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編集ノート (中川 徹、2017年 2月 7日)
随分遅くなってしまいましたが、昨年10月末にポーランドで開催された、ETRIA(欧州TRIZ協会)主催の国際会議TFC2016 の内容を、「Personal Report」として紹介いたします。
この和文ページは、概要/速報の性格のもので、発表の全論文のアブストラクトと(会議後に参加者に公開された限りの)スライドを読んで(論文本文を眺めただけで)、記述しています。今後、論文を読んだうえで、英文ページを作成し、その後本和文ページを(概要レベルのままで)更新する予定です。
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なお、私はいままでTRIZ関連の国内・国際学会について、「Personal Report」を以下のものに関して書いてきました。
米国 TRIZ国際会議(1998)、TRIZCON(Altshuller Inst.主催)(1999〜2007)(2002を除く毎年、8回)
欧州 ETRIA TRIZ Future Conference (TFC) (2001〜2008、毎年8回) (2012〜2013、2回)
日本 TRIZシンポジウム (2005〜2014)(2012を除く毎年、9回)
その他: イラン PSST2012、 マレーシア MyTRIZCon2012、 韓国 GTC2015これらを書いた初期の意図は、TRIZそのものの内容とその海外における進歩を、日本の人々に紹介することであり、もちろん和文で書きました。その後、海外の読者から要請があり、英訳を始めました。2003〜2011年には、和文ページに概要、英文ページに詳細を書き、米国・欧州・日本でのTRIZの進展状況を、日本そして世界の人々に紹介してきました。
ただ、このようなレビューを書くことは、その適切さ、公正さを保証するために、多大の負担を要し、責任を生じます。特に、すべての学会で複数会場での並行発表が行われますから、直接聞けなかった発表も多数あります。きちんと読んで紹介しようとすると負担が大きく、(多忙な日常の中で)2012年秋以後、学会紹介があまりできなくなりました。
この数年、TRIZ関連で複数の国際会議と (多数の)各国での国内会議が(たいてい毎年)開かれておりますが、その発表論文集が参加者/会員限定であることも多く、また(数か月後に遅れて)Web公開される場合にも (紹介なしの)多数の論文のままです。このため、せっかくの多数の優れた研究発表が、専門家たちにも見逃され、ましてや一般のユーザの人たちにはまったく知られないままで埋もれてしまいます。この状況が世界中で起こっており、日本ではこの数年特に国際的な刺激を受けずに過ごしてしまったと思います。
このような反省から、このたび一念発起して、(TRIZの国際会議の中で最も充実していると思われる)ETRIAの国際会議の「Personal Report」を書くことにしました。世界のTRIZの発展をご理解いただければ幸いです。
編集ノート (中川 徹、2017年 3月 28日)
英文ページに、発表された全論文について、個別論文の(かなり詳しい)紹介の掲載を始めました。次のカテゴリごとに別のHTMLページにしています。各論文の紹介への個別リンクもつけました。論文の後ろに 印をつけているものは特に推奨するものです。
A. TRIZの方法論 (英文詳細ページ掲載: 2017. 3.30)
B. TRIZと他の諸方法との統合 (英文詳細ページ掲載: 2017. 3.30)
C. 技術分野の適用事例 (英文詳細ページ掲載: 2017. 4.24)
D. 企業におけるTRIZの推進 (英文詳細ページ掲載: 2017. 6. 4)
E. 大学・学界・教育におけるTRIZの利用 (英文詳細ページ掲載: 2017. 6. 4)
(1) 会議の概要
名称: 16th International Conference of ETRIA: TRIZ Future Conference 2016 (TFC2016)
主催: ETRIA (欧州TRIZ協会)、Wroclaw University of Science and Technology (Poland)
期日: 2016年10月24日(月)〜 27日(木) (注: 第4日(27日)はオープン・ワークショップ)
会場: Wroclaw University of Science and Technology (ヴロツワフ、ポーランド)
Webサイト: http://www.tfc2016.com/
(2) プログラム概要:
10/24(月): チュートリアル (初心者向け1件、2時間)、開会式、基調講演(Tomasz Arciszewski (米国))、研究発表(トリプルトラック 12件)、ネットワーキングイーブニング
10/25(火): 基調講演 (Piotr Sroka (ポーランド)、Jacek Czech (ポーランド))、研究発表(トリプルトラック 12件)、昼食、研究発表(トリプルトラック 10件)、研究発表(ダブルトラック 5件 (中川発表))、ガーラディナー 10/26(水): 基調講演(Radoslaw Cieslak (ポーランド)、Dana Clarke (米))、研究発表(トリプルトラック 8件)、昼食、閉会式、ETRIA総会、見学(ヴロツワフ動物園、特別講演(Radoslaw Ratajszczak (ポーランド))
10/27(木): オープン・ワークショップ・デイ: チュートリアル/ワークショップ(4件並行、90分)、チュートリアル/ワークショップ(4会場並行、4時間半)
(3) 招待者、参加者など
基調講演・特別講演は以下の人々であった。ノートをよく取れていないため、記述を控えたい。
Tomasz Arciszewski (George Mason Univ. 名誉教授、米国): 基調講演 「TRIZ Mysterious Contradiction」
Piotr Sroka (WABCO、ポーランド): 基調講演
Jacek Czech (National Chamber of Commerce、ポーランド: 基調講演
Radoslaw Cieslak (Autodesk、ポーランド): 基調講演 「The future of making things - How to meet user demands」
Dana Clarke (Applied Innovation Alliance、Vermilion Institute of Technology 教授、米): 基調講演「A Foundation for Increasing Human Intelligence」、 チュートリアル 「TRIZ Tutorial for advanced」
Radoslaw Ratajszczak (Wroclaw動物園理事長、ポーランド): 特別講演 「Africarium: Where tradition meets innovation 」
チュートリアル、ワークショップのリーダを次の人々が務めた。
Mateusz Slupinski, Konrad Klepacki, Sebastian Koziolek, Marek Mysior, Bartosz Pryda, Mariusz Ptak, Damian Derlukiewicz, Marek Malkowski, Surabh Kwatra, Nina Defounge
参加者:
登録参加者は100人前後と思われる(正確な数は発表されてない)。地元ポーランドの参加者が多かったようだが、ヨーロッパ各国からの参加があり、韓国からはサムスンが約10人のグループ(サムスンの発表無し)、日本からは澤口研究室3人と中川が参加した。(ETRIA TFCでは例年と同様)大学関係、コンサルタントが多く、企業ユーザの参加があまり多くない。
また、第4日はオープン・ワークショップ・デイということで、ヴロツワフ工科大学の学生・院生をはじめ、ポーランドの人たちが多く参加しており、100名余の参加であったろうと思われる。
(4) 運営
例年のやり方で、ETRIAが内容面での運営(論文査読や編集、当日の内容的運営)に責任を持ち、ホストの組織(今回はヴロツワフ工科大学)が実務的運営の一切(会場準備、参加登録、イベント準備、Proceedings印刷、Webサイト運営など、すべて)と財政的な責任を持つ。ホストは欧州各国で持ち回りにしているが、(2年前から立候補しているとはいえ)決まるのは1年前だし、実質一つの研究室だけで運営しているから、随分負担が大きいようである。「自国にTRIZの学会を呼ぶことが、自国の技術開発力を向上させるために大事なきっかけになる」という目的意識がこのような学会招致を可能にしているものと思われる。
発表のアブストラクト締切が3月29日、簡単な査読があって、論文原稿の締切りが6月27日、2人の査読者による査読・選択があり、カメラレディの原稿提出が9月12日というスケジュールである。査読は、「Scientific」 と「Practitioner」の2部門に分けて行われ、両部門合わせて約20人の査読委員を委嘱している。ETRIAは、TRIZ研究が学術的に認められるようになることに努力しており、このようなしっかりした査読体制を取って、発表論文の質を高めようとしている。
基調講演は30分または60分、一般研究発表は一律に(質疑を含めて) 25分 (交替に+5分)であった。発表時間はやや短いが、4コマほど続いた後にコーヒーブレイク(30分)や昼食(90分)があるので、いろいろな人と討論・話ができる。
当日に、ProceedingsのPDF版を収めたUSBメモリが渡され、また、印刷したアブストラクト集が渡された。簡単なプログラムだけを頼りに3会場並行の発表のどれを聞くかを判断し、3会場を行ったり来たりして聴講した。
(5) 内容の要点
研究発表の全件を、テーマ分野に分類して、簡単に紹介すると、以下のようである。 印を特に推奨。
A. TRIZの方法論 (英文ページに各論文の紹介を掲載: 2017. 3.30)
A1. Didier Casner, Pavel Livotov 他 (独、仏): Problem definition and identification of contradictions in the interdisciplinary areas of mechatronic engineering
「問題定義と同定」と言っているのは、問題分析のこと。多数の基本的な方法を列挙している。 メカトロニクスの分野では、 機械、電磁気、制御、ソフトなどの諸領域の技術を総合したものになっており、それらの領域を跨って問題がかかわっており、それらの多領域での問題を解決していくことが必要である。
A2. Min-Gyu Lee (韓、フィンランド): How to Generate Simple Model Solutions Systematically from Function Analysis Diagram
Cause-Effect Chain と Functional Analysis の「使い方」をきちんと説明して、機能が不十分なところをいくつかのモデルを使って改良吟味する方法(FA+)を論じている。この論文で、機能分析(FA)の表現法がずっと拡張されて(FA+)便利になり、(発明標準解の考え方を取り入れて)解決のためのアイデアの構築までスムーズに使える方法にした。スライドは非常に分かりやすい。優れた論文であり、和訳する予定。
A3. Didier Casner, Pavel Livotov 他(独): TRIZ-based approach for process intensification and problem solving in process engineering: concepts and research agenda
プロセス工学、特にProcess IntensificationのためにTRIZ を適用するための体系について論じている。しっかりした文献調査をしているが、まだよく練れていないように思う。
A4. Nikolai Efimov-Soini, Leonid Chechurin 他(フィンランド): Method of time-dependent TRIZ function ranking
時間に応じて変化するシステムにおいて、時間フェーズごとの機能分析をして、トリミングを使う場合のトリミングする優先順位を計算しようとする。優先順位の計算の論理は複雑でアドホックである。
A5. Davide Russo 他(伊): Tech-Finder: a Dynamic Pointer to Effects
Effectsデータベースにおいて、本当に関係する方法を(ノイズ少なく)検索することが大事である。従来のいろいろなEffects DBはStaticなリンクのため、ノイズ(関係ないものの参照)が多い。イタリアで新しく開発したTech-Finder は、「動詞+目的語」で検索し、Dynamic Linkのため、ノイズが少なく、関与するものを多数検索できる。複数のDBを比較している。説得力大きい。重要。
A6. Elie Aupetitgendre 他(仏): Statistical use of the TRIZ contradiction matrix, experimentation on a ball bearing
矛盾マトリックスでの パラメータの選択が難しいといい、関連パラメータ多数を一緒に見てしまおうと提案している。古典的マトリックスだけを使い、Mannの新版に言及していない。1970年までに作られた古典的な矛盾マトリックスのデータを基に新しい方法を考えることは、(多くの人がやっているが)意味がないと思う。
B. TRIZと他の諸方法との統合 (英文ページに各論文の紹介を掲載: 2017. 3.30)
B1. Jerzy Chrzaszcz, Piotr Salata (ポーランド): Cause-Effect Chains Analysis using Boolean algebra
原因結果分析(Cause-Effect Chain Analysis)のグラフ表現を、デジタル回路のようにブール代数を使って解析する。デジタル回路のテスト手法は大いに発達しているから、多くの点が参考になる。CECAでの間違いやすい点を指摘している。キーになる要因の考察に使える。ループは扱えない。この学会の論文賞を貰った。理論的だが、分かりやすい記述である。
B2. Oliver Mayer (独): Trend of Increased Addressing of Human Senses - Near Field Senses –
人間の五感(特に、味覚、嗅覚、触覚)が技術や商品にどのように取り入れられていくか、そのトレンドを考える。まだ、大まかな段階。
B3. Michal Halas (ポーランド): Lessons for TRIZ from Design Thinking & Lean 3P
デザイン思考(Stanford大学) と Lean 3P (Product Preparation Process)=KAIKAKU (トヨタ方式)とを考察し、TRIZがアイデア生成に強みがあるがプロセスの全体ではないことを学ぶべきとしている。
B4. Leonid Chechurin 他(フィンランド、伊): What a well-trained TRIZ user can learn from other design methodologies: an initial speculation
TRIZと他の諸方法との統合を目的として、TRIZとAD(Axiomatic Design、公理的設計)とを比較考察している。解決策の作り方に焦点を当てている。ADの設計公理に対応する考え方が、TRIZには直接的に対応するものがないので、TRIZに取り入れるべきだという。そのとおりと思うが、機能のレベルで発明原理17.もう一つの次元を適用することに対応しており、TRIZではやや抽象的で扱いにくいのだと思う。
B5 Juergen Hess (独): The Application of TRIZ to exclude Product Failures caused by unintended Operation Errors
ポカヨケは、トヨタ方式において、生産プロセスでのエラー回避を目的として発展した。製品発売後の全ライフサイクルでのFailure(トラブル)を考えると、初期不良、末期不良よりも、ユーザの不注意によるトラブルが(約60%を占め)重要である。ユーザの不注意(ポカ)を防ぐことは、生産過程でのポカヨケよりずっと難しい。この問題に、ポカヨケの考え方、FMEA&FTA、AFD、およびTRIZを統合的に適用していくやり方を論じている。大事な問題だと思う。
B6. Maksymilian Leszek Smolnik (ポーランド): A Praxeological Model of Creative Actions in the Field of Mechanical Engineering
「人(主体)−行動(ツール/方法)−対象」という単位記述を組み合わせて、複雑な活動(例えば設計プロセス)を記述し、考察するモデルを作っている。いろいろな役割の人たちの活動が組み合わさっていることがよく表現できる。有効な使い方があるのかもしれない。
B7. Christian Spreafico, Davide Russo (伊): Can TRIZ functional analysis improve FMEA
Risk Analysis (FMEA)にTRIZを組み合わせることによって、改良を試みている。しっかりした文献調査に基づいた考察である。プロセスは、(1) 焦点の機能を機能分析で表現する、(2) いろいろな要因を考え(例えばタグチメソッドのノイズ要因を参考に)各構成要素の失敗モードを想定する、(3) その失敗の状態での機能分析の表現を作る、(4) 失敗の効果を記述する、(5) その失敗を(積極的に)起こす方法を考え、それによって失敗の原因となることを見出す、(6) この失敗の原因をなくす方法をTRIZで考える。このやり方の有効性の検証実験もしている。実際的であり、学ぶことが多いと思う。
B8. 澤口学、宇津木さとる(早稲田大学): Effective Design Approach with Inventive Principles to Reputational Damage Risk on the Internet
インターネットで悪い評判が立つことのリスクを評価・予防するための方法を考察している。プロセスは、(1) リスクの結果を基準にして、いろいろなリスクを分類する、(2) リスクの起こる可能性と起こった時の危険度から、リスクの重要性を判断する、(3) リスクを起こす方法を網羅的に考える(このとき、Matrix2003を使うといろいろなアイデアが出る)、(4) FTAを使ってリスクの原因を特定し、その原因をなくす/防ぐ方法をTRIZを使って考え出す。インターネットのような新しい領域で、未知のリスクを予見しようとするための方法。
B9. Martin Kiesel, Jens Hammer (独): Applying TRIZ and Lean Tools for Improving Development Processes. A Case Study from Industry: Improving the Testing Process for SW and HW-related Products
ハードとソフトが絡む領域で、ソフトの開発に数週間、そのテストに30週間程度かかっていた。この開発とテストの方式を根本的に変えるために、プロジェクトを作って、Lean(トヨタ方式)とTRIZの両方を用いて、議論した。Leanでの、プロセスのムダを無くすという思想で、テスト期間の大幅短縮を新しい目標プロセスを作った。ソフトのアジャイル開発の方法を取り入れることにより、システムテストの期間を3週間に短縮できた。この変革プロジェクトのやり方、そして変革の内容の進め方など、実際的で非常に参考になる。重要。
B10. Jianguang Sun, Runhua Tan 他(中国): Roadmapping the Disruptive Innovation Technologies Based on CV of Resource
より簡易なものが起こす破壊的イノベーションの可能性を予測する。現行の類似製品を調べて、いろいろなリソース(物質、場、空間、時間、機能、情報)の使用状況を(規格化して)評価し、そのバリエーション(CV: Coccefficients of Variation) が小さい要素を変える(簡易化する)ことを試みる。電気ドライバーの事例。「他人がやっていないことをやる」方法だが、本質に迫れるのかどうか?
B11. Pei ZHANG, Denis CAVALLUCCI 他(仏): Towards Experience Capitalization for Inventive Problem Solving
問題解決の事例を、Case-Based Learningの考え方で蓄積再利用するための、枠組みを提案している。矛盾マトリックスの考えに従って、事例記述をして、それをソフトとして組み込もうとしている。「初心者にも(古典的)矛盾マトリックスを使いやすくするソフト」というのがこの目標であるが、Darrell のように「使いやすいパラメータと、信頼性のある発明原理の推奨を実現した新版矛盾マトリックス」の方が、初心者にも熟練者にも有用なものだと思う。
C. 技術分野の適用事例 (英文ページに各論文の紹介を掲載: 2017. 4.24)
C1. Leonid Chechurin 他 (フィンランド、ロシア): Heuristic problems in automation and control design: what can be learnt from TRIZ?
自動制御の方式について、論じている。 歴史的に見ると、個別の(発明的な)解決策から、ずっと一般的なフィー ドバックの方式が開発され、いまやセンサとコンピュータとアクチュエータを使った方式を使うことが当たり前(すなわち心理的惰性)になっている。TRIZの観点からこれを反省して、事例3件を例示している。第一例は、自動車のパワーステアリングにおいて、 エンジンの回転速度による制御の違いを、IFR(究極の理想解)を考察して「ひとりでに」解決した(トヨタの)例を推奨している。第二例は懸垂物の安定化について、諸方式を数学的に表現することにより新しい可能性が生まれることを示している。良く学ぶべき論文と思う。
C2. Matej Hohnjec 他 (スロベニア): Optimizing motor performance by using TRIZ methodology
掃除機用のモータで、パワーとノイズの問題を扱っている。矛盾マトリックスから、27件のアイデアを出し、実現性と有効性を評価してそのうちの9件のアイデアを選んだ。それらのアイデアを使ったプロトタイプを試作し、ノイズや性能を測定して優れたものの見当をつけている(より詳細な試作・設計は今後)。アイデア自身の詳細は分からないが、問題解決の進め方が参考になる。
C3. Ivan A. Renev (フィンランド): A proposal for automation of conceptual design stage in Architecture-Engineering-Construction (AEC) projects
建築の大学院生。建築設計におけるモデリングの標準化を利用して、設計モデルを改良していくことをソフト支援しようとしている。3段階。第2段階では、矛盾マトリックスを建築用にして組み込もうとしている。意欲的だが未完。
C4. Bohuslav Busov 他(チェコ): TRIZ and innovation of pressing process
セラミックの粘土をプレスするプロセスの改良。くっつきを防ぐために13工程でしていたのを、2工程だけに改良した。無駄の除去。RCA+と 技術的矛盾、物理的矛盾、などで説明している。要するに微小振動を導入してくっつきを防いだ。(元の論文/スライドはややごたごたしているが、中川の紹介ではすっきりさせた。)
C5. Bohuslav Busov 他(チェコ): TRIZ and turbojet engine innovation
小型で高性能のターボジェットエンジンの発明を紹介している。その20年ほどの発明の問題解決の内容を、TRIZ専門家と発明者が協働して、跡付けで分析している。発明者は直観的に(通常の技術素養で)問題解決しているが、その一つ一つの過程はTRIZの方法を使ったやり方でよく表現できる。RCA+で問題の全体像を整理し、その一つ一つの解決策を技術的矛盾、物理的矛盾などで説明している。開発事例として学ぶと共に、事例分析の方法の事例としても学ぶべきことが多い。優れた発表である。
C6. Mariusz Ptak, Sebastian Koziolek, Mateusz Slupinski 他 (ポーランド): Mobile biogas station design – the TRIZ approach
バイオガスは、木材、家畜、ごみなどさまざまな材料から集められ、メタンを主有効成分(約60%)とするが、炭酸ガスを多量に(約39%)を多量に含む。バイオガスを実用にするための全体システムを考えた結果、製造(集積)プラントから、使用プラント/ステーションへの配送が焦点の問題であると考えた。そこで、多数のボンベに詰めて、標準のコンテナで輸送し、そのまま使用できるシステム(MobileBioGas ステーションを開発した。その開発の方法論を記述している。ヴロツワフの動物園で実用にしているシステムである。
C7. Sebastian Koziolek (ポーランド): Design for change: disaggregation of functions in system architecture by TRIZ-based design
新製品の開発・設計に際して、製品の当初の魅力的品質も、市場要求の進展の伴い、製品ライフサイクルの後期においては当たり前品質になり、さらに市場要求の発展に応じて製品(関連)システムが世代的に発展していくことを考える必要がある。このような変化に対応しやすくするための、システム設計の指針を議論している。機能の複合を避ける(deaggrigation)ことと、モジュール化の指針を示す。バイオガスの輸送システムを例にして、再設計可能なモジュラーシステムの設計法を示す。
C8. Sebastian Koziolek, Mateusz Slupinski (ポーランド): TRIZ based problem solving of tile manufacturing system
セラミックスのタイルを(流体を噴射して)研磨する(glazing)工程で、0.02mmの厚さの筋が周期的に表れる。この問題の解決を依頼され、インタビューによる調査と、TRIZを使った考察をした。特に、(OTSM-TRIZでの)「矛盾のネットワーク」の表現が有効である。
C9. John Cooke (英): TRIZ-based analysis of the rail industry problem of low adhesion
秋に落ち葉がレール上にたまると、ブレーキの効きが悪くなり列車の運行が遅れることが、英国の鉄道の永年の懸案である。これをTRIZを使い、広い見地から解決するための共同プロジェクトを開始した。車輪とレールの摩擦が減るさまざまな要因・原因の解明を試みている。また、従来の諸方法の持つ矛盾の分析と克服を検討している。摩擦だけに頼らず、電磁誘導によるエディカレントを使って積極的に減速させる方法を(日本の鉄道総研の研究を参考にしつつ)検討中である。本学会のBest Paper賞を受けた。
D. 企業におけるTRIZの推進 (英文ページに各論文の紹介を掲載: 2017. 6. 4)
D1. Davide Russo, Daniele Regazzoni, Caterina Rizzi (伊): A long-term strategy to spread TRIZ in SMEs. Analysis of Bergamo’s experience
中小企業が中心であるイタリアの北部地方において、TRIZを普及させた活動。ベルガモ大学には2007年に3人のTRIZ研究グループができ、2015年には14人のTRIZ研究・教育・開発グループになった。2009年以来、ベルガモの商工会議所がバックアップして、大学が中小企業へのTRIZ普及を始めた。それは長期戦略に基づき、中小企業への特許支援からスタートし、徐々にTRIZなどの問題解決方法を伝えていくものである。大学(5年制修士課程)でのTRIZ教育、大学が行う中小企業向けの特許・技術相談やTRIZセミナー、商工会議所が資金提供をする大学と中小企業とのTRIZプロジェクトなどが継続的に行われている。 地元の新聞などで、企業が活用状況を話しており、商工会議所の支援がTRIZの普及を効果的にしている。 非常に貴重なモデルと実績である。全文を和訳・掲載済み。
==> 和訳(論文、スライド)掲載 、英文スライド掲載 (2017. 2.14)
D2. Masih Hanifi, Denis Cavallucci 他 (仏): Combining TRIZ and open innovation, a new promising perspective for enhancing corporate innovation processes
TRIZの一つの弱点が、TRIZで得た一般的な解決策を、具体的な製品・商品・サービスに仕上げる段階にあると考え、ここにオープンイノベーションのやり方で他社との技術協力・技術導入を図ろうとする。その際の問題は、協力相手を見つけること、あるいはマッチングを支援することである。そこで、アルザス地方の多数の企業について公開されている情報を用いて、企業間マッチングを支援するWebベースのデータベースの作成を始めた。各企業の強みを把握するために、企業のホームページ、製品情報、特許情報などを読んで、その強みを「40の発明原理のどれを活用したか」で表現した。プロジェクトは実施前の段階。-- 「各企業の強みを40の発明原理で表現する」ことが、企業のマッチングを見出すのに有効かが、私には納得できない。
D3. Dorota Chybowska 他 (ポーランド): Is Poland an innovative country?
ポーランドの特許の状況を分析している。ポーランドはEUに加盟して10年、EUからの経済支援を受けて、EU特許の申請数が少しずつ増大して来ている。
D4. Dorota Chybowska 他 (ポーランド): R&D in Poland – is the country close to a knowledge-driven economy?
ポーランドにおける研究開発の経済社会的状況を検討している。経済発展のモデルを、「資源駆動経済」−「投資駆動経済」−「知識駆動経済」−「創造性駆動経済」の4段階で表現し、ポーランドはこの第2段階にあって、第3段階を目指していると位置づけている。
D5. Sergey Sobolev, Oleg Abramov (ロシア): Why TRIZ Popularity is Declining
世界の学術発表や事例報告などから、TRIZの認知度が低い段階で飽和状態あるいは減衰状態になっていると指摘している。TRIZ「専門家」認定数(MATRIZ)や適用事例発表数など、データの取り方に議論の余地もあるが、Google でのキーワード検索数や関連Webページ数などの情報で、他のキーワード(イノベーション、リーン、シックスシグマなど)と比較して圧倒的に少ないことは事実である。何が普及の障害であるのか、普及のためにはどうするべきかについて、本発表だけでなく、広く考えるべきことが多くある。
E. 大学・学界・教育におけるTRIZの利用 (英文ページに各論文の紹介を掲載: 2017. 6. 4)
E1. Zbigniew Marian Bzymek (米): A Brief Theory of Inventive Problem Solving (BTIPS) - an Approach in Teaching, Learning and Practice
問題解決の工学教育用プロセスを論じている。工学教育のためには、従来のTRIZの方法をそのまま教えようとすると、複雑すぎて分かりにくい。ずっと簡単化した「Brief-TIPS(TRIZ)」を2000年来提唱しており、コネティカット大学で教えている。Invention Machine社のソフトをも併用している。
E2. Christoph Dobrusskin (オランダ): Aspects of teaching TRIZ
中等教育(中学・高校)での生徒たちとその先生へのTRIZの教育の実践について報告している。2014年からPhilips社が支援して始めたプロジェクト。その教訓は、教える内容を単純にして、楽しく、生徒たちを惹きつけることの重要さ。生徒たちの関心と知識レベルに合った事例や問題を用意する。発明原理もよく使うもの7件に絞って説明し演習する。これらのことは、生徒たちだけでなく、技術者たちに教える場合も同様だ、という。
E3. Bartosz Pryda 他 (ポーランド): Product development using heuristic-systematic approach: a case study
学部のクラスでの、ガーデンテーブルの設計改良の演習を報告している。まず問題を捉えるには、デザイン思考(Design Thinking) の初期過程を使い、どんなときに、何のために使うかを考え、ユーザの立場からの要求を考える。 ついで、ガーデンテーブルを使う上位システムについて、TRIZの機能分析をして、新しい(楽しい)デザインの目標を作った。さらに、Synectics法を用いて、類比思考により、具体的なアイデアを作った。
E4. Kyeongwon LEE (韓国): Development of creative education materials for students at middle and high school using design thinking process with simplified TRIZ
韓国では、大企業でのTRIZが飽和・減衰しているのに対して、中小企業および中等教育(中学・高校)へのTRIZ普及が進展中である。2015年より韓国政府の援助を得て開発中の、中学・高校生向けの創造的問題解決の教材およびその実践法について報告する。中高生では、興味を持たせて積極的に参加させることが重要であり、そのためにはデザイン思考の活用が効果的である。デザイン思考の全体プロセスを使い、アイデア生成段階に(優しくした)TRIZを使う。中学1−2年ではブレインストーミングだけを使い、中学3年で「Quick-TRIZ 」による(物理的)矛盾と分離原理を導入する。高校では、さらに、9画面法と発明原理のうちの8つだけを導入する。具体的なやり方を、「スマホの自撮り棒の改良」というテーマで行った高校生ワークショップで説明している。TRIZの段階的導入のやり方が参考になる。
E5. Iouri Belski, Gaetano Cascini, Davide Russo 他 (豪、伊): Idea Generation with Substance-Field Analysis: the Influence of Prior Knowledge and Practical Experience
優れた発表であるが、タイトルは「創造的アイデア生成における一般的知識の重要性:実験結果と議論」とするのがよいと、私は思う。創造的なアイデア生成のためには、従来、専門知識、創造性関連技法のスキル、および問題意識の3つが重要と考えられてきた。しかし最近、(専門外をも含めた、広い)一般的知識の重要性が認識されてきている。このことを実験的に検証することを目指し、いままでに4か国(豪、チェコ、フィンランド、露)の学部1年生に実施したが、今回イタリアの(5年制修士コース)4年生で同じ実験を実施した。「パイプ内に蓄積した石灰を取り除くには?」という問題で、できるだけ多くのアイデアを各個人に出させる。学生を4グループに分けそれぞれに、キーワードなし、ランダムに選んだ8つのキーワード、TRIZの8種の「場」(MATCEMIB)のキーワード、8種の「場」とその事例のキーワードを示した。各人の回答時間は18分。第3、第4グループが、第1、第2グループよりも、アイデアの数とその広がりの点で有意に優れていた。-- TRIZの8種の「場」は、(科学技術の)「一般的知識」のコンパクトなトリガーとして非常に有効である。同種の実験をさらに進める価値がある。
F. 特許に関連する研究 (英文ページに各論文の紹介を掲載: 2017. 6.21)
F1. Frank Zeihsel 他 (独): Enhancing Patent Portfolio Using TRIZ Workshops
ドイツのThyssenkrupp社(巨大鉄鋼会社)で実践している、全社の特許ポートフォリオを強化するための、TRIZワークショップの具体的なやり方の報告。Ideation社のソフトIWBとその技法を使っている。まず全社的観点から、問題を選択し、10人以下の問題解決チームを選定。WSの2週間前に、問題当事者が問題状況をISQ書式に記述し、それを基にファシリテーター(TRIZエキスパート) が問題の因果関係をPSMでモデル化する、。WSは1日(8‐9時間)だけ。ISQ、PSMを完成させ、IWBソフトのサポートをフルに使って、議論しつつどんどんアイデアを書き出していく。IWBが因果関係図から、問題解決の観点をどんどん示唆し、適用可能な思考方法や原理や事例を(何階層にも渡って)どんどん示してくれる様子が、ソフトの画面で分かりやすく示されている。得られた多数のアイデアをグループ化し、 効用と開発労力の観点から評価する。WSの2日後にファシリテータが経過と成果をまとめた報告を提出する。各回平均、30-40のアイデアが出、WS後4-5件の特許が作成されるという。分かりやすく具体的で貴重な報告である。
G. 非技術分野でのTRIZの適用 (英文ページに各論文の紹介を掲載: 2017. 6.21; 7.18)
G1. Teemu Toivonen (フィンランド): Opportunities for integrating TRIZ and systematic innovation tools into large scale Agile software development
ソフトウエア開発の最新のプロジェクト管理法(リーン-アジャイル ソフト開発)を紹介し、その中にTRIZの考え方・方法を導入しようとするもの。ソフト開発の方法は、1970年代、80年代のメインフレーム向けのウォーターフォールモデルから、90年代後半以後のPCとインターネットを活用した時代のためのより迅速な開発を目指すAgile開発法が提唱されてきたが、さらに最近それを大規模開発に適用する方法が推進されている。具体的には、Scaled Agile Framework (SAFe)と呼ぶ Lean-Agile Software Developmentを詳しく説明し、そのソフト開発の中でのいろいろな問題解決の際に、TRIZの方法(9画面法、矛盾解決、発明原理など)を適用していくことを提案している。ソフト開発へのTRIZの適用は20年来の懸案であるが、ソフト開発法自身が変革され明確になってくる中で、TRIZの適用法も自ずから明確になってくるものと期待される。学ぶことの多い論文である。
G2. Monika Wozniak (ポーランド): TRIZ potential for IT projects
G3. Michael Ohler, Philip Samuel 他 (独、米): Developing Growth Portfolio with TRIZ StructuresITプロジェクト(ソフトウエア開発)における問題として、その成功率が低いこと、またその原因として、ITプロジェクトでの関係者(顧客、ITマネジャ、開発チーム)の意思疎通がうまくできていないことを取り上げている。ただ、その解決策として、「TRIZを共通言語として導入すること」を提案している。私は、その提案は適切でないと思う。(6箱方式でいえば)「思考の世界」を中心とした方法であるTRIZを、(ソフト開発の)プロジェクト管理という「現実の世界」の問題に直接的に適用しようとするのは、適切でない、と私は思う。
ポートフォリオを開発するプロセスを論じ、いろいろな人の最新の方法を引用・紹介している。まず、製品、開発プロセス、ビジネスモデルのすべてで、長期・中期・短期の開発計画がバランスを持っているべきことを述べる。また、対象分野を絞ったなら、自社と競合他社の特許状況を、現在価値と将来価値の二次元グラフで考察する方法、および特許分類での重点の置き方を考える方法を薦めている。また、各技術の潜在ポテンシャルの考察、諸技術の技術課題の克服状況を一覧するグラフ表示の方法などを紹介している。
G4. Stelian Brad (ルーマニア): Structured activation of vertex entropy (SAVE): another way around creative problem solving for non-technical applications
非技術の分野にTRIZを適用するためには、ユーザの心に刺激を与え考えを広げることが大事であるとして、新しい方法を提案している。ビジネスや組織関連の問題解決のプロセスとして、まず、問題を明確にし、目標・理想を考える。その上で、考えを広げるための 観点を「10の刺激」として順次考察して、アイデアを出し、拡大していく。その「刺激」は、「1. 共鳴せよ。2.中立のものを導入せよ。3.群れずに自立せよ。4.遠心力・ダイナミズムを活用せよ。5.他のシステムとの相乗効果をめざせ。・・・」などである。TRIZの40の発明原理よりも広義にしてあり、この標準的順序で適用し、アイデアを(収束でなく)拡張・強化することを目指す。アイデアが明確になれば、数項目の適用で終わってもよい。実証実験のために、(経営者5人ずつの)3チームを構成し、別方法をつかった。A: (ビジネス向け)TRIZ矛盾マトリックスの2日間研修を受け、自分たちだけでソフトを適用した。B: Aの研修をし、適用時にTRIZ専門家が適用プロセスをガイドした。C: 本方法の2時間研修を受け、自分たちで適用した。全チームがビジネス関連の3問題の問題解決を行った。その結果得られたアイデアの質は、A<B<Cであった。「10の刺激」の内容が興味深い。
G5. Stelian Brad (ルーマニア): TRIZ to support creation of innovative shared value business initiatives
「Shared Value」の追求とは、社会の一般的な問題を解決する中に、ビジネスとしての利益を挙げるビジネスモデルを見出そうとするアプローチである。そのビジネスモデル構築のプロセスを次のように提案している。(1)社会的な問題を「現場に降りて」見つける。(2)「考察するべき領域(AI)」(9領域)と自社の「事業領域(CP)」の二次元の表の上に、(3) 上記問題を割り付け、「下位の問題」として位置づける。(4)「下位の問題」の一つ一つに対して、前報(G4)のSAVE法を使って解決策アイデアを出す。(5)得られたアイデアの全体を総合し、さらに、(一般的に用意した)チェックリストを使い、実現性、有効性、問題点などを明確にする。なお、上記(2)の「考察するべき9領域」は、TRIZの40の発明原理を組みなおしたものであり、「システムの性質を変える、構造と可動性を再構成する、浸透可能なものを使う、「遠心力」とサイクリックな動きを使う、先取りで準備する、・・・」などである。 実施例として、一つのソフト関連会社で、バルカン半島・黒海地方での農産物・食品をインターネットベースで販売・流通するシステムを構築した事例を詳しく報告している。本報前半の方法記述を具体的に知ることができる。興味深い論文である。
G6. Joanna Kijewska (ポーランド): Conceptual framework for communication management with a qualitative and system-oriented approach
マーケティングにおけるコミュニケーションのあり方について論じることを目的として、その理論的な枠組みを作った。(市場と諸企業との間の)種々のコミュニケーションを、発信者−チャネルとツール−受信者というプロセスのネットワークの形式で表現し、その質に関わる諸要素のパラメータを考え、いろいろな問題をOTSM-TRIZでの矛盾の形で表現する。この枠組みの実際的な適用については、まだ今後の課題であるという。
G7. 中川 徹 (大阪学院大学): TRIZ/CrePS approach to the social problems of poverty: 'Liberty vs. Love’ is found the Principal Contradiction of the Human Culture
TRIZの思想とそれを一般化したCrePSの方法論を、(技術やビジネスを越えて)社会の問題に適用した最初の報告である。「日本社会の貧困」の問題を取り上げ、藤田孝典著『下流老人』の本を「見える化」して考察した。この優れた著作に対して、アマゾンの読者書評に多数の反対意見(特に「下流老人の自己責任」論)があることを知った。その根底には、「自由」を標榜し、「競争に勝つ」ことを是として「負けた者は自己責任」とする考えと、他方、「愛」を掲げ、「助け合い」と社会福祉を重視する考えとの、大きな対立があることを認識した。これを突き詰めて、大きな仮説を導いた。すなわち、「人類文化は自由を第1原理とし、愛を第2原理とする。しかし、自由と愛は矛盾する面があり、「自由vs愛」は人類文化の主要矛盾である。この両者を動機づけ調整できるのは「倫理」であると考えられる。人類文化の歴史は、「自由vs愛」の矛盾の克服を目指してきたが、解決できず一層困難になっている面がある。」今後の課題は、自由−愛−倫理の状況とあるべき姿を、個人のレベルから社会システムの各レベルまで、明確にしていくことである。「問題の根本にある矛盾を明らかにしていく」というTRIZの思想をベースにした、新しい大きな研究アプロ―チである。
(6) その他
発表論文は (一部は推敲を許して)今後、「Scientific papers」はElsevier出版の学術出版の電子版(「Science Direct」)で公開され、「Practitioner Papers」はETRIAの電子ジャーナル「ETRIA Journal」で公開される予定です。公開されましたら、本ページで案内します。(現在は TFC2016参加者にだけ開示されています。なお、TFC2015の(主要)論文は公開済み、2014年以前の論文についてはETRIAメンバーに開示済みですが、詳細はETRIAのWeb サイトで扱いを参照ください。)
ヴロツワフは、ポーランドの南西部にあり、工業の盛んな地域です。中世以来の旧市街が(復興されて)あります。ポーランドはEU加盟によって経済的に発展しつつあるとのことで、ヴロツワフ工科大学は市の中心から2kmばかりの所にあって、使いやすくしっかりした建物と設備になっていました。下の写真はキャンパスの点景です。
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最終更新日 : 2017. 7.18 連絡先: 中川 徹 nakagawa@ogu.ac.jp