TRIZ論文: 高原利生論文集
高原利生論文集: 『差異解消の理論』 (2003-2007)

論文集解題、論文14編

高原利生 、2007年12月30日
掲載:2008. 3.30.    著者の許可を得て掲載。無断転載禁止。

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編集ノート (中川徹、2008年 3月23日)

このページは、高原利生さんが2003年〜2007年末に発表されたTRIZ関連の論文をすべてまとめてPDFにし、高原さん自身による解題を掲載して、各論文へのリンクを張ったものです。全部で14編の論文を含みます。このように、ある一人の人の一連の論文すべてをまとめて『TRIZホームページ』に収録・掲載するのは初めてのことです。

私がこの必要を感じたのは昨年10月で、著者の高原さんにお願いしたのは昨年12月のことです。第3回TRIZシンポジウムの紹介を(英文で) 書いたときに、高原論文 (英文のもの) を読んで、そこに記述されている理論の大事さと記述法 (ダイアグラム) の明快さにびっくりしました。シンポジウム紹介その詳細 (Personal Report) は11月18日に掲載し、また、高原さんの論文とスライド は12月9日に掲載しました。2003年の高原さんのTRIZ Journal の論文以来、丸4年ほどかかって初めてその一端を理解し、全体の重要性を理解した次第です。12月13日に高原さんに出しました中川のメールをここに採録させていただきます。 

高原 利生 様
                                               2007.12.13 大阪学院大学  中川 徹

メールありがとうございました。

第3回TRIZシンポジウムの高原さんの論文は、やはり素晴らしいと思います。本当は後半の部分ももっときちんと読むと、随分いろんなことが分かってくるのだろうと思っています。

今回『TRIZホームページ』への編集をするに際して、高原さんのExtended Abstract を再度読み、その説明図を見て、確かに大事なことが統一的に描かれていると思いました。10月に読んだときには十分理解できていなかったのだなと思った次第です。

この編集をしながら考えたことで、高原さんにメールをしたいと思っておりました。つぎのようなことをお願いさせていただけないでしょうか?

(1) 高原さんの最近5年(?)ばかりの、ご発表の全件をそのままでPDF で『TRIZホームページ』に掲載させていただけないでしょうか? 散逸しない方がよいことと、あちこち見ないといけないのは不便ですので、せっかくの日本発の理論を『TRIZホームページ』できちんと収録させて下さい。

(2) 実際には、『TRIZホームページ』の日本語ページに 1つのHTMLページを作って、そこから日本語論文へのリンクを張り、また、対応する英語ページをつくって、そこから英語論文へのリンクを張ります。これらHTMLページには、中川の簡単な「編集ノート」をつけます。

(3) 高原さんが、ご自分の論文の「解題」を書いていただけないでしょうか? あまり長くならない程度でお願いします。一つの参考例としては、2003年1月に私が書きました「中川のTRIZ/USIT文献への案内」をご覧ください。

(4) 上記の掲載に関して、もし必要なら、学会 (FITなど) からの許可を取っていただけないでしょうか?TRIZ Journal は、(昔のものは) 著者に著作権があったと思います。また最近のものでも、TRIZ Journal に掲載してから1ヶ月が過ぎれば、別のサイトへの掲載は問題がありません。TRIZシンポジウムは、著者に著作権を認めていますので、障害はありません。

(5) 高原さんは、あるいは以前の論文に不満点を持っておられるかもしれませんが、そのようなことは、どんな研究者にもあることです。そのような不満が次の新しい論文を生むためのエネルギーになるのですから。
それよりも、新しいアイデアの萌芽がいつの論文でどのように表現されているのかが、トレースできることが大事だと思います。アイデアの萌芽が現れ、それが成長して一つのしっかりした概念と論理になっていっている。そのような記録を、『TRIZホームページ』上に残させて下さい。
「TRIZシンポジウム」の論文集は100〜200人の人しか持っていないのですから、すぐに埋まってしまいます。『TRIZホームページ』は、将来においても埋まらさないよう最大限の努力をしたいと思っております。

どうぞよろしくお願いいたします。

この申し出に対して高原さんから快諾をいただきました。FIT (情報科学技術フォーラム) の主催者である情報処理学会からもホームページ掲載の許可をいただきました(12月19日)。そして、高原さんから、8ページの「論文解題」 (和文、英文) と 14編の論文ファイルの一式を12月27日に受け取りました。(なお、『TRIZホームページ』編集者としてはTRIZシンポジウムでの他の人たちの発表を順次掲載するのを優先させましたので、3ヶ月遅れでここに掲載いたします。)

なお、「差異解消 (Resolving Differences)」という言葉は、高原さんの造語だと思います。「ありたいこと、したいこと」と「現実」との違いを「差異 (Difference)」と呼び、この違いを認識して解消を目指すことが人間の活動の根幹にあり、それが目標設定、問題認識、設計、問題解決などさまざまな段階と活動形式を取ると考えています。この意味で、TRIZでいう「問題解決」や「矛盾解消」よりももっと広範な捉え方になっており、14編の論文は上記の諸段階を一貫して記述しようと試みています。そこで、高原さんの5年間14編の論文をまとめて、「差異解消の理論」というタイトルを (著者の了解を得て) 中川がつけさせていただきました。

本ページはつぎのように構成しています。

編集ノート (中川 徹) と 高原論文の一覧表 (リンクつき)

高原利生: 「2007年までの論文解題」   (HTMLページ、リンクつき)

高原利生: 「解題」 (PDF版) および各論文の PDF 版  (それぞれ別ページ)

全論文を掲載しますが、すべてを読み直せたわけでない点で著者に申し訳なく思っています。しかし、きっとこれらの論文をきちんと読み直す人があり、この収録が役に立つことと思っております。一つの学説を創ることの大変さを著者の高原利生さんが担ってくださっており、その学説をきちんと理解することができればきっと得るものが大きいだろうと思っています。

高原利生 論文一覧 (2003年〜2007年)  (発表順)  (すべて単著)

[番号] 出典-テーマ-年 題名 出典 言語ページ数、リンク
[1] TJ1_Area 2003 Application Area of Thinking Tool or Problem Solving Tool The TRIZ journal, Jun.2003. 英文5頁
[2] FIT0_ASIT_2003 A Study on Thinking Tool or Problem Solving Tool K-068, FIT2003, Sept.2003 英文3頁
[3] TJ2_Object_2003 How People Interact with Objects using TRIZ and ASIT The TRIZ journal, Aug.2003 英文13頁
[4] TJ3_ASIT_2003 Logical Enhancement of ASIT The TRIZ journal, Sept.2003 英文10頁
[5] TJ4_Function_2003 How Function is Realized in Problem Solving The TRIZ journal, Nov.2003 英文12頁
[6] FIT1_オブジェクト_2004 オブジェクト再考 FIT2004, K-053, 2004.09. 和文4頁
[7] FIT2_オブジェクト_2005 オブジェクト再考2−現実表現のための最小オブジェクトセット FIT2005, K-084, 2005.09. 和文4頁
[8] FIT3_オブジェクト_2005 オブジェクト再考3−視点と粒度− FIT2005, K-085, 2005.09. 和文4頁
[9] TS1_オブジェクト_2005 オブジェクトの再把握とそのTRIZ,USIT,ASITへの適用 第一回TRIZシンポジウム, 2005.09.01-03 和文6頁, 和文スライド20頁
How to Adapt Reconsidered Object to TRIZ, USIT and ASIT 英文スライド20頁
[10] TS2_差異解消_2006 機能とプロセスオブジェクト概念を基礎にした差異解消方法―またはBall氏の“階層化TRIZアルゴリズム”についてのコメント― 第二回TRIZシンポジウム, 2006.08.31-09.02 和文10頁,和文スライド20頁
A Method of Resolving Differences Based on the Concepts of Function and Process Object――Or a Comment on “Hierarchical TRIZ Algorithms" ―― 英文スライド19頁
[11] FIT4_図_2006 オブジェクト世界の構造化表示方法−オブジェクト再考4 FIT2006, K-093, 2006.09. 和文4頁
[12] FIT5_差異解消_2006 オブジェクト世界変革の方法−オブジェクト再考5− FIT2006, K-094, 2006.09. 和文4頁
[13] FIT6_ChangeObject_2007 The Principles of Handling Process Object in the Method of Resolving Differences ― Reconsidering Object 6 FIT2007, D-015, 2006.09. 英文4頁
[14] TS3_差異解消_2007 機能とプロセスオブジェクト概念を中心にした差異解消方法 その2 第三回TRIZシンポジウム, 2007.08.30-09.01 和文HP , 和文8頁,和文スライド20頁
[14] TS3_ResolveDifference_2007 A Method of Resolving Differences Based on the Concepts of Functions and Process Objects: Part 2 英文HP  , 英文16頁,英文スライド20頁

 

本ページの先頭 論文一覧表 論文集解題 (高原) [14] 第3回TRIZシンポジウム(2007) 高原論文のページ 英文ページ

 


[1] 著者による論文集解題

2007年までの論文解題 

 高原利生  (2007年12月30日)

差異解消(第一回TRIZシンポジウムでは,これを含む「創造思考」という抽象的な名称を用いていた)の構造を示した上で,高原の2007年以前の論文の位置づけと個々の論文の解題を以下に示す。

1. 論文の位置づけ

差異解消の構造図を示し(第一回TRIZシンポジウムのスライド2, 3ページの”make mode”の結果と”use mode” を一枚にしたものである),その各要素と個々の論文の対応を示す。

 

図: TRIZシンポジウム、FIT、TRIZ Journal の論文とその主題

作られた方法の構造要素は,

  1. 基本要素(オブジェクト,それを組み合わせたオブジェクト世界,オブジェクト変更)と共通のコンセプト(オブジェクトの属性,粒度,機能)
  2. 差異解消の方法
  3. 適用領域

である。

  学び使う過程の構造要素は,

4.使う人
5.学習し使う過程

である。

 2007年までに発表は,三つの媒体で行われた。2003年には,図の右に示すTRIZ Journalに4件,図の上に示す2003年から毎年,FITという学会のフォーラムに7件,そして図の左に示す2005年から始まった日本のTRIZシンポジウムに3件である。

  図の構造図の周りに,これら要素とそれをテーマにした論文を略称で示す。略称は,次の要素を順に並べたものである。

1) 論文番号:発表順番号
2) 発表媒体の略称と媒体毎通し番号:TJはTRIZ Journalの略で通し番号は1から始まる。FITはFITで,通し番号は0から始まる(こうするとFIT1以降の六つの論文名の媒体毎通し番号が,媒体名略称に付された通し番号と一致する。例えば,FIT2は,「オブジェクト再考 2」である)。TSはTRIZシンポジウムの略で通し番号は1から始まる。
3) 内容を表すキーワード
4) 発表年

図の中では,発表媒体毎に,それぞれ上のほうがより昔の論文である。また色分けで下記のように発表年度を識別している。

薄い青: 2003年
薄い緑: 2004,2005年
ゴールド:  2006,2007年

 

2. 解題

TRIZシンポジウムで発表したもの

第一回TRIZシンポジウム[9] TS1_オブジェクト_2005の最後のところで理想的な理論の要件を明確化した。これが,この後続く世界の認識と変更の形式的理論理想化の原点である。TRIZシンポジウムに発表していく中で,世界に必要でかつ自分のやりたいことは世界の認識と変更の形式的理論理想化であると分かった。

目指しているのは形式的理論であるから,今までのTRIZ,USIT,ASITで蓄積されてきた豊富な内容に関するものではない。Darrell Mannの「体系的技術革新」で述べられているTRIZの既存のツールの整理(40の原理の再整理など)はすばらしいものである。またLarry Ballの「階層化TRIZアルゴリズム」も感動的な本であった。TRIZを技術に適用しようとしている人は,以下に示す点を除けば,私の論文を読むよりこれらの本をお読みになったほうがずっと有益であろう。

本形式では,運動(過程)をプロセスオブジェクト(名前はどうでもいいのである)と扱い,解生成の直接の操作の対象にすることができる。新しい機能を作ることは,プロセスオブジェクトを作ることである。また,プロセスオブジェクトを削除の対象にすることは,問題解決の解であることが多い。オブジェクトの特性値を小さくすることが目的の場合も,プロセスオブジェクト削除は解候補になる。このことの例を,[10] TS2_差異解消_2006[14] TS3_差異解消_2007の英文版で示した。これはTRIZ,USITの「問題解決」に取り入れて欲しい点である。回り道をせずに解が得られる場合があるはずである。

また,「属性」を,オブジェクトを具体的に規定するものととらえ,全体属性と内部構造からなるとしたとらえ方は,TRIZ,USITの理解を容易にすると思う。

これら,オブジェクト,属性,機能という言葉が従来とやや異なる意味で使われている点,3件とも,与えられたページ内に,一年間に分かったことを全部詰め込もうとしていることも分かりにくさの原因になっていることをお詫びする。とにかくこの3件が,表示法について述べた[11] FIT4_図_2006 ,技術と制度を述べた[1] TJ1_Area 2003,ASITを拡張した[4] TJ3_ASIT_2003を除けば,2007年までの現在のTRIZに関する集大成になっている。

[9] TS1_オブジェクト_2005  (図中の略称:以下同)
高原: “オブジェクトの再把握とそのTRIZ, USIT, ASITへの適用”

1. 差異解消の構造の要素について,本稿の最後のところで理想的な理論の要件を明確化し,誰でもどんな領域にも適用できるための,オブジェクトの要件,オブジェクト操作の要件,使う人にとっての要件を述べた。(ただ,方法についての要件が抜けていた。方法の要件の重要な点は,統一的な形式と多様な対応が統一されていることであろう)

2. 本稿では,このうちオブジェクトについて検討している。実用上必要なのは「認識でき操作できるもの」であるが,事前に操作できるかどうかを判断するのは一般的には困難である。したがってオブジェクトを単に「認識できるもの」ととらえる。「認識できるもの」は,「認識でき操作できるもの」を含む。オブジェクトは,1. 物質,2. 「観念」,からなるシステムオブジェクト,3. 運動過程であるプロセスオブジェクトからなる。

機能,属性,粒度などオブジェクトに関する基本概念のいくつかをとらえ直し,説明している。

(以上は,[6] FIT1_オブジェクト_2004[7] FIT2_オブジェクト_2005[8] FIT3_オブジェクト_2005 の要約になっている)

オブジェクトのふるまいの表示法の基本を述べている(スライドにいくつか例がある。また[14] TS3_ResolveDifference_2007では,さらに新しい例を加えて説明している。この表示法の詳細は,[11] FIT4_図_2006 にある)。

3. また,本稿のオブジェクトについての視点から,既存のTRIZ, USIT, ASIT のオブジェクトの扱い方等が,どう見えるかを述べている。それらを現実の会社等にどう適用すべきかを提案している。

[10] TS2_差異解消_2006
高原:“機能とプロセスオブジェクト概念を基礎にした差異解消方法―またはBall氏の“階層化TRIZアルゴリズム”についてのコメント―”

1. 最初に,オブジェクト,機能,属性,粒度のとらえ方を要約して述べている。

オブジェクト変更の検討のために必要な,運動(過程)(プロセスオブジェクト)の構造を検討し(その中で,従来の弁証法の見直しを一部行っている),それに基づき,目的とそのためのオブジェクト操作を対応させたオブジェクト操作表をまとめた。Enhanced ASIT([4] TJ3_ASIT_2003)を使った表になっている(これは,[14] TS3_差異解消_2007 で修正を試みた)。

2. 差異解消の方法に必要な要素である,差異の型,解の手段の型を分析し,説明している。全体としての差異解消の型を述べ,既存のTRIZその他をその中で分類している。

3. 本稿,前稿の説明例として,Larry Ball氏の「階層化TRIZアルゴリズム」で扱われている酸で容器が浸食される問題(TRIZの古典的問題の一つ)を取り上げた。この問題に本方法を適用してみている。

あわせて同書の紹介を行い,長所,批判を述べている。批判として,ノブ,属性のとらえ方の不徹底,原因−結果ダイヤグラムの描きにくさ,「ツール」毎のオブジェクトの扱いがばらばらであること等を述べている。本稿のオブジェクトのとらえ方,属性のとらえ方,原因−結果ダイヤグラムが,その答えになっていることを述べている。

(この批判のうち,本稿で問題提起だけに終わっていた「ツール」毎のオブジェクトの扱いがばらばらであることについては,[14] TS3_差異解消_2007で,形式的に統一した扱いができることを述べた)

[14] TS3_差異解消_2007 ,英文[14] TS3_ResolveDifference_2007
高原:“機能とプロセスオブジェクト概念を中心にした差異解消方法 その2”

本稿は,二点について[10] TS2_差異解消_2006の修正,追加を行ったものである。

1. 人が操作して行うオブジェクト変更について,[10] TS2_差異解消_2006のオブジェクト操作表の内容を修正した。以下がその修正内容である。

三つのオブジェクト変換原理と二種の人によるオブジェクト操作の型を述べた(紙数の関係で,これらについては結論だけしか述べていない。しかし個々の原理や型は,日常,普通に全ての人が何気なしに使っている当たり前のものである)。このオブジェクト変換原理の一つが,オブジェクトの操作方法として,従来扱われていなかったプロセスオブジェクトの生成や削除を行える一般的な扱い方を述べた「原理P」である。次に,これら三つのオブジェクト変換原理と二種のオブジェクト操作の型とを組み合わせてオブジェクト操作,変更の構造図と表を得た。これには全てのオブジェクトの操作,変更方法が,インプットとアウトプットの対応として網羅されている。(ただしこれは一つのオブジェクト変更が目的の場合に限られている)

2. これにより,差異解消の方法について,様々な差異解消,すなわち新機能生成,問題解決,理想化が,統一した形式で行えることを示した。

以上の二点は重要な成果であると思っている。

あわせて差異解消のうち特に理想化の見直しを行った。技術者のシステム設計に限らず,理想化の占める比重は極めて高い。また,システムの増改造を加え(この比重は実際に極めて高い),[10] TS2_差異解消_2006 の差異解消の型を修正した。

TRIZシンポジウムで英文論文を出すのは初めてなので,この英文論文[14] TS3_ResolveDifference_2007には和文論文にまして,今までの検討の概略をやや詳細に載せ,表示法の説明も例を示して行っている。この英文論文は,制限枚数が比較的に多かったので,今までの論文の概要が分かるものになった。

FIT(情報科学技術フォーラム)で発表したもの

FIT:   情報科学技術フォーラム Forum on Information Technology:情報処理学会と電子情報通信学会の情報処理に関係するソサイエティが共催する年に一度のフォーラム。

[6] FIT1_オブジェクト_2004[7] FIT2_オブジェクト_2005[8] FIT3_オブジェクト_2005はオブジェクトについて詳しく述べているが,これらの要約は[9] TS1_オブジェクト_2005に入っている。[11] FIT4_図_2006は今のところ,図による表示法の一番詳しいものである。他のものは,他の論文とダブっている点が多い。

[2] FIT0_ASIT_2003 
Takahara Toshio: “A Study on Thinking Tool or Problem Solving Tool”

これは,[4] TJ3_ASIT_2003に発展している。

[6] FIT1_オブジェクト_2004
高原: “オブジェクト再考”

1. オブジェクト概念の再定式化を行い,カントとマルクスの存在概念を拡張して,オブジェクトを,他のものと相互作用するものととらえた(第一の定義)。この中に,私が認識し,制御できるもの(第二の定義)が含まれる。存在(物質,観念),運動過程の中に,私が認識し,制御できるものがある。これらの存在をシステムオブジェクト,運動過程をプロセスオブジェクトと呼ぶ。

2. 属性,機能のとらえなおしを行った。属性は,オブジェクトの内容を具体的に規定する全てのものである。

この要約は,[9] TS1_オブジェクト_2005に入っている。

[7] FIT2_オブジェクト_2005
高原: “オブジェクト再考2−現実表現のための最小オブジェクトセット−”

1. オブジェクトの定義をゆるめ,「認識できるもの」とする(第三の定義)。このオブジェクトは第一の定義によるものと第二の定義によるものの中間にあり,1.物質,2.実体に担われた情報内容および私が主体である場合の私の頭脳の中にある観念内容としての「観念」,3.運動(過程)からなる。

2. オブジェクトのふるまいの表示法の基本を述べている。

この要約は,[9] TS1_オブジェクト_2005に入っている。表示法の部分は[9] TS1_オブジェクト_2005とほぼ同じである。

[8] FIT3_オブジェクト_2005
高原: “オブジェクト再考3−視点と粒度−”

1. オブジェクトまたはオブジェクトの集まりを関連付けて現実に対応するオブジェクト世界をつくる。オブジェクトを見る視点と粒度を考察した。

2. 関係が,粒度の選定により,因果関係,相互規定関係ととらえられることを示した。

3. 作成したオブジェクト世界についての真偽判断,信頼度検証,正確さ評価,価値評価,機能評価が必要であることを述べた。

この要約の一部は,[9] TS1_オブジェクト_2005に入っている。

[11] FIT4_図_2006
高原:“オブジェクト世界の構造化表示方法−オブジェクト再考4−”

オブジェクト世界は,オブジェクト,オブジェクトの空間関係,オブジェクトの時間関係によって表現できる。これによって,オブジェクト世界の空間的な現状だけでなく,どういう運動をしているか,どういう運動の変化を経て現在に至ったかを形式的に表示することができる。その図による表示法を考える。

このうちオブジェクトの時間的な関係は,運動によって作られる。運動の構造は,「何が運動を引き起こすか」と「運動の作用の結果は何か」によって明らかにし得る。

運動によってオブジェクトの属性が変わる場合と,オブジェクトの生成,消滅を含めオブジェクトが質的に別のものに変わる場合がある。そのそれぞれについて表示ルールを述べた。

これは[7] FIT2_オブジェクト_2005に述べた表示法の改良である。

[12] FIT5_差異解消_2006
高原:“オブジェクト世界変革の方法−オブジェクト再考5−”

最初にオブジェクトの定義について振り返り, 哲学的背景に触れている。オブジェクト変更の検討のために必要な,運動(過程)(プロセスオブジェクト)の構造を検討し,それに基づき,目的とそのためのオブジェクト操作を対応させたオブジェクト操作表をまとめた。差異解消の方法に必要な要素である,差異の型,解の手段の型を説明した。

これの内容の大半は,[10] TS2_差異解消_2006に入っている。

[13] FIT6_ChangeObject_2007
Takahara Toshio: “The Principles of Handling Process Object in the Method of Resolving Differences ― Reconsidering Object 6”

この大半は,[14] TS3_差異解消_2007に入っている。

 

TRIZ Journalに発表したもの

 2003年には,4件,TRIZ Journalに発表した。

[1] TJ1_Area 2003は,初めて英語で発表したものであり,技術と制度という対象領域を述べている。制度の集合体が社会である。これはこれで私のもう一つの出発点である。

これ以外の3件,[3] TJ2_Object 2003(これは,私の英語に編集長Ellen Dombさんの手が入り,他に比べてましな英語になっている。タイトルもEllen Dombさんの案を採用したものである),[4] TJ3_ASIT 2003[5] TJ4_Function 2003は,TRIZシンポジウムと異なり,ASITをベースにした検討である。ASITは,問題解決に原因探求を行わない点と,学ぶのが極めて容易という二大特徴を持っており,後の点は万人のTRIZとして理想的である。ただし,閉世界法による解空間の限定は長所なのであるが,ツールが少なすぎるための解空間の限定という欠点がある。これを解決するため,ASITの5ツールを8ツールに拡張し,論理的な網羅性を得ようとしたものが[4] TJ3_ASIT 2003である。

[1] TJ1_Area 2003
Takahara Toshio: “Application Area of Thinking Tool or Problem Solving Tool”, The TRIZ journal, Jun. 2003.

他の生物と異なり,人間は,世界への働きかけを,物により間接化して技術をつくり,共同観念によって間接化して制度を作った存在である。私達は,膨大な技術と制度の蓄積を持つに至った。

オブジェクトを,「選択し,決定するもの全て」ととらえる。(このとらえかたはその後もっとゆるめている)これは,物,共同観念からなるシステムオブジェクト,技術,制度を利用し,作る運動過程や自分だけの行動から構成されるプロセスオブジェクトからなる。

オブジェクトの適用領域は,技術,制度,個人である。

[3] TJ2_Object 2003
Takahara Toshio: “How People Interact with Objects using TRIZ and ASIT”, The TRIZ journal, Aug. 2003.

システムオブジェクト,プロセスオブジェクトの利用形態を検討した。

ASITの検討を行い,ASITが実質上,十分プロセスオブジェクトを扱う能力があることを述べた。

TRIZの「40の原理」を機能と構造の点から分類し,ASITのツールとの関係も述べた。

[4] TJ3_ASIT 2003
Takahara Toshio: “Logical Enhancement of ASIT”, The TRIZ journal, Sept. 2003.

オブジェクトの属性,機能,オブジェクト間の関係(構造)の基礎を述べた。

問題解決に際し,これらオブジェクトの属性,機能,構造をどう変化させるかという視点から,ASITの整理とその拡張を行った。この拡張は,ASITの「閉世界条件」を維持しながら,ASITの5ツールを8ツールに拡張し,論理的な網羅性を得たものである。

さらにTRIZの「40の原理」と,この拡張されたASITの8ツールの関係を述べた。

[5] TJ4_Function 2003
Takahara Toshio: “How Function is Realized in Problem Solving”, The TRIZ journal, Nov. 2003.

機能が実現される形式を分類し,それを例とともに述べた。ASIT,拡張されたASITのツールとこの機能実現形式の関係を述べた。

 

3. 参考文献

TRIZシンポジウムで発表したもの

[9] TS1_オブジェクト_2005

高原: “オブジェクトの再把握とそのTRIZ, USIT, ASITへの適用”
"How to Adapt Reconsidered Object to TRIZ, USIT and ASIT",
(和文6 ページ, 和文スライド20ページ,英文スライド20ページ)
第一回TRIZシンポジウム, 2005.09.01-03

[10] TS2_差異解消_2006

高原:“機能とプロセスオブジェクト概念を基礎にした差異解消方法―またはBall氏の“階層化TRIZアルゴリズム”についてのコメント―”,
"A Method of Resolving Differences Based on the Concepts of Function and Process Object―Or a Comment on “Hierarchical TRIZ Algorithms" ―",
(和文10ページ,和文スライド20ページ,英文スライド19ページ)
第二回TRIZシンポジウム, 2006.08.31-09.02 

[14] TS3_差異解消_2007 , 英文[14] TS3_ResolveDifference_2007

高原:“機能とプロセスオブジェクト概念を中心にした差異解消方法 その2”
(和文8ページ,和文スライド20ページ) ,
“A Method of Resolving Differences Based on the Concepts of Functions and Process Objects: Part 2“
(英文16 ページ,英文スライド20ページ) ,
第三回TRIZシンポジウム, 2007.08.30-09.01

FIT(情報科学技術フォーラム)で発表したもの

[2] FIT0_ASIT_2003

Takahara Toshio: “A Study on Thinking Tool or Problem Solving Tool”, K-068, FIT2003, Sept.2003.
(英文3 ページ)
 

[6] FIT1_オブジェクト_2004

高原: “オブジェクト再考”, FIT2004, K-053, 2004.09.
(和文4 ページ)

[7] FIT2_オブジェクト_2005

高原: “オブジェクト再考2−現実表現のための最小オブジェクトセット−”, FIT2005, K-084, 2005.09.
(和文4 ページ)

[8] FIT3_オブジェクト_2005

高原: “オブジェクト再考3−視点と粒度−”, FIT2005, K-085, 2005.09.
(和文4 ページ)

[11] FIT4_図_2006

高原:“オブジェクト世界の構造化表示方法−オブジェクト再考4−”, FIT2006, K-093, 2006.09.
(和文4 ページ)

[12] FIT5_差異解消_2006

高原:“オブジェクト世界変革の方法−オブジェクト再考5−”, FIT2006, K-094, 2006.09.
(和文4 ページ)

[13] FIT6_ChangeObject_2007

Takahara Toshio: “The Principles of Handling Process Object in the Method of Resolving Differences ― Reconsidering Object 6”, FIT2007, D-015, 2006.09.
(英文4 ページ)

TRIZ Journalに発表したもの

[1] TJ1_Area 2003 

Takahara Toshio: “Application Area of Thinking Tool or Problem Solving Tool”, The TRIZ journal, Jun. 2003.
(英文5 ページ)
http://www.triz-journal.com/archives/2003/06/e/05.pdf

[3] TJ2_Object_2003

Takahara Toshio: “How People Interact with Objects using TRIZ and ASIT”, The TRIZ journal, Aug. 2003.
(英文13 ページ)
http://www.triz-journal.com/archives/2003/08/d/04.pdf

[4] TJ3_ASIT_2003

Takahara Toshio: “Logical Enhancement of ASIT”, The TRIZ journal, Sept. 2003.
(英文10 ページ)
http://www.triz-journal.com/archives/2003/09/e/05.pdf

[5] TJ4_Function_2003

Takahara Toshio: “How Function is Realized in Problem Solving”, The TRIZ journal, Nov. 2003.
(英文12 ページ)
http://www.triz-journal.com/archives/2003/11/b/02.pdf

 

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最終更新日 : 2022. 1.12.     連絡先: 中川 徹  nakagawa@ogu.ac.jp