TRIZフォーラム: 読者の声 (寄稿)

TRIZとの出会いから理解の深まりへ (私のTRIZ学習):
さまざまな矛盾を解決するための問題解決の統合手法を目指して

長谷川 陽一 (神奈川県在住) 、2011年11月27日

掲載:  2011. 12. 5

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  編集ノート (中川 徹、2011年12月 5日)

本稿は、長谷川陽一さんから、寄稿いただいたものです。2週間前に、本ホームページに「中国におけるTRIZの状況」(周賢永) を掲載しましたが、長谷川さんはそれ読んで、「日本が直面しているさまざまな大きな矛盾に対処して行くために、日本でももっと積極的にTRIZを普及させる必要がある」と思われました。それは長谷川さんの中では、数年前からずっと抱いていた気持ちでした。そして、非常に大きなビジョンを持った、真摯なアプローチの文を、何回かメールで中川に下さいました。本稿は、長谷川さんが、「一般読者の皆さんに、自分のアプローチをまず理解していただきたい」との思いから、まとめてくださったものです。

「まえがき」には、長谷川さんの危機意識 (日本が抱えている沢山の矛盾) を書いています。

そして、「本文」では、2005年にTRIZ/USITを知ってから、この6年間で学んださまざまなTRIZ/USITの論文や文献を紹介しつつ、自分の理解、自分の考え方の深まりを、時間経過に沿って記述してあります。

TRIZ/USIT以外にも多くの問題解決の技法を学び、いま、「結論」として、TRIZや各技法の専門の枠を越えて、エッセンスをまとめた「問題解決の統合手法」を作って行こうと提案しています。長谷川さんの頭の中に、そのようなエッセンスがまとまりつつあるということでしょう。

なお、原稿は、いろいろな項目を明示するために、改行・字下げ・箇条書きを活用した文体になっています。分かりやすさを第一にして、そのままの文体にしました。タイトルと節見出しは中川がつけたものです。また、『TRIZホームページ』内の記事にはリンクを張りました。

長谷川陽一さんは、民間製造業の技術者です。ただ、本稿は、個人としての寄稿であるとの立場から、所属を明示しない形を選択されました [編集者(中川) にメール下されば、著者の私用メールアドレスをお伝えすることができます]。このような貴重な原稿を寄せてくださいました長谷川陽一さんに厚く感謝いたします。

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TRIZとの出会いから理解の深まりへ (私のTRIZ学習):
さまざまな矛盾を解決するための問題解決の統合手法を目指して

            長谷川 陽一 (神奈川県在住)    2011年11月27日

 

〜まえがき〜     日本が直面する沢山の矛盾とその解決

0.1  はじめに

東日本大震災後の
  ・MPUF USIT研の活動で真剣に減災を目指してらっしゃる 中川先生の情熱
先日の日本TRIZシンポジウム2011 での
  ・石井力重さんの発表
  ・池田昭彦さんと石濱正男さんの発表
を拝見して、
私も 問題解決手法の研究・実践・普及 を通じて 微力なりとも社会貢献したい、という気持ちになりました。

0.2  大震災・原発事故による 矛盾の顕在化

震災に伴う 原発事故後、
  ・ 原発を止めつつ電力不足解消 vs 電気料金抑制
  ・ 減原発 vs CO2排出量抑制
の矛盾発生を皮切りにして、かねてから くすぶっていた
  ・ CO2排出抑制 vs 電気料金抑制
  ・ 経済成長 vs CO2排出抑制
といった
    ・ 経済成長 vs 地球温暖化抑制 
の間の矛盾が一気に顕在化しました。

0.3  日本におけるより広範な矛盾

矛盾は 経済 vs 財政 にまで及び、
  ・ 震災復興の為に、歳出を増やして減税したい vs 財政赤字額の伸び抑制の為に、歳出を増やさず 増税したい
の矛盾が顕在化したのを皮切りに、かねてから くすぶっていた
  ・ 家計の可処分所得を増やす為に、歳出を増やして 減税したい vs 財政赤字額の伸び抑制の為に、歳出を増やさず 増税したい
  ・ 年金支給額を維持したい vs 現役世代の負担を重くしたくない
など
デフレ不況、財政赤字、少子高齢化 の間の 多数の矛盾が複雑に絡み合った問題が 一段と露わになりました。

これらの矛盾は 震災前から構造的にあった問題であり、なにかブレイクスルーをしない限り 状況は悪化の一途を辿る・・・。それを多くの人が感じ、閉塞感が 日本中を覆っています。

0.4  近い将来の大地震の可能性

加えて、日本は、過去に 約100〜150年周期で繰り返されてきた大地震の頻発期 [慶長、元禄〜宝永、安政、大正末期〜昭和初期]に 入ったと 地震専門家の方々は見ており、今後 立て続けに
  ・ 房総沖M8超 大地震
      http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20111020/dms1110201601010-n1.htm
      http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20111118/dms1111181549019-n1.htm
      http://kaleido11.blog111.fc2.com/blog-entry-981.html
  ・ 首都直下地震
      http://tokyo-jishin.com/higai.html
さらに最悪の場合、
  ・ 約1000(〜2000)年周期の 東海〜南海(〜琉球)巨大地震
      http://d.hatena.ne.jp/chamuchamu/20110508/1304850014
      http://yurizanfan.exblog.jp/i2/
  ・大阪直下地震
      http://www.ne.jp/asahi/suita/kyouiku-kankyou/uematidaichi.html
等に見舞われる可能性が 決して低くはなさそうです。

0.5  "矛盾"を解消する方法を求めて、私のTRIZ学習の歩み

このような難局に直面している 今の日本には、
  「”矛盾”をうまく解消する手法である TRIZの普及・実践が必要だ」
と私は 強く思います。

そこで、考えた結果
  「私がTRIZに出会ってから 今まで どのように TRIZの理解が深まっていったか?」
を ご紹介することが良いのではないか、と思うに至りました。


〜本文〜  TRIZとの出会いから理解の深まりへ (私のTRIZ学習)

1.  はじめて USIT と TRIZ を学ぶ (2005年後半)

私は 2005年後半に
  古謝 秀明さん(現職:USITものづくり技術サポート 代表
             http://ameblo.jp/gijutsu-mieruka/
             http://www.mpuf.org/pm/es100423.htm)
からUSITの存在を教えていただき、
以後主に、古謝さんと、
  三原 祐治さん (現職:椛n造性工学研究所 所長
             http://www.triz-usit.com/about-cti.html#aboutus)
からUSITを教わってきました。

私がTRIZ/USITを知る前に、既に 三原さん・古謝さんは熱心に TRIZの研究・普及活動をなさっていました。
  http://www.osaka-gu.ac.jp/php/nakagawa/TRIZ/jforum/FromReaders991031.html 「USIT研修参加報告(中川)への質問」(古謝)
  http://www.osaka-gu.ac.jp/php/nakagawa/TRIZ/jforum/Mihara011024.html 「TRIZの社内展開の方法」(三原)
  http://www.osaka-gu.ac.jp/php/nakagawa/TRIZ/jlectures/USITSol0209/USITSolTableSimple020908.html 「USITの解決策生成技法」(中川、古謝、三原)
  http://www.osaka-gu.ac.jp/php/nakagawa/TRIZ/jforum/2003Forum/FromReaders031021.html 「TRIZ/USITの導入と定着のやり方について」(古謝、中川)

2. 『TRIZホームページ』の記事から、「さまざまな手法の大統一理論」の夢を抱く (2006年)

私は 2005年後半にTRIZ/USITを知ってから すぐに、古謝さんから 中川先生の『TRIZホームページ』を教えてもらいました。

はじめのうちは 難しくて読めなかったのですが、次の記事に とても刺激を受けました。
http://www.osaka-gu.ac.jp/php/nakagawa/TRIZ/jpapers/2006Papers/Pfister0607/jPfisterETRIA2005-060709.htm
  2006年7月10日掲載の翻訳論文 「成功への道 TRIZ、シックスシグマ、戦略的経営を統合する」 (Johannes Pfister、(中川訳))

【発表内容】
  『シックスシグマ、TRIZ、リーン工学(例. トヨタ生産方式)等を統合した”戦略的経営手法”の構築 を目指す。』

【私が受けた刺激】
  ・様々な手法を簡潔に統合する「大統一理論」ができたら 素晴らしい!
   もしかしたら できるかもしれない!!
      → 以後、品質機能展開QFD、VE、品質工学、シックスシグマ、等価変換理論、
          ロジカルシンキング、
          リーン工学(トヨタ生産方式のジャストインタイム、TOCドラムーバッファーロープ)、
          なぜなぜ分析(トヨタ生産方式のなぜ×5、TOC思考プロセスの現状問題構造ツリー)、
          弁証法(ブレークスルー思考法、TOC思考プロセスの対立解消図、古典的弁証法)、
          KT法、USIT以外のTRIZ(SIT、ASIT、古典的TRIZ、I-TRIZ)
       を順次勉強し、各手法のエッセンス把握を図った。

3. 「現象-属性分析」(古謝 秀明 ) を学ぶ

その後、日本TRIZシンポジウム2006の 古謝さんの発表を熟読しました。
http://www.osaka-gu.ac.jp/php/nakagawa/TRIZ/jpapers/2006Papers/KoshaTRIZSymp0609/KoshaTRIZSymp061222.htm 「現象-属性分析」(古謝)

【私が学んだこと】
  ・因果関係の間に飛びがあると、対策手段アイデアが漏れる。
      → どういう順番で現象が起きているかを、時間を細かく区切って 考える必要あり!!
         (これが、なぜなぜ分析で まず最初に重要なコツ!)

4. 『TRIZホームページ』(中川 徹 編集) を読み込む。「造船における船体腐食防止」(Weitzenbock) を和訳。  (2007年)

2007年春、中川先生の『TRIZホームページ』を本格的に読み込み、内容の豊富さに驚きました。

ETRIA主催のTRIZ国際会議(2006年) の詳しい紹介記事がありました 「Personal Report of ETRIZ TFC 2006」(中川)
そこで発表されていた、ノルウェーの人の論文が面白いと思い、和訳を志願。つぎのように掲載されました。
     http://www.osaka-gu.ac.jp/php/nakagawa/TRIZ/jpapers/2007Papers/WeitzenbockETRIA2006-0705/jWeitzenbockETRIA2006-Ship070522.htm   「造船における船体腐食防止のための新しいコンセプトの開発」 (J. R. Weitzenbock, S. Marion; 長谷川・中川訳)

以後、中川先生から 時折ご指導をいただくようになりました。

5. 「TRIZのエッセンス」 (中川 徹) を学ぶ

その後、中川先生の発表記事「TRIZのエッセンス −50語による表現」を初めて読みました。
  http://www.osaka-gu.ac.jp/php/nakagawa/TRIZ/jpapers/Essence50W010518.html

【私が当時 考えたこと、理解できたこと】
  ・技術が ”理想性=有用機能/(有害機能+コスト)”が増す方向へ進化する、というのは納得できる。
  ・技術を進化させる際、最小限のリソース[資源]投入で 済ませようとすることも 納得できる。
  ・矛盾を克服すれば 大きく進歩できる、ということも納得できる。

  ・「問題を”システム”として理解する」の ”システム”には、2つの意味があるのだろう。
     @問題対象の(モノの)構造が たとえば
       ”クルマ[上位システム]−エンジン[中位システム]−エンジン部品[下位システム]…”
      というように
      階層構造になっていることを指している。
       *エンジン部品が寄せ集まって、エンジンとしての機能を発揮する。
       *エンジンやボディーやタイヤ等が寄せ集まって、クルマとしての機能を発揮する。
      このように、
      ”構成要素が機能的につながっているもの” を ”システム”と呼ぶのは 理解できる。
     A”上位目的→下位目的→実現手段→さらに具体的な手段・・・”という風に
      ”目的→手段”関係を階層的に書き表す いわゆる「課題バラシ」を行うと、網羅的・体系的なアイデア出しをできる。
      ”体系”を英訳すると”システム”なので、このことを 中川先生は仰っているのだろう。」

  ・「”理想解”を最初にイメージする」というのは、
   課題バラシ表を 上位目的の目的、さらなる上位目的・・・と遡っていって、
   ”最上位目的”を言葉で表現することなのだろうか??
     (”最上位目的”から 適切に[必要条件を漏らさずに] 演繹・ブレークダウンしていくと、
      案外 深刻な矛盾に直面せず、うまい手段を得られる、という 実体験あり。
      これを ”究極の理想解”とか”魔法の小人”とか”Particles法”と 呼んでいるのだろう。)

【私が当時 分からなかったこと】
  ・弁証法とは 何者??(ネット検索してみると 超難解な記事ばかりだったので放置。)
  ・矛盾を解消するには「”物理的矛盾”を導出して”分離原理”を用いれば良い」とのことだが、
    * ”技術的矛盾”と”物理的矛盾”の違いは何か?
    * どのように ”物理的矛盾”を導出すればいいのか? 必ず物理的矛盾を導出できるのか?
    * 「”物理的矛盾”を導出して”分離原理”を使用」で問題解決できるのなら、
     ”技術的矛盾”を考える意味はあるのか?  ”分離原理”と”矛盾マトリクス”の関係は?

6. 「矛盾」について (中川 徹) を学ぶ

「どこが分からないか?」を意識してから ほどなく、『TRIZホームページ』内に 中川先生の ”矛盾”解説ページがあることに気づきました。
http://www.osaka-gu.ac.jp/php/nakagawa/TRIZ/jpapers/2007Papers/NakaInterLab07/NakaIL-20-Contradictions070817.htm 「連載: TRIZ 第20回 矛盾とその解決」 (中川)

【私が学んだこと】
  ・困っている状況を突き詰めて考える[分析する]と、最後は にっちもさっちもいかない”物理的矛盾”に行き着く。
   ところが なんと驚くべきことに、
   そんな”物理的矛盾”にぶち当たれば 必ず問題解決策が見つかる!!
     ・・・アルトシュラー氏がこう認識して、
        誰でも なぞれる手順を確立したことは、
        技術史のみならず 思想史[哲学史]に刻まれる偉大な業績。

  ・ ”物理的矛盾”の解決策である ”分離原理”の中身は、基本的に@時間分離 と A空間分離 の2種類。

  ・ ”物理的矛盾”の形になるまで 考えなくても、
   その手前で ”矛盾マトリクス”等に頼って 問題解決アイデアを出しても良い。

  ・”分離原理”は確かに有用。
   だが、”分離原理”では導き出しにくいアイデアがあり、
   実際の技術開発では そのようなアイデアで充分OK(むしろ 直近では最も低コスト)な局面が多い。
     → 何らかの ”網羅的アイデア出し支援法”が必要。  

7. 「USITオペレータ」 (中川 徹・古謝秀明・三原祐治) を学ぶ。網羅的アイデア出しの支援のために。

”網羅的アイデア出し支援法”の必要性を 強く意識するようになったところ、そのニーズを 既に
中川先生・古謝さん・三原さんが ”USITオペレーター”で満たしていたことに気づきました。
http://www.osaka-gu.ac.jp/php/nakagawa/TRIZ/jlectures/USITSol0209/USITSolTableFull020906.html 「USITの解決策生成技法」(中川、古謝、三原)
   (石井力重さんが なじみやすい表現へ意訳:http://ishiirikie.jpn.org/article/1749363.html)

【私が当時感じたこと】
  ・(5)解決策一般化法が、これ単独で 非常に重要。
   上述の”課題バラシ”を きちんと網羅的にやろうとすると(5)解決策一般化法 が必要不可欠。
   最上位目的から具体的手段に至るまで ”課題バラシ[演繹]”と”(5)解決策一般化法[帰納]”を徹底すると、
   あえて意識しなくても自然に(4)解決策組み合わせ法 を実行できる。

  ・ (1)オブジェクト複数化法、(2)属性次元法、(3)機能配置法 は、
    どれか 1種類を用いれば いちおう網羅的にアイデアを出せるようになっている。
      ・・・3種類あることにより、ダブルチェック・トリプルチェックできる点が有用。

  ・ 個人的には(3)機能配置法が好き。
    このエッセンスを一言で言うと、
    『必要な時、必要な場所へ、必要な量[レベル]の”機能”を実現する 低コスト手段[オブジェクト]を配置すればいい。』
   ということだと思う。
      ・・・こう考えると、
          「必要な時、必要な場所へ、必要な量だけ モノを配置する。」という
         トヨタ生産方式の”ジャストインタイム”の精神も包含できる。

【私が 最近感じていること】
  ・網羅的アイデア出しを支援するオペレータは 様々な種類があって良い。
    * I-TRIZのアイディエーションプロセス、そのうち特に オペレーションシステム
        http://www.ideation.jp/blog/2011/05/triziwb.html
    * 畑村洋太郎さんの創造設計原理、そのうち特に水平法〜思考演算〜思考探索〜着想をまとめる
        http://www.iwanami.co.jp/moreinfo/0052440/index.html
    * 技術進化のパターン/ライン(TRIZ-DE)、矛盾マトリクス等の TRIZ諸ツール
    * 市販のアイデア発想支援本、ネット情報
    * NM法
    * オズボーンのチェックリスト
    ・・・・・・

8. 「USITオペレータ活用事例集の検討」(古謝秀明、三原祐治他) を学ぶ (2009年)

日本TRIZシンポジウム2009の 古謝さん・三原さんらの発表が印象的でした。
http://www.osaka-gu.ac.jp/php/nakagawa/TRIZ/jpapers/2010Papers/KoshaTRIZSymp2009/Kosha-TRIZSymp2009-TN100723.htm 「USITオペレータ活用事例集の検討」(古謝、三原、中山、中村、牧野) 

【発表内容】
  『すべての問題は、
    A. 機能達成レベルの過剰
    B. 機能達成レベルの不十分
    C. 機能達成レベルの不安定
    D. 望ましくない効果(弊害項目)の発現
   のいずれかに属する』 ということを発見した、との内容。

【私が得た気づき】

  1.『すべての問題は、
     @有益機能レベルの不足
     A有害機能レベルの過剰
         
     Bコスト過剰(いわゆる ”過剰品質”・”オーバースペック”。
             1)有益機能レベルの過剰
             2)有害機能レベルの不足 のどちらか。)
    のいずれかに属する。』

     ※ D. 弊害項目も、
       @有益機能レベルの不足 A有害機能レベルの過剰 Bコスト過剰
       のいずれかに属するはず。

     ※ @有益機能は、”欲しい性能”のこと。
        A有害機能は、”故障・欠陥・不具合”のこと。

     ※ 商品開発を行う場合、
      @有益機能 も A有害機能も それぞれ複数種類を扱う場合がほとんど。
           似た商品でも、
            「どの種類の有益機能を どれくらい高いレベルまで求めるか」
            「どの種類の有害機能を どれくらい低いレベルまで抑え込みたいか」
      の目標レベルが異なれば、
      異なる商品(品種)とみなすべき。
        ・・・ 採用すべき技術(機能の実現手段)が変わりうるから。

  2. 『結局は「あちら立てれば、こちらが立たず」のトレードオフ関係に悩まされる。
      ・@有益機能レベルを上げようとすると、A有害機能過剰 や Bコスト過剰 を招きがち。
      ・A有害機能レベルを下げようとすると、@有益機能不足 や Bコスト過剰 を招きがち。
      ・Bコスト    を下げようとすると、@有益機能不足 や A有害機能過剰を招きがち。

    これが 品質工学の田口博士が問題視された ”モグラ叩き”であり、
       TRIZのアルトシュラー博士が問題視された ”矛盾” であろう。

    では、どうすれば良いか??
      → A有害機能レベルを 低コスト手段で抑え込むことに 集中すれば良さそう!
          ※有害機能が起きるには 必ず”原因”があるはずなので、
            (1)原因をなくす
            (2)原因があっても なんとか有害機能レベルを抑え込む
           の両方を考えて、
           最も低コストの手段を採用すべきだろう。
              ・・・ついつい(2)を忘れがち。
                 どうやら、これに強く注意喚起しているのが 品質工学だ!!』

9. 「革新的問題発見・解決の方法」(三原祐治、濱口哲也、他) を学ぶ (2010年)

また、日本TRIZシンポジウム2010の 三原さんらの発表も 大変勉強になりました。
http://www.osaka-gu.ac.jp/php/nakagawa/TRIZ/jpapers/2011Papers/MiharaTRIZSymp2010/J21jP-Mihara-100808.pdf 「革新的問題発見・解決の方法 - 初心者にもわかる課題の設定とその解決法」 (三原、桑原、福嶋、澤口、濱口、長田)

【私が得た気づき】
 ・『まず ”課題バラシ図[思考展開図]”の左端に 漠然とした抽象的な”有益機能”[望ましいこと・顧客の声]を書き、
     →その右側へ 抽象的な有益機能を 具体的な物理的表現にしてバラしたもの[要求機能]を書き、
      →その右側へ 要求機能を実現しうる方式[抽象的な手段・コンセプト・技術思想]を 一通り挙げ、
       各方式を具体的な手段にバラし、
       →その具体的手段を採用した時に直面する ”有害機能”[望ましくないこと・困り事・故障]を書き、
        →その困り事を解決しうる方式[抽象的な手段・コンセプト・技術思想]を 一通り挙げ、
         各方式を具体的な手段にバラし、・・・・・』
   という順番で、自分が無意識に”課題バラシ”をしていたことに気づいた。

  ・『目的と手段の間が飛ぶと、アイデア[有力手段]が漏れる。』
       ・・・『因果関係の間に飛びがあると、アイデア[有力手段]が漏れる。』
          という 以前得た気づきと まとめると、
          『論理に飛躍があると、アイデア[有力手段]が漏れる。』と言える。
            (これは、世の中でよく言われている。)

  ・暗黙の前提になっていた ”上位概念[上位の目的・機能・手段]”の存在に気づくと、
   今まで漏れていた有力手段に想到できる。 矛盾状態を妥協せずに解消できる。
     (*ブレイクスルー思考法の”目的展開の原則”や、
       TOC思考プロセスの”対立解消図” は このことを言おうとしている。
      *”弁証法”の「正⇔反対立する矛盾状況を 止揚(アウフヘーベン・解消)する」も、
       このことを言いたがっている。
        http://www.tocken.com/mm_no_50.htm
        http://www.cqpub.co.jp/dwm/column/iida/DWM0058iida3.htm
        http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1367936388)

10. 『イノベーションのジレンマ』を読み、次世代のTRIZを考える (2011年)

その後、今から半年ほど前、同僚に勧められて 書籍『イノベーションのジレンマ』を読みました。
それから、中川先生が下記ページの編集ノートに記されたお気持ちが 分かってきました。
http://www.osaka-gu.ac.jp/php/nakagawa/TRIZ/jpapers/2008Papers/SouchkovHistory/jSouchkovTRIZHistory-081114.htm 「TRIZの歴史の概要」(V. Souchkov; 訳中川)

TRIZをやさしくした諸方法 (SIT、ASIT、USIT) については、1998-2004年の項に1項目だけ記述されています。
そして、「(ただし、簡略化のしすぎと、いくつかの主要なTRIZ概念を消してしまっているとして、TRIZコミュニティの大多数からはあまり支持されていない。) 」と評価しています。
これは、ETRIA TFC や TRIZCON などの国際会議で、SIT/ASIT が発表されることがなく、USIT の開発者Sickafus の発表も1998-1999年だけであった、という状況を反映しています。
USITについて中川がETRIAとTRIZCON で継続して発表し、またUSITが日本のTRIZシンポジウムでは毎年数件発表されているというのは、世界のTRIZから見ると特異的なことです。
いろいろな技術や製品の発展の歴史において、「簡易版が最初は低く評価されていたのに、より多数のユーザのニーズに適切に応えて実力をつけ、やがて従来の重厚版をひっくり返すようになる」というのが、『革新[イノベーション]のジレンマ』で明確にされた「破壊的技術」という認識です。(例えば、Darrell Mann の和訳書の p.269-274を参照下さい。)
重厚版TRIZをひっくり返す「破壊的技術」としての、次世代のTRIZを作るというのが中川の大きなモチーフです。

重厚版TRIZだけでなく 様々な問題解決手法を 「破壊」してエッセンスを抽出し、それらを簡素に組み合わせて[統合して]、”矛盾を多数抱えて にっちもさっちもいかない複雑な問題”を 解決することは間もなく できると思います。

11. まとめと提言

あらゆる問題解決手法の専門家の方々に、
  「ぜひ、各手法の壁を超え、
   各手法のエッセンスを組み合わせて[統合して] 簡素な手順にし、
   日本の問題解決能力を上げていきましょう!」
と 呼びかけたいです。

以上です。

 

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最終更新日 : 2011.12. 6     連絡先: 中川 徹  nakagawa@ogu.ac.jp