編集者より: MATRIZから「TRIZチャンピオン賞」を受けました |
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MATRIZ(国際TRIZ協会)から「TRIZチャンピオン賞」を受けました |
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2021年 9月15日 |
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掲載: 2021. 9. 16 |
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編集ノート (中川 徹、2021年 9月15日)
8月27日の朝、私は一通の電子メールに驚きました。MATRIZ(国際TRIZ協会)理事会が「TRIZチャンピオン」の称号を私に与えることを決定したというのです。 この賞は、特に「枠から出て考える」ことを重視し、TRIZを世界に展開することに大きく貢献した個人を称えることを目的としていると言います。
私は、その申し出を大変名誉なことと思い、ありがたく拝受する旨を9月1日に返信しました。 その返信の中で私は、この24年余の私の考えと活動を書かせてもらいました。私自身のアプローチには、「枠から出て」という中に、「(伝統的なTRIZの)枠から出て」という意味も含んでいます。私の活動を認めてくれたMATRIZの寛容さに大変感謝しています。また、この四半世紀の間に、私を導き、協働し、支援し、共に学んでくださった、日本と世界の多くの方々に感謝いたします。今後も健康が許される限り、活動を続けていきます。
本ページには、MATRIZからの電子メール、私の返信(関連ページへのハイパーリンクを追記しました)、および「TRIZチャンピオン」賞状の写真を掲載しました。
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MATRIZから中川へのメール (2021年8月27日)
件名: TRIZチャンピオン BCC: 中川 徹 殿
親愛なる同僚、
おめでとうございます、MATRIZ理事会は投票の結果、あなたをTRIZチャンピオンと認めることを決定しました。この栄誉の条件につきましては、(本協会のホームページ) https://matriz.org/triz-champion/ を参照ください。
この条件とプロセスをお知りになりましたら、この賞を受ける意思があるかどうかを、お知らせください。 2021年9月1日までにこのメールに返信ください。
ありがとうございます! 敬具。
Dr. Mark G. Barkan、 TRIZマスター。 MATRIZ 事務局長
どんな方法論やアプローチでも、それを開発、適用、および展開するには、さまざまな才能が必要です。TRIZは、すべての中で最も創造的な方法論の一つですから、特にそうです。私たちは、創造的な思想家を、科学者、エンジニア、技術革新者、ビジネス起業家、アーティスト、作家、イラストレーター、デザイナー、発明家、教育者...などの形で必要としています。「枠から出て考える」能力を持つ人々こそ、未来をリードし、特別なことを起すでしょう。
TRIZ方法論を開発し使用することの習熟度については、MATRIZは資格システムを持ち、認証しています。他方、この「TRIZチャンピオン」という称号は、教育・組織・普及活動などによって、TRIZを世界に展開するのに大きく貢献した、個人を称えることを目的としています。
中川からMATRIZへの感謝の返信 (2021年 9月 1日)
親愛なる Mark G. Barkan 博士 MATRIZ 事務局長
2021年 9月 1日 中川 徹 (大阪学院大学 名誉教授)
8月
2827日のメール、大変ありがとうございます。読んで、びっくりいたしました。「TRIZチャンピオン」について、MATRIZのホームページで読み、つぎのように書かれているのを学びました。
... 私たちは創造的な思想家を必要としています... 「枠から出て考える」能力を持つ人々です...。
... この「TRIZチャンピオン」という称号は、教育・組織・普及活動などによって、TRIZを世界に展開するのに大きく貢献した、個人を称えることを目的としています。そのような意味を持つ「TRIZチャンピオン賞」を私に授けるというMATRIZのお申し出を、私は大変光栄に思います。
1997年以来、私はTRIZを学び、また、(少し広い意味の)TRIZを教え、適用し、開発し、促進することを、日本と世界で、多くの同僚と一緒に、活動してきました。 このたび、MATRIZ理事会が、私の活動を「TRIZチャンピオン賞」に値するものと、認めてくださったことを、私は大変うれしく思います。
「TRIZチャンピオン賞」のご提示を、私はありがたくお受けいたします。
ここで、この24年余の私の考えと活動について、簡単に説明することをお許しください。
それは、いわば 「(伝統的なTRIZの)枠から出て」、というやり方のものでした。1997年に私はTRIZに出会い、TRIZマスターたち(例えば、Sergey Ikovenko, Boris Zlotin)によるセミナー、ソフトウェアツールTechOptimizer、Yuri Salamatovの教科書(Valeri Souchkovとの質疑応答あり)などを通して、TRIZを学びました。この間、三菱総合研究所が組織した、日本の企業ユーザの人たちとの協力が有益でした。私はまた、1999年にロシアとベラルーシに2週間旅行し、多くのTRIZ指導者(例えば、Valentina Zhuravlyova, Volyuslav Mitrofanov, Michael Rubinなど)にインタビューしました。
1999年に私はアメリカでEd Sickafusに出会い、彼のUSIT(Unified Structured Inventive Thinking)を学びました。 USITはイスラエルのSIT(Systematic Inventive Thinking)を採用し、創造的な問題解決の明確なプロセスを持っています。 USITは習得が容易で、効果的に適用できる利点があるため、私は日本の企業ユーザーに主にUSITを教えました。
私は毎年TRIZCON(米国でのTRIZ国際会議) とETRIA TFC(欧州でのTRIZ国際会議)に参加し、日本でのTRIZ / USITのアプローチを発表し、世界でのTRIZの発展を学びました。私はこれらの学会(そしてTRIZジャーナルの記事)を通して、さまざまな形で現代化したTRIZを学びました。
Darrell Mann と Simon Dewulf が、世界の特許DBを詳細・体系的に分析して、TRIZ知識ベースを更新していくという仕事は、私にとって最も印象的でした。Darrell Mannの『体系的技術革新』と『新版 矛盾マトリックス 2003』の日本語版を出版しました。 (MATRIZに属する多くのTRIZマスターたちが、1970年代にコンピューターなしで構築されたAltshullerの元の矛盾マトリックスをまだ使用しているのは、間違った伝統主義の事例だと、私は思います。)
日本で私たちは、TRIZのすべてのアイデア生成法(例えば、40の発明原理、76の発明標準解、技術システムの進化のトレンド、分離原理など)を、はるかにすっきりしたUSITの5つの主要技法に再編成しました。その結果USITは、オブジェクト-属性-機能(および空間と時間)の枠組みに基づき、5主要オペレータと32のサブオペレータとからなる、適切に構造化されたオペレータ体系を備えています。したがって、日本のUSITは、多くの文献がUSITについて言及しているような「単純化されたTRIZ」ではなく、「コンパクトに統一されたTRIZ」であり、理解しやすく、効果的に適用できます。
私たちは(NPO)日本TRIZ協会を組織し、毎年日本TRIZシンポジウムを開催してきました。私は、(初回の)2005年から2012年までそのプログラム委員長を務めました。このシンポジウムでは、海外からさまざまな基調講演者(Darrell Mann, Ed Sickafus, Hans J. Linde, Larry Ball, Boris Zlotin, Nikolay Khomenko, Simon Litvin, Denis Cavallucciなど)を招きました。 また、日本の産業界や大学から多数のプレゼンテーションを行い、海外からも多くの講演者や出席者を受け入れました。
USITについての私の理解はさらに進みました。 USITのプロセスをデータフロー図で表すことにより、「6箱方式」の概念を得ました。 「現実の世界」で、(1)問題を認識し、(2)問題を定義します。次に、「思考の世界」で、(3)現在のシステムと理想のシステムの理解を作り、次に(4)新しいシステムのアイデアを取得し、そして(5)概念的な解決策を構築します。その後、「現実の世界」に戻り、(6)市場の実際の製品・サービス等に解決策を実装します。 (2)から(5)までのプロセスは、一般に科学技術における通常の「抽象化の4箱方式」」よりも意味があり、古典的なTRIZのARIZ-85Cよりもはるかに単純で効果的です。
さらに、「6箱方式」(つまり、(1)から(6)まで)が、一般に「創造的な問題解決の新しいパラダイム」であることを、認識しました。それは、TRIZや関連するさまざまな方法論を含む、「創造性技法」または「創造的な問題解決の方法論」のさまざまなアプローチを表現し、統一することができる基本方式です。このようにして、TRIZとUSITが、「創造的な問題解決の方法論」の一般的理解(すなわち「科学」)への道を開いたのです。
私は1998年から2012年まで、大阪学院大学の教授を務め、情報学部の学部生に教えました。私は学生たちと一緒に、彼らに馴染みのあるさまざまなテーマで、TRIZ / USITを適用するいくつかの事例研究を行いました 。
1998年11月に私は、ウェブサイト『TRIZホームページ』を日本語と英語の両方で創設し、私自身が編集・運用して、23年近く継続して活発に発信しています。 編集者自身だけでなく、国内外のさまざまなTRIZ専門家によって書かれた多くの論文を掲載しているという意味で、公共ウェブサイトです。 それは、TRIZ関連の方法論の最新情報を、日本と世界の間で双方向に紹介するのに役立つことを意図しています。 例えば、私はTRIZCON、ETRIA TFC、そして日本TRIZシンポジウムを含む、
約1231の会議の「Personal Report」を書き、各会議の発表のすべて(またはほとんど)を紹介/レビューしました。 また、ウェブサイトの更新案内を、200人以上の日本人と、200人以上の世界の読者に、毎回送信しています。2017年12月、「世界のTRIZ関連サイトのカタログ集を創る」ことを目的にして、「世界TRIZ関連サイトプロジェクト(WTSP)」を開始しました。私が提案を開始し、プロジェクトリーダーになり、世界の多くのTRIZの同僚の賛同を得ました。特に、Darrell Mann、Michael Orloff、Simon Dewulf、Simon Litvin、Valery Souchkovがグローバル共同編集者としてプロジェクトに参加しました。最初にパイロットプロジェクトとして、日本WTSPカタログを作成しました。次いで、世界のTRIZおよびTRIZ周辺サイトのWTSPカタログ集の暫定版(2019年9月)、およびベータ版(2020年6月)を作成しました。これらは主に、プロジェクトリーダー自身による調査と構築作業でできたものです。
WTSPはボランティアベースの非営利プロジェクトであり、各国でのボトムアップのチーム活動を期待しています。 2018年10月時点で、30カ国から約80名の会員/サポーターを獲得しましたが、(その後)実際にWTSPで活動した人はごくわずかです。 WTSPカタログの自国の部分の原稿を提出したのは4カ国だけでした。これがWTSPの中核にある問題です。
もちろん、多くのTRIZの指導者/同僚には、いろいろな理由/事情があります。自分の仕事が超多忙である、WTSPのビジョンが大きすぎて達成できそうにない、WTSPカタログの有用性がわからない、WTSPカタログ集にサイト紹介を書くメリットが見つからない、などです。
特定分野の「ウェブサイトの世界カタログ」というのは新しい概念ですから、「枠から出て考える」考え方が必要です。世界のTRIZに関連する多様な仕事や活動をカバーするための信頼できる「情報源の単位」として、私たちはウェブサイトが個々の論文、ウェブページ、特許、本、組織などよりも適していると考えます。私たちは良いウェブサイトを広く収集し、評価のうえで選択し、カテゴリに分類して表示することを目指します。個々のウェブサイトを事実に基づいて公正に紹介します。そのために、サイト責任者が自分のサイトの紹介をきちんと書くべきです。
私たちのWTSPカタログ集には2つの柱があります。TRIZ(その派生方法を含む)のサイトのカタログ集とTRIZ周辺(創造的な問題解決に関連する多様な方法論)のサイトのカタログ集です。両方ともすでにベータ版で公表しています。世界のWTSPカタログ集は、現実のさまざまな問題を創造的に解決するために、優れた方法論/実践法を学び、適用したいと願っている、世界中のすべての人々にきっと役立つでしょう。 WTSPプロジェクトは、創造的な問題解決の考え方を広めるための、信頼の置ける情報源を創り出すという、自発的な共同作業を組織する新しいタイプの運動です。
以上が私のアプローチの概要です。
私は、MATRIZが、私の「枠から出て考える」アプローチを、一部に「(伝統的なTRIZの)枠から出て」いることをも含めて認めてくださり、「TRIZチャンピオン賞」を私に授与いただくことを、非常に光栄なことと思い、ありがたく感謝しております。
特に、MATRIZによる授賞が、世界中の多くのTRIZ指導者や専門家の人たちを、世界のTRIZおよびTRIZ周辺ウェブサイトのWTSPカタログ集を拡充する活動に、ボランティアとして取り組むように、奨励するものであることを願っています。
私はあなたのご提示を喜んで拝受いたします。誠にありがとうございます。
敬具。 徹
MATRIZから 中川 徹への「TRIZチャンピオン」賞状
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最終更新日 : 2021. 9. 16 連絡先: 中川 徹 nakagawa@ogu.ac.jp