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TRIZ/USITの導入と定着のやり方について | |
古謝 秀明 (富士写真フィルム),
中川 徹 (大阪学院大学) 2003年10月10日, 11日 |
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[掲載: 2003.10. 21] |
編集ノート
(中川 徹, 2003年10月21日)
「フォーラム」のページをこの一年ほどほとんど使っておりませんでしたが, 最近いくつかメールをいただき, やはりこの「身近な」ページにいろいろ掲載させていただくのがよいと思いました。第一は, 富士写真フィルムの古謝さんからいただいたメール (と中川の返答) です。USITの定着の段階がよく分かります。また, USITの意義づけについての古謝さんの図も興味深いものです。
この掲載を快諾いただいた 古謝 秀明さんに感謝します。 電子メール: hkosha@ashi.seigi.fujifilm.co.jp第二は, ある企業で中川が講演させていただきましたときに出た「USITの定着に要する期間」に関する質問について,その時の 私の舌足らずの返答を補足したものです。こちらは発信先などを記載しません。
(1A) 古謝 秀明さん (富士写真フィルム) ==> 中川 徹 [2003年10月10日]
白浜のユーザーグループミーティングから早々と1ヶ月が過ぎようとしています。お忙しい中、HP更新のご案内ありがとうございます。先生のHP上でのUSIT紹介のおかげで2000年に当社内で着手したUSIT活動もやがて40件になろうかとしております。
ここまでの段階を振り返ってみると、以下のようなプロセスをたどって来たように思います。(1) USITの紹介をすると、面白がってはくれるけれども、実際にやるのは話を聞いた人の1/10以下 (あるいは、否定的な人も)ここ1〜2ヶ月で、やっと(3) の状況が見えてきたところです。(先生の言っておられる「着実な導入」の一つの姿かも知れません)
↓
(2) 困っている課題について、USITのインストラクションを受けながら活動を行う 。
(リピーターでも、自分達だけで実施するのには抵抗がある or 自信がない? or やってくれると手間が省ける??)
↓
(3) リピーターが自分達でもやろうという気になり、自分のグループにインストラクタを養成しようという気運が高まりつつある。これまで使用していた先生のセミナー資料を編集して作ったテキストや簡易版の説明資料では言い足りない部分が出てきたので、「USIT活動マニュアル」を現在作成(再構成)中です。
添付した図解は、マニュアルの序文に相当するところに記載しようとしている 「自分のUSITに対する思い」のイメージです。初めてUSITに接したときから抱いていたイメージを改めて図に表現してみました。
重要なことは、通常の発想法で陥りがちな矛盾:
「抽象化することにより発想空間が広がる可能性は上がるけれども、
"手触り感" がなくなることにより発想の手がかりを失ってしまう」
を、USITが見事に解決している点だと思います。この図を作成したあとに、マニュアルの参考にするため中川先生のゲートバルブの事例を読み直していると、「USITが非常に効果的に問題解決空間の"幅優先探索" を支援している」という主旨の部分を再発見して、更に心強く思いました。
この図にはもっと盛り込みたい内容が沢山ありますが、これ以上複雑になるとUSITの基本から外れてしまうので、適当なところで止めました。もっと分かり易くする表現方法があるかも知れません。取りあえず、現状の完成版ということでご参考までに送らせていただきます。
感想、ご指摘、ご質問等いただけると幸いです。
(1B) 中川 徹 ==> 古謝 秀明さん (富士写真フィルム) [2003年10月11日]
メールありがとうございました。御社でのUSITの進展の状況がよく分かります。とくに (1)→ (2) → (3) の段階は興味深いですね。
先日ある企業でTRIZ/USITの入門の講演をさせていただいたのですが, そのときの質疑応答で,
「Ford社のLarry Smith という人が 「田口メソッドの導入に4年掛かるとすると, TRIZの導入には8年掛かるような気がする」といったということだが, この比較からいうと, USITはどれだけ掛かると思うか?」という質問がありました。中川はつい
「 1ヶ月でよい。最初の2時間の講演, そして2日間のトレーニングで基本的なことはマスターできるから。」と答えてしまいましたが, やはり極端に言い過ぎたと思っています。社内への定着を組織的に根付かせるまでに, 新しくスタートする所だと (今からでも) やはり「2年」というべきだったかもしれません。
中川が言いたかったのは,
「このような技法にセンシティビティが高い人であれば, その人がUSITに確信を持ち,基本的なことからその全貌まで理解するのに1ヶ月でよい」ということであったと思います。Mannの教科書には同様なレベルでTRIZを理解するのに数ヶ月 (6ヶ月程度) と表現していますので, つい, それとの対比で答えてしまいました。個人が確信をもつのに必要な期間と, 組織がそれを認めるまでの期間とにはやはり大きな違いがありますから。それでも, 普及の最大の鍵は, 確信を持った一人の個人が誕生すること, その人が実践できるだけの技量を備えることだろうと思います。
また, 別の企業の人で, 新たにTRIZ/USITの導入を取り組もうとしている人と電話で話しているときに, その人は
「南紀白浜でのいろいろな発表を聞いて非常にためになったが, やはりドップダウンでやるのが効果があると思った。」といいました。どうしてそう思ったかを尋ねると, パナソニック・コミュニケーションズや日産自動車の発表からそう思ったとのことです。その人に中川が言ったのは,
「本当の鍵は, 確信を持って導入しようとし, 方法を内容的にリードできる人が一人育つことだと思う。と話しました。
パナソニックコミュニケーションズの場合はそれが本部長レベルの人であったから, 幸いトップダウンになった。
そうでなくてただ単に号令するだけのトップダウンはうまくいかないと思う。
確信を持った人の周りで, それぞれそのレベルに相当した普及のしかたを見つけていくのがよいと思う。
もちろんその中で上司のサポートが大事であるが。」古謝さんの一枚の図は非常に面白いと思います。いろいろな「思い」が込められている図ですね。古謝さんがずっと前からVEを推進して来られて, VEの問題点を克服するものとして(TRIZや)USITに新しい方向を見出されたというのが,よく表現できていると思います。なかなか他の人には描けない図なのではないでしょうか。
新しいUSIT教材と御社での活動に期待しております。
ところで,古謝さんの今回のメールを『TRIZホームページ』の「読者の声」の欄に掲載させていただくことはできないでしょうか?「読者の声」は久しく載せていませんでしたが,読者のみなさんにとっては非常に親近感があるものだろうと思います。どうぞよろしくご検討ください。必要な加筆・修正をしていただいてももちろん結構です。
来年4月のTRIZCON2004 に中川はAbstractを送ろうとしております。どのようなテーマにするか苦慮しておりましたが, 古謝さんのメールでまた元気がでました。どうもありがとうございます。 とりいそぎ。
(1C) 古謝 秀明さん (富士写真フィルム) ==> 中川 徹 [2003年10月11日]早速の回答ありがとうございます。
先生の図解他についてのコメントに私も元気をいただき、感激しています。
特に、南紀白浜参加者の方の質問に対する回答に力づけられました。先生のHPの「読者の声」欄への掲載について, 先生のお役に立てるのであれば、どうぞ掲載よろしくお願いします。
(2) 中川 徹 ==> 某企業のTRIZ推進者 [2003年10月11日]
先日の貴社での講演会では皆さん熱心に聞いて下さり, ありがとうございました。なお, 質疑応答で少し返答を間違った部分があると反省しております。下記の点を質問された方, あるいは皆様にお伝え下さい。
(1) USITの企業における2日間トレーニングのプログラムは下図のようです。-- これは質疑応答での私の返答を明確にするために添付しました。
これは, すでに2回企業内トレーニングにおいて実施し, 実績を挙げたものです。(それまでは3日間でしていたのを短縮したものです。) 実地問題を3テーマ持ち込み, 1グループ5〜9人で並行して問題解決を図ります。全体的な概要の講義の後で, 5セッションに分けて, USITのプロセスに従った問題解決を行います。各セッションは, 30〜45分の講義, グルーブ別演習80〜100分, 全体での発表・討論45〜60分で構成します。各人がグループ内で一つの問題について問題解決のプロセスを一部始終実践すると同時に, 他の2グループがやったことをも理解することができ, この2日間でUSITを基本的にマスターできるのです。得られる解決策のアイデアは (数えにくいですが) 各グループ20〜40件程度を達成しています。
(2) 別の方の質問で
「Ford社のLarry Smith という人が 「田口メソッドの導入に4年掛かるとすると, TRIZの導入には8年掛かるような気がする」といったということだが, この比較からいうとUSITはどれだけ掛かると思うか?」 と聞かれました。中川のその場での返答は「 1ヶ月でよい。最初の2時間の講演, そして2日間のトレーニングで基本的なことはすべてマスターできるから。」と答え, いくつかの事例を説明しました。(前項 (1) がその中心でした。)ただ, この返答はやはり極端に言い過ぎたと思っています。
「今からUSITの導入をスタートしたとして, 社内への定着を組織的に根付かせるまでには2年程度かかるだろう。」というべきだったと,いまは思っています。中川が会場で返答したのは,
「このような技法にセンシティビティが高い人であれば, 今日の講演で初めてTRIZ/USITを知ったとして,という趣旨でした。
その人がUSITに確信を持ち,基本的なことからその全貌まで理解するのに1ヶ月でよい。
この期間に2日間のUSITトレーニングを受ければUSITを使えるまでにマスターできる」MannのTRIZ教科書には同様なレベルでTRIZを理解するのに数ヶ月 (6ヶ月程度) と表現していますので, つい, それとの対比で答えてしまいました。
上記での食い違いは,「個人が習得し,確信をもち, その技法をマスターするのに必要な期間」 と, 「組織が認めて,組織内に定着するまでの期間」 との間の違いです。この両者にはやはり大きな違いがあります。
それでも, 組織への普及の最大の鍵は, 確信を持った一人の個人が誕生すること, その人が自分で実践し, 他の人をリードできるだけの技量を備えることであると思います。
繰り返しになりますが,御社の中にそのような確信を持つ個人ができるだけ早く誕生して,組織に働き掛けていかれるとよいと思う次第です。
とりいそぎ,お礼と補足まで。
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最終更新日 : 2003.10.21. 連絡先: 中川
徹 nakagawa@utc.osaka-gu.ac.jp