本サイトの5名の読者の方々からの通信をまとめて,「読者の声」のページとしました。海外から3名と国内から2名です。本サイトに国内の読者からの生の声を初めて掲載でき, 意義深いページとなりました。
海外からのものは,
下記のように3名のTRIZエキスパートからで, 中川の報告:
「TRIZの母国を訪ねて (1999年8月, ロシア&白ロシア訪問記) 」に関する感想を書いております。
報告中の誤りの指摘の他に, 貴重な情報・議論を含んでいます。内容は英文ページを参照ください(和訳の予定はありません)。なお,タイトルは中川がつけたものです。
(1) "Some Comments" Semyon Savransky (The TRIZ Experts, 米国),
1999. 9. 14
(2) "Contradiction Technology is the core part of TRIZ"
Nikolai Khomenko (Minsk TRIZ Center, 白ロシア), 1999.10. 3
(3) "TRIZ in Finland" Kalevi Rantanen (TRIZ OY, フィンランド), 1999.10.
4, 10. 6
国内からの寄稿は,
以下のような2名の方からのものです。
(4) 「TRIZを適用するためのよりやさしい方法の必要」
安田道明 (日本エル・シー・エー) 1999. 6.23,10.21
(5) 「USIT研修参加報告他を興味深く読ませていただきました」
古謝秀明 (富士フィルム) 1999. 9.14, 10.27
編集者のもとには, 国内の読者のみなさんからときどき励ましのメールをいただいており, 感謝しております。 ただ, いままで, 公開用の寄稿としていただいたものはありませんでした。今回, 本サイトの創立 1周年にあたって読者の生の声を掲載したいと考え, いままでメールをいただいた読者の方に, 公開できる寄稿を改めて要請しました。本件の2名の方は, その要請に応えて改めて感想や質問を送って来てくださり,以前のメールの公開を了解いただきました。 TRIZを学び,適用を模索している段階においての感想や質問が書かれています。日本全国の読者の皆さんにも参考になるものと思います。このような寄稿がきっかけになって交流と協力が育っていくことを期待しております。
上記のように, 海外からと国内からとで, 寄稿者の立場も議論のレベルも大きく異なりますが, 全体として「TRIZの"やさしい適用法"の必要について」がその焦点になっており, 本ページの和文タイトルといたしました。なお, 英文ページの表題は和文ページとは異なり, "On Nakagawa's Trip Report"としました。
本サイト『TRIZホームページ』は, オープンな情報公開・発信・交流の場であり, 読者の皆さんからの寄稿を歓迎しております。今後も「読者の声」のページをはじめ, いろいろなカテゴリでの読者からの寄稿を掲載していきたいと思っております。ただ, 編集者が調整(moderation)していることと, 掲載までに 2週〜 4週程度の期間がかかることはご了解ください。
追記: 古謝氏の質問に対する中川の回答を本ページの末尾に掲載しました(1999.10.31)。
(6) 「古謝氏の質問への回答」 中川 徹 (大阪学院), 1999.10.30
このページの先頭 | 1,2,3 海外からの寄稿 | 4. 安田(日本LCA) | 5. 古謝 (富士フィルム) | 6. 中川の回答 | 英文ページ |
(1)
"Some
Comments"
Semyon Savransky (The TRIZ Experts, 米国), 1999. 9. 14
(2)
"Contradiction
Technology is the core part of TRIZ"
Nikolai Khomenko (Minsk TRIZ Center, 白ロシア), 1999.10. 3
(3)
"TRIZ
in Finland"
Kalevi Rantanen (TRIZ OY, フィンランド), 1999.10. 4, 10. 6
(4)
「TRIZを適用するためのよりやさしい方法の必要」
安田道明 (日本エル・シー・エー) 1999.6.23, 10.21
(1999. 6.23)
はじめまして。
私日本LCAという経営コンサルティング会社に勤務しております安田と申します。
TRIZのHPを拝見させて頂き、大変貴重な情報提供、大変感謝しております。
さて、[以下略]
-----------
(1999.10.21)
開発業務の生産性を向上させるコンサルティング業務を行なっている者として
TRIZに関して思うこと、また訪問、指導している企業から聞くTRIZについての感
想を御送りします:
トリーズを上手く開発に活かすには技術課題を特定できるかどうかにかかってい
ると思います。その点で課題を特定し物理的表現としてどのように表現できるか
トレーニングをつまないといけないと思います。PCのソフトで対応できる、ナ
ビゲートできるものがあればいいのですが三菱総研が最近出している本を読んで
みますとその辺がアリーズというのがあるという程度で詳細プロセスを説明され
ているところがありません。本当のノウハウはこの技術課題特定、技術課題の物
理表現にあると思います。ここを明解に謳える部分があればもっと広まるのでは
ないでしょうか?
安田道明
(株式会社日本エル・シー・エー)
email: <m_yasuda@lca-j.co.jp>
WWW: http://www.lca-j.co.jp
(5)
「USIT研修参加報告他を興味深く読ませていただきました」
古謝秀明氏 (富士写真フィルム) 1999.
9.14, 10.27
(1999. 9.14)
大阪学院大学 中川 徹 様
初めまして。 富士フイルムの古謝と申します。
いつも先生のHPを興味深く読ませていただいており、先生の精力的な活動に
は感服させられています。(ロシアまで出かけられたのには、本当に驚きました)
先日、USIT(ユーシットという発音でいいですか?)に関する標記レポートを
読ませていただき、感銘を受けています。単純化すること、視覚化することの
重要性を改めて認識し、再度読み返してもっと理解を深めようとしているとこ
ろです。
出来れば、現在私の関わっている業務にこのような考え方を適用出来ないかと
いうことも検討しているところです。
私の職場は「生産システムグループ」という名称ですが、いわば企業内コンサ
ルタント集団で、管理技術を活用して、研究所を含む現場の問題解決の支援を
するというタスクを追っています。その中で私自身はVE担当なのですが、VEで
は、「問題となる機能が明確になったらあとは君たちのやる気にかかってるか
ら頑張ってね」みたいなところにずっと欲求不満を感じており、TRIZをこの部
分(機能→アイデア)にうまく活用出来ないかと模索しているところです。
TRIZそのものは、一気に人気だけは高まった感がありますが、基本に根ざした
活用法を伴わないと、あっという間にそっぽを向かれるのではという危惧の念
も抱いています。
そんなこんなで、先生と違って牛歩の歩みで何とか登ろうとしていますが、今
後具体的なアドバイスをいただきたいような場面もあろうかと思います。
そのときには、ご教示よろしくお願いいたします。
古謝 秀明
------------
(1999.10.27)
大阪学院大学教授 中川 徹 様
富士フイルムの古謝です。
随分遅くなってしまいましたが、先日いただいた寄稿のご要望に関して、職場のも
のからも意見(質問)を集めましたので、ご連絡致します:
SIT研修の報告、興味深く読ませていただきました。
特に、「ゲートバルブからの漏水検査法」の事例は、職場内の研究会で紹介したと
ころ、「面白そうな方法なので、機会があれば使ってみたい」という感想を貰いま
した。(私も活用してみたいと思っています。)
本日は、この事例を紹介した際に出てきたいくつかの疑問点についてご連絡します。
1.USITそのものについて
(1) USIT法は、「問題ありき」を前提とした「問題解決」の技法ですが、
この方法は、「ゼロから何かものを設計する」ような場面にも適用可能
でしょうか?
適用場面等の条件や活用のノウハウがありましたら教えて下さい。
(2) 中川教授はIM社のソフトのようなフルメニューのTRIZとUSITをどのように使い
分けて行こうとしておられるか、考えをお聞かせ下さい。
2.ゲートバルブの事例について
(1) 段階1−5:根本原因の考察について
「目で見て透明というのは、方法を狭く限定して考えすぎている。
」とい
う講師からのアドバイスが紹介されていましたが、では、どのような観点で考
えればよいのでしょうか?
(” ”で括るという意味がよく理解出来ませんでした。)
例えば、「水が漏れてもわからない」ことの根本原因としては、
「水が検知されにくい(人間にも機械にも)」というようなことが考えられ、
その下位の理由として、「水が人間の目に認識されにくい」
さらにその下位に 「水が透明である」「水が表面に広がり易い」
といった原因の構造のようなものも考えられますが、ここまでやると複雑に
なって、USITの良さを殺してしまうような気もします。
(2) Uniqueness分析について
私のUSITの進め方の解釈は、以下の通りです。
まず、「問題の定義」のところで、「問題の状況を分析」し、次に閉世界法で
は、「問題解決のヒントを得るための分析」を行う。そして、Uniqueness分析
では、「問題の状況分析を更に空間、時間の観点で詳細に」行う。
つまり、
「問題状況分析」→「問題解決のための分析」→「問題状況分析」となってい
るように思えます。
「問題状況分析」を続けてだんだん詳細に進むようにせず、
一度「解決のヒントを得る分析」を間に挟んだのには何か理由がありそうです
が、この点何か情報がありましたら教えて下さい。
以上、お言葉に甘えていろいろと質問させていただきました。
よろしくお願いします。
古謝 秀明 (Kosha Hideaki)
富士写真フィルム
Email: hkosha@ashi.seigi.fujifilm.co.jp
(6)
「古謝氏の質問への回答」
中川 徹 (大阪学院大学) 1999.10.30
(a) USIT は「ユーシット」と発音しています。開発者のSicakfus博士のEmailのsignatureは,
つぎのようです。
"To be creative, U-SIT and think"
(b) 「問題ありき」を狭い意味にとりますと:
USITの分析法のうちの「閉世界法」が, 問題をもつシステムの分析からスタートしている方法であり,
この意味で「問題ありき」を前提として「問題解決」を図っています。もう一つの分析法「Particles法」は,
現行システムの欠陥の分析ではなく, まず「理想解」を考えるという方法ですから,
「ゼロから何かものを設計する」に近い方法だといえます。
ただ, より広い意味で, 問題意識が最初に来ないといけないという意味では,
USITであれTRIZであれすべて「問題ありき」から出発するものだと思っています。問題意識を明確にする,
特にそれを「矛盾の認識」にまで高めることが, TRIZが説く創造的思考の中心テーマです。
(c) 「TRIZをどのように適用していくのがよいか」は,
古典的TRIZから, 現代化したTRIZへの移行のための大テーマです。小生の解説でも述べていますように,
「TRIZの現代化」の主要な流れとして, Ideation社の原因結果分析, Invention
Machine社の知識ベースツールの実用化, USITの簡易化技法などがあると位置づけています。今後,
これらが成長・融合して新しい世代のTRIZが出来てゆく (われわれが作っていく)のだと思っています。
小生の現在の認識をもっとも端的に表現するのがつぎの表です。
TRIZ = 方法論 + 知識ベース | 学習・適用のための素材 | |
方法論(a) | 技術を見る新しい見方 | TRIZ教科書 |
方法論(b) | 問題解決の思考方法 | 簡易化技法 USIT |
知識ベース | 方法論(a)による事例集 | ソフトツール (TechOptimizer) |
ここで, 方法論(b)の範疇でAltshullerは多くの方法を開発しARIZとして集大成しようとしましたが,
それは簡単にこなせる・適用できる形にはなっていません。USITはそのエッセンスだけを取り出し,
ここの方法論(b)に対応する部分だけを, 容易に適用できる形に作りあげたものと考えています。
IM社のTechOptimizerは, TRIZ知識ベースを収録し, さらに拡張しつつあります。将来のソフトツールは,
上記の 3側面すべてを使いやすく含んだものであるべきものと思いますが, 現在の段階ではやはりまだ第3側面を中心としたものです。さらに言えば,
上記の「TRIZ教科書」ももっともっと良いものが出版される必要があると思っています。
ともかく, 小生はこのような認識のもとに,
3側面を補完しあって使っていこうとしています。具体的なやり方はまだまだこれから開発していかねばなりません。
(d) 「水が透明だから」というのは, 視覚による認識の中の一側面だけをいっています。「水が"透明"だから」というのは, その他のいろいろな感覚や検出法に対しても, "透明" すなわち感知・認識されにくいことを言おうとしたものです。匂いもない, 味もない, 音も出さない, 光も出さない, 強い化学反応性もない, 磁性もない, ...などのことを言おうとしたものです。
(e) Uniqueness分析は, Sickafus博士自身は分析段階と解決策生成段階の中間
(両方)に位置づけています。小生は, これを分析段階に位置づけました。その理由の一つは,
解決策生成のループの外にある (要するに 1回やればよい)ことです。解説にも書きましたように,
Uniqueness分析の空間・時間特性分析は, TRIZの「物理的矛盾」の抽出と「分離原理」による矛盾解決に繋がるものであり,
解決策の生成に対して豊富なヒントを与えます。問題状況を分析することもできますし,
理想解を考えてその分析をすることもできます。これらの観点から, USITの全体フローの中で現在の位置が適当と考えています。
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