高原論文集: 第6集: [66] Overview

高原利生 論文集(第6集) [66] Overview

未完成の哲学の概要と今まで

高原利生、
『TRIZホームページ』寄稿、2021年12月 3日、推敲 2021年12月31日

『TRIZホームページ』掲載、2022年 1月14日

掲載:2022. 1.14

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編集ノート (中川 徹、2021年12月28日)

本『TRIZホームページ』は、高原利生さんの研究の重要さに注目し、2003年以後の同氏の学術発表・研究ノートなどのすべてを収録し、『高原利生 論文集』として公開してきております。今回で実に『第6集となり、いままで収録しました論文・著作などは合計66編になります。独自に広くて深い理論体系を構築してきておられます。初めての人にはもちろん、何編かを読まれた方にも、著者の用語と論理に馴染むことは、並大抵のことではないだろうと思います。

私自身も、この2年間の著者の論理の発展をよくフォローできておりませんでした。そこで、第6集の学習・編集作業を始めてから半月後の10月末に、高原さんに次の趣旨のお願いをしました。

「2020年1月の[54] を読み返し、非常に分かりやすく書かれていると思いました。著作『未完成の哲学ノート』が大作であり、たびたび改訂されていますね。この著作の改版の主要な経過(あたらしく導入した概念、節などの項目)を書いていただくことはできますか? (論文解題や各論文の概要などで、たびたび説明されていますから、中身の説明はいりません。) また、沢山の版の内で、大きな段階になっている版、記録に残すとよい版を明示ください。(現在および後世の)読者がフォロー するのに有益なものをできるだけきちんと残したいと思います。」

この要望に応じて著者が苦心して書いてくださったのが、本編 [66]「未完成の哲学の概要と今まで」です。著者は、本編の目的を次のように書いています。

「・ 中川先生や読者には、私の思考の原動力と変遷をご理解いただき、
  ・ 読んでいただいていない方には、私の論点の概要が分かり、
  ・ 私自身にも、今までの原動力と変遷の見直しができ、それが自分の問題点と改善すべき点の把握、思考の向上に繋がる。」

本編を、『第6集』だけでなく、『高原利生 論文集』全体の優れた入門 (Overview) として、読者の皆様にお薦めいたします。

[ 編集ノート (中川、2022. 1. 6) : 年明けに高原さんから推敲版を受け取り、本ページに反映させました。多数箇所の表現が推敲されていますが、論旨は変わっていません。著者の著作・論述に対するあくなき向上の姿勢を感じます。]

  

本編の目次を書いておきます。

[66] 未完成の哲学の概要と今まで   (高原論文集 第6集 Overview)

はじめに

A.概念と命題の変遷

1.何かが分かるとは? 

2.必要な前提 

前提1: 本質と構造の把握のための  仮説、 近似
前提2: 価値系列
前提3: 歴史と論理の一致
前提4:エネルギー

3. 基本概念:  オブジェクト、粒度、論理的網羅   

4. 論理学 

論理学の要素(矛盾モデルへの抽象化、推論、結果の具体化)、推論の仮説設定への統一へ
歴史と論理の一致から、歴史が作る論理学へ
論理の原理

5.  生き方 

哲学と生き方
哲学生成と生き方の同時過程
さらに  哲学生成と  生き方と  世界変更の  同時過程

6.二つの変更が必要 

意見の統合:  1) 人の生き方、 2) 長期の価値、論理について 長期と当面の個別事実の解決

B.原動力: 先人の問題提起 と  現実の問題 

1. 論理的網羅 

2. 矛盾、生き方・世界変更 

後書き

 

本ページの先頭

目次

Overview はじめに

A. 概念と命題の変遷

1.何かが分かる

2.前提

3. 基本概念

4.論理学

5. 生き方

6. 変更の必要

B.1.論理的網羅

2.矛盾、生き方

後書き

 


高原論文集(第6集)2020-21 親ページ

第6集ページ一覧

[57] CGK2020

[58]IPSJ2021

[59] FIT2021

[62] Book B5 V17

[64] Book A4 V5 Part2

[65]第6集論文解題

 

 


     

 高原利生論文集 (第6集) [66]  Overview

未完成の哲学の概要と今まで

高原利生

2021年12月 3日、更新 2021年12月31日

 

はじめに

今回、中川徹先生の「TRIZホームページ」に載せていただいている従来の高原利生論文集に、2020年2021年分の追加をしていただくことになった。
それに際し、先生から2018年以降の経緯を含めた発表のまとめを依頼された。

今まで高原の書いた内容は、基本的に前の内容を含みながら、少しずつ全体に近づいてきた。
その経緯を述べるため2003年以来の発表内容にも触れる。

 

ここでは、次の目的、機能を全て満たすための構成、構造を取ることにした。

(目的)

・  中川先生や今まで読んでいただいている読者には、私の思考の原動力と変遷をご理解いただき、

・  読んでいただいていない方には、私の論点の概要が分かり、

・  私自身にも、今までの原動力と変遷の見直しができ、それが自分の問題点と改善すべき点の把握、思考の向上に繋がる。

(構成)

・  思考の変遷を分かってもらうため、今までの発表での進展経過を A に述べる。

・  思考の原動力を分かってもらうために、先人の問題提起を B に述べる。

 

凡例: 

FIT は  情報処理学会と電子情報通信学会合同のフォーラム、
IEICE は  電子情報通信学会の大会、
IPSJ は  情報処理学会の大会、
TS は  TRIZシンポジウム、
CGK  は  情報、電気、電子関連の中国支部の連合大会。
THPJ  は  中川徹先生のTRIZホームページ。
その後の2019等は  発表年

 


    

A.概念と命題の変遷

紙の出版物として
2019年に初版の「未完成の哲学ノート」と、
これを2部に分けた「永久に未完成の哲学ノート」(論理学の第1部応用の第2部)の3冊がある。
中川徹先生の「TRIZホームページ」で紹介していただいた。
改版を重ねている。このため、論文発表数は少なくなった。

書いている概念、命題は、全て近似であり仮説である。
後述のように、今書いている仮説より良い仮説は、必ずあり、いつか必ずできる。
これがいつまでも続き、いつになっても完成しないので「未完成の哲学ノート」「永久に未完成の哲学ノート」という名前にした。

 

事実をとらえるための
      1  何かが分かるとは何か

      2  必要な
前提、
      3  基本概念       
   から始まり、
       (論理学≒哲学)≒常識      の見直し、
      5  生き方
                  の見直し、
       6   今後の事実変更    の見直し、
と進んできた、と後になって分かる。

3期に分けると次のようになっていると後で分かった。

[第1期]  2003年から2007年までの検討では、
       基本概念(オブジェクト、粒度など)を明らかにし、
       あるべき姿と現実の差異解消の論理、方法、表示方法を追求した。
       2003 年からオブジェクトとは何かをまとめるのに2年、
      オブジェクト変更の定式化に3年かかった。

[第2期] 2008 年から2012 年までの検討内容は、
   (広義の)差異解消の論理の理論になった。
   (広義の)差異解消が
       (狭義の)差異解消(通常の意味の「変更」「変化」)と
       両立
   であることは大きな発見だった。
   自然の運動、人間の行動、思考の全体は、内容的には、(広義の)差異解消、その論理である。

   これをもたらすのは運動、エネルギーである。
   全ての運動を動的な構造面から見た近似が矛盾であった。
   矛盾を管理するのが論理的網羅思考である。

   これらの検討を続けながら、生き方の検討も2009 年から始めた。

[第3期]  2013 年からは、
     矛盾、根源的網羅思考を構成要素とする弁証法論理、
     それが「生き方」と「生きる」ことを実現すること、
     それが最少概念で実現されること
を検討している。

 

    

1.何かが分かるとは

何かが分かるためには、「何か」と、「分かる」ことが分からなければならない。

11. 何か」とは  事実、それを理解させる論理

何か」とは事実である。事実をどうとらえるかが出発点である。

2004年2005年の [FIT2004, FIT2005/1, FIT2005/2] を読み返すと、
      ものと観念、存在と過程(運動)の両方
を、しつこく統合的にオブジェクト(後述)として扱おうとしていたことが分かる。
2006年の[FIT2006]
は、
       存在と過程の歴史の表示方法を提案した最初である。

いつからか覚えていないが、早くから価値も重要な事実として意識的に扱おうとしていた。

その後の十数年進歩がなかった。この間の事実の扱いについての記憶がない。

2019年9月の「未完成の哲学ノート」4版で、
       事実を、ものと脳の中の観念、存在と過程(運動)の両方からなる「"ある"もの」と確定した。
              "ある" "ない"の "ある"である。

更にこの時から、観念の中の固定的なものも存在と扱うようにした。
      否定的なニュアンスでとらえることの多い、いわゆる「固定観念」だけでなく、
      自分の中で一時的にせよ出来上がっている観念像を、
      全て「存在」と扱う。
思考という運動がこの「存在」を変更し新しい「存在」にする。
これでやっと、ものと観念、存在と過程を整合的に扱うことができるようになった。

現実に、全ての人のその時の潜在意識感情感性的判断が、事実に対する今の行動を決めている。
この潜在意識も感情的感性的判断も正しくなければならない。
また、自分の正しい思考方法も、他人との正しい議論も必要である。
この二つが、身に着いた論理を必要とさせている。これは今、ないに等しい。

身に着いた論理が、潜在意識、世界観、感情、感性、価値観を決める。
そのため、論理と、その全体像、体系である論理学(後述)を作ろうとした。
2019年 [FIT2019] に、文法と形式論理の中間の論理学を作ろうとしたことを書いている。

 

論理は、認識の場合であれ事実変更の場合であれ、
       それらの対象である世界像、世界観を前提にしていて、
       世界像、世界観も論理によって作られている。
これは、世界観と論理は、対等でなく論理が主導し、原動力になっているように見える。

原動力は、客観的には運動を実現するエネルギー、人が関与する場合には目的を達成する運動である。

誰かが、全ては、自分とそれ以外の世界からできているという単純な世界像を言うとすると、
その人は、今の自分とそれ以外の世界で全てが網羅されていると言っている。

(1)  この中には、単純ながら極めて高度の抽象化と推論が入っている。

抽象化の結果が、自分とそれ以外の世界,という世界像であり、
   推論は、この二つで世界が網羅されているという仮説設定である。
世界像の集積が世界観である。論理の集積が論理学である。
世界観と論理学の二つが哲学、常識の要素である。

原動力、目的になるのは必ず運動(この場合、推論、論理)である。
擬人的言い方をすると、自分とそれ以外の世界で全てが網羅される推論の実現目的のために、
   自分とそれ以外の世界という抽象化がされている。
言葉の遊びのようだが、この発見は大きかった。

(2)  抽象化と推論の二つがどちらも論理という思考の要素である。
            (実際には、これに具体化が加わり思考単位は完結する)
抽象化と推論はどちらも運動だが、推論が直接の目的であるため、ここでは二つのうち推論が原動力、目的になる。

(3)   (1) (抽象化と推論)の二つと (2) (世界観と論理(= (1) の抽象と推論))の二つからなる、
             ((1) と (2) の)二つは同時に生成される。
これは ( (1) が (2) に含まれる)入れ子の同時生成でもあるが、
     主導しているのは、それぞれ、 (1) については 推論、(2) については 論理であると考える。

おそらく、入れ子がはじめて作られるには、入れ子を構成する2項のどちらかが原動力になる。

運動である論理と、存在である世界像があるが、論理が主導して世界観は作られた。
個々の論理の集大成が論理学である。

 

12. 分かる」とは  本質 と 構造 が分かること

何かが「分かる」とは、何かの本質と構造を把握することである。
これが分かることの全てである。
これは、「未完成の哲学ノート」14版(2021年5月)で初めて気が付いた。

構造は、構成要素 と  その関係  である。

    

2必要な前提

21. 前提1: 本質と構造の把握のための  仮説、 近似

本質と構造の把握のため、
      近似による単純化,仮説を作る態度と、
        事実把握のための概念後述
を準備しておく。

 

複雑な事実を扱うため  近似モデルで 単純化する。

事実を、
       (1)  客観的事実、
       (2)  知覚した一次的情報、
       (3)  それを対象化した二次的情報
近似する。

これが事実の必要な最小モデル近似である。
(2),(3)の中の 認識と働きかけ方の論理 の分かる事実が、 扱える対象である。

知覚した事実を対象化した二次的情報で述べる言説は仮説であり、
      その正しさは (1)の客観的事実、(2 ) の一次的情報により検証され、
      正しいかどうかは結果でわかる。

今より良い仮説は必ずでき、他により良い仮説も必ずある。
      この相対化の態度の何よりの利点は、
            自分が傲慢にならず、
            同時にあらゆるものの対象化ができることである。

正しい仮説は通用し続け、法則や常識,哲学になる。
同時に、法則や常識≒哲学は古くなり続ける。
故に、法則、常識≒哲学は変え続けなければならない。

 

22. 前提2: 価値系列

「(1)  種(オブジェクト)の存続、   (2)  個(人) の生物的生、  (3)  生 (オブジェクト)の属性」
     という価値系列があり、
     この順に、大きさと共有の必要性が重要であることが
              共有されるべきであると思っている。
おそらく (2) 個(人)の生物的生だけが自明である。
自分の今の生より大きな価値があること もおそらく全ての人に自明だと思うが、
       それが何かは各人によって異なる。
       自分の家族の存続、地球上の全ての生命の存続、地球の存在、宇宙の存続、、

はっきりしないが、個人の生の上位にある価値は何かある。
そこで、とりあえず、人類の存続を、仮に、個人の生の上位にある価値としている。

 

求めようとしているのは、
       (仮の) (1)種の存続 − (2) 個体の生 という自明の実現価値に続く
      (3) 生の属性=生き方の内容である。
この内容の検討が本稿のテーマの一つである。
2019年6月「未完成の哲学ノート」14版で、
       この(3) 「生の属性、生き方が得られれば
        「(仮の)(1) 種の存続」を究極の価値にしても良い可能性が生まれるのではないか
        という入れ子に気づいた。

大きく長い空間時間の価値が、小さく短い空間時間の価値の前提になっている。
価値の中にも、より大きな価値から小さな価値に至る階層がある。[THPJ2015/1] [FIT2015]
       お金は対象化(と自由)だけの価値だった。

人の行為には、対象との向き合い方として
       没入行為や何かとの一体感を感ずる行為のような一体化の方向のものと、
       設計のように何かを突き放して扱う対象化の方向のもの
の区別がある。

全ては関係しあっている。
自分は他のあらゆるものに生かされている。
それを前提に、
      まず自分と現在をありのまま認め、
      価値系列上の生の問題の次にある、
      人の、どう生きるか、生き方という生の属性についての根本的な問題がある。
それは、人の可能性を開花させ世界を良く変えるための哲学、生き方の検討である。

 

23. 前提3: 歴史と論理の一致

文化・文明成立後の 歴史と論理の近似的一致の、
      大雑把な根拠は、次のとおりである。

(1) 事実の、歴史的積み重ねの把握、歴史的変化の把握、条件設定による推論から、
       それぞれ帰納、演繹、仮説設定が生まれ
       論理
ができていく。
     歴史が論理の原型を作る。

(2) 文化・文明成立後、徐々に  論理が事実を作る歴史が続いていく。
     論理が歴史を作る。

(3) 事実は、現実の目の前の存在、関係だけでなく、
           各人の観念世界の中の、事実の歴史や思考の歴史の記憶と、未来像、論理、感覚、世界観、価値観を含む。
    また、逆に各人の思考世界、観念、情報は、その事実を含むようになった。
    この入れ子が繰り返され、
    一つの客観的歴史的事実と、知的動物の個々の観念,情報は、何重もの入れ子になり、
    お互いに含み合う。
    (1), (2) と併せ
、    歴史的事実と、観念、論理はお互いに似た内容になっていく。

 

24. 前提4:エネルギー

原動力は、  客観的には運動を実現するエネルギー、
人が関与する場合には目的を達成する運動である。
客観的な場合も人が関与する場合も、始める場合と継続する場合があり、難しいのは始める、始まる場合である。

 

    

3. 基本概念:  オブジェクト、粒度、論理的網羅

昔の哲学は、事実をとらえる概念だけを述べているように見えるものばかりで、そのため私には難解である。
それに対し、 事実をとらえる概念は、オブジェクト、粒度、網羅だけでよい。
これを理解すると、全員の各年齢にあった、難解でない普遍的哲学ができる。

哲学(常識)は、論理学と世界観(+これらを扱う粒度などの最少概念)と考えている。
これらに生き方を含めて哲学と考えるほうがいいかもしれないし、そういう哲学もあるが、分けて扱う。
一般には、哲学≒世界観という理解が多いと思う。
それに対し私は、論理学が世界観を含み前提にして いるので、哲学≒論理学であると考えるようになった。
「未完成の哲学ノート」122021年3月からである。

語られた命題が明らかに間違っているように見えても(論理的矛盾さえも)、必ずある範囲、粒度で正しい。
だから、その範囲、粒度を言うことは思考や議論にとって死活問題である。2022.01.02
無限の情報量を持つ事実から、扱える情報= (一つの又は複数の) オブジェクトを抽象化して抽きだすのが粒度である。
粒度は扱う空間時間、属性の範囲である。
粒度についてはじめて発表したのは2004年の[FIT2004]である。

オブジェクトと粒度は同時に決まっている。
      過去の哲学者にも、今の殆どの人にも、オブジェクトと粒度は同時に決まっているという意識がない。
      これが今の停滞の最大の問題であると思っていたが、この十数年進展していなかった。

 

同時に決まるのは、オブジェクトと粒度だけではなかった。

粒度だけでは不十分であることを2005年の [FIT2005/2] では密度という概念で補おうとしていた。

扱う粒度が正確であることの必要条件は、網羅された中から選ばれた粒度であることである。
網羅
概念の進展は2009年にあった。

2009年のTRIZシンポジウム [TS2009] で、網羅について次のように書いている。

相対化、批判とは、今まで何が問われなかったかを問い、そして何が答えられなかったかを答えるために、これらの空間的,時間的網羅性を問うことである。

網羅とは、まず現実、目的、問題、解決策の全オブジェクト候補の空間が科学的に網羅されることである。
さらに時間的かつ空間的多面的多層的に見るための視点の網羅性が必要である。
網羅性は根源性のどのレベルでも必ず必要であり、理想的にはそのどのレベルでも完全な網羅性が求められる。
網羅性の階層ができあがる。

網羅を問い根源的に問うための困難さは、何を求めるのか何が問われなかったのか、全体像が分からないまま、網羅性、根源性を追求しなければならないことである。
一般に何かを認識する必要があるのは未だ分かっていないゆえであるが、
ここではさらに未だ分かっていないものの全体を問おうとしている。

そのための姿勢、視点の検討は永遠に十分ではないであろう。
網羅の対象が何かも見直され網羅されねばならない。

相対化と批判の対象は、とりあえず既存の観念であり、内容はその見直しである。

(引用終わり)

「未完成の哲学ノート」初版(2019年3月)以来、
   1. オブジェクト、粒度、網羅という3つの概念から事実をとらえるようになった。

2019年の [CGK2019] で、あらゆる物事を網羅的に扱うことを考えた。

2020年1月に中川 徹先生のご依頼で「未完成の哲学ノート」9版2021年1月 (に相当する「永久に未完成の哲学ノート」) の説明に
「論理的網羅: 永久に未完成の哲学ノート 第一部第二部 の 今」を書いた(下記のURLが示すウェブ内の文)。
http://www.ogjc.osaka-gu.ac.jp/php/nakagawa/TRIZ/jpapers/2019Papers/Takahara-Papers2019/Taka-54-RET-Memo-200106.html

この文中で、マルクス「経済学・哲学手稿」の二文(後述)と、論理的網羅に触れた。

論理的網羅は、中心概念の一つである。

Roni Horowitz, "From TRIZ to ASIT in 4 Steps", [The TRIZ journal, http://www.triz-journal.com/archives/2001/08/c/index.htm, Aug.2001. 中川先生のホームページに訳あり] の中の例では、
   扱う複数のオブジェクトは、目の前の具体的場面から、容易に物理的に網羅される。そういう簡単な例が扱われる。
しかし、目の前の問題に限っても、オブジェクトが物理的に網羅されることは少ない。
   今の地球上の人の名を網羅することは、実質、できない。網羅は難しい。

難しい時は、内部を分けて、全体を網羅するように部分に分けてみると分かってくる場合がある。
今回は網羅を4つに分けている。
それから論理的網羅が出てきた。「未完成の哲学ノート」9版2021年1月の時である。(以前、根源的網羅といってきた用語を、論理的網羅に変えている)この考え方を含め論理の原理(後述)にまとめた。

    

4. 論理学

41   論理学の要素(矛盾モデルへの抽象化推論、結果の具体化、推論の仮説設定への統一へ

弁証法論理の要素は
      (1) 矛盾モデルまたは関係命題(後述)としての問題定式化(抽象化)、
      (2) 推論、
   (3)
具体化
である。
これは、中川徹先生の「六箱方式」と同じであることを、2015年FIT2015「弁証法論理の構造と中川の「6箱方式」」、THPJ20152「中川の「6箱方式」へのコメント」で書いた。

中川徹先生の2005年発表の「六箱方式」は、発想、発明に限定されない思考の論理である。
中川先生はこの思考の構造を世界で最初に明示的に明らかにした。
思考の論理は、生活や労働、生き方の改善、発想、発明等、考えること全般に適用できる。

(1) マルクス、エンゲルス、アルトシュラーなどにより(後述)、矛盾モデルそのものが進化してきた。
ここでの矛盾概念は、2013年の
[THPJ2012]で、さらに、このアルトシュラーのものを拡張した。

(2) 矛盾モデル関係命題と等価であることを、「未完成の哲学ノート」6版(2021年1月)で述べた。
命題は、内容から、
      オブジェクトの存在を表現する存在命題、
      その属性を表現する属性命題、
      矛盾(運動、関係)を表しオブジェクト間の関係を表現する関係命題
がある。
(常識とやや異なるが)
矛盾(=運動、関係)を、
      変化、変更と、

       (通常の) 両立矛盾、
      両立矛盾から分かれた一体型矛盾,
の三つ
に分ける。

(3) 2020年 [FIT2020]で、論理学を作る全体像を述べる中で、
推論である演繹Deduction、帰納Induction、仮説設定Abductionは、
仮説設定Abductionに統一できるらしいことを書いた。

2021年の [IPSJ2021]"通常の推論を仮説設定に統一する条件"、2021年の[FIT2021]でその改良をした。

「未完成の哲学ノート」11版、12版(ともに2021年3月)でも、
     演繹、帰納は、仮説設定に統一できることを書いたが、説明がうまくいかず
     17版(2021年10月)まで修正を続けた。
説明に三つの言い方があり、三つの関係がまだスッキリしていない。
2年近く取り組んでいることになる。

 

42. 歴史と論理の一致から、歴史が作る論理学へ

「未完成の哲学ノート」10版(2021年1月)で、
制度・技術の文化・文明開始後は、本稿が前提としている歴史と論理の一致から一歩進み、
歴史が論理を作ることに進んだ。
      以下は引用である。

地球では、論理の歴史的結果の結実が、今の矛盾モデル(または関係命題)である。
矛盾(運動)モデルに、以下の順に、後の高度な矛盾が、前のより基本的矛盾の上に積み重なりながら発展する構造ができた。
客観的な自然における矛盾が、宇宙誕生後からあり、
      それに自律運動をする生命の矛盾、
      さらに人の意図的努力の矛盾
が加わる。

(宇宙創成後) 外力による変化・変更と  (擬人的な)機能と構造の両立矛盾

→ (生命誕生後) 無意識の一体型矛盾  (例:進化)。

→ (知的生命誕生後)意図的変化・変更。

→ (技術開始後) 意図的な可能性と現実性の矛盾 (機能の可能性が現実になり得る客観的事実とそれを意識する運動)、
             意図的な機能と構造の矛盾(機能を実現する構造を意識的に作る運動)。

→ (制度・技術の文化・文明開始後)矛盾の発展した変形として、
             矛盾の二項の向上をもたらし続ける一体型矛盾として、
                   意図的な対象化と(所有と帰属の)一方向一体化の一体型矛盾
                  (機能と構造の矛盾と併存)。

→ (今後) 意図的な対象化と双方向一体化の一体型矛盾
                  (機能と構造の矛盾と併存)。

この歴史のエッセンスが論理学になる。
歴史の論理、その発展方向と蓄積の精髄が、今の論理、仮説設定の内容になる。
(引用終わり)

20年来のテーマの久しぶりの進展である。
       2021年の [FIT2021] では、それを書いた。

 

43. 論理の原理

論理の原理をまとめている。
二種の論理の原理がある。
      細かなオブジェクト操作の原理と
      粗い論理の全体原理である。
前者は、今まで検討されてきた。
本稿は後者を述べている。本稿のまとめといえるかもしれない。

論理の原理の一部に、
      客観的に相手を騙してしまう負の論理を   最後にまとめている。
      世の中に通用しているのは負の論理ばかりである。

初期から徐々に書き加え、2019年の [CGK2019]、2020年の [CGK2020] などを経て今は9ページになっている。
他の記述に対し、論理の原理は単に時間をかけて積み重なってできた。

    

5.  生き方

51. 哲学と生き方

2013年 [FIT2013] "世界構造の中の方法と粒度についてのノート"で次の内容を書いた。

地球との共存という大きな世界の課題解決から、発明,発見や人の日常生活に至る様々な目的を達成したい。
その目的は、人間の 「態度」と「方法」→「認識と行動」→「世界」という順で実現される。
「生きる」ことは、
       この前半:「態度」と「方法」という「生き方」、および
       後半:「認識と行動」という実際の「生きる」行為
に分けられる。

[FIT2013]を書いている間、論理が自動的に動いて文章ができていき、思いもかけぬ結論が作られる体験を何度かした。今までにないことであった。

2016年の [FIT2016] "世界観,生き方,人類の未来のための根源的網羅思考と一体型矛盾" (原文は英文)で、
     弁証法論理が「生き方」と「生きる」ことを実現することを書いた。
扱う対象は、農業革命に始まり、250年前の産業革命を経て、今後の数百年に至る人類の生き方である。
この歴史を総括し、人類の一瞬の「生き方」をモデル化した。

論文では、全体が一体化と対象化という概念で統一できた手段が、
      人類が、人類の生活をできるだけシンプルになるように、
      つまり使用エネルギーが最小になるように
する目的のためだったということを、
しつこく矛盾と論理的網羅思考を使って説明しているが、十分ではない。

「未完成の哲学ノート」初版以来、
      2.  「歴史と論理の一致」という仮説の前提、
     3. 六千年前の所有の誕生が、物々交換、お金を生み、
              そのため、経済が発展し、人口が増え、
              その管理のため宗教や組織への帰属を生んだこと。
              所有と帰属は方向一体化であること、
      4. 対象化と双方向一体化(自由と愛)の統一の実現
という目標、は変わっていない。

数千年の時間をかけ、使用エネルギーが最小になるようにしたのが歴史だった。

今求められている今後の革命は、
     エネルギー革命という新しい対象化の技術革命と、
      今まで不十分で欠点の多かった対象化と一体化を
            一体型矛盾としてお互いがお互いを高めていく
            全員のための新しい制度革命
の二つからなる。
対象化の価値が「自由」(対象を操作する力)であり、
一体化の価値が、ヘーゲルに倣った「愛」(自分と相手、対象の全てを一体として同時に高める態度と行動の大きさ)である。

 

未完成の哲学ノート」17版(2021年10月)で、次のことを追加した。

1. 常に全体を求める態度、歴史から学んだ論理の重要性を強調した。
全体とは、より粒度(空間時間、属性)の大きな事実のより正しい真実、より大きな粒度(空間時間、属性)の価値である。

2. お金の所有だけの価値、所有を求めて戦争を生む組織への帰属の二つの弱点は、
同時になくすしかない。
そのためには、悪しき所有と悪しき帰属の一方向一体化を、双方向一体化に変えるしかないという、
      初版からの結論を再確認することになった。
生まれるものは超所有と超帰属だが、いい名前がない。
それが生まれれば、お金だけの価値と戦争は同時になくなり、
     双方向一体化が産む生き方が、
     現在の身近な問題、復讐、いじめ、労働疎外なども解決する。

未完成の哲学ノート」12版2021年3月で、論理学が生き方を主導することを書いた。

既存の哲学、現代哲学によらず、
知覚と、事実と人の関係の歴史蓄積だけに基づいて、
少ない概念と原理によるシンプルで合理的、正確、厳密という点、
時代に合った論理学
という二つの利点を持った哲学の骨子が得られる。

基本原理は、
       1 手段、方法として
             11 事実と価値の全体を求める態度,論理的網羅、
             12 結果より論理重視,状態より過程重視,一体型矛盾、
       2 目的として
             対象化と一体化(自由と愛)の統一。
条件変更だけでなく内容を根本的に解決する必要がある。
対象化と一体化、自由と愛の統一は
      遠い目標であるだけでなく、今の問題を解いてくれる解でもある。

 

52. 哲学生成と生き方の同時過程

今から将来に向けて
      論理学と世界観を作り続け、
      これによる新しい生き方が、
           常に全体を求める態度 (特に論理的網羅)と共に、
           対象化と一体化,自由と愛の統一を可能にし、
      復讐を超え、新しい価値と生き方を作り続ける。

論理を作っていく過程の中で、
      今の課題を明らかにし解決していく。
同じことだが課題を解決しながら論理を作っていく。
各人の哲学が生き方を作る。

 

53. さらに  哲学生成と  生き方と  世界変更の  同時過程

論理的網羅による仮説設定という論理学の積極的態度は、
      自分でやってみると身に着き、同時に、
      生き方、社会を作っていく原動力になる。
論理学が主導して、
      哲学(論理学と世界観)、生き方、社会は、
      将来、同じようになる。
これは、同時に今の世界の問題解決の基本原理でもある。

新しい論理学を作り
哲学、常識を変え続けることが生き方になり、
自分の生き方と新しい社会を作ることが同時になる

2018年の
[IEICE2018] [FIT2018] [CGK2018]はその発表である。

 

    

6.二つの変更が必要

61. 意見の統合:  1) 人の生き方、 2) 長期の価値、論理について

11 右派、リベラル、左派の意見、価値の共有増加。論理の共有。

        非宗教と宗教の意見、価値の共有増加。論理の共有。

12  「独裁」国、「民主主義」国の意見、価値の共有増加。論理の共有。

多様化は、論理、価値の共有のもとで発展すべきである。
今は多様化より、前提となる共有が足りない。

2   これらに外部から作用する国連、G7, G20, WEF、DS諜報網などとの
          意見、価値の共有増加、論理の共有。
彼らがその前提としている人間像を超越する論理、哲学を持つ人間像を提示している。

日中米を含む全ての人が、日々、感性と論理、生き方を向上させて行き、
      社会制度も科学も芸術も技術も、地球と人類も、よりよくなり続ける基礎が得られ、
      将来、必要な全ての人の個性と社会毎の制度の多様な発展が、
初めて可能な時代が来る。
この実現には大変な努力を必要とする。
      過去の歴史から学んだ論理が根拠である。
      この論理と結論は常に見直しが必要である。

多くの人に無理、妄想と言われると思うが、
客観的には今、人類史上初めてこれが必要で可能な時代になった。
しかし実現は絶望的である。

62 長期と当面の個別事実の解決

世界に共通に、下記の優先度の高い順の実現を図る。

(1) 世界を壊滅させ得る五百年に一度程度の
        小惑星衝突、大規模太陽嵐、巨大カルデラ噴火等  災害の克服、

(2) 民主主義実現、「東西対立」「国境」と戦争をなくし、
    お金だけが価値でない、全世界に共有されるポスト資本主義制度の生成、
    各人の生き方が確立していく中で身近な問題(復讐、いじめ、労働疎外など)の解決、

(3) 同時に各人、各「国」の多様な展開。

文化文明誕生以来の数千年に一度の変革である。これは世界共通の問題である。
これが原子力エネルギー革命となぜ同時なのか不明である。

 

日本に特有の問題が大きい。
「未完成の哲学ノート」17版
第2部で、日本の三つの当面の重要課題を述べた。

(1) 次の南海大地震は2035±5年に起こり被害額百数十兆円/千数百兆円になるという予測がある。北海道沖地震もひっ迫している。今から急いで大規模な土木・建築を行わないといけない。

(2) 基幹エネルギーは常時使えるエネルギーでなければならない。

(3) 新型コロナウイルス問題。

(3)の検討で新たに分かったことは、
矛盾モデルの両立が、2項の場合でなく複数項の場合が実際には多いことである。
複数の日々変わっていく事実と複数の仮説の両立が、今の常識と異なる結果を出した。
      これは「永久に未完成の哲学ノート 第2部」 7版 2022年 1月発売予定)には書いたが、
      「未完成の哲学ノート」17版には、詳細は未収録である。

(1) 南海地震対処、(2) エネルギー問題、(3) 新型コロナの三つに共通する問題は、
必要な行政、財界、全政党、マスメディアの全体で、
簡単な事実の把握、論理、重要な価値,の三つが絶望的に違っていることである。
マスメディアの報道、政府、自治体、政党はあてにならず、
  自分で仮説を作り論理的に  1 事実を把握し、2 今後の変更を、この順に考えていくしかない

意見の相違は、事実把握が異なっていることが殆どで、次に変更が重要である。
どちらも論理がその内容である。
世界に新しい論理はまだない。

 


        

B原動力: 先人の問題提起 と  現実の問題

もともと、以前から、ゼロから少ない原理でなるべく単純に哲学(論理学と世界観)を作り直そうとしていた。
ゼロからと言っても、当時の常識を変えようとしたデカルトと初期マルクスの、二人の未完のノートから態度を学んだ。
彼らから生きる態度を学び、彼らが求めようとしたものを求めた。
彼らと同様、今の常識、哲学を変えようとしている。

FIT2004を読み返すと、マルクス「経済学・哲学手稿」の言葉を引用している。

「対象的,自然的,感性的であるということと,
   自己の外部に対象,自然,感性を持つということ,あるいは
   第三者に対して自らが対象,自然,感性であるということは,
同一のことである」  [経済学・哲学手稿]

対象的、自然的と感性的を、初期のマルクスは同じような意味で使っていたこと、
   その上で三つの命題の同一性を述べていることに改めて気づく。
三つの命題と両立する、対象的,自然的と感性的、対象,自然と感性、を述べている。
初期マルクス独特の言い方である。

 

1. 論理的網羅

デカルト「精神指導の規則」は、三巻36規則からなる筈だった未完成のノートで二巻の途中までが残っている。

規則5 「複雑で不明瞭な命題を、段階を追うて一層単純なるものに還元し、
然る後すべての中の最も単純なるものの直感から始めて
同じ段階を経つつ、他のすべてのものの認識へ登り行く」

規則7 「知識を完成するためには、
我々の目的に関係ある事柄をすべて一つ一つ
連続的な、どこにも中断されていない、思惟の運動によって、通覧し、
且つそれらを充分な秩序正しい枚挙によって総括すべきである

直感すると同時に他に移り行く一種の連続的な想像の運動によって、幾度もそれらを通覧するであろう。
そしてついには始めから終わりまで極めて速やかに移り行くことができるようになり、
以って記憶の役割を殆ど残さずして事物全体を同時に直感すると見えるに至るであろう

[精神指導の規則]

全ての人のその時の感情、感性的判断が、今の行動を決めている。
そのためにはこのデカルトが書いたことの一瞬の実現が不可欠である。
この実現方法が課題であった。
これが論理的網羅思考の始まりになったように思う。

    

2. 矛盾、生き方・世界変更

21. 矛盾

マルクス「経済学・哲学手稿」には、矛盾についても考察があり、
   マルクス、エンゲルスのドイツイデオロギーでは、条件から矛盾にいたるプロセスが述べられる。
マルクス、エンゲルスを受けて、TRIZの創始者アルトシュラーは、
   当時、旧ソ連で教えられていたマルクス、エンゲルスの矛盾概念を拡張し、
   二変数の生成も両立と同じく矛盾ととらえ、属性の矛盾と値の矛盾を区別して扱った。

22. 生き方・世界変更

「論理的網羅: 永久に未完成の哲学ノート 第一部第二部 の 今」の中で
マルクスの未刊のノート内の文について書いた。(下記のURLが示すウェブ内の文)。
http://www.ogjc.osaka-gu.ac.jp/php/nakagawa/TRIZ/jpapers/2019Papers/Takahara-Papers2019/Taka-54-RET-Memo-200106.html

人間が彼の対象のうちに自己を失わないのはただ、
この対象が彼にとって、人間的な対象あるいは対象的な人間となるときだけである。
このことが可能であるのはただ、
対象が人間にとって社会的な対象となり、彼自身が自分にとって社会的な存在となり、
同様に社会がこの対象において彼のための存在となる場合だけである

[経済学・哲学手稿]

この2文の意味が、何年も分からなかった。
目的達成が最初に静的状態のように述べられ、
解決の条件も2段の形の静的状態のように述べられ、その意味が分かりにくい。

彼は、この二文で、
      対象化と双方向一体化の統合の本質と、
      自分の生き方を作ることと世界を変えることは同時にしかできないこと
の二つの内容を述べ、
      結果的に論理的解と歴史解を統合した。
     (「未完成の哲学ノート」「永久に未完成の哲学ノート 第一部」本文に説明あり)。

ただし、彼もその後の「マルクス主義」者も、
      対象化と双方向一体化の統合についても、
      生き方を作ることと世界を変えることの統合についても、
その後これを展開できなかった。

中川徹先生の"社会の貧困の問題にTRIZ/CrePSでアプローチする:人々の議論の根底に、人類文化の主要矛盾「自由vs. 愛」を見出した", 第12回日本TRIZシンポジウム. 2016. も
人の生き方の検討である。

中川先生の "TRIZのエッセンス−50語による表現"は、矛盾概念の要約でもある。


    

後書き

中川徹先生に、執筆を依頼されて以来、意外に時間がかかった。
その中で分かったことがいくつかある。

(1) ものごとをとらえる枠組みと概念は、少し変えると全体が変わる。
         少し変え、全体を調整し、また少し変え、、という繰り返しだった。

その「少し変える」きっかけは現実の問題解決だったことが多い。
現実の問題といっても、退職以降、技術者ではなくなったので、第2部のような政治経済の問題が多い。
政治経済に全く疎いので、ゼロから考えなければならなかった。
多くは常識から遠い解が出るので、賛成してくれる人がいないという欠点がある。

(2) 大きな問題は、概念、命題の変更履歴の歩みがあまりに遅いことと、
        内容が全く普及していないこと、
        事実がなかなか変わらないというより悪化の一途を辿っていることである。

全てが解決する答えは9割方できたという気がするが、
      この1,2年は絶望の度合いが進んだ。

絶望せず、全体に、もっと分かり易く正確で短く書かないといけない。

 

終わりに、機会を与えていただき 20年近くに渡り、常にご支援を頂いている
   大阪学院大学中川徹名誉教授に感謝申し上げる。

 

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目次

Overview はじめに

A. 概念と命題の変遷

1.何かが分かる

2.前提

3. 基本概念

4.論理学

5. 生き方

6. 変更の必要

B.1.論理的網羅

2.矛盾、生き方

後書き

 

 

 

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最終更新日:  2022.1.14    連絡先: 中川 徹  nakagawa@ogu.ac.jp