TRIZフォーラム: 学会参加報告 (28)    
第9回 日本TRIZシンポジウム 2013
(統計数理研究所(立川市)、2013年 9月 5 - 6日) 参加報告

中川 徹 (大阪学院大学)、2013年11月 7日

掲載:  2013.11. 17; 更新: 2013.12. 9; 12.23; 2014. 1.26
英訳掲載:2013.12. 9

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  編集ノート (中川 徹、2013年11月 7日)

日本TRIZ協会主催の 日本TRIZシンポジウムが9月に開催されました。私は昨年の第8回までずっとプログラム委員長として運営に携わってきましたが、今年は運営に関与せず、一参加者として参加・発表しました。そこでこの報告も、前年までとは違い、簡単なものにいたします。

[追記(中川、2013.12.9): 本報告を英訳して掲載しました。海外の人たちに日本のTRIZの活動状況と成果を発信していくのは大事なことです。]

[TRIZ協会のホームページに、基調講演や受賞発表が11月に公開掲載され、1月14日には一般発表のすべてが公開掲載された。和文と英文の両方。 本『TRIZホームページ』では精選した発表数件を掲載・紹介してきている。(2014. 1.26)]


(1) 学会の概要

名称:       第9回 日本TRIZシンポジウム 2013
主催:       NPO法人 日本TRIZ協会
後援:   情報・システム研究機構 統計数理研究所、日本知財学会 
協賛:       日本科学技術連盟、 日本設計工学会、 日本創造学会、 日本バリュー・エンジニアリング協会

期日:       2013年 9月 5日(木)〜  6日(金)
会場:       統計数理研究所 (東京都立川市)
主題:   リスクをチャンスにTRIZで!
Webサイト:  日本TRIZ協会ホームページ http://www.triz-japan.org/

(2) プログラム概要:

9/ 5(木):       チュートリアル (小西慶久 (日本TRIZ協会))、開会式、特別講演(椿広計(統計数理研究所))、研究発表(ダブルトラック 8件)、特別講演(Jeongho Shin (韓国))、夕食&交流会

9/ 6(金):    日本TRIZ協会総会、基調講演(Gaetano Cascini (伊)))、特別セッション(鈴木和幸(日本信頼性学会))、特別セッション(津本周作(島根大学))、ポスター発表(3件)、研究発表(ダブルトラック 12件)、閉会式

(3) 招待者、参加者など

小西慶久 (日本TRIZ協会) チュートリアル 「イノベーション技法 TRIZ」

椿広計(統計数理研究所 教授) 特別講演 「価値創生のための技術開発の文法」

Jeongho Shin (韓国学術TRIZ協会(KATA)、韓国) 特別講演 「何が韓国をこれほどまでTRIZに熱中させるのか?」

Gaetano Cascini (ミラノ工科大学、イタリア) 基調講演 「TRIZに基づく技術予測によるリスク削減と機会開拓」

鈴木和幸(電気通信大学教授、日本信頼性学会会長) 特別セッション 「トップ事象モードと故障モードに着目した未然防止へのシステム科学」

津本周作(島根大学教授、リスク研究ネットワーク運営委員) 特別セッション 「リスク発見:リスク検知に向けて」

参加者:   TRIZ協会だより (11月4日) によると、参加登録者127名+統数研15名とのことで、このうち海外からは数名(6名程度?)にとどまりました。昨年度は、計127名 (うち海外は約20名) でした。

(4) 運営

従来の3日間(基本/アドバンストのチュートリアル1日+講演・発表 2日) から、全体を2日間(基本チュートリアル 午前半日+講演・発表1日半)に短縮された。(国内)参加者の参加の便を考えたもので、参加者はおおむね短縮に賛成であったという。

計画の公表と発表募集(2月)、発表のアブストラクト締切(5月)、第1次プログラムとアブストラクトの公表(6月)、最終原稿締切(7月下)、参加締切(8月) など、日本語と英語の並行公表による諸準備が従来同様に整然と行われた。また当日の会場運営などもスムーズであった。これらの点は世界各国のTRIZ関連学会と比べて特筆すべき優れた点である。

国内の関連学協会による後援・協賛が拡大し、主題に関連した招待講演者が得られたこともよかった点である。海外から2名の招待講演者を招き、それぞれ貴重な話であった。一般の研究発表は、オーラル20件(うち海外1件)とポスター3件であり、昨年度のオーラル28件(うち海外5件)とポスター7件(うち海外4件) に比べると約2/3に減少した結果になった。

シンポジウムの国際性に関して、今回、日本TRIZ協会執行部の方針が曖昧であった。「国際性を縮小する」というのが当初方針であり、最小限として2名の海外招待講演者を招待するが、国内発表者のスライドの英訳サポートを約束していなかった (ただし、実際にはプログラム担当委員のレベルで国内発表者のアブストラクトとスライドの英訳が全件サポートされた)。結果として、海外からの一般発表は1件だけ、海外参加者は数名だけ、となった。いままでの8回のTRIZシンポジウムが着実に国際性を拡大する方向に進んで来たのに対して、随分大きな後退である。世界から見たとき、韓国のTRIZの定着と国際的な進出・拡大に対して、日本のTRIZの国際性の縮小・国内指向とが、特に際立って注目されている。

 

(5) 内容の要点

一般発表の中で、私にとって印象深かったものをリストアップし、簡単に分野分類をしておく。順不同。題名(「」)またはテーマを示す。「--」以後は私の感想。(#)印はダブルトラックのために私が聞けなかったもの。

A.  TRIZの方法論

・ 黒澤慎輔 「古典的TRIZ 3つの段階」 1956年、1971年、1985年の各段階でのARIZを分析して、TRIZの発展を跡付けたもの。-- 貴重なまとめである。

・ TriZit Benjaboonyazit (タイ) アロワナの雌雄判別法の検討。高価な観賞魚であるアロワナは、(多くの魚類でも同様であるが) 外形から雌雄を区別することが困難である。ARIZを使って種々の方法を網羅的に出し、32の方法を考えた。-- ARIZの例示になっているが、方法を体系的に網羅・考察しようとすれば、もっと違うやり方があるように思う。

・ 古謝秀明(USITものづくり技術サポート) 「時間分離の考え方を応用した若手技術者育成セミナーの構築」 問題を考えるに際して、時間経過を詳しく考え、メカニズムを考えていく。

・ 加藤結衣他(早稲田大学) 「商品開発におけるデザイン業務のプロセス管理に関する研究」 -- よい発表である。この特定目的のための矛盾マトリックスを再整理しているが、商品企画に特有のパラメータとデザインとして普遍的なパラメータに分けるともっと分かりやすいだろう。

B.  TRIZと他の諸方法との統合

・ 笠井肇((株)アイデア) 「今、改めて『使えないTRIZはない』〜ソリューションの中核手法として〜」 著者が担当コンサルタントとして支援したTRIZ適用事例が119テーマとなり、それらをまとめて考察した。問題の性格・目的に応じて6つに分類し、それぞれの場合でのTRIZの適用法、他の手法との組み合わせ方について述べている。-- 非常によいまとめである。-- 全文掲載   (2013.12. 9)

・ 中川徹(大阪学院大学) 「創造的な問題解決・課題達成の一般的な方法論―構想―」-- 全文掲載   (2013.12. 9)

C.  技術分野の適用事例

・ 田嶋和貴(メルテックス(株)) 「表面処理薬品開発におけるQFD、TRIZ事例」(#) -- 具体的な技術情報を含む事例として貴重。

D.  企業におけるTRIZの推進

・ 緒方隆司他(オリンパス(株)) 2009年よりQFD、TRIZ、タグチメソッドを導入しており、最近では現場のニーズに合わせて、目的別に7つの手法適用パターンを作って社内展開している。 -- 4年間継続的にシンポジウムで発表してきており、その社内展開の過程が大いに参考になる。-- 全文掲載   (2014. 1.26)

・ 久永滋他((株)デンソー) 「実践を通じたTRIZ活用の社内推進」 (#)  2003年からTRIZ導入をはじめ、この10年間で約200件のテーマで実施したという。--いままで公表されてこなかったが、このような活動が自動車産業(特にトヨタ自動車系列)で継続的に行われてきたことは注目に値する。 -- 全文掲載   (2014. 1.26)

E.  大学・学界・教育におけるTRIZの利用

・ 大津孝佳(鈴鹿工業高等専門学校) 「鈴鹿高専に於ける知的財産教育活動」 (#) -- 知的財産教育に全校挙げて取り組んでいるとのことで、多様な活動が具体的に示されていて、非常に面白い。(私自身の発表と同時間だったので、聞くことができなかったのが残念)

F.  特許に関連する研究

・ 太田健(朝日特許事務所) 「TRIZ手法のIT技術分野への適用の可能性―ビジネスモデル特許を題材として」(#) -- 詳細に例示されている。

G.  非技術分野でのTRIZの適用

・ 吉澤郁雄(産業能率大学)他 (日本TRIZ協会 ビジネス・経営TRIZ研究分科会) 「TRIZを適用した『新商品・サービス』システム創出のスキーム」 研究分科会として約4年の活動に基づき、矛盾解法と進化トレンドを適用して、「新商品・サービス」システムを創出するためのプロセスを考察・提案している。-- 着実に進んできているよい発表であった。-- 全文掲載   (2013.12.23)

 

なお、従来発表されていた日本の主要企業からの発表が今年はほとんどなかったことが非常に残念である。来年に期待する。

(6) その他

TRIZシンポジウムでの発表スライドは、日本TRIZ協会のWebサイトで公開または会員限定公開されるものと思われるが、まだ掲示されていない。

[11月8日に日本TRIZ協会のホームページに、シンポジウムの正式報告と諸発表が掲載された。基調講演・招待講演、および「あなたにとって最も良かった発表」の受賞発表5件について、発表スライドが和文と英文で公開されている。その他の一般発表については、TRIZ協会員専用ページに限定開示された。(2013.11.12)]
[1月14日に、一般発表のすべてについて、そのスライドが和文と英文の両方で、TRIZ協会のホームページに公開掲載された。(2014. 1.26)]

本『TRIZホームページ』でも、著者の同意が得られたものをいくつか公開で掲載したいと考えている。[本ホームページに掲載したものは、上記のレビューの中にリンクを張って示している。(2014. 1.26)]

 

 

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最終更新日 : 2014. 1.26    連絡先: 中川 徹  nakagawa@ogu.ac.jp