講義ノート 創造的問題解決の方法論(1)
  導入:  科学・技術の研究と学習の方法 
            - 経験と原理
  創造的問題解決の方法論
− 大阪学院大学情報学部 2年次「科学情報方法論」講義ノート
  (第1回講義, 第3回講義の前半)
  中川  徹 (大阪学院大学) , 2001年 10月 4日, 10月18日
   [掲載: 2002. 2. 4]   [ 注: 固定ピッチのフォントで読んで下さい]
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『科学情報方法論』 (情報学部2年次)   第1回  講義資料
                                              2001年10月 4日  中川  徹

  導入:  科学・技術の研究と学習の方法 - 経験と原理

目標:  本講義の趣旨とやり方を理解し, 身近の問題や今後取り組む勉学上の問題に
       対する学習・習得・研究のアプローチのしかたの概要を理解する。

 

1.  はじめに   (本講義『科学情報方法論』について)

1.1 本講義の趣旨と概要 (『講義要項』より)

  学問分野でも, 技術開発でも, 日常生活でも,
    われわれが新しい状況や困難などに立ち向かい,
        新しいものを創造していくためには,
    その問題を認識し,分析し,解決方法を考え,
      それを具体的な解決策として実現していく必要がある。

  その際に扱う対象や問題の内容は個々の問題ごとに異なるが,
    「情報」を処理していくという大まかな方法としては,
                                              共通するものが多い。
    それは,研究したり,レポートをまとめる方法でもある。

  そこで,本講義では,
    研究や問題解決の基本的なプロセスに沿って,
      「情報」の扱い方・考え方
          (すなわち,最も深い意味での「情報の処理」)
                                                     を説明する。

  このような「情報の処理」の方法論は,
    科学・技術・[実務・]日常生活にとって大事なことであり,
        本科目はそれをまとめて講義する新しい試みである。

    専門科目を勉強する前にぜひ履修することを薦める。

1.2 講義テーマと予定   (修正・調整の可能性あり, 注意)

    10月 4日    (1)   科学・技術の研究と学習の方法:経験と原理

    10月11日    (2)   レポートの書き方 (論文の書き方)

    10月18日    (3)   情報の収集(書誌情報とインタネット)

    10月25日    (4)   試行錯誤と実験,ひらめきと創造性

    11月 1日    (5)   状況と問題の把握  (技術の問題を中心に)

    11月 8日          -- 休講   (英国での学会出張のため) --

    11月15日    (6)   システムの概念:構成要素と関係,階層,機能

    11月22日    (7)   問題の分析:原因結果,根本原因,空間・時間特性

    11月29日    (8)   解決策の方向づけ:理想解をまず考える

    12月 6日    (9)   矛盾とその解決:トレードオフとブレークスルー

    12月13日    (10)  理想性と技術システムの進化の認識

    12月20日    (11)  解決策の構想

     1月10日    (12)  プレゼンテーション:図形言語とプレゼンテーション法

     1月17日    (13)  --  予備  (レポートの書き方など)--

1.3 学習上の留意点

  例をいろいろ用いて, 最近の研究も含めて, 分かりやすく話す (つもり) 。

  教科書:  指定なし。毎回プリントを渡す。

  欠席・遅刻をしないこと (分からなくなるから) 。

    9:00  (定刻)  出席のこと。講義資料配布。
    9:05          授業開始
    9:20          これ以後の遅刻は欠席に準じるものとみなす。
   10:25          授業終了。受講カード記入 (全員 (遅刻者も含む))。質疑可。
   10:30  (定刻)  終了・退室   [第2講時に中川がゼミI を教えるので]

  欠席 (および9:20以後の遅刻) が5回以上の者には, 基本的に単位を認めない。

  レポート提出で成績を評価する。
      テーマは本講義に関連があるものを自分で選ぶ。
      書き方は講義中で説明する。 (特に次回の講義をよく聞くこと)

      12月初旬アウトラインを予備提出する。 (12月 3日 (月) 締め切り)
      学期末に正式に提出する。

  雑談禁止。 質問および発表は奨励

 [参考書]   超発明術TRIZシリーズ5,思想編『創造的問題解決の極意』
            Y.サラマトフ著, 中川  徹  監訳, 三菱総研訳, 日経BP社, 2000年11月。

  ☆  学習するためのポイント:

      意欲と動機     視る・聴く       読む     実践する・自分で考える

 

2.  日常生活から科学・技術へ  (講義への導入)

  技術は 必要から生まれる。
  科学は 観察と疑問から始まる。

 
デモ課題:   「額縁をひもで壁に掛ける。傾かないようにしなさい。」 
 
(a)  正常な場合 
(b)  額縁上でのひもの取り付け位置がアンバランスな場合 
(c)  額縁の重さが左右でアンバランスな場合
     これらの場合にどうすれば, うまく掛けられるか?  ---> 日常の技術
 
 
 
 
 

     どうして傾くのか?  傾いた安定な位置の特徴は?  --->  科学の芽生え, 応用
 
 
 
 
 
 
 

         物理 (理科) の言葉で表わしたキーワード:
           重心, 張力, 力の合成, 力の平衡, トルク (回転力), トルクの平衡
 

              [注:  デモ実験  および  黒板での説明 に約30分かかった。]
 
 

     掛けた後に傾かない額縁掛けキットの工夫は?  --->  新しい技術の開発

 

 3.  科学と技術のアプローチの概要

  科学と技術の学習・研究・利用において, つぎのような基本的なやり方がある。

    (0) 日常生活のレベルにおける 知識・技術の理解・習得・利用

    (1) 観察 → 経験的知識 → 仮説 → 実験検証 のアプローチ

    (2) 原理・理論 → 科学的推論 → 応用 のアプローチ

    (3) 問題 → 分析 → 解決策 → 応用 のアプローチ

  科学や技術を有効に利用するためにも, また科学や技術をさらに発展させるためにも,
   これらのアプローチを適切に併用していくことが望まれる。

    上記 (1)は, (理科教育で取り上げられているが,不十分であり)
        大学教育でも「実験・実習」および専門分野のテーマでマスターすべきもの。

    上記 (2)は (理科教育から始まり) 科学技術諸分野の専門教育で教育される。
        高度な理論を専門的に勉学・習得しなければならない。専門化が進んでいる。

    上記 (3)が, 実社会で本当に必要とされるアプローチであり,
                 (1)や(2)のアプローチを総合して始めて実現できるものである。
        この教育が従来の大学教育で非常に希薄であった。
          ==>  本講義『科学情報方法論』では, この(3)をきちんと講義する。
 

    [注:  ここまでで第1回の授業は時間切れ。以下の資料は第3回の最初に説明した。
          第3回講義: 2001年10月18日]


 

4.  観察 → 経験的知識 → 仮説 → 実験検証 のアプローチ

4.1  科学は 観察と疑問から始まる

    観察:   注意深く見ること。
              いつも同じようでも, 変化する。
              似ているようでも, 違う。
              全く違っているようでも, 共通のことがある。
              でたらめのようでも, 規則性がある。
              何かが起こるのには, わけ (原因) がある。

    疑問:   どうして? なぜ?   (原因, 理由, しくみ, ...)
            どのように?       (現象, 過程, ...)

    試行:   単純に起こるのを見るだけでなく, 何かを起こしてみる。
              同じことがもう一度起こるかを試してみる。
              何かを変えると, 同じことが起こるか, 違ったことが起こるかをみる。
              起こらないようにすることをやってみる。 ...

4.2  経験的知識から 仮説を得る

    経験的知識を得る:  観察の結果, 試行の結果から得る知識。
                       個別の結果を集めて, まとめる, 集約する, 抽象化する。

         まとめるには, 個別的 (と思う) 事実・側面を捨てて,
                       一般的 (と思う) 事実・側面をとりだす。

    経験的知識から「仮説」を考える:
      「仮説」とは, いろいろな経験的知識に基づいて,
                    それらを説明することができると思う「仮の理論」である。
            経験的知識よりもさらに一般化したもの, しくみや原因を考えたもの。

        しかし, 仮説はいつも正しいとは限らない。
                       (もしかしたら間違っているかもしれないと自覚している。)
            そこで, より詳しくは 「作業仮説」という。 (作業中のものという意味)

4.3  仮説は実験で確かめる必要がある

  仮説が本当に正しいか, どれだけ普遍性があるかは, 実験で確かめる必要がある。

    実験にもいろいろな段階がある。

   ・  いままでの経験と似た条件・状況を作り, 再現することを確かめる。
   ・  いままでの経験と本質的には同様だが, 少しずつ異なる状況で, 確かめる。
   ・  仮説が正しければ含まれているはずの状況で,
         いままでの経験とは随分異なる状況を作って, 確かめる。

   ・  仮説が正しければ, 旧来の考えとは異なる結果になるであろう状況を作り,
         その結果を確かめる。
   ・  この仮説と対立する別の仮説に対して,
         両者で異なる結果になるであろう状況を作り, その結果を確かめる。

  これらの実験の結果を判断して, 実験結果をよりよく説明できる仮説を見出す。

4.4  観察 →経験知識 →仮説 →実験確認 のプロセスを「帰納」という

  「帰納 (きのう)」:  観察・経験に基づいて, 知識を一般化し, 獲得すること。

                 人類のすべての知識はこの「帰納」によってスタートする。

    例:  幼児が「犬」というものを知るとき:
           沢山の犬を見せる。
           また, (似ているが) 犬でないもの (猫, きつね, 狼, ...) を見せる。

    例:  ある病気に効く薬草・薬物を見つけるとき
           例えば, 「漢方医薬」はこのようにして発見・確立されてきたものである。
                       中国の前漢?後漢の時代 (BC 200年頃?AD 200年頃) という。

  帰納による推論では, その理論 (仮説) の正/誤にいつも注意が必要である。
      とくに, 経験した範囲より拡大して適用しようとすると, 要注意。

 

5.  原理・理論 → 科学的推論 → 応用 のアプローチ

5.1  「原理」は高度に抽象化され・検証された仮説である

  現在の科学・技術の基礎をなすのは, 「自然法則」特に物理学の諸「原理」である。

  物理学の諸「原理」は, 高度に抽象化され, 高度に実験で検証された仮説である。

    例えば,  ニュートンの万有引力の法則および古典力学
             マクスウェルの電磁気学の法則
             シュレーディンガーの量子力学     など

  これらの特徴は,

      数学的な理論構成 -- 数式で厳密に関係が表現される。
      定量性           --  (簡単な系では) 値をきちんと計算できる。
      因果性    -- 現在の状態が定量的に表現されると, 将来も計算できる。
                     (量子力学では不確定性を含んで計算できる。)

  これらの「自然法則」は, 「発見」されたものである。
      「自然法則」は, 人間が知ろうと知るまいと, 厳然と存在していた。
           だから, 「発明」でなく「発見」という。
      自然 (特に非生物の自然) に関わるすべての現象に共通に適用される法則。

  これらの「原理」の良否を判断するのはつぎの基準である。

    ・  実験による検証:  実験により, 矛盾が見出されないこと。

    ・  簡潔性:   最も単純に表現している。
               「オッカムのカミソリ」:  単純・簡潔であればあるほどよい。
                                        「牛刀で狗肉を切る」のはだめ。

    ・  普遍性:  広い範囲で (空間的・時間的・条件的に) 適用可能。
                   条件が少し違うと適用できないのでは, だめ。

    ・  根本性:  他の原理に依存せず, 他のいろいろな法則を説明できる。

    ・  応用性:  実際の問題に応用しやすく, 多くの現象を説明できる。

  物理学のこれらの「原理」は, ほぼ「真理」であると思われている。
    それでも, なお, 物理学の新しい「発見」が続き, いろいろ修正されている。

    例:  ニュートンの「力学」は, 原子・分子の世界では成り立たず,
                「量子力学」が見出された。
           それでもわれわれの通常の世界では, 「力学」が十分正しい。
               「力学」は「量子力学」のマクロの世界での近似である。
           半導体の性質, 化学反応のしくみなどでは,
               原子・分子を考える必要があるから, 量子力学を使う。
                (その「結果」を, 普通のことばで解説することはできる。)

  物理学では, 特に素粒子論や宇宙論の分野で新しい根本的な原理が追求されている。

5.2  原理からいろいろな分野の「理論」が導かれる

  物理学の基本原理を, さまざまの (単純化した) 問題に適用できる。
    適用した結果を整理して, その問題 (分野)での「理論」が作られる。

    例: 古典力学の原理  → 機械にはたらく力 → 機械の作動の理論
                        → ロケットに働く力 → ロケットの軌道の理論

        電磁気学の原理  → 電流が作り出す磁力 → 電磁石の設計の理論
                        → 電磁波の伝搬   → マイクロウェーブの伝送の理論

        量子力学        → 分子の中の力   → 分子の構造の理論
                        → 半導体の中の電子の振る舞い → 半導体の物性の理論

  基本原理からどのように「理論」が導かれたかを正しく知っておくことが大事。
    しばしば複雑な数学的計算 (数式の導出) が必要になる。
      そして, この過程で, 厳密な計算ができないので,
                   しばしば適当な「近似」が必要になる。

    例えば,
      「機械の中の一つの部品は単一の均一な材料でできている。
          丸棒は完全な円形断面で, 太さ一定で, 傷一つない。...」

      「水を連続で均一な「液体」であると考え, 水分子の存在は無視する。」

      「分子の振る舞いを考えるには, 電子が原子核より軽くて速く動いているから,
          原子核は (安定な位置に) 止まっていて, 電子だけが動くと近似する。」

  さまざまの科学・技術分野で実際に使われている「理論」は,
      このような「近似」に依存したものである。

    「近似」:  原理の適用を容易にするための仮定, 簡易化, 単純化。
               より厳密に考えると正しくはない (と分かっている) が,
                 正しいものからの違いが大きくないと期待されるような
                   おおよその扱い方。
                 (違いそのものを厳密に知ることは不可能だが,
                    違いのおおよそは推定しておく必要がある。)
               より複雑な問題を扱うために必要になる。

    なお, 多くの「理論」は, 「原理」からの近似として得られるだけでなく,
                            前述の実験的な「仮説」としても得られる。

          これらが「モデル」と呼ばれることも多い。

5.3  実際の問題に「理論」を適用して, 結果を推論する

  実際の問題 (例えば, 電気回路や機械の振る舞い) に「理論」を適用する。

      具体的な条件設定 (例えば, 回路部品の性質や電圧など)
          ↓  適切な「理論」の適用
        結果としての振る舞い

  このとき, 注意すべきことは,
    ・ 適用する「理論」 (の中に含まれている近似) が,
           扱おうとしている問題の条件設定に対応していることが必要。
    ・ 「理論」による式を作れても, それを数学的に解くことが難しいことがある。

  また, 理論を適用して振る舞いを計算することが本当の目的ではなく,
      上記の「具体的な条件設定」に含まれるものの性質や量が未知であり,
          それらを求めることが本当の目的である場合も多い。

        これを「逆問題」という。
          条件設定をいろいろに変えて, 望ましい振る舞いをするものを探す。

5.4  原理・理論 → 科学的推論 → 応用 は「演繹」のアプローチである

  原理・理論を設定して, それを具体的設定条件に適用して推論するのは,
    「演繹 (えんえき)」のアプローチである。

    原理・理論が正しく, 推論が正しければ, 推論結果も正しいと考えられる。

      これは「科学的だから正しい」と主張されるときに多い論理であるが,
        本当に, 原理や理論が正しいか (実際の問題を反映しているか),
                  推論に見落としや誤りがないか, を上記のようにチェックすべき。

5.5  物理学は自然と生命の認識のすべての基礎 (Yes! and No!)

  現代の自然認識においては,

    物理学の基本原理が, すべての物理的現象を説明するだけでなく,

    化学の基礎 (分子の性質や反応など) は物理学 (特に量子力学) で与えられ,

    生命科学の基礎 (生体分子や遺伝情報など) は化学と物理学で与えられるから,

    「自然と生命の全ては物理学によって認識できる」 と考えられる。

  これは, Yes ! であり, 同時に No! である。

  No! である理由は,
     ・ 物理学自身が多くの未知の問題を持っている。
     ・ 基本原理からすべてを説明することはできず, いつも「近似」が必要になる。
     ・ 量子力学的不確定性だけでなく, 乱流などの確率的な不確定性がある。
     ・ いままでの自然科学で明らかにできていない問題はやはりまだまだ多い。
     ・ 原則的に認識できることと, 具体的な個々の現象を説明できることとは違う。

 

6.  問題 → 分析 → 解決策 → 応用 のアプローチ

6.1  「問題」の認識

  ここでいう「問題」は, 何らかの困難/障害/害のある, 克服したい状況をいう。

    客観的に何か困難な状況があっても,
        当事者がそれを「問題」として克服しようと考えていないならば,
            その当事者にとっては, 本節でいう「問題」ではない。

    だから, ここの「問題」は, 主体的にどう「認識」するかが最も重要である。

  同一の状況であっても, 「問題」のとらえ方は, 人によって異なる。
    ・ 困難/障害/害 の受け方, 受け取り方による違い
    ・ 状況の認識のしかたによる違い
    ・ 社会的な立場による違い
    ・ 克服したい方向, 理想の認識による違い
    ・ 困難/障害/害の原因に関する認識の違い

  「問題」認識では, 特につぎの点を明確にする。
    ・ 何が求められているのか?
    ・ 何が克服したい困難/障害/害であるのか?
    ・ ある範囲の「問題」のうちの, どの「問題」に焦点をしぼるのか?

6.2  問題を分析する

  つぎのような点を明らかにする (分析する):

    ・ 困難/障害/害 のある状況には, どんなものが関与しているのか?
    ・ 関与しているもののそれぞれの性質, およびそれらの間の関係・相互作用は?
    ・ 問題が明確になる前の, そのシステムの本来の意図・役割はどうか?
    ・ 困難/障害/害 のある状況にいたった原因, メカニズム, より深い原因は何か?
    ・ 望ましい/理想の状況はどんなものか? どんな方向か?

6.3  解決策を考える

  つぎのようなことを考える (発想する):

    ・ そのシステムの本来の意図や働きを回復・強化するにはどうすればよいか?
    ・ 困難/障害/害 の原因となっているものを無くすにはどうすればよいか?
    ・ 望ましい/理想の状況を実現するには,
           どのような働きをするどのような性質のものを考えればよいか?
    ・ いろいろな解決策を適用したときに, 状況はどのように変化するか?
           もし新たな問題が生じそうなら, どうすればそれを克服できるか?

6.4  解決策を適用する

  この場合の「適用」は, 実際の状況を改善するために解決策を試行・実行すること。

      単に考察したり, 計算で求めたりすることとは異なる。

      「実行」には, 社会的・技術的ないろいろな状況変化を主体的に起こす必要。
          「実行」が成功するためには,いろいろな準備が必要であり,
                          実践するための心構えや方法が必要である。

6.5  問題 → 分析 → 解決策 → 応用 のアプローチ を「問題解決」という

  このアプローチは, 実際上の必要に迫られて行う, 実用のアプローチである。
      実社会で, 日々必要となるのは, このような実践的アプローチである。

    分析段階では, 4節の「帰納」的方法を, もっと具体的に使う必要がある。

    解決策を考える段階では, 5節の 「演繹」的方法と科学的素養が必要であるが,
        望ましい結果を実現するためのさまざまの方法を考え出す必要がある。
            5.4節でいう「逆問題」よりもさらに逆上った思考を要求される。
          5節では, 条件設定 → 結果の予測 という推論であるが,
          本節のアプローチでは, 実現手段 (すなわち条件設定) を探すことが必要。

  これは, 科学技術における「技術」の本来的な立場のアプローチでもある。

     (例えば, 情報システムを設計・構築するのは, 「技術」開発そのもの。)
 
 
 
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講義ノートトップ 1. 導入: 経験と原理 2. レポートの書き方 3. 情報収集(1) 書誌情報 4. 情報収集(2) インタネット 5. 問題を見つけて絞り込む 6. 発想とは
7. システムとは 8. 問題分析(1) 困ることの原因 9. 問題分析 (2) 機能・属性分析 10. 問題分析(3) 空間時間特性と理想解 11. 解決策生成(1) 知識ベース 12. 解決策生成 (2) ブレークスルー 13. 解決策生成(3) 解決策の体系化

 
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最終更新日 : 2002. 7.15   連絡先: 中川 徹  nakagawa@utc.osaka-gu.ac.jp