WTSPプロジェクト: ETRIA TFC2023 発表(2023年9月14日) |
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WTSPレポート (6) 世界のTRIZとTRIZ周辺サイトのカタログ集 (γ版の作成準備) |
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ETRIA (欧州TRIZ協会) TRIZ Future Conference (TFC) 2023 (2023. 9.12 - 14) |
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2023年 9月 14日 Offenburg University (独) オンライン(Zoom) |
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和訳: 中川 徹 2023年 9月 24日 掲載: 2023. 9.26 |
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掲載: 2023. 9.18; 9.26 |
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編集ノート (中川 徹、2023年 9月18日、9月26日)
9月12-14日に、ETRIAのTRIZ Future Conference (TFC2023) が、ドイツのオッフェンブルグ大学を事務局として、オンライン(Zoom)で開催され、私(達)も発表しました。英文ページには、発表論文(HTML) および正式論文へのリンク(Springerで出版、https://doi.org/10.1007/978-3-031-42532-5_34 )、英文スライド(15枚)(HTML PDF )、発表ビデオ(.mp4、時間11分)を掲載しました。
この和文ページでは、発表論文を全文和訳 して掲載予定ですが、数日お待ち下さい)。発表の持ち時間は15分(質疑応答を含む)と短かったので、スライドは15枚だけです。基本的には日本TRIZシンポジウムと同趣旨ですので、そちらのスライドを参照下さい。 (2023. 9.14)
発表論文の和文全訳 を掲載いたします。現段階での世界WTSP カタログ集の全貌をきちんと説明しております。全体構成は、目次をご覧ください。 (2023. 9.26)
目 次
WTSPプロジェクトのビジョン、 世界WTSPカタログ集の目標と要件、 WTSPカタログ集の期待される「価値」、 誰がどのようにして、カタログ集の「価値」を「創造」するのか?、 世界WTSPカタログ集の開発の簡単な歴史
個々のウェブサイトの紹介と評価、 世界WTSPカタログ集[14]におけるウェブサイトの選択と配列 、 世界WTSPカタログ集の構造 、 世界WTSPカタログ集の構築、更新、利用、
世界WTSPカタログ集中のTRIZウェブサイト、 世界WTSPカタログ集中のTRIZ周辺ウェブサイト
4. 世界WTSPカタログ集のγ版構築に向けたWTSPの最近の活動
協力活動の不活発さを克服するためのWTSPの推進、 TRIZウェブサイトの世界WTSPカタログ集を強化する最近の活動 、 TRIZウェブサイトの世界WTSPカタログ集の暫定状況
TRIZコミュニティにおける不活発な態度の困難を克服する、 TRIZを代表するウェブサイト「Systematic Innovation Review」の提案
5。おわりに |
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日本TRIZシンポ発表ページ | スライド(25枚) | 発表ビデオ |
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発表論文 (和文全訳): ETRIA TFC 2023
WTSPレポート (6) 世界のTRIZとTRIZ周辺サイトのカタログ集 (γ版の作成準備)
*中川 徹 (大阪学院大学、日)
Darrell Mann (Systematic Innovation, 英)
Michael Orloff (Academy of Instrumental Modern TRIZ, 独)
Simon Dewulf (AULIVE & Innovation Logic, 豪)
Simon Litvin (GEN TRIZ, LLC, 米)
Valeri Souchkov (ICG Training & Consulting, 蘭)ETRIA TFC 2023 発表 (2023年9月14日)
DOI: https://doi.org/10.1007/978-3-031-42532-5_34和訳: 中川 徹 (2023年9月24日)
[要旨]
本論文はWTSP (世界TRIZ関連サイトプロジェクト) の第6回年次レポートである。われわれは、TRIZ周辺(すなわち、TRIZの周りの創造的問題解決方法論全般) の世界ウェブサイトカタログ集 (419サイト収録) を2022年9月までに作成した。しかし一方、 TRIZの世界ウェブサイトカタログ集は、その時点で62サイトしか収録していなかった。多くの国々で自発的な協力が得られなかったからである 。
われわれの困難は「多くの TRIZ関係者たちがWTSPプロジェクトを支持しているが、実際に世界WTSPカタログ集を作る活動をする人が極めて少ない」ことである。その理由は明らかで、「TRIZの有能な人たちは、いつも忙しく仕事をしており、余分なボランティア活動をする時間ない」からである。この困難を克服するためにわれわれは、「ビジョンを明確にし、枠組みを構築し、例を示し、メールを送り、成果を発表するなど」のさまざまな努力を、5年間そして今年(2023年)と続けてきた。
いまわれわれは、その隠された理由の核心を理解するに至った。「人々はまだカタログ集を本当には見ていないから、世界WTSPカタログ集の(可能な)「価値」(「有用で魅力的」)をまだ認識していない。」
そこで、本論文が記述しようとしているのは、「カタログ集の構造と例を示して、その可能な「価値」を説明し、そして、さまざまな国のTRIZ専門家であるわれわれがその「価値」を創り出すべきだということと、そのような「価値創造」はすでに実証してきた手順を使って達成可能であることを、人々に納得させる」ことである。本論文は、世界58カ国における実際の/目標の状況をまとめて、世界WTSPカタログ集のγ版の作成の準備をしようとするものである。
キーワード: WTSPプロジェクト、TRIZウェブサイトの世界カタログ集、TRIZ周辺ウェブサイトの世界カタログ集、国際協力、WTSPカタログ集の可能な価値
1. はじめに
本論文は、TRIZと関連する方法論の世界のウェブサイトのカタログ集のシステムを構築することを目的とした、WTSP (World TRIZ-related Sites Project) の第 6回年次レポートである [1] 。このプロジェクトは、世界の TRIZ コミュニティの支持を得て、ボランティアベースで設立•運営しており、 『TRIZ ホームページ』ウェブサイト [2] のもとで、中川徹 (WTSP プロジェクトリーダ) が WTSP ウェブサイト [3] を運営している。
本節では、われわれの「ビジョン/目的」と「目標/要求項目」を説明し、期待される「価値」とその「価値の創り方」を明らかにする。世界WTSPカタログ集の「価値」を理解することが、「概要」に書いたように、われわれのプロジェクトの困難を克服する鍵である。
1.1 WTSPプロジェクトのビジョン [1, 4]
高度に発達したテクノロジーと輻輳した社会システムの今日の世界で、われわれ人間と社会は数々の難問に直面し、価値観、戦略、方法、情報、社会的/物理的資源などを使って、その解決に苦闘している。
ここでは、創造的問題解決の方法論の全般に焦点を当てる。特に、TRIZ (発明問題解決の理論)の技法を取り上げる。TRIZには、システムに関する深い概念、矛盾の解決、情報処理の実践、広範な適用結果などがあるからである。
そのような方法を理解し適用するためには、信頼性が高く体系化された情報資源が必要である。(今日では)どんなキーワードを使っても、ウェブページの断片からなる情報の洪水を簡単に手に入れることができる。しかし残念ながら、そのような情報は雑多でノイズが多く、良いものと悪いものが混在しており、信頼性に欠ける。
われわれのWTSPのビジョンは、「TRIZと創造的問題解決の方法論の全般という分野において、信頼できる情報資源を世界的規模で構築すること。それは、一般に公開され、理解しやすく、さまざまな側面をカバーし、拡張可能で、常に新しく更新されているべきである」 [1] 。
このビジョンを達成するために、以下の数項目の基本的な選択をした。
情報資源の単位としてのウェブサイト: 通常の単位は、論文、記事、ウェブページ、特許などである。それらはある時点で作成・記録されたもの(通常は更新されない)であり、比較的小さく、さまざまな所 [機会・媒体など] で発表/公開される(後で [関連するものを] グループにまとめないと十分に理解できない)。書籍は情報の単位として良いが、読者は個別に購入しなければならない。学術雑誌、 [学会など] 会議の論文集、組織や国の文書庫などは、はるかに大規模で、信頼できることが多いが、十分な分類がないまま、多くの小さな文書がリストアップされている。一方、ウェブサイトは多くの場合、あるグループの考えや活動を表すもので、理解しやすく体系化された形で一般に公開され、数年ないし数十年にわたって最新の状態に保たれ、各サイトで一定の品質が維持されている。
ウェブサイトのカタログ集: カタログは単純なリストではなく、精選したアイテム(=ウェブサイト)を、簡単/詳細な説明を付け、カテゴリ分けをして紹介している。われわれは、これらの基本要件を満たし、信頼性が高く、有用なコンテンツとなるように、特に努力をしている。
カタログ集の二つの柱: TRIZウェブサイトのカタログ集とTRIZ周辺ウェブサイトのカタログ集の二つの柱を持ち、創造的問題解決の方法論の全般を網羅する。TRIZが創造的問題解決のための最も重要な方法論の一つであり、TRIZの人々はその他の方法論をも学ぶべきであり、逆に他の方法論の人々もTRIZを学ぶべきであると、われわれは信じている。
世界カタログ集と国別カタログ集: われわれの基本戦略は、各国で自国のカタログを作成し、各国のウェブサイトの中で世界的な価値を持つものを集めて世界カタログ集に統合することである。ただ実際には、自国のWTSPカタログ集を作成した国は [まだ] ごくわずかであり、われわれはむしろ直接に世界WTSPカタログ集を作成している。
公表システムとしてのWTSPウェブサイト: WTSPカタログ集の体系は、 WTSPウェブサイト上に、無料で公開する。WTSPカタログ集は、WTSPウェブサイト [3] 上でインタラクティブに利用できるほか、ダウンロードしてユーザの PCで利用/印刷することもできる。
1.2 世界WTSPカタログ集の目標と要件 [4]
われわれは、上記のビジョンに基づき、WTSPカタログ集の目標を設定している:
「TRIZおよび関連する創造的問題解決の方法論全般の分野において、世界中の精選したウェブサイトを集めたカタログ集を創成する。それは、ウェブサイトの形で、一般に公開され、無料で、容易に理解でき、さまざまの側面をカバーし、作成/拡張が容易で、最新の状態に維持されるべきである。」
カタログにとっての3つの基本要件は次のようである。これは、ユーザの立場から見て、どんなカタログにも要求されるものであり、本プロジェクトで見出したものである。
要件1: 良いもの(=ウェブサイト)を広く集め、それらを評価して精選し、カテゴリ別に示す。
要件2: 個々の項目を、適切/公正に、簡潔/詳細に紹介し、読者/利用者を良い項目へと導く。
要件3: ユーザがカタログの中から、現在の興味やニーズに合った1つまたは複数の項目を、容易に見つられること。
われわれのWTSPプロジェクトは、これらの基本的な要件を満たすように取り組んできた(2節、3節参照)。
1.3 WTSPカタログ集の期待される「価値」 [4、5]
ここで、WTSPカタログ集(特にTRIZウェブサイトのもの)に期待される「価値」を、さまざまな利害関係者の観点から明らかにする。
サイトオーナにとって: 個々のウェブサイト主宰者には、自分のウェブサイトを、簡潔に、標準の書式で、また自由書式で十分に、紹介する機会が与えられる。特に自由書式の場合には、図解や表などを使って、A4で2頁〜20頁余に渡って、自分のウェブサイトを存分に紹介することが奨励される。その紹介文は、他のTRIZ専門家たちから高く評価され、多くのTRIZ関係者に魅力のあるものであるべきだ。
TRIZ指導者/専門家/実践者にとって: カタログ集は、世界のTRIZ関連ウェブサイトの全貌を一覧として提示する。これらの人々は、優れたウェブサイトや新しいウェブサイトをすばやく探し、TRIZやTRIZ周辺の発展と進歩を理解し、ウェブサイトやその参照文献を通じて、新しいアプローチや方法を研究することができる。
TRIZの実践者/利用者/学習者にとって: カタログ集は、TRIZおよびTRIZ周辺を学習/研究するために、優れたウェブサイトとその内容に関する情報源として有用である。われわれが気づくのは、「このような人々が最初に興味を持つウェブサイトは、TRIZの方法を容易に学び/適用でき、母国語で書かれていて、母国で活動しているものである。その後、より進んだ実践者/利用者の一部が、世界WTSPカタログ集の中の、単純だが優れたウェブサイトを、読み/利用するようになる」ことである。
1.4 誰がどのようにして、カタログ集の「価値」を「創造」するのか?[4、5]
誰が?---- 答えは明確である。個々のサイトオーナたち、そして集合的にTRIZリーダ/専門家/実践者たち(ほとんどのサイトオーナを含む)である。個々のサイトオーナは、自分のウェブサイトの紹介を提示して、多くの読者/ユーザ/専門家を惹きつけることにより、カタログ集の「価値」に貢献する。TRIZの指導者/専門家/実践者のグループは、サイトオーナたちからウェブサイトの紹介を集め、精選したウェブサイトを分類して、世界カタログ集の(各国)部分の原稿を編集することによって、WTSPカタログ集の「価値」に貢献する。世界WTSPカタログ集の有用性は、優れたウェブサイトの紹介の、網羅性、選択性、分類・配列から生まれる。ウェブサイトの公正で偏りのない選択が、世界WTSPカタログ集の最も重要な「価値」であり、それは、世界のTRIZコミュニティによって創られるべきものである。
どのようにして? ---- 理想的には、(ほとんど) すべてのTRIZの指導者/専門家/実践者たち(サイトオーナを含めて)が、世界的に協力することである。実際には、各国でのそのような人々の協力がよい基礎になるだろう。
われわれが、TRIZの実践者/利用者/学習者の初期の振る舞いに気づいているからには、われわれはTRIZのウェブサイトの国別カタログ集を作成するべきである。そこには、TRIZの紹介を、初心者レベルから専門家レベルまで、各国の母国語で、また世界の優れたTRIZドキュメントの母国語への翻訳を含めて、掲載するべきである。なお、世界WTSPカタログ集には、世界各国から少なくとも一つのウェブサイトを掲載して、その国でのTRIZのアプローチや普及状況を反映するのがよい。
1.5 世界WTSPカタログ集の開発の簡単な歴史
(2017年12月−2018年) 中川が、ボランティアベースの国際プロジェクトとしてWTSPを提案し、5人のTRIZリーダをグローバル共同編集者として招聘した。日本のWTSPカタログ集をパイロットモデルとして作成。 TFC2018で、30カ国から80名のメンバがWTSPに参加 (または参加表明)した。[1]
(2019年) 世界WTSPカタログ集の予備版(Preliminary Edition)を迅速に構築した。TRIZサイトは4カ国からの原稿と2件のインターネット探査で、またTRIZ周辺サイトは5件のインターネット探査の結果で、カタログ集を創った。ボランティアのWTSPチームを結成することの困難さが多くの国で明らかになった。[6]
(2020年) β版を作成・公表した[4] : 4 つのTRIZ国際会議(MATRIZ、ETRIA、AI、ICSI)と日本のTRIZシンポジウムで、WTSPの発表をオンラインで行った。
(2021年) 中川が、TRIZ関連サイトのインターネット探索を52カ国について個別に行った[7、8]。
(2022年) TRIZ周辺サイトのカタログ集を、インターネット探索の結果を改良して、充実させた [9]。英国とドイツのTRIZサイトカタログ集を中川が作成した。[10,11]
(2023年) 「世界TRIZサイトカタログ集への寄稿要請」を、TRIZコミュニティに集中的に要請し、2023年9月までにγ版の作成をめざした [12]。しかし、その応答は現在遅々としている。
2. 世界WTSPカタログ集の枠組 [4]
2020年10月にβ版を作成したとき [4]、世界WTSPカタログ集の枠組も基本的に確立した。本節にその枠組を示す。
2.1 個々のウェブサイトの紹介と評価 [13]
WTSPカタログ集の基本的な項目として、われわれはウェブサイトを選択した(1.1節参照)。本節では、それらをどのように収集し、評価し、提示し、紹介するかについて述べる。
分野範囲: 「TRIZ」 という用語は、広く世界中で使われており、特に曖昧性はない。しかしそれでも、多くの派生した方法をカバーするためには、次のようなキーワードを含める必要がある:ТРИЗ、TIPS、Systematic Innovation、I-TRIZ、xTRIZ、MTRIZ、SIT (ASIT、USIT)、Bio-TRIZ など。
他方、「創造的問題解決の方法論の全般」という広い分野は、歴史的にさまざまな人々によって開発された多種多様な方法を含んでおり、その諸分野をカバーする適切で広く使われている用語が存在しない。そこで、そのような広い分野でのウェブサイトを検索するためには、われわれは一般的な用語をキーワードとして用いた数セットのインターネット検索を行った。すなわち、創造的思考の方法、問題解決、イノベーション、品質/価値/コスト/生産性の管理、特許/知財など。また、「創造的問題解決の方法論の全般」の短縮形として(WTSPでは)「TRIZ周辺」という用語を用いる。
ドメイン: われわれが関心を持つウェブサイトは通常、ドメインが一つのURLを持ち、多数のサブフォルダ(サブドメイン)とウェブページを持つ。他の場合には、一つの組織の大規模なウェブサイトの特定のサブサイトであったり、あるいは、さまざまな役割(たとえば、言語や地域など)を持つ複数のドメインの体系を形成していることもある。
タイプ/役割: TRIZに関連するさまざまな活動に対応して、TRIZ関連のさまざまなタイプのウェブサイトを収録したい。そのさまざまなウェブサイトを分類するためには、ウェブサイトの役割 (それはウェブサイト主宰者の役割に近い) が重要であることを、われわれは見出した [13] 。サイトの役割の分類を次のようにした: (a) 情報発信サイト、(b) 推進組織、(c) 公共組織、(d) 学術組織、(e) 開発組織、(g) 情報共有、 (h) ユーザ組織、(i) 個人。そしてそれらをさらにアドホックに二次分類した。各ウェブサイトの役割は、二次分類での役割名の数個のリスト(そのサイトでの重要度順の)で示した。特に、第一、第二の役割の指定が大事である。
評価基準: カタログ集に収録するためには、各ウェブサイトを評価し選定することが必要である。われわれは、ウェブサイトの評価基準を以下のように複数の側面で設定している:
品質(信頼できる、正しい、斬新、オリジナルの、理解できる、最新、...)
有用性(役に立つ、参考になる、便利、実用的、効果的、...)
魅力(面白い、分かりやすい、図解入り、...)
アクセス可能(公開、無料/低コスト、広く利用されている、...)
スコープ(トピック/分野の範囲、活動範囲、包括的、...)
これらの評価基準はすべて定性的である。各ウェブサイトにはそれぞれに強みがあり、弱みがある。われわれは、各ウェブサイトがこれらの側面のいくつかで特に優れており、他の側面ではそれなりに優れていることを望んでいる。われわれは、多様なウェブサイトを、その強みの側面を重視して評価する。
評価レベル: われわれは、ウェブサイトを5段階で評価し、以下の記号で表示する:
◎: 世界WTSPカタログ集で 最も重要(上位30サイト程度)
○: 世界WTSPカタログ集で 重要 (次の100サイト程度)
□: 世界 WTSPカタログ集で 収録価値あり
△: 各国WTSPカタログ集で 収録価値あり
―: WTSPカタログ集に 収録価値なし、あるいは無関係
ウェブサイトの5段階評価は、TRIZサイトカタログ集とTRIZ周辺サイトカタログ集とで別々に行う。
ウェブサイトを評価すること(特に他の(競合する)専門家のウェブサイトを評価すること)は微妙な問題を含むが、実用上の理由から必要である(基本要件1)。評価判断の不確定さ(幅)を示すために、二重マークを使うことがある(例えば、○□は○または□を意味する)。
◎と○のレベルは、(おおよその)数を限定しており、事例を積み重ね、相互に比較して初めて明らかになる(それでもまだ定性評価である)。
[ノート:多くのサイトオーナは、自分のサイトを他者、特に競合する他者に評価されることを好まない。多くのTRIZリーダ/専門家/編集者は、個人的/組織的対立を恐れて、他者のウェブサイトを評価することを躊躇する。しかし、評価することはどんなカタログにとっても絶対に必要である。ウェブサイトの単純なリストでさえ、(暗黙の)評価の後に作られている。
われわれは、プロとして真実と寛容性を持ち、優れた評価で作られたカタログの価値を理解することで、この精神的な障壁を乗り越えなければならない。少し気が楽なのは、われわれはランキングするのではなく、多面的な評価基準で、とくに強みの面を重視して、5段階のレベルに分けていることである。サイトオーナは自分のサイトの評価レベルを提案でき、編集者は他の多くのサイトと比較して評価レベルを調整することがある。評価レベルは公開され、後に修正されることもある。サイトオーナがより高い評価レベルへの修正を主張したい場合には、サイトの詳しい紹介(自由書式(c))をプロジェクトに提出することが奨励される。]
インデックスのための基本情報: WTSPカタログ集のインデックス部には、各ウェブサイトに関する以下の情報が使用され、表示されている。
サイトコード: 国/探索コード + ウェブサイトを識別するための番号。
サイト名: 通常、「略称(正式名称)」または 「組織:ウェブサイト名」
サイトドメインURL: 必要に応じて複数のURLを表示することもできる。
サイトの所在地: ウェブサイトの運営組織の本部が所在する国。
サイトの言語: ウェブサイトを記述している言語。複数のことも。
サイトの役割: 役割を重要度の高い順に、複数のサブカテゴリで示す。
評価: 評価したレベルを5つのアイコンで表示する:◎○□△―。
一行説明: 1行での短い紹介文。長いよりは省略した方がよい。
備考: 特に、サイトの詳細説明(c)のファイル名を記述。
ウェブサイトの説明は、以下の3つのレベルで行う:
(a) 簡単な説明: 自由書式、3〜15行程度、通常、トップページや「About us」ページなどからの抜粋を使用し、調査者/推薦者が執筆する。
(b) 標準フォームでの説明: 表形式のA4 1 頁、サイトオーナが記述する(必須)。基本情報のほか、適用段階、適用分野、適用方法について、あらかじめ設定されたカテゴリから選択し回答する。また、5〜10行程度のフリーフォーマットによるウェブサイト紹介文。
(c) 詳しい説明: 自由書式、A4で2〜20余頁の別ファイル、サイトオーナが随意で執筆する。イラスト、写真、表などを使って魅力的に記述することが奨励される。
2.2 世界WTSPカタログ集[14]におけるウェブサイトの選択と配列
われわれは、世界TRIZサイトカタログ集と世界TRIZ周辺サイトカタログ集のために、それぞれ数百のウェブサイトを収集した。そこで、TRIZサイトとTRIZ周辺サイトについて、次の3つのレベルの世界WTSPカタログ集を作成することにした:
トップカタログ: 最重要サイトのみ(◎)。
基本カタログ: 最重要サイト(◎)と重要サイト(○)を併記。
拡張カタログ: 世界カタログ集に収録価値あるサイト(□)のみ。
各世界カタログでは、すべてのウェブサイトを、(サイトの評価レベルと)サイトの主要役割で分類して並べている。
そこで、各世界カタログでは、全ウェブサイトが評価レベルとタイプ(サイトの役割)によって効果的に分類して並べられており、ユーザにとって便利で、カタログ作成者にとって拡張性のあるカタログを実現している。
2.3 世界WTSPカタログ集の構造 [4、14]
一群のウェブサイトに関する原データは、各国チームあるいは調査者(探索者)から世界WTSPカタログ集のシステムに提出される。そのデータは、インデックスファイルとサイト記述ファイルの対で構成されている。ウェブサイトはインデックスファイル上で指定・配列され、ハイパーリンクによってサイト記述ファイル上の当該サイトの記述にアクセスする。ハイパーリンクの柔軟性により、インデックスファイル内のウェブサイトを自由に並べ替え(重複も可能)ても、サイト記述ファイル内で並べ替える必要がない。
世界WTSPカタログ集のシステムの全体構造を、ユーザの視点から図1に示す。世界WTSPカタログ集のトップページでユーザが見るのは、さまざまなカタログのインデックスであり、それには、各国や探査結果の原データのカタログやさまざまな形の世界WTSPカタログ(複数)がある。
図1. 世界WTSPカタログ集のトップページの構造
各世界WTSPカタログには、多数のウェブサイトの並べ順を指定したインデックスファイルがあり、各ウェブサイトの記述を見るには、ハイパーリンクを使って、原データのサイト記述ファイル中の当該サイトにアクセスする。ハイパーリンクは、さまざまなインデックス上にあるウェブサイトを柔軟に並べ替えることを可能にする。この形式の世界カタログは、会話型の使用法でしか、ウェブサイトの記述を閲覧できない。
世界WTSPカタログ集でウェブサイトを読みやすくするために、われわれは「印刷用世界WTSPカタログ(複数)」も作成した。個々のサイト記述を、原データのサイト記述ファイルから、「印刷用世界WTSPカタログ」内のサイト記述部分に(インデックスでの指定順に)コピーしている。こうして、「印刷用」世界カタログは、読みやすい形で簡単に印刷でき、(ハイパーリンクが同一ファイル内のサイト記述にアクセスするので)、ユーザが自分のPCにダウンロードして、印刷し、会話型で使用することもできる。
2.4 世界WTSPカタログ集の構築、更新、利用 [13]
世界WTSPカタログ集の作成プロセスもすでに確立できている。概要は以下のようである。
各国において、推薦やインターネット探査によって、候補となるウェブサイトをリストアップする。
ウェブサイトを一つひとつ訪問し、理解し、簡単に紹介し、さらに(暫定的に)(5段階で)評価する。
サイトオーナに依頼して、各自のウェブサイトについて、WTSPのサイト紹介の標準書式に記入して紹介してもらう(必須)。また、随意で、別ファイルに自由書式で自分のサイトの詳細な紹介を書いてもらい、(WTSPカタログ集に掲載して)多数のユーザや専門家を惹きつけるように、奨励する。
世界WTSPカタログ集の自国の部の原稿を、インデックスファイルとサイト記述ファイルの対として作成する。この原稿をプロジェクトリーダに提出する。
寄稿されたすべての原データは、世界WTSPカタログ集に統合され、その評価レベルと [役割] 分類に従って並べ替えられる。
上記の最初の4段階は、各国において、ボランティアのWTSPチームとサイトオーナたちが協力して行い、最後の段階はWTSPセンタ(プロジェクトリーダ)が行う必要がある。
上記プロセスの途中段階にあるいろいろな原稿は、公開カタログ集とは区別して、システムのバックエンドに集積・保存し、一層の開発のために利用する。世界WTSPカタログ集の更新は、逐次的に行い、また、(例えば2年ごとに)全体を改版する。
世界WTSPカタログ集はすべて、WTSPウェブサイトで公開され(WTSPプロジェクトが著作権を持つ)、誰でも無料で利用できる [3]。これは、1.3節で述べたように、多くの人々にとって重要な「価値」を持っている。
3. 世界WTSPカタログ集の現状(β版)[4、9]
世界WTSPカタログ集のβ版は2020年10月に公開し、以上に説明した枠組みと構造を満たしている [4]。表1は、2022年7月現在で、世界WTSPカタログ集に収録しているウェブサイトの数を示す [9]。
表1. 世界WTSPカタログ集の収録ウェブサイト数(2022年9月)[9]。
表は、TRIZ (左の列) と TRIZ周辺 (右の列) のウェブサイトの収録数を示す。それぞれ、評価レベル (◎、○、□) に [列で] 分類し、さらにウェブサイトの主な役割に従って行に分類して示す。
3.1 世界WTSPカタログ集中のTRIZウェブサイト
表1に示したTRIZウェブサイトのデータは、β版 (2020年11月) [4] と同じである。4カ国から、国別カタログの原データが寄せられた:日本 (中川徹)、マレーシア (Eng Hoo Tan)、中国 (Rung Hua Tan)、ロシア言語地域 (Michael Orloff)。また、インターネット探査による2事例(世界および米国の英語表記のTRIZウェブサイト)の原データが作られた(中川徹)。このように限られた原データしかないため、TRIZサイトの世界WTSPカタログ集には、◎ 23サイトと○ 39サイトしかない。[15]
われわれの呼びかけにもかかわらず、この2年間多くの国で、ボランティアによるWTSP活動は不活発だった。その結果、世界WTSPカタログ集の改訂はあまりに小さく、表1に反映するに至らなかった。
3.2 世界WTSPカタログ集中のTRIZ周辺ウェブサイト
2019年に、中川徹が集中的にTRIZ周辺ウェブサイトのインターネット探査を行った。約1,000のウェブサイトを検出し、一つひとつ訪問して、世界WTSPカタログ集の第2の柱(TRIZ周辺サイト)を、◎と○のレベルで構築した(2020年10月) [4、16]。2022年3月〜6月に、彼は再び全ウェブサイトを訪れ、個々のサイトの簡単な紹介と評価を見直し、さらに拡張して、□レベルのWTSP世界カタログを創った [9]。図2は、TRIZ周辺サイトの世界WTSPカタログに掲載されている、30の◎サイト (注:10の◎TRIZサイトを含む) を示す。[16]
図2. 世界のTRIZ周辺サイト(◎)(2022年9月)[9]。
その結果、TRIZ周辺サイトの世界WTSPカタログ集は、随分よくできており、(英語表記のサイトに限定しているが)包括的に一貫してカバーし、全サイトの簡単な紹介(ほとんどが当該サイトからの抜粋を使って記述)を備えている。TRIZ周辺サイトの世界WTSPカタログ集の作成にこのような戦略を選んだのは、創造的問題解決の方法論の全般という広範で多様な分野において、効果的な協力を依頼できる強力なパートナがいなかったからである。
4. 世界WTSPカタログ集のγ版構築に向けたWTSPの最近の活動
TRIZ周辺サイトのカタログ集を構築した (3.2節) 後、われわれはTRIZサイトのカタログ集 (3.1節) を強化することに集中し、ETRIA TFC2023までにγ版をつくることに決めた。
4.1 協力活動の不活発さを克服するためのWTSPの推進
TRIZコミュニティの自発的な協力を得ることの困難を克服するために、われわれは、(カタログの実際の開発の他に)さまざまな広報活動を行ってきた。[3]
「WTSPプロジェクトの使命と理念」を発表(2021年8月);
「世界TRIZサイト/TRIZ周辺サイトカタログ集の紹介」を、利用者向けに(開発者向けでなく)発表した (2022年1月) [17] ;
WTSPからのメッセージと報告を、ほぼ2週間ごとの定期的に LinkedInに寄稿した(2022年1月〜現在);
ETRIA TFC2022 [9] およびいくつかの他の会議で発表した論文とスライドを、『TRIZホームページ』に掲載した (2022年10月);
WTSPコミュニケーションフォーラムのページを開設した(2022年12月〜現在)[18];
イタリア、フランス、韓国、台湾などのTRIZ指導者に、[WTSP] Letters を送り、TRIZに活発なこれらの国々のWTSPチームの調整を助けることを目指した (2022年12月);
「WTSP世界TRIZ関連サイトカタログ集(γ版)への原稿募集」を発表し (2023年1月)、30カ国のTRIZ仲間に個別に送付して協力を求めた (2023年2月〜3月) [12];
「さまざまなTRIZ関係者にとってのWTSPカタログ集の価値: そして誰がその価値を創るのか?」を発表 (2023年4月) [5]。
4.2 TRIZウェブサイトの世界WTSPカタログ集を強化する最近の活動
TFC2022 [9] で簡単に報告したように、中川は、 (すでにβ版に参加している6カ国を除いた) 世界の52カ国でTRIZのウェブサイトのインターネット調査を行い (2021年5月-11月)、合計1200以上のウェブサイトを検出した。図3は、世界58カ国のTRIZウェブサイトの調査分析の現状をまとめたものである。
図3. 世界58カ国におけるTRIZウェブサイトの調査の現状
その中で、まず(図3の最初の3枠中の)40カ国を調査した。約700以上のウェブサイトを1つずつ訪問し、簡単な紹介文(a)を書いて暫定的に評価した。表3には、各国で検出されたウェブサイトの数、および (TRIZウェブサイトとして) ◎、○、□、△と評価したサイトの数を示す (2021年11月)。この分析の仕事は、多数の国について、随分困難であった。それは、言葉の壁によるもので、自動翻訳ツール(最初はGoogle Translator、後にはDeepL)を利用してもなお大きな困難さがあった。これらのウェブサイトは、残念ながらまだ世界TRIZサイトカタログ集には統合できていない。その理由はサイトの役割の判断ができていないためである。
図3右上の枠内の12カ国の探査結果の分析は、当分の間見送った。その多くはTRIZに積極的な国々、たとえば英国、フランス、イタリア、ドイツ、台湾、韓国などである。これらの国の調査分析は、外国人の調査者にとって非常に困難であることは明らかであり、特に(英国以外では)その国の多く(半数以上)のウェブサイトが、(英語以外の)自国語で記述されているからである。そこでわれわれは、これらの国のTRIZリーダ/同僚たちに積極的な協力を依頼した (2021年11月)。
その後、それらの国での「WTSPカタログ集の自国の部」の作り方を例示するために、中川は英国の探査データの分析に取り組んだ(2022年2月)。その成果は顕著で、TRIZのウェブサイトは、◎ 5、○ 1、□ 8、△ 1件、TRIZ周辺ウェブサイトは、◎ 2、○ 3、□ 6、△ 3件を得た。ついで、その結果を、世界WTSPカタログ集のβ版にすでに収録されている英国のウェブサイトのデータと組み合わせた。こうして得られた英国におけるTRIZとTRIZ周辺のウェブサイトのうち、◎と○の評価レベルのサイトを図4に示す。われわれは、この段階にある(「英国の部」の)原稿の検討と改良を英国のTRIZの指導者/専門家たちに要請している。
図4. 英国におけるTRIZとTRIZ周辺のウェブサイト。評価レベル ◎○のもの。
次に中川は、ドイツの探査データの解析の仕事をしたが、DeepLを使っても1ヶ月以上を要した。β版収録のドイツのサイトのデータと照合した上で、世界WTSPカタログ集のドイツの部を作り上げた(2022年12月)。その収録サイトは現在、TRIZサイトが ◎3、○6、□7、△3件、そしてTRIZ周辺サイトが ◎2、○7、△18、△5件である。TRIZサイトで評価レベル◎○のものを図5に示す。
図 5. ドイツのTRIZウェブサイト 評価レベル◎○のもの
この調査作業中に、中川はMichael Orloffのウェブサイトの本当の重要性を新たに認識し、彼に詳しいサイト紹介の寄稿を要請した。「DE-03 ◎ Modern TRIZ Academy ウェブサイト (Michael Orloff)」 の紹介文を、WTSP ウェブサイトに掲載し(2022年12月) [3]、それはウェブサイト紹介の優れた事例となった。
続いて、中川は台湾の探査データの分析を始めたが、言語の壁による作業負担の重さのために、途中で中断せざるを得なかった。そこでわれわれは、世界各国のTRIZコミュニティの自発的な協力に、改めて頼ることにした。
そこで、「世界のTRIZサイトのWTSPカタログ集への原稿募集」を出した (2023年1月)。要請の要点は、「各国にWTSPボランティアチームを結成し、WTSPカタログ集の国別パートの原稿を作成・寄稿すること、そして、サイトオーナが書いたサイト紹介文を寄稿すること」である。その中でわれわれがした特別な約束は、「サイトオーナがサイト紹介文を標準書式(b)と自由書式(c)の両方で書いた場合、その紹介文を(WTSPカタログ集での掲載に加えて)『TRIZホームページ』に独立したページとして掲載する」ことであった。この原稿募集の案内を、30カ国以上の国々に個別に、TRIZ指導者/仲間に送付し、また主要なサイトのサイトオーナにも送付した。
重要な国々におけるWTSP活動の現状を、以下にまとめる:
韓国: Min-Gyu Leeが、KTA (韓国 TRIZ 協会)とKOSCAの協力を得て、WTSPの世話役として活動しており、すでに「世界WTSPカタログ集の韓国の部」の0.7版を作成し、ウェブサイト27件(◎○□)を収録している。「これらのサイトオーナたちが、自分のサイトの紹介を書きたがらない」と彼は言う。彼が見出したことは、「韓国が、産業界と学界にTRIZを導入・推進・訓練・適用することにおいて、世界をリードしている国であるにもかかわらず、TRIZの活動・方法・実地適用を紹介しているTRIZサイトがわずかしかない」ことである。彼が気がついたことは、「韓国のいくつかの大企業が、TRIZを導入・推進・訓練・適用することによって世界的な成功を収め、その方法・適用・活動などをイントラネットの社内ウェブサイトで十分に開示しているが、 [社外に対しては] 公開していない」ことである。また、「多数のコンサルタントや学界の専門家たちが、そのような企業を支援し、協力しているが、彼らは自分たちのTRIZの経験を公開することを規制されている」という。
台湾: Ming-Hung Sung (Feng Chia University) が、Daniel Sheuのサポートを受けて、Country Editor(国の担当編集者)を務めている。彼は、中川が探査したサイトを訪問し、そのうちの9サイトが世界カタログ集に収録するに値するものと判断し、それら9サイトの紹介記述を自ら標準書式(b)に書いた。われわれは、サイトオーナたちにチェックと修正をして貰うように彼に要請している。台湾の部の原稿は、中川のノートと統合した上で、近いうちに発表されるであろう。
フランス: Pascal Sire と Roland De Guioが、共同の編集者を務めている。
イタリア: Matteo Spreaficoが、Davide Russoの協力を得て、編集者をしている。
この2カ国からは最近連絡がないが、準備作業が進んでいるものと思われる。
これらの国のほかに、予備的な連絡を受けた国には、ポルトガル、スペイン、ベルギー、オーストリア、ポーランド、スウェーデン、イスラエル、タイ、オーストラリア、メキシコなどがある。
最近2人の地域担当編集者を迎えたことを特記しておく。Khaled Shoaib (エジプト) を、中近東/北アフリカの地域編集者 (特にアラビア語) として、また、Adehi Guehika (現在カナダ) をアフリカの地域編集者 (特に英語/フランス語) として迎えた。これらの地域でのTRIZに関する新しい情報が得られることを、期待している。
ここでさらに、図3右下枠内の5カ国に言及しておきたい。これらの国はすでにβ版に重要な貢献をしている。[14]
日本: 初期にパイロットプロジェクトとして、日本WTSPカタログ集を作成し、92のウェブサイト(◎○□△)を収録した (2018年3月)。われわれは近年、30人余のTRIZ仲間たち (多くは日本TRIZ協会に組織されている) に、その更新と改訂を要請してきているが、残念ながら今のところWTSP活動が行われていない。
マレーシア: Eng Hoo Tan (編集者)から、ウェブサイト10件の最新情報が届いた。
中国: われわれは、編集者Run Hua Tanに、「中国でのテクノロジーとTRIZの急速な発展を反映させて、β版のデータを全面的に更新してほしい」と要請しているが、まだ回答は得られていない。
ロシア語圏(特にロシアとベラルーシ): β版に収録済みの37サイト(2019年7月)に対して、Michael Orloff(グローバル共同編集者兼地域担当編集者)が55サイトに拡張したリスト(◎○□)を提出し(2020年8月)、また、Nikolay Shpakovskyが8サイトの原稿を提出した(2020年8月)。ただ、これらのうちの追加ウェブサイトは、サイトの主役割の情報が不足しているため、まだ世界WTSPカタログ集に統合できていない。
米国: β版では、インターネット調査の結果 (2019年7月) を使っている。われわれは米国の多くのTRIZ指導者/仲間に「米国WTSPチームを結成して、データを更新してほしい」と要請しているが、肯定的な反応はまだ聞かれない。
4.3 TRIZウェブサイトの世界WTSPカタログ集の暫定状況
以上のように、TRIZサイトの世界WTSPカタログ集は、現在、多くの国からの原稿を待っている暫定的な状態にある。世界の最重要レベル◎にあるTRIZウェブサイトを、暫定的に図6に示す。 印の6件のウェブサイトが新たに収録されるが、まだなお数件の◎レベルのウェブサイトが欠けていると、想定される。
図6. 世界WTSPカタログ集における最重要レベル(◎)のTRIZサイト (暫定的、2023年4月)
5. おわりに
5.1 TRIZコミュニティにおける不活発な態度の困難を克服する
概要に書いたように、われわれのWTSPプロジェクトは、「多くの TRIZ仲間がWTSPプロジェクトを支持しているが、実際に世界WTSPカタログ集を作る活動をする人が極めて少ない」という困難に遭遇している。その理由は [一見] 明らかで、「TRIZの有能な人たちは、いつも忙しく仕事をしており、余分なボランティアの仕事をする時間がない」からである。この難題を解決しようと、約5年間奮闘してきて( 4.1 - 4.2節)、われわれはいま、この困難の理由の隠された核心を理解した:「人々はまだ、世界WTSPカタログ集の (可能な) 「価値」 (「有用で魅力的」)を認識していない。なぜなら、彼らはまだそのカタログ集を本当には見ていないからである」。したがって、本論文の主要な目的は、「可能な価値 (1.3節) を、構造と例を示して (2 - 3節)、 説明すること 」であり、そしてまた、「われわれ各国のTRIZ専門家たちこそが、その「価値」を創造するべきであり (1.4節) 、すでに示した手順 (2.4節、3節) に従うことにより、その「価値創造」を達成できることを、人々に納得させること」である。2.1 節のノートも参照されたい。 [世界の(そして日本の)TRIZコミュニティの人々が、このカタログ集が持つ本質的な価値(「有用で魅力的」)を理解し、その「価値の創成」に協力してくださることを願う。]
5.2 TRIZを代表するウェブサイト「Systematic Innovation Review」の提案
このWTSPプロジェクトを通じて得られた単純な、しかし重要な発見は、図4に見ることができる。それは、「TRIZには多くの(数百の)優れたウェブサイトがあるが、TRIZの全分野を代表できるウェブサイトが存在しない」ことである。このことは、「The Official Altshuller Foundation」のサイトが2008年以来更新されておらず、「The TRIZ Journal」も2020年以来更新されていないことを見れば、明らかである。多数のウェブサイトが、TRIZのさまざまに異なる方法とアプローチで、独立し/競争して運営されている。 [さらに] 創造的問題解決の方法論全般というより広い分野では、状況はさらに多様化し、混乱している。
2022年9月に、われわれWTSPプロジェクトのグローバル共同編集者たちは、「TRIZを代表する新しいウェブサイトの設立」を提案し始めた [19] 。そのウェブサイトの名前(仮称)を、「体系的イノベーションレビュー」 (Systematic Innovation Review) (略称「SI-Review」) ウェブサイトと呼んだ。将来、 [TRIZから] より広い「創造的問題解決の方法論全般」という分野をカバーすることを、意図したものである。
「代表的」であることを目指しているが、SI-Reviewは、他の多くの優れたウェブサイトやジャーナルと競争して、新しいオリジナルな論文(著作)を掲載しようとするのではない。むしろ、それらのウェブサイトやジャーナルと互換的でありながら傑出した存在となるように、新しい(あるいは既に確立された) [仕事の] 概説/レビューの論文(著作)を掲載することを目指す。広い意味でのTRIZ (およびTRIZ周辺) の、さまざまな方法やアプローチの論文(著作)を受け入れる。5人以上の国際的かつ学際的な編集者からなる編集委員会によって運営される。SI-Reviewが掲載する論文(著作)は、いくつかの種類/側面のもので、例えば、方法論、応用、普及活動などの(概説)論文、さらに、標準的なテキスト、入門記事、子供向けテキストなどを含む。多数の編集アドバイザから推薦された、トピックや文書の候補をプールしておく必要がある。毎月数本の論文(著作)を定期的に発表し、それらをアーカイブとして、よく分類され、アクセスしやすい形で保管する。
ある意味で、SI-Reviewは世界WTSPカタログ集に似ており、[カタログ集] の中の優れたウェブサイトが、いくつかのレクチャーシリーズとして順番に紹介されているようなものである。なぜなら、ウェブサイトに蓄積された多くの記事は、一つのトピックに焦点を当てたオリジナル論文群の全貌に似ており、ウェブサイトの(深い)紹介は一群の記事の概説/レビューと同様の性格を持つからである。SI-Reviewウェブサイトの(可能な)「価値」は、世界WTSPカタログ集のものとほぼ同じである(1.3節)。編集委員会のメンバをどのようにして得るか、ウェブサイトを効果的に運営するにはどうするか、財政的にどのように運営するか、などを、実際的に解決していく必要がある。
参考文献
注: 略記 THPJ = https://www.osaka-gu.ac.jp/php/nakagawa/TRIZ/
eTHPJ = https://www.osaka-gu.ac.jp/php/nakagawa/TRIZ/eTRIZ/[1] 中川徹他:「世界TRIZサイトプロジェクト (WTSP):全世界のTRIZ 関連サイトのカタログを作成し維持しよう 」、ETRIA TFC2018発表概要スライド; (2018.11.11)、THPJ/jpapers/2018Papers/Naka-WTSP-TFC2018/Naka-WTSP-TFC2018-Summary-4P-181109.pdf eTHPJ/epapers/e2018Papers/eNaka-WTSP-TFC2018/eNaka-WTSP-TFC2018-Summary-4P-181023.pdf .
[2] 中川徹. (編集)、『TRIZホームページ』 (和文)、(以下 THPJと略す)、https://www.osaka-gu.ac.jp/php/nakagawa/TRIZ/ 、1998年11月1日開設; "TRIZ Home Page in Japan" (英文)、(以下 eTHPJと略す)、https://www.osaka-gu.ac.jp/php/nakagawa/TRIZ/eTRIZ/ 1998年11月15日開設
[3] 中川徹、世界TRIZ関連サイトプロジェクト(World TRIZ-related Sites Project) (WTSP) のウェブサイト、2017年12月設立、eTHPJ/eWTSP/ ; THPJ/WTSP/WTSP-index.html
[4] 中川徹他;「世界TRIZ関連サイトプロジェクト (WTSP)(3):TRIZとその周辺サイトの世界WTSPカタログ集: 初版 (2019)と今後の改良、ETRIA TRIZ Future Conf. 2020、オンライン開催 (Cluj-Napoca、ルーマニア)、2020年10月14-16日: eTHPJ/eWTSP/eWTSP-B4-News2020/eWTSP-Presentations2020-WTSP3/eWTSP-Presen-ETRIA-TFC2020-WTSP3-201106.html ; 注: 日本語文献: 中川徹他; 創造的問題解決の諸方法論のウェブサイト: 世界カタログ集の開発(WTSPプロジェクト)、 日本創造学会 第42回研究大会 (東京、2020.10.31 - 11. 1): THPJ/WTSP/WTSP-B4-News2020/WTSP-JCS2020-Presentation-201108.html
[5] 中川徹、世界のWTSPカタログ集の価値: サイト所有者にとって、TRIZ専門家にとって、TRIZユーザにとって、そしてTRIZにとって-- では、誰がその価値を創造するのか?、(2023. 4. 6)、LinkedIn、eTHPJ/eWTSP/eWTSP-B7-News2023/eWTSP-Forum2023B.html#WTSP-Values-2304 ; THPJ/WTSP/WTSP-B7-News2023/WTSP-Forum-WTSPCatalogs-Values-230409.html
[6] 中川徹、Mann D.、Orloff M.、Dewulf S.、Litvin S.、Souchkov V.、世界TRIZ関連サイトプロジェクト (WTSP) (2) : 全世界のTRIZ 関連サイトのカタログを作成する, ETRIA TFC 2019発表、2019年10月9-11日、Marrakech (モロッコ); DOI: https://doi.org/10.1007/978-3-030-32497-1_40 ; eTHPJ/epapers/e2019Papers/eNaka-WTSP2-ETRIATFC2019/eNaka-WTSP2-ETRIATFC2019-191016.html ; 注: 日本語文献: 中川徹他; 創造的問題解決の諸方法論のウェブサイト: 世界カタログ集の開発(WTSPプロジェクト)、 第15回日本TRIZシンポジウム2019発表、 2019年 9月5〜6日、全水道会館(東京都文京区): THPJ/jpapers/2019Papers/Naka-WTSP2-TRIZSymp2019/Naka-WTSP2-TRIZSymp2019-190907.html
[7] 中川徹、Mann D.、Orloff M.、Dewulf S.、Litvin S.、Souchkov V.、World TRIZ-related Sites Project (WTSP) (4):World WTSP Catalogs of TRIZ Sites and Around-TRIZ Sites, Let's Make them Attractive and Useful!、ETRIA TFC 2021 発表、2021年9月22-24日、Free-University of Bozen-Bolzano (イタリア)兼オンライン; DOI: ; eTHPJ/eWTSP/eWTSP-B5-News2021/eWTSP-Appeal-ETRIATFC2021-210927.html 注: 日本語文献: 中川徹他; 世界TRIZ関連サイトプロジェクト(WTSP)(4) 世界TRIZサイト/TRIZ周辺サイトカタログ集の構築と拡張、日本TRIZシンポジウム2021 (2021. 9. 2 - 3) 、東京(オンライン): THPJ/WTSP/WTSP-B5-News2021/WTSP-TRIZSympo2021-Presentation-210925.html
[8] 中川徹、WTSP 世界 TRIZ サイトの調査結果の現状と世界における TRIZ 展開の概観、(2021.11.20)、eTHPJ/eWTSP/eWTSP-B5-News2021/eWTSP-News2021-Results-Surveys4th-211118.html ; 世界各国TRIZサイト探索(第4ラウンド)のまとめ、 THPJ/WTSP/WTSP-B5-News2021/WTSP-News2021-Results-4thSurvey-211121.html
[9] 中川徹、Mann D.、Orloff M.、Dewulf S.、Litvin S.、Souchkov V.、WTSP Report (5) 世界のTRIZおよびTRIZ周辺サイトのカタログ集: 世界のTRIZ関連の仕事の全貌を学ぶことができる、ETRIA TRIZ Future Conf. 2022 発表、Warsaw TU 兼オンライン、2022年9月27-29日、R. Nowak et al:TFC 2022、IFIP AICT 655、pp.443-457, 2022. DOI: https://doi.org/10.1007/978-3-031-17288-5_37 ; eTHPJ/WTSP/eWTSP-B6-News2022/eWTSP-ETRIA-TFC2022-WTSP5-220930.html ; 注: 日本語文献: 中川徹他; WTSP世界TRIZサイト/TRIZ周辺サイトカタログ集(5) 有用で魅力的な資料 ー 活用を進めて、拡張・充実へ、日本TRIZシンポジウム2022 (2022. 9. 1 - 2) 、東京(オンライン): THPJ/WTSP/WTSP-B6-News2022/WTSP-TRIZSympo2022-Presentation-220926.html
[10] 中川徹、世界WTSPカタログ集の英国の部を作成・公開しました。各国カタログの一例です、(2022. 3. 2)、eTHPJ/eWTSP/eWTSP-WorldCatalog/eWTSP-WorldCatalog-A-uk/eWTSP-Output-A-uk-UK-220301.html
[11] 中川徹、世界WTSPカタログ集のドイツの部を作成・公開しました、(2022.12.16)、eTHPJ/eWTSP/eWTSP-WorldCatalog/eWTSP-WorldCatalog-A-de/Index-DE.html
[12] 中川徹、世界のTRIZサイトWTSPカタログ集(ガンマ版、2023年9月)への原稿募集。国別原稿締切: 4 月 16 日、(2023. 1. 31)、eTHPJ/eWTSP/eWTSP-B7-News2023/eWTSP-CallContributions-230131.html ; 注: 日本語文献: 中川徹; ご協力のお願い: 世界TRIZ関連サイトカタログ集の「日本の部」の改良・拡張について、 (2023. 1. 14) 、THPJ/WTSP/WTSP-B7-News2023/WTSP-Forum-EnhanceJapanCatalog-230119.html#B
[13] 中川徹、WTSP (A4) Guidelines for Building World WTSP Catalog、(2020.11.20) eTHPJ/eWTSP/eWTSP-A4-Guidelines.html ; 日本語文献: 中川徹; WTSP (世界TRIZ関連サイトプロジェクト): 索引ページ、(A) WTSPプロジェクトの基本情報 、THPJ/WTSP/WTSP-index.html#A
[14] 中川徹、世界のWTSPカタログ集:トップページ、eTHPJ/eWTSP/eWTSP-WorldCatalog/eWTSP-World%20Catalog-World/World-Catalog-TopPage.html
[15] 中川徹、(A2P) 世界TRIZサイト基本カタログ ( ◎ ○ )for Print、eTHPJ/ eWTSP/eWTSP-WorldCatalog/eWTSP-World%20Catalog-World/World-A2P-TRIZBasic-Catalog-PDF.pdf
[16] 中川徹、(C2P)世界一周-TRIZサイト基本カタログ(◎○)印刷用、eTHPJ/eWTSP/eWTSP-WorldCatalog/eWTSP-World%20Catalog-World/World-C2P-AroundTRIZBasic-Catalog.html
[17] 中川徹、TRIZサイトとTRIZ周辺サイトの世界 WTSPカタログ集の紹介、(2022. 1.24)、 eTHPJ/eWTSP/eWTSP-B6-News2022/eWTSP-WorldCatalogsIntroduction-220123.html ; THPJ/WTSP/WTSP-B6-News2022/WTSP-WorldCatalogsIntroduction-220124.html
[18] 中川徹編、WTSPコミュニケーション•フォーラム(2023)、2023年1月〜4月、eTHPJ/eWTSP/eWTSP-B7-News2023/eWTSP-Forum2023-Index.html : THPJ/WTSP/WTSP-B7-News2023/WTSP-Forum-2023-Index.html
[19] 中川徹、Mann D.、Orloff M.、Dewulf S.、Litvin S.、Souchkov V.、"Systematic Innovation Review" ウ ェ ブ サ イ ト の 提 案 、(2022. 8.30; 9.22) ,eTHPJ/eWTSP/eSIReview/eSIReview-InitialStage-2208/eSIReview-Initial-Proposal-2208.html
5。おわりに |
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日本TRIZシンポ発表ページ | スライド(25枚) | 発表ビデオ |
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最終更新日 : 2023. 9.18 連絡先: 中川 徹 nakagawa@ogu.ac.jp