編集
ノート (中川 徹, 2004年10月17日)
ここに訳出しましたのは、USIT法の開 発者 Ed Sickafus 博士による、USIT法のeBookであり、USIT法の概要を簡潔に述べた約45ページの資料です。USIT法の教科書の簡略版として参照下さい。
USIT法はFord社において、社内研修プログラムとして開発され、5年間で1000人
に教え、多数の実地問題の解決に適用されました。ただ、その経過からFord社外への発表が一部に制約を受けたようです。USIT法の教科書は488ペー
ジの大部のものが1997年に (同社の承認のもとに)
自費出版されました。また1998年と1999年の学会で、USITの開発の趣旨と利用実績
が発表され、1999年3月に初の社外USITセミナー
が開催
され中川も参加しました。しかし、USITの技法を簡潔に述べた論文の学会発表は許されなかったとのことです。中川はSickafus博士の2編の学会論文を翻訳するとともに、USIT教科書の3部分 (開
発の歴史
、一般化法
、額
縁掛けの問題
)
を翻訳させていただき、本『TRIZホームページ』に掲載しました。ただ、USIT教科書の全体はあまりにも大部で、おいそれと翻訳出版に取りかかること
ができませんでした。
1999年から2000年にかけて、中川 がSickafus博士につぎのことを何回かお願いしました。「USIT法技法全体の概要を述べた論文1編 (20ページ程度) とUSIT法の実施例の数編 (各10ページ程度) とを、執筆公表いただけないでしょうか?」と。これに応える形でSickafus博士が2001年10月に執筆されたのが、この 『USITの概要』のeBookです。それがSickafus博士のWebサイト に無償で公開されたのは1年半ほど後の2003年2月のことでした。また、同 サイトには、階段を登れる手押し台車の事例 (リバースエンジニアリングの事例) が掲載されました。中川はすぐにこのeBookの翻訳の許可をいただいたのですが、その他の用件が多忙でいままで翻訳できませんでした。
2004年5月に、「To Do List for
TRIZ」を掲載して、ボランティアの協力者を求めましたのは、このような状況を背景にしておりました。すると早速に、
川面恵司さんと越水重臣さんとが手
を挙げて下さり、このeBookの翻訳がはじまりました。川面さんが翻訳の初稿と第2稿を、越水さんが訳文へのコメントと図版の作成をして下さり、中川が
原稿の推敲と訳注などを担当しました。ぜひ10月中に掲載したいと思い、準備を進めてきました。Sickafus博士からいただきましたメッセージも添付
いたします。
このUSIT eBook を執筆され、無償で公開して、また日本語での翻訳・掲載を快諾いただきました Sickafus 博士に厚くお礼申し上げます。著者および訳者の連絡先のEmailは以下のようです。
著者: Ed Sickafus
博士
(Ntelleck, USA): Email: Ntelleck@u-sit.net USIT Web サイト: http://www.u-sit.net/ |
![]() |
|
訳者: 川面恵司
(芝浦工業大学・非常勤講師) Email: kawamo-y@jcom.home.ne.jp 越水重臣 (静岡理工科大学・助教授) Email: koshi@me.sist.ac.jp 中川 徹 (大阪学院大学・教授) Email: nakagawa@ogu.ac.jp [Email 訂正: 2009. 2. 6] |
以下に は、eBookをPDFファイルで掲載いたします。
なお、本件の取り扱いに関しましては、Sickafus博士の英文サイトで
の扱いに準じて、ダウンロードの際に下記に表示した著作権に関する合意事項を合
意いただいたものとします。
特に、「氏名・emailアドレス・国名」を
(英文で) Sickafus博士と中川と
に電子メールでご連絡下さいますようにお願いします。下記に
例を示します。
Subject: Downloading USIT eBook, Japanese version
Message: Taro Nakayama,
Taro@mail.mailsite.ne.jp, Japan
編集ノート(中川 徹、2020.3.12): Sickafus博士は、2018年11月15日に逝去されました
。Sickafus博士記念アーカイブズを開設しました
のに伴い、本ページをその中の重要資料として登録いたしました。なお、同博士の生前の許可を得ておりますので、本ページを中川が管理して公開いたします。特に、できるだけ多くの方に参照いただきたいと考えますので、上記の電子メールでの連絡は随意といたします。
USIT の概要 (統合的構造化発明思考法) USIT eBook
Ed Sickafus 著 (2001年)
川面恵司・越水重臣・中川 徹 訳 (2004年10月)
下記の著作権に関する合意書に合意し、電子メールで登録します。ここをクリック。
登録の例: Subject: Downloading USIT eBook, Japanese version
Message: Taro Nakayama,
Taro@mail.mailsite.ne.jp, Japan
[注: 上記登録メールのメールアドレスを訂正しました。2011. 1.29]
PDF ファイル
(43ページ, 295 KB) をダウンロードします。ここをクリック。
[注: PDFファイルを修正し、ずっと小容量で、図も鮮明になりました。(2004.10.27 越水・中川)]
USITの概要 目次
フローチャート
第1章 はじめに
USITの発展経緯、 本書の内容、 謝辞、 USITの全貌
第2章 USITについての考 え方
第3章 用語の定義
オブジェクト、 属性、 機能、 コンタクト、 視覚化の助け、 活性な属性、 属性の対
第4章 思考支援モデル
O-A-F コンタクトモデル、 電子的フィードバックモデル、 USITの全貌
第5章 USITのフローチャート
適切に定義された問題、 閉世界ダイアグラム、 Particles法、解決技法、 フローチャートの三つのレベル、
第6章 USITにおける適切に定義された問題
言葉と図による記述、 望ましくない効果、 望ましくない効果を一つ選択する、
オブジェクトの列挙、 最小化、 根本原因、 考えられる根本原因を見出す技法、
フィルタの除去、 問題記述の単純化、 問題分析の二つの方法、
演習: 問題を適切に定義する第7章 閉世界法
閉世界ダイアグラム、 O-A-F記述、 定性変化グラフ、 閉世界法の演習
第8章 Particles法
スケッチ、 and/orツリー [行動/性質ダイアグラム]、 Particlesの出現/終了のテンプレート
第9章 USITの解決策生成技法
ユニークネス法 [空間時間特性法]、 属性次元法、 オブジェクト複数化法、
機能配置法、 機能連結法、 解決策一般化法第10章 USITを適用する方法
第11章 おわりに
付録A 演習問題
付録B 参考資料
付録D. 本件の取り扱いに関する合意書
合 意 書
このeBookへの無償でのアクセスと使用に関する合意書
"Unified Structured Inventive Thinking - an Overview" by Ed. Sickafus,
PhD.
ISBN 0-9659435-1-8, in PDF format
本eBook中のテキストおよび図面は、Ntelleck, LLC (Grosse Ile, Michigan, USA) がその著作権を持ち、所有するものである。貴殿が貴殿の氏名、Emailアドレス、および国名を登録することにより、貴殿には本資料にアクセスし、ダウン ロードし、使用することが許され、その中には学術的、非営利的、教育的な目的でのいかなる形式での配布をも含む。本資料を使用するいかなる場合にも、 Ntelleck, LLC がその著作権所有者であり、Ed. N. Sickfusが著者であることを明記することが求められる。何人も、Ntelleck , LLC あるいは Sickafus 博士に対価を払うことなく、本eBookの内容を教えることができる。
本資料のいかなる部分または全体を、いかなる種類の商業的製品 (すなわち、本、雑誌、ビデオ、広告、訓練資料 (個人的あるいは企業内訓練資料を含む)、など) に組み込むことに関しては、貴殿はその許可を、Ntelleck, LLC に対して郵便 (Ntelleck, LLC, P.O. Box 193, Grosse Ile, MI, 48138, USA) または電子メール (Ntelleck@u-sit.net) で、申請することができる。
著作権所有 (C) 2001 Ntelleck, LLC, Grosse Ile, MI, USA
著者: Ed. N. Sickafus, PhD
出典: www.u-sit.net
電子メール: Ntelleck@u-sit.net免責条項: 本eBookは、設計その他の技術的問題に対して、解決策のコンセプトを発見することを助けるための方法論を記述している。例として挙げた解決策コンセプ トはどれも、Ntelleck, LLC がいかなるやり方でも、設計、テスト、あるいは検証したものではない。ここに議論しているいかなる解決策も、保証を提供あるいは含意しているものではな い。
日本語版に関する合意事項:
ここに掲載するUSIT eBook の日本語版は、Ntelleck, LLC の Dr. Ed Sickafus の許可を受けて、翻訳し、掲載するものである。
「USITの概要 (統合的構造化発明思考法)」
著作権所有 (C) 2004 『TRIZホームページ』 (編集者: 中川 徹)
訳者: 川面恵司・越水重臣・中川 徹
出典: 『TRIZホームページ』 www.osaka-gu.ac.jp/php/nakagawa/TRIZ/
Email: nakagawa@ogu.ac.jp [Email 訂正: 2009. 2. 6]この日本語版の扱いに関する条項は、上記の原著と同様とする。この日本語版をダウンロー ド する際に、Ntelleck, LLC の Ed Sickfus 博士と同時に、本『TRIZホームページ』編集者 中川 徹に、電子メールにて、「氏名、電子メールアドレス、および国名」を登録するものとする。
2004年10月 中川 徹
編集ノート(中川 徹、2020.3.12): 本件の合意事項は、現在・将来とも基本的に守られるべきものですが、そのうちの上記の電子メールでの連絡は随意といたします。
著者からのメッセージ (Dr. Ed Sickafus, 2004年10月10日)
問題解決を愛するみなさんに:
私たちは話す言葉は違っても、共通の関心をもっています。特に、技術的な問題を解決しようとするときの挑戦と、解決策を見出したときの知的な喜びとを、と もに経験しています。みなさんがUSIT (統合的構造化発明思考法) を学ばれると、きっと、問題解決でみなさんが必要とするものを実現するための、ありきたりでなく、効果的な方法論をここに見出され、知って良かったと思われるでしょう。
私たちはまた、統合的で構造化された発明的な思考法を、一緒に学ぼうとしています。それは、川面恵司さん (元: 芝浦工業大学教授)、越水重臣さん (静岡理工科大学助教授)、および中川 徹さん (大阪学院大学教授) のご協力とご尽力によるもので、私の本をこのように日本語訳で公表下さったからです。みなさんがこの本から学ばれるのと同様に、私もみなさんからの新しい質問から学ぶのです。
1995年に私はイスラエルに行って、SIT (体系的発明思考法) という方法論を学び、いろいろ修正したのちにそれをフォード自動車会社で教え始めました。これらの変更の力点は、企業の技術者たちが、発明だけでなく、毎日毎日の通常の技術的問題に対してもSIT を使うやりかたにありました。私が [2000年に] フォードを引退するまでに、私たちは1000人を越える社内技術者たちに教えましたが、その範囲は米国、ヨーロッパ、およびオーストラリアにわたっていま した。
受講者たちがSIT についてどこで助言を必要とするかが分かってくるにつれて、私はUSITの開発を始め、根本原因として考えられるものを見つける方法や、属性-機能-属性 [という機能を明確化した概念に基づく] 解決策コンセプトを見つける方法を備えたものにしました。その論理は、オブジェクト、属性、機能の概念を使った統一的な理論に基づいています。そして、 フォード社の許可を得て、この本 [注: USIT教科書とそれを簡略化したこのUSIT eBook を指す] を書き、出版したのです。
USITはまず第一に、問題に対する新鮮で常套的でない見方を確立する方法を問題解決者たちに示すように、設計されています。そして第二に、どんな種類の技術的問題に対しても、複数の解決策コンセプトを迅速に生成するための、論理的で効果的な方法論を提供しています。その根底にある論理によって、容易に [すっきりと] 理解できるようになっているのです。
みなさんがここに訳された本を学んで、楽しみを見出されることと思っています。そして、覚えていて下さい:
"To be creative, U-SIT and think"
(「創造的であるためには、座って、USITで考えよ」)2004年10月10日 米国ミシガン州, Glosse Ile にて
Ed. Sickafus
解題: USIT eBook とその後の発展 (中川 徹,
2004年10月 9日)
Sickfus博士の記述はいつも簡潔、明快で、深い洞察を含んでいる。本件の USIT eBook (2001年)は、USITの全貌を簡潔に記した、分かりやすいテキストである。その内容は USIT 教科書 (1997年) の方法論の部分をまとめたものであり、具体的な適用例は教科書を参照することが期待されている。
Sickafus博士は昨年11月から、USIT News Letterの配信を始めており、現在 No. 28まで発行されている。そこでは「ミニ講義」の欄が中心で、演習問題を懇切に説明しており、このeBook には触れられていない新鮮な記述がある。このNews Letter の翻訳
は、古謝 秀明 さん (富士写真フィルム) の協力を得て行っており、現在No. 10までを本『TRIZホームページ』で掲載している。
なお、中川は、このUSITの有効性に着目し、1999年以来日本での導入に努めてきた。その理解した内容、適用例、トレーニングセミナーのやり方などを 逐次本『TRIZホームページ』に掲載している。
2001年3月に「USIT の成立と進化」
と題する記事を掲載し、Sickafus博士のUSITの開発とその発展を引用・解説するとともに、日本での新 しい展開を説明し、Sickafus博士と中川の討論を記述しているので参考にしていただきたい。
日本でのUSITがさら発展したのは、2002年秋にETRIA国際会議で発表した、中川徹・古謝秀明・三原祐治による論文「TRIZ の解決策生成諸技法 を整理してUSITの5解法に単純化する」
である。この結果、TRIZの傍系 (イスラエルのSIT) のさらに傍系であったUSITが、TRIZの「新しい本流」としての資格を持ったのだと、中川は考えている。本年9月の知識創造シンポジウム (修善寺2004) で話したように、「大 きく深いTRIZを、やさしく学び、速やかに実践する」
方法論が、いま日本で発展させつつあるUSITなのだと考えている。
『TRIZホームページ』の読者の皆さんが、USITの開発者 Sickafus 博士の明快で深い考え方 (原型のUSIT) を本eBookで吸収されるとともに、その後にUSITとTRIZを再融合させて発展した「日本版USIT」の考え方を理解いだだけることを願っている。 このような観点から、両者に違いがある部分を eBook 内に [訳注] として簡単に解説している。
この翻訳の過程でSickafus 博士の文を何度も読み返し、やはり益することが多かった。このeBookで最初に言っていることがやはり大事だと思う。
「USITに接する技術者たちは、 みんな専門知識をもち、特許も書いた経験を持っている人たちだ。その人たちに、新しい非常套的な観点を与え、統合的な構造化した思考法を提供することが USITの役割である。企業の実地での問題解決は、革新的な質の高さと時間的な速さ (能率) こそが命である。」
この趣旨を大事にして、USITを一層役に立つものに発展させ、実地に適用していきたいと、改めて思う。
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最終更新日 : 2004.10.27. (Sickafus 記念アーカイブズ 2020.3.13) 連絡先: 中川 徹 nakagawa@ogu.ac.jp [Email 訂正: 2009. 2. 6]