TRIZ技術ノート 
TRIZ法ソフトウェアツールの
仕組みと使い方・学び方
  (TechOptimizer Pro V2.51
    (Invention Machine 社))
     中川 徹 (大阪学院大学)
   1998年 6月 7日
     (三菱総合研究所ホームページに掲載 1998. 7. 3)  
     (三菱総合研究所の了解を得て本ページに再掲載 1998.11.2)
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はじめに

ここに記述しているのは, Invention Machine 社のTechOptimizer Pro. V2.51 (Micro-
electronics Version 相当) である。筆者は,このソフトツールを前職の富士通研究所
において適用評価のために導入・試用し,その仕組みを習得するとともに,新しいユー
ザのために使い方と学び方の自分なりのマニュアルを作った(1998.1.29, 2.12)。 本稿
はそのマニュアルをベースにしてWWWの形式に再編集したものである。TechOptimizerの
多数の画面コピーを採録させていただいたので, いきいきしたマニュアルになり, また,
ソフトツール自身をまだ入手していない人にもツールの便利さが分かって貰えるものと
期待している。

  TechOptimizer Pro V2.51は, TRIZ法ツールの中で実用に使われている最新のもの
である (1998年1月時点)。このソフトには, 科学技術および特許の分析から得られた広
範なデータベースが納められており,それを縦横に検索するTRIZの方法論が組み込
まれている。ただし, IM社が提供しているマニュアルや研修の内容構成は, ツールの
操作法とツールのお仕着せの(完成された形での)使い方を述べていて,TRIZを新し
く使いこなして行こうとするユーザのニーズに適切に答えていないように思われる。そ
こで本稿では独自の観点から, このソフトツールを分析・記述し, どのような構成と
機能を持ち, どのように学んでいけはよいか, 使っていけばよいかをまとめる。それは
また, ツールを使いながら, TRIZ法そのものをより深く学んでいく(体得していく)方法
を示したものでもある。


1.  TechOptimizer の構成の概要

  TechOptimizer は,  5個のモジュールから構成されている。IM社の標準的な説明では
「問題分析の手順」に従って, つぎの順序で示される。

  TechOptimizer モジュール (問題分析, トリミング, 問題定義)

  Principlesモジュール     (技術事例, 矛盾解消事例)

  Predictionモジュール     (問題解決法の試行のための事例)

  Effects モジュール       (技術原理の説明)

  Feature Transferモジュール (特徴の転用)

しかし, ユーザがこの順序でTechOptimizer を学んでいくことは, 大変困難であると思
われる。TechOptimizer の全貌が見えず, また, ユーザのこれまでの技術蓄積や問題解
決のアプローチが活かされない。ユーザは, 最初のTechOptimizer モジュールのところ
で, 欲求不満を感じてしまう。

  本稿では, TRIZ法のソフトツールは, 基本的には,世界の技術を体系化したものであ
り, そこに, TRIZ独自の検索の観点を組み込んだものであると捉える。そして, このTRIZ
の検索の観点は, ユーザが自然に必要とするものであると認識している。そこで, 通
常のユーザの問題解決のアプローチを自然に発展させ,TRIZの方法論に自然に馴染んで
いくような説明のしかたを採用する。すなわち, 以下の順番で説明する。

  2. 技術発展のトレンド を学ぶ  (Predictionモジュール (その1: Trends))

  3. 科学技術の体系を実践的に学ぶ  (Effectsモジュール (その1: Effects & Examples))

  4. 技術目標を実現するための諸方法を知る (Effects モジュール (その2: Functions))

  5. ユーザのシステムの改良の諸方法 (Predictionモジュール (その2: Method Tree))

  6. 「発明の原理」を学ぶ (Principlesモジュール (その1: Principles & Examples))

  7. 矛盾を解決する発明の原理をヒントとして得る (Principles モジュール)

  8. ユーザの具体的問題を概要記述する (TechOptimizerモジュールの基本部)

  9. ユーザのシステムの機能分析を行う (TechOptimizer モジュールの機能分析)

 10. システムの機能分析を吟味する (TechOptimizerモジュールのTrimmingと
               Feature Transferモジュール)

 11. 問題解決の過程とアイデアを記録する (ファイル記憶とReport機能)

 12. おわりに
 
 
 1. はじめに  2. 技術トレンド
        (Prediction 1)
 3.  科学技術体系
           (Effects 1)
 4. 目標を実現する方法
      (Effects 2)
 5. システム改良法
       (Prediction) 2
 6. 発明の原理
  (Principles 1)
 7. 矛盾の解決
     (Principles 2)
 8. 問題の記述
     (TechOptimizer 1)
 9.  システムの機能分析
      (TechOptimizer 2)
 10. トリミングと機能移転
    (TechOpt. 3 )
 11. レポート機能
     (Reporting)
 12. おわりに


2.  技術発展のトレンドを学ぶ
            ([Prediction モジュール] の[Trends])

  新しくTRIZのソフトツールを使おう(習得しよう)とするユーザは, まずはじめに,
[Prediction モジュール] に収録されている技術トレンドの図を学ぶとよい。

 〔操作法:   [TechOptimizer Pro] を立ち上げて,  [Predictionモジュール] に入り
      , [Trends]  データベースのアイコンをクリックする。目次 (図2.1) が出て
      くる。20のトレンドを一つ一つ見ていく。〕



       図2.1    [Predictionモジュール] の [Trends] の目次画面

 順番は逆であるが,20のトレンドのまとめの中の最後, 20番目の [Substances] の図
表(図2.2 )を見ると良い  。「物質の状態」として, 固体/ 液体/ 気体の「三態」
がふつうわれわれが頭の中にいれている概念であるが, TRIZでは, 実践的な技術的観点
から, 粉体, 多孔質, 泡などをもリストアップしている。物質の状態の変換, 特別な特
性を持つ物質など, 理解しておくとよい。



        図2.2    [Predictionモジュール] [Trends]の 20/20   [Substances] の画面

つぎにトレンドの19/20 の [Fields/Forces/Interactions] の図 (図2.3)を見るとよい。
ここには, 種々の形態の力学的な力, 電気・磁気・電磁気的な場や相互作用, そ
して熱的な相互作用などがまとめられている。TRIZで, しばしば使われる「Fields (場
) 」という言葉は, ここの図表にまとめられている全体を指す。 (ちなみに, TRIZの言
う「Su-Field Analysis ( 物質- 場分析) 」は, 解析対象のシステムを抽象化して, こ
こでまとめている「物質」と「場」との作用のしかたとして図式化する方法である。


       図2.3    [Predictionモジュール] [Trends]の 19/20
            [Fields/Forces/Interactions]の画面
 

トレンドの18/20 の [Fields, forces, interactions transformations] の図(図2.4 )
興味深いまとめである  。上記のさまざまの場・力・相互作用 (TRIZではまと
めて「場」ともいう) について, その生成, 変換, 構造変化, 蓄積をまとめている。特
に, 「変換」については,主要な 5種の「場」 (力学的, 電気的, 磁気的, 熱的, 光学
的) なものが, 適当な「物質」と条件を介在して, 相互に変換されることを表現してい
る。また, 光の場合を例にして, 場・力・相互作用自身が, 増減, 反射, 屈折, 回折,
定常/ 進行などの「構造変換」が可能なことを示している。また, これらのものを蓄積
したものとして, 運動エネルギ, 電気エネルギ, 化学エネルギなどの諸形態を示してい
る。この 1枚の図は, いままでの (学校で習った) 科学技術の知識を再整理して実践的
に身につけるための観点を示しており, 非常に深い示唆を含むものである。



       図2.4    [Predictionモジュール] [Trends]の 18/20
       [Fields, forces, interactions transformations]の画面
 
 

  以上のようなTRIZの考え方を理解した上で, トレンドの1/20〜17/20 のそれぞれの図
を読んでいくとよい。例えば, トレンド2/20の [Segmentation of the working member
] (図2.5 )を例として見よう  。システムの動く部分が, 細分化されていくことを
技術発展のトレンドとして示している。単一の物体が, 分割され, 粉・ペースト・ゲル
となり, 気体となり, そして「場」となる。具体例として, 軸受けと車輪の例を挙げて
いる。軸受けのボールベアリングが, ガス軸受けになり, 磁場軸受けになるのがその例
であるという。この分野の素人 (自分のこと) には, そんなに巧くいくかなと思えるが
, この道の専門家にとっては, もう当たり前の技術だという。この図の一つ一つの段階
をクリックすると, 画面下部に簡単な説明が出てくる。これらのトレンドは, 多数の特
許を分析して, いろいろな分野・システムに繰り返して現れた技術発展のパターンを特
徴づけたものである。各自の問題としている技術・システムについて, このようなトレ
ンド上での位置づけを考えることは有益である。トレンドの一覧は図2.1 で理解された
い。


       図2.5    [Predictionモジュール] [Trends]の 2/20
             [Segmentation of the working member] の画面
 
 

  ( [Predictionモジュール] のその他の機能は, 5 節で改めて述べる。)
 
 
本ページの先頭 1 はじめに 2-1 トレンド目次 2-2 物質 2-3 場 2-4 場の変換 2-5 分割のトレンド 次のページへ

 
 1. はじめに  2. 技術トレンド
        (Prediction 1)
 3.  科学技術体系
           (Effects 1)
 4. 目標を実現する方法
      (Effects 2)
 5. システム改良法
       (Prediction) 2
 6. 発明の原理
  (Principles 1)
 7. 矛盾の解決
     (Principles 2)
 8. 問題の記述
     (TechOptimizer 1)
 9.  システムの機能分析
      (TechOptimizer 2)
 10. トリミングと機能移転
    (TechOpt. 3 )
 11. レポート機能
     (Reporting)
 12. おわりに

 
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最終更新日 : 1998.11. 1    連絡先: 中川 徹  nakagawa@utc.osaka-gu.ac.jp