高原論文: 第6集 [57] [CGK2020]

思考の構造と論理の原理
         (The Structure of Thinking and Essence of Logic)

高原利生 (−)、
2020年度(第71回)電気・情報関連学会中国支部連合大会
2020年10月24日(オンライン開催)

掲載:2022. 1. 14.

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編集ノート (中川 徹、2021年 12月29日)

本編は、『未完成の哲学ノート』の全体に対して、その骨格を「思考の構造と論理の原理」という形で、簡潔に表現したものです。著者が述べていることを、解説するのは冗長になりますので、いたしません。ただ、本論文の的確さは、「誤判断を起す、あるいは相手をだます経験則がある。これらは今の論理のほとんどだと言っていい。」という短い節を読むと、よくわかります。

本論文の目次をまとめておきます。

[57]  思考の構造と論理の原理  [CGK2020]

1.  はじめに

2.  思考、論理の機能と構造

生きることと思考の機能;  思考、論理の構造

3.  論理の全体原理

粒度、網羅の原理;     価値と事実、それらに対する哲学と生き方の全体原理;  負の原理

4.あとがき

参考文献

 

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論文先頭

1. はじめに

2. 思考、論理の機能と構造

3. 論理の全体原理

4.あとがき

参考文献

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思考の構造と論理の原理

高原 利生 (−)

2020年度(第71回)電気・情報関連学会中国支部連合大会、 2020年10月24日(オンライン開催)

The Structure of Thinking and Essence of Logic

TAKAHARA Toshio (-)

  

1.  はじめに

考えること(思考)の機能、本質は、今までと違う新しい考えを作ることである。
事実も価値も形式論理でない論理学も変わってきた。
これらは、人と事実の関わりの歴史とともに変化してきた。
今までは、対象化を前提にした論理(学)が進化してきて、その問題点、解決策(一体化との統一)が明確になった[Taka-44-47] [FIT2020]
本稿は、これらを総括した上で、論理の根本原理を改良する。

  

2.  思考、論理の機能と構造

21. 生きることと思考の機能 [FIT2013, 16]

生きることは、感じ,思考し、価値、目的を実現するために、認識と行動で世界を変えることである。
思考は、観念の中で、新しい認識像、行動像を作るか、前提となっている世界観、価値観、態度、論理,方法を変える。
世界観(と価値観)、論理学(方法)の二つを哲学ととらえる。

生き方 = (世界観) ⇔ (潜在意識、態度、感情) ⇔  思考の論理学 (粒度決定=抽象化具体化、推論)

22. 思考、論理の構造 [FIT2013, 16] [Taka-44-47]

思考は、
       1)  変更の対象である関係命題 、またはそれが表現する矛盾(運動)モデルの確定のための抽象化
       2)  その変更のための推論(後述)、または矛盾の解
       3)  推論結果の具体化
からなる。
       (「関係命題−推論」と「矛盾−矛盾の正反合の解」は同じである。
         矛盾の解は演繹、仮説設定について求めれば十分)
中川徹2005年の6箱方式 [中川Naka-2019]は、本来、思考の論理であると理解する。
中川は、この思考の構造を世界で最初に明示的に明らかにした。
私はFIT2014以降、箱の状態を過程に代えて述べている。

この抽象化は、事実をどのよう(な価値)においてとらえるかという世界観に依存する。
これら抽象化、推論、具体化が、思考(根源的網羅思考)を構成する。

図2.1 論理の構造

  

3.  論理の全体原理

論理は、 細かな粒度と
             粗い態度に関する論理と
相まって実現される。

前者は、次にまとめられる。
まず個々のオブジェクトを操作する細かな粒度の原理がある。
      ・  オブジェクトについての操作: 網羅し直し、粒度変更(抽象度の変更)。
      ・  オブジェクトの操作: オブジェクト追加、取り去り、置き換え。オブジェクト分割、統合。二項を関係させる:
                これらの重要な応用; 仲介(媒介)、入れ子。

後者の、最低限の共有すべき原理を網羅する。

その扱いの基本は、
       31.   粒度と網羅 (注) の原理、
       32.   全体(価値と事実、それらに対する哲学と生き方)に行くべき原理
である。
31と32は同じことの別表現である。
最後に
       33.  間違った負の論理をまとめる。

 

31. 粒度、網羅の原理 [Taka-44-47], [54]

1) 何事も、
        全体は何か、
        全体の機能と、構造
(要素の関係)は何か、
        要素は何か

という三つの網羅がある。

2) 思考の中核が粒度決定と論理的網羅注)である。

どのような粒度と網羅での判断かを明示すると良い。

今行う網羅によって、今の位置と今より大きい全体が分かり全体への思考の出発点になる。  

注: 事実を、ある粒度(抽象化具体化の程度)[FIT2005/1]で切り取り、思考によって扱う情報がオブジェクトである。

粒度の本質はオブジェクトの抽象化具体化の程度の決定で、
要素
はオブジェクトの空間的時間的範囲と無数の属性からの属性の特定である。

適正な粒度は、網羅された中から選ばれ、同時に網羅はある粒度で行われる。
        例:虹の7色の中の「青」という粒度は、色を7で網羅した時の青である。

 

32. 価値と事実、それらに対する哲学と生き方の全体原理

321. 客観的内容

   (1: 条件より価値、内容が重要)

・ 条件より目的、価値、内容が重要である。
          例:2020年、日本の働き方改革の欠点は、条件改善だけになっている点。

空間的時間的,機能(属性)的に、より大きな価値[THPJ 2015/1]より正しい真実が優先する。

・ 今の価値、今の真実より、より大きな全体の、より良い価値、より正しい真実は必ずある。

事実や価値の法則性にも世界観、論理,方法にもより大きな本質、全体がある。

   (2: 過程重視)

・ 解より方法、結論より論理が良い。

・ 個々の行動より態度が良い。存在やその状態より、関係(運動)、過程が良い。

理想を努力の過程だと考えると、理想は常に得られしかも理想の状態に常に近づいている。

322. 主観的態度:対象化、相対化と一体化

・ 事実も、価値も、論理または方法もお互いに関係しているので、全体を求めない限り一部も求められない。
  全体の、より大きな価値とより正しい真実を常に求め直し続ける。

・ より大きな価値とより正しい真実のために、自分を含む全てのオブジェクトの対象化、相対化とそれらとの一体化を続ける。
  自己、自組織、自「国」の対象化、相対化、相手を含む他オブジェクトとの一体化意識、他への敬意が常に同時に必要である。
     一体化は全体化への手段である。

323. 方法

   (方法1:事実のゼロベースと論理のゼロベース)

ゼロベースに両立する二つの意味がある。

・ 事実のゼロベース: 今の事実である現実は、宇宙誕生以来今までの歴史の網羅的総括である。
     常識を捨て今をゼロとし現実を細部まで認める。
     価値(目的)を見直す。

論理のゼロベース: 論理を考え直し網羅し直す。

   (方法2:極限を考える)

 あるオブジェクトの粒度を、
     1. 極限まで変えてみたらどうなるか考える。
     2. その実現の手段を考える。

 理想の答えがあるとしたらどういう形のものか と考える。
     任意の関数が、もし級数の和で求められるとしたら、どういう形になっているだろうかという工学的発想で
       テーラー展開などが生まれた。デルタ関数、虚数も生まれた。

   (方法3:全体と部分の方法原理)

・ 問題はなるべくローカルに処理する。
     エネルギーと もの はローカルに処理を完結させる。
        例: 難民問題は、難民を出さないように国で対策が完結。

・ 全体と部分の方法原理
    
全体に貢献するように部分を解く。
        最低限、全体の中の位置を知って解く。

    問題が解けない場合、
        1. 問題を部分に分け部分を解決していく、
              それに行き詰ったら別の部分の問題を解く。
        2. より大きな問題としてとらえ直してみる。

  

33. 負の原理

誤判断を起こす、あるいは相手を騙す経験則がある。
これらは今の論理の殆どだと言っていい。
これらは、対象化と一体化(自由と愛)の統一の生き方ができればなくなる。

331. 事実の粒度の間違い

特に、例を安易に一般化する、例を証明に使う、部分だけを取り出し全体だとする。

332. 価値の粒度の間違い

特に、感情に入り込み易い小さな価値の問題を、大きな価値と思い込む、思わせる。

333. 感情,論理,行動のすり替え

誹謗中傷、偽善欺瞞など。

  

4.あとがき

時代とともに変わっていく論理学の今の基本原理を整理した。
いつの時代も、論理学、生き方、社会は対応していて同じようなものになってきた。
これから対象化と一体化を統合した論理、生き方、社会を作る。

 

謝辞

本稿は、大阪学院大学名誉教授中川徹博士の長年に亘るご理解とご支援の賜物である。厚く御礼申し上げる。

  

参考文献

[FIT2018] TAKAHARA Toshio, "Logical Possibility of Ideal Way of Life; Barter as a Background of Homo Sapiens", FIT2018, N-018, 2018.

[CGK2018] 高原利生, "個人の幸せと世界の価値実現、その両立の成立時期", 平成30年度(第69回)電気・情報関連学会中国支部連合大会, R18-27-15, 2018.

[Naka-2019] 中川徹, "6箱方式", 『デザイン科学事典』, 日本デザイン学会編, 編集委員長 松岡由幸、丸善出版、2019.10, pp. 274-277.  http://www.ogjc.osaka-gu.ac.jp/php/nakagawa/TRIZ/jpapers/2019Papers/Naka-DesignEncyclo-2019/Naka-Encyclo-SixBox-191120.html

[Taka-44-47] 高原利生,「未完成の哲学ノート」2019.03.25 初版,  2020.08.31 5版, 制作 MyISBN 発?所 デザインエッグ(株)

[FIT2019] 高原利生, "弁証法論理学の生成構造", FIT2019, O-082, 2019.

[CGK2019] 高原利生, "網羅についてのノート−事実と価値の本質と全体のための−",(第70回電気・情報関連学会中国支部連合大会, 2019.

[Taka-54] 高原利生, 「論理的網羅:永久に未完成の哲学ノート 第一部第二部の今」
http://www.ogjc.osaka-gu.ac.jp/php/nakagawa/TRIZ/jpapers/2019Papers/Takahara-Papers2019/Taka-54-RET-Memo-200106.html、(題名は[Taka-44-47]を第一部、第二部に分けたもので、古い版なら第一部をhttp://www.ogjc.osaka-ogu.ac.jp/php/nakagawa/TRIZ/jpapers/2019Papers/Takahara-Papers2019/Taka-50-PhilosophyNote2019-Part1-191205.htm で読むことができる)

[FIT2020] 高原利生, "事実から作る 価値,真実,シンプルな論理学の骨子", FIT2020, O-017,2020.

その他の参照文献は、下記参照。http://www.ogjc.osaka-gu.ac.jp/php/nakagawa/TRIZ/indexGen-Paper.html#paper0  (C)「学会等発表・研究ノート・技術ノート」の 高原利生論文集1,2,3,4

 

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最終更新日:  2022.1.14    連絡先: 中川 徹  nakagawa@ogu.ac.jp