にUSITを適用した。

 

2.  日本におけるTRIZ/USITの背景

日本にTRIZが紹介・導入されて5年になる [4]。月刊誌の記事, 教科書, WWWサイト (例えば, 中川の『TRIZホームページ』 [5]), 入門/訓練セミナー, ソフトウェアツールなどのさまざまの形式で, ほぼすべて日本語で紹介されてきている。その結果, 多数の先駆的な技術者たちが諸企業 (多くは大企業) にいて, TRIZの学習と実践に興味を持っている。企業のそれらの先駆者たちは, TRIZセミナー (多くは1日あるいは3日間) に参加した経験があり, TRIZソフトウェアツールの使用法はすでにマスターしている。しかしながら, 彼らにとって非常に困難であった (ある) のは, TRIZの思考方法を習得し, かれらの実地の問題にTRIZを適用するスキルを獲得することであった (ある)。

USITは1995年にフォード自動車社のEd Sickafusが開発したものであり, 彼は, イスラエルのSIT法 (すなわち, TRIZを簡略化したもの) を取り入れて改良した。SickafusはUSITの詳細な教科書 [3] を出版し, 普及・適用の実践について 2編の学会発表 [6, 7] をしているが, 方法論についての簡潔な論文がまだない。筆者は1999年3月に, Sickafusのフォード社外での第一回USITトレーニングセミナー (3日間) に参加し, その後USITを日本の産業界に導入することを始めた。

1999年に筆者は, USITの紹介記事3編 [8-10] をそのWWWサイトに掲載し, まもなく,  USIT 3日間トレーニングセミナー [11] を開始した。この 3年足らずの間に, 筆者は日本のTRIZユーザにUSITについて多数の講演をし, 多数のUSIT関連記事 (特に [12]) を日本語および英語でWWWサイトに掲載し, 3編の学会論文 [2, 4, 13] を発表した。USIT 3日間トレーニングセミナーは, これまでに 6回開催し, そのうちの 3回は企業内で [11], また, 他の3回は複数企業の参加のもとに行った [14]このような状況で, USIT 3日間トレーニングセミナーの参加者たちの大部分は, すでにTRIZとUSITの両方の予備知識を多少とも持っていた。

 

3.  USIT 3日間トレーニングセミナー

本論文に主として報告するセミナーは, 複数企業参加の形式であり, 三菱総合研究所知識創造研究チームが主催し, 筆者が講師をしたものである。このタイプの第 1回セミナーは2000年1月に開催し, [14] で詳細に報告した。また, 第 2回, 第3回は, 2001年7月および9月に, 同様だが改良したやり方で開催した。

三菱総研は, TRIZソフトウェアツールの販売開始の時以来, ユーザたちの会合を組織し, 顧客企業の技術者たちによる任意加入の研究会を開催してきている。これらのユーザに向けて, USITは短いいくつかの講義と, 一日間セミナーとで紹介されてきた。このような基盤の上に, 三菱総研は3日間トレーニングセミナーの参加者を一般募集した。

参加者各人には, セミナーで解くべき問題を一つ持ち込むことが求められた。その問題は実地のもの (あるいは , セミ実地のもの) だが, 機密でないことが求められた。この種の要請はSickafusのセミナー [8] に習って採用したもので, 実地の問題をUSITで解決する経験をし, 同時に参加者たちの動機づけを高めることを目的としたものである。

参加者たちが実地の, 解決するに値する問題を持ち込むことを奨励するために, 関係者全員が署名すべき「守秘義務誓約書[4, 14] を, 三菱総研は予めアナウンスした。その誓約書の内容は以下のようである。

この誓約書の方針は, 大岡越前の守の [三方一両損という] よく知られた日本の歴史的逸話 [14] に基づいている。それは, 「TRIZの事例研究についての矛盾」に対するわれわれの解決策として創り出したものである。 「初心者がTRIZを学ぶためには, 優れた成功事例が役に立つ。しかし, TRIZの適用結果が優れていればいるほど, 企業の機密政策のために, 公表される機会が少なくなる。かくして, 初心者たちは優れた事例を学ぶ機会を持たず, 初心者にとどまる。」 [14] 上記の守秘義務誓約書に基づいて実地問題を持ち込むことを要求したことは,実際にセミナーで共同して問題解決を行う上でうまく働いた。ただ, 技術者の一部にはつぎの点で困難を感じる者もあった。 3回の [三菱総研主催の] セミナーでは, 定員15名に対して, 実際の参加者は12名, 9名, 8名であった。参加者の大部分は各企業でのTRIZおよびUSITの先駆者たちであったが, 約1/4はどちらかというと初心者であった。

3日間セミナーは, 図1に示す時間割で行い, 合計24時間の訓練である。

図1.  USIT 3日間トレーニングセミナーの時間割 [14]

セミナーのはじめに, 講師はセミナーの目標をつぎのように話した。

「創造的問題解決と革新のために, TRIZの精神を学び, USITのやり方をマスターする。講義, および持ち込んだ実地の諸問題をグループの共同演習で解決することにより, これを行う。 」 セミナーのはじめに, 守秘義務誓約書の内容を改めて説明し, 全参加者 (講師と三菱総研のメンバを含む) が誓約書に署名した。

 

4.  USITの概要説明

第1日の午前に, TRIZの一般的な入門, そして, USITの入門を講義した。これらの基本を学び (あるいは復習して), それ以後のUSITを用いた実地問題解決のグループ演習の準備をすることをねらいとした。

TRIZに関する講義はつぎの項目に焦点を合わせた。

USITの導入においては, まずその歴史的背景について, イスラエルのSIT法 [15] および フォード社でのSickafusの活動 [6, 7] を参照して簡単に話した。そして, USITの主要な特徴をつぎのように示した。 創造的問題解決のためのUSITの全プロセスは,図2のフローチャートに示すようである。これはSickafusのUSIT教科書 [3] をベースにして, 日本でのわれわれの経験を踏まえて筆者が改良したものである。改良点については [順次] 後述する。

図2.  USIT法の全プロセスを示すフローチャート

USITのプロセスを説明するのに, まず2件の適用事例 [9, 10] の一部始終を示し, それからプロセスに沿ってステップごとに, いくつかの他の事例 ([13, 16] を含む) を示しつつ説明する。セミナーで使った 4件の主要な事例は以下のものである。


 

5.  解決すべき問題の選択

第1日の昼食後に, すべての参加者に順次 5分ずつ, 自己紹介とともに, 持ち込んだ問題の説明をしてもらう。各問題は予め主催者あてに提出してもらっており, A4 サイズ 1頁の自由書式で, 簡単な説明といくつかの解説図を含んだものである。参加者たちには, 問題そのものの困難さだけでなく, 問題の重要性, そのメカニズムの概要, 自分自身のバックグランドと略歴などをも話してもらうように助言した。

ついで, 今回のセミナーで共同で解決する問題を選択するためのセッションを始める。講師は現段階の状況をつぎのように説明した。

解決しようとする問題の数は, 利用可能な時間 (特に, 順番に行うグループ発表・討論のための時間) と すべての問題を同時に理解できるわれわれのキャパシティで決まっている。問題数をこれよりも少なくする (すなわち, 全体で2件または1件にする) ことは望ましくない。なぜなら, USITの適用におけるさまざまに異なった側面や状況を, 参加者たちが体験できなくなるからである。

問題の選択に当たって, 講師はつぎのような判断基準を助言した。

ついで, 講師は, 「セミナーでぜひ自分の問題を取り上げてほしいと思う人は挙手して下さい」 と, 参加者たちに要請する。このとき, 何人かの参加者は挙手しないが, その理由は, 持ち込んだ問題に自分が直接に関わっていないとか, 自分の問題が広く曖昧すぎると感じているからであると, 思われる。

その後, われわれは通常, 投票により問題を選択する。各参加者に 2票が与えられ, 自分が提案した以外の問題で, 一緒に解決したいと思う問題2件に投票する。この投票は通常 (すなわち,  3回のセミナーのすべての経験によれば) 妥当な結果を生じる。取り組むべき問題を, 講師が決めたのでなく, 全参加者が公正でオープンなやり方で決めたのは, 非常に良いことである。

そして最後に, 選択した問題ごとのグループに, 参加者たちの帰属を決める。これには,  各人の投票内容を参照する。選択された問題の提案者は, もちろんそのグループに属する。他の参加者たちは投票時に 2件の選択肢を挙げているから, 演習グループを作ることは通常あまり困難でない。異なるバックグランドと専門性を持ったメンバでグループを構成することが望ましい。一つの企業から複数の参加者がある場合には, 異なるグループに参加するように薦める。

以上のようにして取り組む問題とグループメンバが決まったので, いよいよ問題解決のグループ演習を始める。グループ演習は, 2日半にわたり, USITのプロセスを使って, 5セッションで実行する。各セッションは, それぞれつぎの 3サブセッションよりなる (Sickafusのセミナー [8] に習った)。


 

6.  USITの問題定義段階

この段階で, 問題提案者がグループメンバに対して, もう一度より詳細にその問題を説明する。グループは質疑応答を行い, 討論して, その最終結果として, つぎの項目を簡潔に書き出す。

このセッションの講義において, 講師はつぎの点を [問題定義のポイントとして] 強調した。 考えられる根本原因たちに関連して, つぎの点に注意する。 この問題定義段階は, 最初見たところ, 簡単で実行しやすいように見える。しかしながら, セミナーの最後に振り返ってみて, 参加者たちの大部分が, 「問題定義段階が, 問題解決プロセス全体の中で最もクリティカルであり, だから最も難しい」と言った。問題定義と, 考えられる根本原因の簡潔な宣言文たちが, これ以後の問題解決のすべての努力の方向を明確に決定するのである。

問題提案者たちが事前に提出した1頁の問題説明は, より詳しく記述されているけれども, USITの要求を基準にして見ると, 不明瞭で, 意義の捉え方が小さいことがしばしば見られた。提案者がグループ討論に柔軟に適応する能力 (キャパシティ) を持っているかどうかが, セミナーで実りの多い生産的な成果を上げるための鍵であることが分かった。

[14] に報告したセミナーでのあるケースでは, 提案された問題は以下のようであった。「電子デバイスのウェーハーの洗浄において, 循環させている洗浄液を監視する際に, 微細なごみと微細な泡とを区別する方法を見出したい」。グループは, 「微細な泡を除去する, あるいは作らないようにする方法」が, 問題定義としてより大きな意義を持つことを見出した。問題提案者は洗浄液のモニタリングの担当者であったが, 柔軟に対応して, 問題の焦点をシフトさせた。その結果, このグループは, 有意義で生産的な種々の解決策をセミナーの成果として作り出した。

[14] でのセミナーの別のケースでは, 提案者は「テレビ, 掃除機, などの廃品のプラスチック筐体を, 比較的大きな単位に破砕する方法」 を欲しいと思った。廃品のプラスチック筐体は, 収集サイトで壊して運びやすくしてから, 処理サイトに運び, そこでプラスチック片の材質を分析して, 分別する。この分析機は大きく移動できない。通常のように (プレスなどで) 筐体をつぶすと, 多数の小片ができ, 分析と分別の能率が悪くなるという。グループメンバたちは, 他の処理手順の可能性について尋ね, また, 言及した。しかし, 問題提案者は「いままでにいろいろに試行錯誤してきて, 結論としてこの処理手順に到達したのである」と言って聴かなかった。そこで, このグループは, 問題提案者に従うことにし, プラスチック筐体を小片を出さずに大きな部分に壊すための方法を苦労して探した。

第 3日の昼食のちょっと前になって, グループメンバの一人が, 「一つのプラスチック筐体から出た破片を全部一つの袋に入れたらどうだろう?」という単純なアイデアを思いついた。分別のためには, 袋の中の一つの破片だけを分析すればよい。このアイデアは問題定義の範囲外であったが, その問題を非常に効率的に解決した。この事例は, 問題定義の段階で, 全プロセス (あるいは, 問題システムの全体) をより柔軟な目で見ることの必要性を示した。

[注2) Sickafus, 2001年11月27日:  問題定義段階で (分析に入る前に) オブジェクトたちの数を最少限に絞ることをあなたはしないのか? また, [オブジェクト同士が] 接触している所での関与する属性などについて討論して, システムの機能を支えている基本的な現象について学生たちによく考えさせるようにすることはあるか? ]

 

7.  閉世界法による問題の分析

二日目の朝に, USITの問題分析段階を開始する。図2のフローチャートに示したように, USITは 3種の分析法を持っている。

USITでは, 閉世界法とParticles法のどちらか一つだけを使ってもよく, あるいは両方を使ってよい。 問題の性質に応じて決めればよい。筆者のトレーニングセミナーでは, すべての問題に対して, これらの二つの方法をこの順番で両方とも適用して, それらの有効性と寄与を理解するようにしている。空間・時間特性分析はいつも適用するとよい。

問題分析の段階の最初に, 「オブジェクト, 属性, 機能」というUSITの基礎概念を説明してから, 閉世界法による分析に入る。
 

7.1  オブジェクト, 属性, 機能

問題解決の方法論に対するUSITの最も重要な寄与は, 「オブジェクト, 属性, 機能」という基本概念を導入し, 問題解決の全プロセスに渡ってそれらを統合的に利用したことである。それらはつぎのように定義されている [3, 17]:

これらの概念に対してSickafusが挙げている例と反例[3, 17] とが, 非常に理解を助けてくれる。 これらの概念が互いに関連していることに注意すべきである。Sickfusはつぎの図式を示している。 「一つの機能は, あるオブジェクトの一つの属性と, 別の (あるいは同じ) オブジェクトの一つの属性との間に相互作用し, 第三の (あるいは同じ) オブジェクトの一つの属性を変化させる (あるいは, 変化を防止する)。」 相互作用しているオブジェクトが持っているさまざまの属性の中から, 上記の図式において, 各オブジェクトについて最も意味のある属性一つずつを選択できる, というのが彼のポイントである。例えば, ボルトとナットの機能を彼はつぎのように表現している。 「ボルトの角度と, ナットのピッチとが相互作用して, ボルトの位置を変化させる。」注3)

[注3) Sickafus, 2001年11月27日:  二つのオブジェクトの接触点において, 複数の対の属性が, 同じまたは異なる機能を支えていることがある。関連があると思われるそのような属性の対をできるだけ多く見出すと, 問題のより深い洞察を得られる。]

オブジェクト, 属性, 機能についてのSickafusの定義は, 厳格であり, 学習者は最初は従いにくいと思うかもしれないが, 後になるに従って, 理解が明瞭になり, ますますその通りだと同意できるようになる。

情報」は, USITでは一種のオブジェクトであるとみなす。これは, 検出, 測定, 制御などの広範な問題を, 単純で一貫したやり方で説明するためである (例えば, [9] を参照)。
 

7.2  閉世界ダイアグラムを構築する

閉世界法では, われわれはまず「 閉世界ダイアグラム」を構築する。これはUSIT流の機能分析であり, 現システムの本来の設計意図において, 最小限のオブジェクトたちの組の間にある機能的な関係を明らかにするものである。

オブジェクトたちの最小限の組とは, 問題を含むのにどうしても必要なオブジェクトたちの組であり, 問題定義段階で列挙したオブジェクトたちから抽出したものである。最小限のオブジェクトの組を抽出する際に, 技術用語に伴う心理的惰性を避けるために, オブジェクトたちの名前を総称的に変える。この小ステップは, もともと問題定義段階に位置づけられていたのを, 本論文でここに移動させたことに注意されたい。注4)

[注4) Sickafus, 2001年11月27日:  私の注2の質問の一部はこれで答えられている。]


閉世界ダイアグラムを構築するためのルールを, Sickafusはつぎのように設定した。

ここで, オブジェクトBがオブジェクトAに対して「機能的に益になる関係」にあるとは, つぎのすべての条件を満たしていることをいう。 これらのルールはずいぶん厳格であり, オブジェクトたちとそれらの間の主たる有用機能とを示す非常に単純なダイアグラムを描き, 現システムの本来の設計意図を表現するように, 分析者に要請している。そのような単純なダイアグラムが描かれると, 通常の機能分析の図 (すなわち, あまり重要でない機能たちも含めて, 沢山の矢印を同時に描いた図) よりもはるかに明快なメッセージをもたらす。

しかしながら, 閉世界ダイアグラムの事例がいろいろ示されている (例えば, Sickafusの教科書 [3], 彼のセミナー資料 [17], および筆者のWWWサイト [2, 9, 16] など) にも関わらず, USITの学習者たちがこのダイアグラムを習得するにはまだ十分でない。日本におけるわれわれのUSITセミナーでは, さまざまのケースを経験しつつ, 徐々にSickafusの真の意図を学んでいるところである。

筆者も, 時として, 「このダイアグラム中に, 有害機能や不十分機能, 副次的な機能, 問題の焦点などを追加して描こう」という誘惑を感じた注5) 。しかし, いまの筆者の理解では, 「このダイアグラムの単純な図の構造を歪めたり, 変更したりすべきではない。ただ, そのような制約の中であれば, 追加的な記述をして, それが問題をより明確にするのなら, 追記してもかまわない」と考えている注6)

[注5) Sickafus, 2001年11月27日:  これはUSITを新しく知った人たちが共通に感じる傾向である。完全で詳細な分析を行うという良い技術的訓練を受けた結果生じていると, 私は思う。しかしながら, USITは, 問題に対する新しい観点を速やかに創り出すことに主眼を置いている。USITは, 典型的な工学的解析を避けるように, 意図して設計されている。その理由は, 問題に対する新しい見方を提供するのがUSITの価値だからである。工学的なやり方は, われわれはすでに知っているのだから。]

[注6) Sickafus, 2001年11月27日:  USITの学生たちにつぎの点を指摘するのが有益であると私は思う。「閉世界ダイアグラムは問題を分析するのではない。そうではなくて, システムが適切に機能するように設計されたときの意図を分析するのである。」]

7. 3  定性変化グラフ

つぎにわれわれは, 問題の中の有害/不十分な効果を, オブジェクトの属性たちを用いて分析する。この分析は, 閉世界ダイアグラムを使った先行する分析を補完するものである。

定性変化グラフというのは, 実際には, 図3に例示したような, 二つの作り付けのグラフである。われわれはこれらのグラフの縦軸と横軸とを指定するように要求されている。

図3.  定性変化グラフの例。額縁掛けの問題 [16]

これらのグラフは多数のグラフを模式的に簡略化して示したものであり, それらの関係の実際の詳細を区別することなく, 単に増大/減少関係にあることを言っている。

左側のグラフは単に, 「下部のリスト中の一つの属性の値が増大すると, 問題の有害/不十分な効果も増大する」ことを示している。そこでこれらの属性たちを, 「問題起因属性」とみなすことができる。他方, 右側のグラフの下に書いたどれかの属性の値が増大すると, 有害/不十分な効果は減少する。そこで, これらの属性たちを「問題抑制属性」と呼ぶことができる。注A2)

[注A2) Sickafus, 2001年12月30日:  ここの用語は少し紛らわしい。「問題起因属性」と「問題抑制属性」は, それぞれ逆数の関係にある属性名で定義することができるから, そうすると互いに相手の方に入れ代わってしまう。]
ここの説明は, 1999年のSickafusのセミナー [9] での説明よりも, 単純化されており, より効率的である。閉世界ダイアグラムの段階で, すべてのオブジェクトたちの属性をできるだけ多く列挙し, その後にこの定性変化グラフの段階で, 無関係の (増大関係でも減少関係でもない) 属性たちを除去するという, 二度手間をする必要がない注7)
[注7) Sickafus, 2001年11月27日:  つぎの点に言及しておきたい。「考えられる根本原因の分析で列挙したすべての属性は, この定性変化グラフ中に記述すべきである。さらに, これらのそれぞれの属性が解決策のコンセプトを見つけるための焦点を提供する。」]
7.4  OAFダイアグラム

閉世界法の中のつぎのステップとして, Sickafusは オブジェクト-属性-機能 (OAF) 宣言文およびOAFダイアグラムを使っている (Sickafusの教科書 [3] および彼のWWWサイトに最近掲載された事例 [18] を参照)。これらの方法では, (7.1節で言及した形式に従って) すべての関係する機能たちを , 属性の用語で, 明確にかつ一貫したやり方で宣言することが, 要求されている。

Sickafusは, 1999年の彼の 3日間トレーニングセミナーで, 時間の不足のために, OAFダイアグラムを教えなかった [8]。筆者はこの方法は複雑すぎると考え, 日本ではこれを教えず, 適用しないことにした。注8) 注9)注A3)

[注8) Sickafus, 2001年11月27日:  OAFダイアグラムが最も有用なのは, 属性について理解し, 識別するところであると私は思う。USITを学び始めた学生たちは, オブジェクトを理解するのには (「情報」の扱い以外は) ほとんど困難を感じないし, 機能についてもすぐに理解するようになる。しかしながら, 属性に関しては多くの学生が困難を感じる。特に, 解決策生成で属性次元法を適用するときの焦点として, 属性を使えと言われると困難を感じている。属性を識別・使用するのを習得することが困難であることを, 方法論の欠点と考えるべきではない。属性について学んだ結果, 問題解決者としての能力が強化されるなら, なおさらである。OAFダイアグラムはこの目的のためのツールである。]

[注9) 中川  徹, 2001年12月28日:  属性についての理解は, 日本でのセミナー参加者たちにそれほどの困難を与えていないように思う。特に, 「漏水の検出」の事例を初期に示し, 水のいろいろな性質を「属性」の言葉で示し, 水の検出法を考えるときに属性次元法が主要な技法になったことの説明が, この理解を助けているようである。
OAFダイアグラムを一貫性のあるものに作ろうとすると, 講義・演習合わせて1.5〜2時間程度を余分に必要とし, それでいてまだその正しい作り方やその真の有効性が理解できない段階にとどまると予測される。OAFダイアグラムなしでもセミナーで困難を感じていない。そこで, やはり, 3日間のトレーニングセミナーで基本を習得し, それぞれのステップの有効性が実感できる範囲にUSITを絞っておくことが適当と考えている。]

[注A3) Sickafus, 2001年12月30日:  私は必要がないときにはOAFダイアグラムを使わない。私は, クラスにおける学生たちのコメントや質問に注意して, 彼らが属性の意味について不確かな点があるかどうかを見分けるようにしている。学生たちが, 例えば, 属性と特性値とを混同している, ということが分かった場合には, OAFダイアグラムを教えると学生たちに有益かもしれないというシグナルになる。学生たちにとっての困難が表面に現れるのは, クラスで解決しようとしている実世界の問題に対して, チームで解決策を出しはじめた時である。新しい解決策のコンセプトを導き出すのに, オブジェクト・属性・機能という概念理解の強さにアンバランスな点があると, インストラクタはそれをすぐに察知する。そのようなアンバランスが存在すれば, それを手掛かりとして, インストラクタは新たに強調する必要のある領域を判断するのである。 ]

7.5  閉世界法の意義

閉世界法の真の意義は, Roni Horowitzの論文とASIT法 [15, 19] を参照すると最もよく分かる。

Roni HorowitzとOded Maimon [15] が実験的に検証したのは, 「ある解決策がつぎの二つの条件を同時に満足していると, 技術畑の人々はそれを「発明的解決策」であるとみなすことに同意する」という事実である。

閉世界制約は, 資源導入の最少化と理想性というTRIZの基本概念を利用する一つの形式として理解できる。

質的変化の要求は, つぎのように説明できる。

定性変化グラフの左図に示されるような問題起因関係を知ると, われわれは直ちにつぎのような方法を思いつく。

これは,  (やさしい問題の場合には) 通常の工学的な解決策に導き,  (難しい問題の場合には) 技術的矛盾の状況に導くだろう。

これに対して, 「発明的解決策」とは, つぎのような 3種の質的変化のどれかが達成された場合である。

これらの 3種の思考法は, 対応するTRIZの思考法よりも, ずっと直截的であることに注目されたい。TRIZでは,  [各種の属性の増大/減少関係を知った上で] 技術的矛盾を導出し, その後にそれらの矛盾を解決する可能性を探すのである。

ASIT (高度構造化発明思考法) [15] は, その問題解決の努力を, 上記の二つの条件を満たした「発明的解決策」の探索に集中するという方針をもっている。これは, 「純化したTRIZ」のアプローチと言えよう。そのような解決策の事例は, HorowitzのWWWサイト [20] に見られる。

しかしながら, USITのアプローチはASITとは異なる。Sicakfusはつぎのように書いている [7]。「 (USITでは) 「発明的解決策」を求めることに重点を置かず, 実地の技術問題に対して複数の創造的な解決策を迅速に得ることに重点を置くことに決めた。これは, フォード社のような実際の企業現場において創造的問題解決を行う利点を最大化するために選択した方針である。」

そこでUSITでは, ASITのアプローチを理解しながらも, むしろ, 閉世界法を機能分析の方法として使い, また, 定性変化グラフを問題起因属性と問題抑制属性を解析するための方法として用いる。これらのダイアグラムやグラフの使い方は, 後の解決策生成段階で再び述べる (11節参照)注10)

[注10) Sickafus, 2001年11月27日:  思想的なノート:  TRIZは効果たちの対 (ペア) の間に矛盾を見出すことを強調する。これは学習者にとって, しばしばやっかいなステップになる。矛盾を見つけると, そのつぎステップとして, それらの部分を分離するのである。他方USITでは, 矛盾を無視し, 考えられるすべての根本原因たちを同定するというアプローチを採用する。根本原因たちをそれぞれ個別に扱う。この手順は, 矛盾を同定するTRIZのステップを飛び越える (そして先に進む) のである。]

 

8.  Particles法による問題の分析

Particles法は, Altshullerの小さな賢人たちのモデリング [1] を採用し, その後 Sickafusが大いに拡張・改良したものである [3]。この方法は, 「理想解」のイメージをまず最初に考えるアプローチであり, そのため, 現在のシステムを持たないケースにも適用できる。

このParticle法の適用事例として, 筆者はいつも (すなわち, 筆者のUSITトレーニングセミナー [11,  18] や論文 [2, 4, 12] でいつも), 「発泡樹脂シートの形成における発泡倍率の増大」の事例 [10] を使ってきた。この事例は, SickafusのUSITトレーニングセミナー [8] において, 筆者が研修生として作ったものである。この一つの事例が, Particle法を教えるのに非常に有用であった。筆者の3日間USITトレーニングセミナーにおいて, ほとんどすべての参加者たちは, この方法を自分たちの問題にうまく適用し, この方法が簡単で強力であることを実感した。(この事例で作成した図は, 上述の文献にあるので参照されたい。)
 

8.1  現在の状況のスケッチと理想的状況のスケッチ

最初にわれわれは現在の状況のスケッチを描き, 問題の有害/不十分な効果のメカニズムを明確にする。このスケッチはしばしば, 問題定義段階でわれわれが描いたスケッチの部分拡大図になっており, TRIZにおける作用空間を描いた図に対応する。

ついでわれわれは, 理想解のスケッチを描くように要求される。ここでは, 理想の状況そのものを描くのであり, それを達成する手段を考えたり, 描こうとしたりしてはならない。この要求は最初, 非常に難しいことのようにわれわれには思われ, われわれの思考法を変えなければならないというショックを受ける。それで, われわれは理想の状況のスケッチを何とかひねり出すが, それは最初は馬鹿げたもののように見える。その状況をはっきりさせるために, スケッチ中にいくつかのキーワードを記入しておくと, 役に立つ。

それからわれわれは, 二つのスケッチを見比べ, 違いがある所にすべて小さな "X印" をつけるように指示される。ここでわれわれは, 解決策を推測して "X印" をつける場所を限定的に選択しようとしてはならない。

これらの "X印" を「Particles (パーティクルズ)」 と呼ぶ (「粒子」の意)。Particlesは魔法の物質/「場」であり, して欲しい行動を何でもでき, 持って欲しい性質を何でも持つことができるものだと考える。その上で, 「Particlesたちに, どんな種類の行動をして欲しいのか, どんな種類の性質を持っていて欲しいのか」を, われわれが尋ねられるのである。
 

8. 2  行動-性質ダイアグラム

そこで, われわれはParticlesたちにして欲しい行動を, 一つの文として書き出す。理想的状況のスケッチ中に書いたキーワードを使い, それらを一つの文にすることで, これは容易に実行できる。その文はいくつかの行動のキーワードを含み, "and" で結ばれていることが多いから, それらの行動を別個に書いて第2段に置き, "AND" 関係を明示しておく。ついで, 各行動をさらにブレークダウンして, 行動の要素を書き出し, 論理の分野で知られている「AND/ORツリー」の形式に描く注11)

[注11) Sickafus, 2001年11月27日:  おそらく同じことを言っているのであろうが, 私は少し違った強調のしかたをしている。私はまず学生たちに, Particlesのことは考えずに, 理想解を (複合文の形で) 記述させる。ついで, その文を, "and/or"の節ごとに分割して, 第2段に書かせる。その下の段に, Particlesに頼んだ行動を実現するのにParticlesが何をしているのかを考えて書かせる。行動の下部にそれらの行動を支える複数の性質を列挙する。]
このステップの要点について, 講師はつぎのように助言する。
  • 技術用語を使わずに, 平易な言葉を使いなさい。それは, 心理的惰性を避け, より広い種類の行動のアイデアを得るようにするためである。
  • 行動をできるだけ広く考えて, 代替的な行動のアイデアはOR関係で示しなさい。
  • 行動の要素は, 隣接した行動とは独立にブレークダウンしなさい。
  • 第3段または第4段までで止めればよい。
  • つぎに, これらの行動を達成するのに望ましいと思われる性質を列挙する。そのためのガイドラインはつぎのようである。 トレーニングセミナーでは, このセッションの演習で各グループはしばしば非常に高揚し, 行動と性質を列挙している段階で, さまざまな新しいアイデアを自分たち自身が思いついていることを実感する。

     

    9.  空間・時間特性分析

    USITの問題分析段階の最終ステップでは, 問題の空間的および時間的特性 (あるいは, Sickafus の用語では「ユニークさ (Uniqueness)[3]) を明らかにする。

    空間特性分析では, 通常, つぎのようなグラフを描く。

    時間特性分析では, 適切に選んだ何らかの時間軸を用いて, 同様にグラフを描く。

    これらのグラフの例は [9, 10, 12, 16] を参照されたい。特徴的な空間・時間軸を選ぶことがこれらのグラフの表現力の鍵である。「洗浄液の微細な泡」のケースでは, 循環させている洗浄液のループ状の回路を空間「軸」として選び, ウェーハーの洗浄の全プロセスサイクルを時間「軸」として選んだ。

    この分析法は柔軟に使うとよい。空間特性を表現するのに, システムの構造自体の図 ( [16] 参照) や, 複雑なシステムのブロックダイアグラムが役に立つこともある。

    このステップでプロセス分析を行うことは広い応用範囲があるだろう。例えば, 6節で述べた「廃プラスチック筐体の破砕」の問題では, このステップでプロセス分析をもっと詳細にやるべきであっただろう。

    空間・時間の軸を適切に選んでグラフが作られると, そのグラフは, 問題の特徴的な性質を理解するための重要な観点を示唆し, さらに, TRIZの分離原理を使って得られるのと同様な, 興味深いアイデアのヒントを与えてくれる。

    もともと Sickafus [3] はこの方法を, 問題分析段階と解決策生成段階の中間の位置に, 両者を連結するものとして位置づけていた。その理由は, この方法が本来分析的であるが, しばしば解決策のアイデアを刺激したからである。しかしながら, 筆者はこの方法を, 図2のフローチャートに示すように, 問題分析段階の最終ステップに位置づけている [8]。この分析は一度だけやればよく, それは, 解決策生成段階での繰り返しのプロセスの前であることは明瞭である注12)

    [注12) Sickafus, 2001年11月27日:  私はこの方法 (Uniqueness) を分析の最後, 解決策生成の最初に置き, 解決策生成の面を強調した。その理由は, 望む機能たちを長方形で描いた空間と時間のグラフを作ると, 直ちに,そして直観的に, [機能の] 分離, 重ね合わせ, 逆転, 分割, 並列化, 脱並列化などの解決策に導くからである。]

     

    10.  解決策生成法

    ここからわれわれは, USITの第3段階, すなわち解決策生成段階に入る。図2のフローチャートに示すように, われわれは 5種の解決策生成法 (あるいは, オペレータ) を繰り返し使って, 複数のコンセプトレベルの解決策を生成する。

    これらの 5種の方法は二つのカテゴリに分けることができる。 3種の方法は, オブジェクト, 属性, および機能に対してそれぞれ適用するものであり, もうあと 2種の方法は, コンセプト (あるいは解決策) に対して適用するものである。
     

    10.1  オブジェクト, 属性, 機能に対するオペレータ

    技術システムを表現するための「オブジェクト, 属性, 機能」という基本概念に対応して, USITはそれぞれに適用する解決策生成法 3種を提供する。

    Sickafus [3, 18] はこれらを単純に, 複数化 (Pluralization), 次元法 (Dimensionality), および配置法 (Distribution) と呼んでいることに留意されたい。

    オブジェクト複数化法は, システム中のオブジェクトのすべてに (特に, 最少限の組のオブジェクトたちすべてに) 適用される (あるいは演算される) もので, そのオブジェクトを「複数化」する。この演算はつぎのような側面を持つ。

    属性次元法は, システム中のすべてのオブジェクトのさまざまの属性たちに適用される (あるいは演算される) もので, オブジェクトの「次元 (Dimensionality)」を変化させる。この方法はつぎのような側面を持つ。 機能配置法は, システム中のすべての機能に適用される (あるいは演算される) もので, システム中のオブジェクトたち (新しく追加されたオブジェクトも含む) の間で機能を配置する (あるいは, 再配置する) 。そのガイドラインはつぎのようである。 これらの 3種の解決策生成法の適用事例は, Sickafusの教科書 [3], 彼の最近の適用例 [18], および筆者の記事 [9, 16] などを参照されたい。ASIT法によるHorowitz [21] の例も参考になる。

    TRIZ [1] をよく知っている読者なら, TRIZの40の発明の原理の中のさまざまの方法を, 上記の 3種の解決策生成法に分けて入れることができ, そして, 進化のトレンドの知識をこれらの方法の中で活発に利用できることを, 理解するだろう。その意味で, USITのこれらの方法は, TRIZ (あるいはその他の技法) の小さな一部を選択したものではなく, むしろ, TRIZの方法のフルセットを, 簡単で適用しやすいように表現し直したものなのである。

    いままで伝統的に [1, 3], いろいろな解決策は, どれか一つの解決策生成法を適用した結果であるとして説明されてきた。しかしながら, ここの3種の方法は, (「オブジェクト, 属性, 機能」という) 3側面のどれか一つにその適用の焦点を絞っているけれども, 副作用として他の側面にも影響する (上記の 3方法の記述を参照)。これは避けることができない。なぜなら, これらの 3側面はそれぞれ単独で存在することはできないのだから。そこで, われわれが理解しなければならないのは, 「どんな解決策であっても, (USITの)異なる解決策生成法を適用した結果として多面的に解釈できる」ということである [16]

    図4は, 「額縁掛けの問題」 [16] についての一つの解決策を示している。額縁が傾くのを避けるための解決策として, 壁に打ちつける釘の表面を, 一部を粗く, 一部を滑らかにした [3]。つり下げるための紐は, 釘の滑らかな面で調節し, その後, 粗い面に動かしてセットする。

    図4.  粗い面と滑らかな面とを持つ釘 (Sickafus [3])

    この一つの解決策を, つぎのように 4種の観点から同時に見ることができる [16]

    解決策を多面的に理解することにより, 筆者は, これらの解決策生成法を教え・適用することが, ずっと容易になった。
     

    10.2  解決策の組み合わせと一般化

    USITの後の二つの解決策生成法は, システムの (3種の) 要素に適用するのではなく, 解決策に適用するという点で, 前の 3種の解決策生成法と違っている。

    (解決策) 組み合わせ法は, 複数の解決策 (あるいは解決策の要素) に適用して, それらを (空間的に, 時間的に, あるいは部分として, など) さまざまに組み合わせて一つの新しい解決策を形成する。

    もともとUSITでは, Sickafus [3] は「Transduction (機能連結法)」と呼ぶ方法を定義していた。それは, 二つの機能を, 一つのオブジェクトの一つの属性を共有して, 直列的にリンクさせる。これにより, 二つの機能は, 同時に協調的に, 空間的に継続して, あるいは時間的に継続して, などのように働く。本論文の (解決策) 組み合わせ法 [16] はSickafusの機能連結法を拡張したものであり, 解決策生成の方法においてずっと広い範囲をカバーしている。

    (解決策) 組み合わせ法はつぎのようなガイドラインをもっている。

    この (解決策) 組み合わせ法が, (40の発明の原理に含まれるような) さまざまの解決策生成法の広い範囲を自然に含むことは明瞭である。特に, TRIZの分離原理 [1] は, この (解決策) 組み合わせ法と本質的に同じものであり, 逆の言い方で表現したもの, と見なすことができる。分離原理が, 「矛盾を分離して, 組み合わせる」と言うのに対して, 本方法ではより直截的に「組み合わせる」と言っており, 理解しやすくなっている。そこで, 組み合わせ法で生成した解決策が, (図4に例示したように) 他の 3種の解決策生成法から生成したものであると解釈できたとしても, この方法はUSITの理論において独自で重要な位置を占める (図2参照)。

    (解決策) 一般化法は, 各解決策の中の技術的・特定的用語を, 平易で総称的な用語に置き換えることを奨励する [3]。これは解決策を, コンセプト (概念) あるいはメタファ (比喩) にすることであり, われわれの視野を広める。

    (解決策) 一般化法の意義は, マインドマッピング[22] と同様のプロセスと関係づけることにより, 最もよく理解できる。この方法によれば, 図5に示すスキームにより, 具体的なアイデアから関連するさまざまなアイデアが連想的に刺激されて得られる。このスキームが重要なのは, われわれが得たさまざまの解決策を同時に体系化してくれるからである (例えば [23] 参照)。

    図5.  解決策一般化法のスキーム












    10. 3  解決策生成段階における分析結果の利用法 [2001.12.28 中川: この節を改訂稿で挿入]

    ここで, 解決策生成段階において, 問題分析段階での結果をどのように役立てるとよいのかをまとめておくのが有益であろう。まず, 解決策生成の各方法を適用する際には, つぎのような分析結果を主として参照すべきである。

    われわれがさまざまの解決策を探索するとき, われわれがいつも考えているのは, 考えられる根本原因として表現した困難をどうしたら克服できるか, あるいはもっと具体的には, (問題起因属性とともに悪化し, 問題抑制属性とともに減少する関係にある) 問題となる効果をどうしたら除去できるか, ということである。そこで, 解決策生成段階のすべての努力とその結果を, 定性変化グラフにリストされている問題起因/抑制属性たちと関係づけることができるだろう。解決策たちと問題起因/抑制属性たちとの間の, 連想的あるいは発展的な関係を例示したのが, 図6であり, これは「額縁掛けの問題」の事例 [16] についてのものである。この図を筆者が作ったのは, 実際にSickafus [3] が問題解決をしてからずっと後のことであるが, それでも, この種の構造を理解しておくことは, われわれの解決策探索のプロセスに役に立つであろう。
     
     

    図6. 解決策と問題起因/抑制属性との間の関係

    (解決策) 一般化法は, われわれの解決策の探索の視野を広くし, より体系化するための鍵となる方法である。Particles法で考えた理想解とそれをブレークダウンして作った行動-性質ダイアグラムが, われわれの解決策を階層的に体系化するためのモデルとして役立つ。(解決策) 一般化法を使いつつ, われわれは得られた解決策を新しい階層的体系に書き出してもよいし, あるいはむしろ, 行動-性質ダイアグラム中に追加・修正として書き出していってもよい。

     

    11.  解決策生成法の適用

    筆者にとっても, 日本のUSIT学習者にとっても, 解決策生成法をどのように適用するのかを理解するのは, ずいぶん難しかった。セミナー参加者たちから, これらの方法をもっと明確に説明してほしいという要求が絶えずなされた。筆者は, TRIZ/USIT/ASITのさまざまな文献を読み, また, セミナーなどの経験を通じて, 解決策生成法について徐々に理解を深め, ようやく前節に述べたような理解に到達したところである。

    筆者の3日間USITトレーニングセミナーでは, 解決策生成法の講義を第2日の最後に行う。その意図はつぎの二つである。

    第3日に, USITの解決策生成段階のためのグループ演習のセッションを [午前・午後の] 2回行う。朝のセッションの始めに, 講師はつぎのように助言する。 Particles法で分析している段階で (すなわち, 二日目の午後に), ほとんどすべてのグループでは, 大いに刺激を受けて, 解決策のアイデアのさまざまの断片を思いつきはじめており, また, 行動-性質ダイアグラムは考えられる解決策を階層的に表現した体系に近いものだと, 分かってきている。そのため, この解決策生成段階を, Particles法の結果を基にして, どちらかというと形式的でないやり方で開始するのは, われわれにとって自然なことである。解決策のアイデアたちは, 簡単なスケッチを描きながらホワイトボードにどんどん書き出し, それに並行して, 行動-性質ダイアグラムをこれらのアイデアを加えて拡張していくことが多い。

    1時間か1時間半ほどすると, 大抵のグループは, 彼らが頭の中に持っていた単純なアイデアたちを出し尽くしてしまった, という段階に達する。そこで彼らは解決策生成法を一つ一つ適用し始める。この適用で, 上述のように, 彼らはしばしば困難を感ずるが, やがて徐々に新しいアイデアを得られるようになる。そしてグループ発表のサブセッションの間に, 他のグループの適用事例をいろいろ見て, 討論の中で元気を得ていく。

    午後のセッションの始めに, 講師はつぎのように助言する。


    グループによって実際には少しずつペースが異なる。ずっと進んでいるグループもあり, 困難さを経験しているグループもある。それでも, すべてのグループは, 彼らが持ち込んだ実地問題に対して, 数件から20件程度の解決策のアイデアを得るのに成功した。

     

    12.  企業におけるTRIZ/USITの利用

    USITの全プロセスに渡ったグループ演習を終えてから, 講師が最後の講義をし, 企業におけるTRIZおよびUSITの使い方を述べる。その要点は以下のようである。


     

    13.  日本におけるUSITの評価と現状

    トレーニングセミナーの総合討論のセッションや最後のアンケートの回答などにおいて, セミナー参加者たちはUSITをつぎのように評価した。

    USITとTRIZソフトウェアツール (特にTRIZの知識ベース) とを, 協調的・補完的に使うモデルとして, つぎのような 3種の代替案を筆者は提案している [2]


    筆者の 3日間USITトレーニングセミナーでの具体的な問題事例のうちの二つが, セミナー参加者によって三菱総研のユーザグループの分科会で報告され, そのうち一つは筆者のWWWサイトに日本語で掲載されている [24, 25]。事例をスムーズに記録し, 参加者たちがその事例研究を発表するのを奨励するために, セミナー事例報告のひな型を最近参加者たちに渡した。

    現在のところ, 日本におけるUSITインストラクターは, 筆者だけである。それでも, セミナーやWWWでの発表の成果として, USITは日本におけるTRIZコミュニティの中でかなりよく知られるようになった。

    USIT 3日間トレーニングセミナーの参加者たちの中には, 彼らの会社の中で, (TRIZソフトウェアツールに加えて) USITを導入・適用するために活発に活動している人たちがいる。例えば, 富士写真フィルム社の三原祐治は, そのTRIZ/USIT導入活動を筆者のWWWサイトに日本語で報告し [26], また, 彼の適用事例の一つが『日経メカニカル』誌に紹介された [27]。同社では, 二人からなるTRIZ/USITチームが活動していて, 技術者たちにTRIZ/USITの訓練をし, また, 数件のUSITプロジェクトを並行して社内コンサルティングしている。
     

    謝辞

    筆者は, Ed Sickafus博士に, 絶えず激励いただき, 貴重な助言をいただいたことを感謝する。注13)

    [注13) Sickafus, 2001年11月27日:  そして私は, USITを日本の技術界に導入している貴君の努力に感謝する。]

     

    参考文献

    [1] 例えば:  Yuri Salamatov: "TRIZ: The Right Solution at the Right Time", Insytec, 1999;  中川  徹監訳, 三菱総研訳: "超"発明術TRIZシリーズ5: 思想編「創造的問題解決の極意」 ,  日経BP社刊, 2000年11月。[同出版案内と資料: TRIZホームページ, 2000年11月]

    [2] Toru Nakagawa: "Learning and Applying the Essence of TRIZ with Easier USIT Procedure", ETRIA World Conference TRIZ Future 2001, Nov. 7-9, 2001, Bath, UK; TRIZホームページ, 2001年11月; 和訳:  「TRIZのエッセンスをやさしいUSIT法で学び・適用する」, TRIZホームページ, 2001年 8月

    [3] Ed. N. Sickafus: "Unified Structured Inventive Thinking: How to Invent", NTELLECK, Grosse Ile, MI, 1997, 488p.

    [4] Toru Nakagawa: "Approaches to Application of TRIZ in Japan", TRIZCON2000: The Second Annual AI TRIZ Conference, Apr. 30 - May 2, 2000, Nashua, NH, USA, pp. 21-35. ; TRIZホームページ, 2000年 5月; 和訳, 日本におけるTRIZ適用のアプローチ」, TRIZホームページ, 2001年 2月

    [5] 中川  徹編, 『TRIZホームページ』 (英文名: "TRIZ Home Page in Japan"), WWW サイト,  URL: http://www.osaka-gu.ac.jp/php/nakagawa/TRIZ/ (日本語),  http://www.osaka-gu.ac.jp/php/nakagawa/TRIZ/eTRIZ/ (英語)。

    [6] Ed Sickafus: "Injecting Creative Thinking into Product Flow", First TRIZ International Conference, Nov. 1998, Industry Hills, California; 中川  徹訳: 「製品フローに創造的思考を注入する」 ,  TRIZホームページ, 1999年1月

    [7] Ed Sickafus: "A Rationale for Adopting SIT into a Corporate Training Program", TRIZCON99: First Symp. on TRIZ Methodology & Application,  March 1999, Novi, Michigan; 中川  徹訳: 「SITを企業研修プログラムに採用した論拠」, TRIZホームページ, 1999年5月

    [8] 中川 徹: 「USIT法研修セミナー参加報告 (講師: Ed Sickafus, 1999 年 3月) 」, TRIZホームページ, 1999年 3月(和・英)。

    [9]  中川  徹:  「USIT法の適用事例報告(1) ゲートバルブからの少量の漏水の検査法」, TRIZホームページ, 1999年7月 (和・英)。

    [10]  中川  徹:  「USIT法の適用事例報告(2) 高圧ガス入り溶融ポリマーから多孔性樹脂を成形する場合の発泡倍率の増大」,  TRIZホームページ, 1999年 7月 (和・英)。

    [11] 中川  徹: 「USIT法研修セミナーを試行して( 報告) 」, TRIZホームページ, 1999年 9月 (和・英)

    [12] 中川  徹:  「USIT -- 簡易化TRIZによる創造的問題解決プロセス」, 設計工学 (日本設計工学会誌),  35巻 4月号 (2000年), 111-118頁; TRIZホームページ, 2000年4月 (和・英)。

    [13] Toru Nakagawa: "Staircase Design of High-rise Buildings Preparing against Fire -TRIZ/USIT Case Study -", TRIZCON2001: The 3rd Annual Altshuller Institute TRIZ Conference, Mar. 25-27, 2001, Woodland Hills, CA; TRIZホームページ, 2001年 4月; 和訳: 「中高層建築物における火災対策を考えた階段の構造−TRIZ/USIT適用事例」, TRIZホームページ, 2001年 4月

    [14] 中川  徹:  「USIT法トレーニングセミナー(3日間)の試行報告(2)」, TRIZホームページ, 2000年2月; 英訳: TRIZホームページ, 2000年3月

    [15] Roni Horowitz and Oded Maimon: "Creative Design Methodology and the SIT Method", DETC'97: 1997 ASME Design Engineering Technical Conference, Sept. 14-17, 1997, Sacramento, California;  中川  徹訳, 「創造的設計方法論とSIT法」, TRIZホームページ, 2000年3月

    [16] 中川  徹: 「「額縁掛けの問題」への解説」, TRIZホームページ, 2001年7月; 英訳: TRIZホームページ, 2001年8月

    [17] Ed. N. Sickafus: "USIT Training Seminar (USIT-01)  Course Materials",  NTELLECK, LLC, Mar. 1999

    [18] Ed Sickafus: 'The Sicillian Dolly', NTELLECK, LLC, Web site: http://www.u-sit.net/, Jun. 2001.

    [19] Roni Horowitz: "From TRIZ to ASIT in 4 Steps", TRIZ Journal, Aug. 2000; 中川  徹訳: 「イスラエルのSIT法とその利用(1) TRIZからASITへの 4ステップ」, TRIZホームページ, 2001年 9月

    [20] staart2think.com Web site: http://www.start2think.com/

    [21] Roni Horowitz: "ASIT's Five Thinking Tools with Examples", TRIZ Journal, Sept. 2000; 中川  徹訳:  「イスラエルのSIT法とその利用(2) ASITの五つの思考ツールとその適用例」, TRIZホームページ, 2001年12月

    [22] James Kowalick: "Problem-Solving Systems:  What's Next after TRIZ?  (With an Introduction to Psychological Inertia and Other Barriers to Creativity)", 4th Ann. Intern'l. TPD Symp. - TRIZ Conf., Industry Hills, California, Nov. 17-19, 1998, pp. 67-86; 中川  徹訳: 「問題解決システム:TRIZのつぎは何だろうか? (心理的慣性および創造性に対するその他の障害についての序論を兼ねて) 」,  TRIZホームページ, 1999年 1月

    [23] M. Lynch, B. Saltsman, C. Young: "Windshield/Backlight Molding -- Squeak and "Buzz" Project  --  TRIZ Case Study",  American Supplier Institute Total Product Development Symposium,  Nov. 5, 1997, Dearborn, Michigan, USA; TRIZ Journal, Dec. 1997; 中川徹訳:  「ウインドシールド/ バックライトのモールディング -- きしみとバズ音のプロジェクト (TRIZ事例研究) 」, TRIZホームページ, 1999年9月

    [24] 上野浩輝:  「USITトレーニングセミナー参加報告: 事例: 電子機器の発熱を自然空冷により効率よく放出する方法」,  三菱総合研究所主催平成12年度知識創造研究会第5回創造手法分科会, 東京, 2001年1月; TRIZホームページ, 2001年 7月

    [25] 三原祐治:  「USITトレーニングセミナー参加報告: 洗浄液中の微細な泡をなくす方法」, 三菱総合研究所主催平成12年度知識創造研究会第4回創造手法分科会, 東京, 2000年11月。

    [26] 三原祐治: 「TRIZの社内展開の方法」, 第2回日本IMユーザグループミーティング, 2001年 9月12-14日, 滋賀県守山市; TRIZホームページ, 2001年11月

    [27] 篠原 司: 「富士写,血液から血漿を抽出するフィルタを改善。フィルタを円盤形から細長に変えて血球を詰まらせない」, 日経メカニカル, 2001年11月号 (No. 566), pp. 72-73。
     

    著者略歴

    中川  徹:  現職: 大阪学院大学情報学部教授。1997年5月に初めてTRIZに接して以来, 当時在職中の富士通研究所においてTRIZの導入に努めた。1998年4月に現職の大学に移り, TRIZを日本の産業界と学界に導入することに努力している。1998年11月に公共的なWWWサイト『TRIZホームページ』を創設し, 編集者を勤めている。特に最近は, TRIZのエッセンスをやさしく実現するUSITの普及を進めている。

    1963年に東京大学理学部化学科を卒業後, 同大学院博士課程で学び (1969年理学博士), 1967年に東京大学理学部化学教室助手。物理化学の研究, 特に, 高分解能分子分光学の分野で実験と解析を行った。1980年に富士通株式会社に入社し, 国際情報社会科学研究所にて, 情報科学の研究者として, ソフトウェア開発の品質向上の研究などに従事した。その後, 同研究所, さらに富士通研究所企画調査室において研究管理スタッフとして仕事をした。

    E-mail:  nakagawa@utc.osaka-gu.ac.jp

    本ページの先頭 1. はじめに 2. 背景 3. 3日間セミナー 4. USIT概要 5. 問題の選択 6. 問題定義段階 7. 閉世界法の分析 8. Particles法の分析
    9. 空間・時間特性 10. 解決策生成法 11. 解決策生成法の適用 12. 企業における利用 13. USITの評価と現状 参考文献 中川ETRIA論文 発表用スライド 英文ページ

     
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    最終更新日 : 2002. 5.16    連絡先: 中川 徹  nakagawa@utc.osaka-gu.ac.jp