TRIZフォーラム: 学会参加報告 (26) 
マレーシア TRIZ 学会 (MyTRIZCon 2012)
(ペナン、マレーシア、2012年11月6-9日) 参加報告 [速報]

中川 徹 (大阪学院大学)、2012年11月14日

掲載:  2012. 11.15; 更新: 2012.12.12。追記: 2013. 4. 6

English page will be posted in a week.

  編集ノート (中川 徹、2012年11月14日)

私は、表記の学会に基調講演者の一人として招待され、11月 4日(日)〜11日(日) に出張しました。

この報告は、帰国の翌日にTRIZ協会運営会議メンバの皆さんにメールしました「速報」にほんの少し手を加えたものです。本当はもっときちんとした報告をするとよいのですが、とりあえずこの速報の形で読者の皆さまにも報告いたします。

追記: 2012.12.12 中川 徹:   この学会での中川の発表2件を、本ホームページに掲載しました。

(a) 基調講演: "Creative Problem-Solving Methodologies TRIZ/USIT:  Overview of My 15 Years in Research, Education, and Promotion"  (英文)
(b) パネル討論発表:   「創造的な能力は どのようにして育て発展させるとよいのか?」 和文英文

追記:  2013. 4. 6 中川 徹:    主催者Dr. Yeoh の基調講演スライドを入手しました。英語と日本語訳の両方で本ホームページに掲載します。非常に力強いものです。

 

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中川パネル討論発表

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  マレーシア TRIZ 学会 (MyTRIZCon 2012) 参加報告 [速報]

マレーシアのペナンで開かれた TRIZの学会に 出張して [11月4日(日)〜11日(日)]、昨日朝帰国しました。
ここに簡単に報告しておきます。

(1) 会議の概要

名称:        MyTRIZ Conference, Workshop, & Competition 2012
主催:        MyTRIZ (Malaysia TRIZ Innovation Association)
協賛:        MOSTI (Ministry of Science, Technology and Innovation)
                Ministry of Higher Education
               MDeC (Multimedia Development Corporation: 国のICT政策を担う外郭団体)
               USM (Univiersity of Science Malaysia)
               Intel Malaysia
               ACE
               Institution of Mechnical Engineers
               MATRIZ (International TRIZ Association (国際TRIZ協会))  (MyTRIZ は今年 MATRIZ に加入した。)

期日:       2012年11月 6日(火)〜 9日(金)
会場:       ペナン、マレーシア
                     USM (11月 6日); Rasa Sayang Hotel (11月 7-9日)

(2) プログラム概要:

11/ 6(火):      Competition 2012 最終選考会 (別室にて。中川も審査員の一人)
                    Workshop A (by Sergei Ikovenko): 特許関係

11/ 7(水):      Conference 1 (主として 企業適用):  開会挨拶、MyTRIZ 戦略、基調講演、適用事例、パネル討論1

11/ 8(木):      Conference 2 (主として 教育関連):  基調講演、適用事例、パネル討論2、コンペ上位3チーム発表会

11/ 9(金):      Workshop B (by Mark Barkan & Anatoly Guin):  幼児・子ども教育関連

(3) 招待者、参加者など

Dr. Sergei Ikovenko (GEN3 Partners、米国):   ワークショップA(特許)、基調講演 (TRIZの将来)、パネル討論1
Dr. T. Asokan (GE、インド):    コンペ審査、基調講演 (Innovation)、パネル討論1
Dr. MiJeong Song (SAIT、韓国):   コンペ審査、基調講演 (SamsungのTRIZ)、パネル討論1

Mark Barkan (MATRIZ会長、米国):  コンペ審査主査、基調講演 (新しい時代のための教育)、パネル討論2、ワークショップB(教育)
Anatoly Guin ( ロシア):   コンペ審査、基調講演 (子どもの創造性教育)、パネル討論2、ワークショップB(教育)
中川 徹 (大阪学院大学、日本): コンペ審査、基調講演 (問題解決の方法論TRIZ/USIT)、パネル討論2

参加者: 各日 約 200人。テーマによって来る人が違っているので、延べ人数は 300〜400人であろうか。

(4) 運営

MyTRIZ 会長の Dr. T.S. Yeoh (Intel Malaysia) と MDeC の Mr. Eng Ho Tang とが中心になって、 インテル、MDeC、USM など大学関係の若い人たちで非常にまとまった運営が行なわれているように見えた。

政府の二つの省 (MOSTI と MOHE)、MDeC、および Intel などから、積極的な財政援助があり、これらの組織からの講演者、海外からの基調講演者などを招待している。コンペにも多額の賞金がIntel から出ている。

講演予稿集が出版されなかったので、ひとつひとつの講演をいま説明することは難しい。事後に、発表スライドをWeb に掲載する予定とのことであり、それが掲載されてからもう少し紹介したいと思う。

なお、マレーシアのTRIZ協会は、現在約250名のメンバを持ち、その内 200名が大学関係、50名が企業関係であるという。
2010 年に立ち上げ、政府の協力をも得て、産官学連携の組織 として、充実した活動をしている。

陽気で友好的な国民性であろうか、イベントとして盛り上げる工夫が随所にしてあり、活気を感じさせるものであった。

(5) 内容の要点

非常に活発で、非常によく準備され、参加者みんなが生き生きと楽しみ、かつTRIZを貪欲に吸収しようとしていることが分かり、印象深いイベントであった。

特に、マレーシアの諸大学のグループにTRIZ適用の成果発表を競わせたコンペは、非常に活発で、かつ楽しいものであった。

そのバックには、インテル基金をベースにして、インテルと政府 (高等教育省) と諸大学 (の連合) とで締結した、TRIZの普及・協力の体制づくりがあることを知った。
「大学の求めに応じて、インテルがそのTRIZ専門家を無償で派遣して、大学の教員に対して研修を行なう」というもので、これを政府がバックアップして大学をその方向に導いているのである。学生へのTRIZ教育はこれらの先生たちに担って貰う計画である。

コンペ自身は、半年の準備/指導期間があり、3種の課題が出されている。チームは大学関係者 5人以下で、その内1人以上は先生という条件で、学生主体のチームもあれば、PhD主体のチームもあった。
27チームがエントリし、レポート提出で事務局が上位 8チームに絞り、それらのプレゼンテーションによる最終審査を基調講演者 5人が審査員になって 11/6 に行なった。
上位 3チームのプレゼンテーションが 11/8 午後にあり、大いに盛り上がった。

コンファレンスの部分は、すべてシングルトラックで、挨拶や基調講演、パネル討論などを主体として、その中でインテルの適用事例や大学での適用事例などが少数発表された。
自由に一般発表を公募するという形でないのは、まだ適用している企業や大学の母体が少ないからであろう。

コンファレンスの第1日は、企業へのTRIZ適用を主題として、非常に充実したものであった。
マレーシアでのTRIZの普及と展開の戦略を延べた 主催者 T.S. Yeoh (MyTRIZ 会長, Intel Malaysia) の講演が とりわけ印象深かった。

[(追記: 中川 201. 4. 6) 主催者に要請して、Dr Yeoh の基調講演スライドを入手しました。英語と日本語訳の両方で本ホームページに掲載します。改めて読んで、実績も、将来像も、非常に力強いものだと思いました。 ]

Dr. Asokan (GE、インド)、
Dr. MJ Song (SAIT、韓国)、
Dr. Wen Hann Wang (Intel Labs Vice President、米国) など
の発表はそれぞれ力強いものであった。(スライドが掲載されてから紹介したい。)

コンファレンスの第2日は、教育関係が主体。
Dr. M. Balkan と Dr. Anatoly Guin による、「新しい時代のための創造性教育」は、従来の分野別の教育から、もっと分野を越えて考えるための、子ども時代からの創造性を培う教育をしようという提唱。

中川の基調講演では、自分自身のいままで15年間のTRIZ/USIT研究のモチーフを分かりやすく説明した。(この発表スライドは近日このサイトに掲載する予定)  [基調講演 を英文で掲載しました (2012.12.12)]

午後のパネル討論は、Balkan, Guin, 中川の 3名で、予めつぎのような質問が知らされていた。
     「創造的能力を培う/教えるにはどうすればよいか?」
     「あなた自身は、いつどのようにして Innovation Science に関心をもったのか?」
     「学校教育 (小〜高) が創造性の開発を妨げているという意見があるが、どう思うか?」
私は、合計4枚のスライドを示して、これらの質問に答えた。(この発表スライドは近日このサイトに掲載する予定) [パネル討論での中川の発表を、和文   および 英文 で掲載しました (2012.12.12)]

第3日は Mark Barkan と Anatoly Guin による 創造性教育のワークショップ (丸一日) であった。
大部分が Guin のロシア語での話を、Balkan が英語に逐次通訳をしたもので、少々分かりにくかった。

(6) その他、所感

私は、マレーシア (東南アジアも) を訪問するのは初めてのことであった。幸い、家内 (雅子) も同伴させていただいた。

会場のペナンは、イギリスの植民地時代の拠点 (Georgetown) であり、ペナン島としてマレー半島から分離している (橋が ある)。
現在はIntel などいくつもの企業が進出しており、観光・リゾート地でもある。
会場のホテルはペナン島の中でも一等地のすばらしいリゾートホテルであった。

雨期と乾期があるというが、年間を通して (また 昼夜を通して) 24〜32 ℃ の温度であるという。
滞在したときには、到着日と出発日の夕方に激しい雨があったが、間の日には、昼間は晴れていて夜中に雨が降るというパターンで、活動には好適であった。
ただ、ホテルや学会の会場は、エアコンが随分効かせてあり、22℃程度で寒いほどであった。

マレーシアの人たちは大変有効的で、われわれ海外からの ゲストに対して、インフォーマルな夕食に誘ってくれ、いろいろなタイプのレストランや人気の食堂で、マレーシアの料理を食べた。
マレー系、中国系、インド系などいろいろな人々がいる多民族国家だから、その食事も多様であった。

ペナンには、20階〜40階のマンションが多数建てられている。平地は海岸沿いだけに限られているので、地代が高いのだという。
Intel の技術者の一人は、もうすぐ新築のマンションに引っ越す予定で、子ども一人の3人家族で 4ベッドルーム 250 m2 の広さだという。これが日本円にすると2000万円程度だという。

もう一つ特記すべきは、この学会はすべて英語でなされたが、大人でも学生たちでも、そして教育ワークショップに来ていた子どもたちも、英語で話し、聞くことにまったく不自由をしていないことであった。
マレーシアでは英語を小学校から教えるという。だから、大抵の人は、マレー語だとか中国語だとかの母国語とともに英語をフルにマスターしているのだという。

(日本で、TRIZシンポジウムを「国際的」にしようとして和英の翻訳や通訳に苦労していることが滑稽なほどに見える。
私自身の英語も、話したり、聞いたりの点ではまだまだ駄目なことを痛感する。)

マレーシアの経済力の上昇の中で、TRIZがこの2〜3年で急速に普及してきていることを強く感じた。
(政府でも、企業でも、大学でも) 若々しい優れたリーダたちがこれをリードしていることを知った旅であった。

この貴重な機会を与えていただいた マレーシアの人たちに厚く感謝する。

 

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最終更新日 : 2013. 4. 6     連絡先: 中川 徹  nakagawa@ogu.ac.jp