Darrell Mann : ICMM Book Top Page |
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『イノベーション能力成熟度モデル (Innovation Capability Maturity Model (ICMM)) 入門編』 トップページ: 序文、目次、掲載ページ索引(全章) |
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編集ノート (中川 徹、2021年 2月 3日)
昨年秋にTRIZCON20202でのDarrell Mannの講演に接し、大きなスケールで考察し、実践、推進している彼の仕事の重要性を改めて認識しました。講演を論文化したものと 講演全文をすでに和訳掲載しています。その編集ノート後記に書きましたように、私はDarrell Mann の技術分野を主とした著作を和訳出版してきましたが、ビジネス関連分野、および(体系的)イノベーション一般に関する彼の新しい著作をよく学べていませんでした。大いに反省して、いまそのいくつかを学び始めていて、和訳、掲載、出版をしていきたいと考えております。
まず、私が取り掛かりましたのが、本書『イノベーション能力成熟度モデル(ICMM)』(2012年出版)です。著者が、最初に技術分野、ついでビジネス分野で、TRIZとその発展(「体系的イノベーション」)を研究・実践・推進し、世界を飛び回ってコンサルティングをした16年間の実績をもとに本書をまとめています。イノベーションとは、「成功したステップチェンジ(階段状の変化)」であると定義しています。成功は、始めから終わりまでがうまく行く必要があり、全社の体制に依存する。階段状の変化とは、現行の知識・方法に基づく漸進・最適化で得られるものではなく、前提の知識・方法(常識的ルール)を破って初めて、得られる。常識を破り、かつ、全社的活動でないと、達成できない(だから困難で、イノベーションの試みの98%が失敗している)。組織のイノベーションの能力は、順次、階段状に、獲得されていく。多数の大企業・中小企業・政府機関などと協働し、コンサルティングし、調査した結果から、このICMMモデルをまとめています。本書は、イノベーションを本気でやろうとする個人や組織、特にトップマネージャの人たちに向けて書いています。
非常に貴重な著作です。著者から和訳出版の許可をいただき、出版を前提に、本ホームページへの事前掲載の許可を得ています。和訳は多難です(著者の構文が複雑で、いろいろ慣用句や口語的表現がありますので)。訳文中の、( )は著者の挿入句など、[ ]は訳者の補足です。(直訳でなく、意訳でもなくて)文の論理に細部まで忠実なそして読みやすい訳を心掛けています。節以下の見出しを付け、文中の重要語句を太字にし、ところどころに段落の区切りを追加して、全体の構成を分かりやすくしております。もし、お気づきの改良点がありましたら、ご連絡ください。
編集ノート (中川 徹、2021年 4月16日)
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原著序文の和訳
序文:
形態は機能に従い、機能は意味に従う「知恵は、固定にも変化にも存在しない。
両者の弁証法に存在する」
Octavio Paz振り返りますと、私の人生は創造性とイノベーションを中心に廻っていたように見えます。私は10歳のときに最初の創造性の本(Edward DeBono)を読みました。私はキャリアの最初の15年間を研究開発に従事し、その後現在までの15年間、イノベーション研究者のチームを率いてイノベーションコンサルタントとして働いてきました。
私がすぐに知ったのは、私の属する世界がパラドックス、対立、矛盾に満ちた世界になるだろうということでした。私が出会うビジネスリーダーたちは、自分の組織内でもっとi-word [語頭にインテリジェンスの'i-'をつけたキャッチフレーズ] が欲しいと言うのですが、実際にはそのようなものを望んでいないのです。世界中の最も賢く、最も発明的な知能を持った何人かの人々と一緒に仕事をして、その人たちがその経歴を通じて、ときにはその全生涯で、何一つイノベーションを成功させなかったことに気が付きました。また、この地球上で最も効率的で、構造化され、プロセス主導の運用をしている組織のいくつかで働いて、それらのプロセスがベストのアイデアのすべてを殺してしまうのを繰り返し観察しました。政府機関が何十億ドルもの資金を「イノベーション」に費やし、その結果、イノベーションの成功の実際の尺度で測ると、まったく何も、文字通り何も、得なかったのを、いろいろ見ました。
この16年余の間、私は、自分が見つけることができた最善の、全体像をきちんと考え、パターンを見つける精神を持っていると思われる人々を雇って、コンサルタント会社(研究所)を運営してきました。その目的は、非常に良い意図を持ち、多くの時間とお金を使ったものが、なぜ有用な成果をこんなに僅かしか実現できないのかを、理解することでした。本書はいままでに私たちが見出した成果をまとめたものです。この研究は継続中ですが、私たちはいま、ようやくついに、イノベーションの世界について、そのミクロ、マクロ、そしてメタレベルの状況を十分に見ることができました。そして、私たちの疑問に関して、初めて、整合性のある、実行可能な答えをまとめることができるようになった、と私は思っています。
本書は、イノベーションを本当に起こしたいリーダーの皆さんのためのものです。資金提供者で、そのリスク管理のためのよりよい方法を探すのに、困惑している皆さんのためのものです。また、科学者や技術者の皆さんで、[自分たちのアイデアや仕事が] 毎回ブロックされてしまうように見えることに欲求不満を持っている人々のためのものです。そして、差別化をしたいと望みながら有効なことができないでいる政府関係者の皆さんのためのものです。
シートベルトを締めてください。この「旅」は沢山の困難があるでしょうから。
Darrell Mann
上海にて、
2012年1月
原著の目次 (本サイトでの掲載ページ)
目次
訳書目次詳細 [節見出し以下は、訳者がつけました。]
序文
目次
(1) 製品/サービスにおける失敗 (2) 市場の需要における失敗 (3) 市場へのルートにおける失敗
(4) 生産手段における失敗 (5) 調整における失敗2.1 ソフトウエア開発の世界: 1980年代の状況とプロセス改善のための標準化
2.2 ソフトウエア開発分野での能力成熟度モデル(CMMI)
3.1 イノベーションの中核プロセス: 6ステップのサイクル型プロセス
3.1.1 ステップ1: 感知する(Sense) 3.1.2 ステップ2: 解釈する(Interpret)
3.1.3 ステップ3: 設計する(Design) 3.1.4 ステップ4: 決定する(Decide)
3.1.5 ステップ5: 調整する(Align) 3.1.6 ステップ6: 応答する(Response)
3.1.7 ステップ1: 感知する(Sense)4.1 進化のS-カーブ、一つのS-カーブから新しいS-カーブへのシフト
4.1.1 進化のS-カーブとそのシフトはどこにでもある
4.1.2 S-カーブの表現、つぎのS-カーブとの位置関係
4.1.3 新しいS-カーブへのジャンプが困難な理由
4.1.4 ジャンプをした先駆者・先例を求めて4.2 「英雄の(S-カーブの)旅」 -- 世界の神話・文学に共通の人類の知恵
4.2.1 Joseph Campbellの研究成果
4.2.2 「英雄の旅」:全体構造とS-カーブの非連続ジャンプとの関係
4.2.3 「英雄の旅」の12の段階、注意するべきこと(1) 冒険への召命、 (2) 召命の拒否、 (3) 良き師に会う、 (4)閾を越える、
(5)テスト、敵と味方、 (6)内奥の洞窟への接近、 (7) 試練、 (8) 褒賞、 (9) 帰路、
(10) 再生、 (11)妙薬を携えての帰還、 (12)普通の世界5.1 問題を定義する方法: 「A or B」 でなく 「A and B」を考える
5.1.1 「A or B」の議論は、問題定義が間違っている
5.1.2 イノベーションを起す二つの方法: 新しい機能・属性の提供 と 矛盾の解決
5.1.3 「A or B」でなく、「A and B」の問題定義へ
5.1.4 「イノベーション能力の旅」における矛盾5.2 矛盾の課題を策定し、矛盾を解決する方法: 普遍的テンプレートの利用
5.2.1 テンプレートによる記述法とその意味
5.2.2 矛盾を解決する方法(1) 「A and not A」の問題を「分離」によって解決する
5.2.3 矛盾を解決する方法(2) (「B or C」でなく) 「B and C」の問題を「12の戦略」で解決する
5.2.4 矛盾を解決する方法(3) 問題中の前提(理由付け)を「なぜ?本当に?」と挑戦する
5.2.5 矛盾を解決するための心構え7.1 イノベーション能力(ICMMレベル)の自己判定のための25の質問表
質問概要: リーダーの役割、 成功する変化、 激動する市場の成功要因、 安定した市場の成功要因、 価値(Value)、 戦略の役割、 顧客ニーズの決定、 顧客以外のニーズの決定、 イノベーションの必要の決定、 イノベーションのタイミング、 目標と方向付け、 変化を現行ビジネスに統合、 顧客への正しい質問、 事業変更のための買い付け、 事業計画活動、 無駄(なもの)は?、 破壊的脅威に対する戦略、 厳しい状況でやる気にさせる、 錯綜したものを管理する、 未来の見方、 未来を予測する、 リソース(資源)、 学習、 成長、 リーダーシップ
レベル判定のやり方、 世界の事例、 スコア判定の作業表、 回答のスコア表
第8章 ICMM (イノベーション能力成熟度モデル)の5つのレベル
8.1.1 ICMM レベル1: 種を蒔く(Seeding)
8.1.2 ICMM レベル2: チャンピオンを作る (Championing)
8.1.3 ICMM レベル3: 管理する (Managing)
8.1.4 ICMM レベル4: 戦略化する (Strategising)
8.1.5 ICMM レベル5: 挑戦する (Venturing)
8.2.1 イノベーションプロジェクトのスケールの異なる5つのタイプ
プロセスのイノベーション、 製品・サービスのイノベーション、
ビジネスユニットのイノベーション、 組織経営のイノベーション、
社会のイノベーション、
ICMMの能力レベルで扱うとよいイノベーションのタイプが異なる
8.2.2 複雑なもの(Complicated) 対 錯綜したもの(Complex)
8.2.3 いくつかの書籍と諸方法8.3 ICMM(イノベーション能力成熟度モデル)の5つのレベルを要約する (2021.3. 掲載)
8.3.1 ICMM レベル1: 種を蒔く(Seedomg) 要約表
8.3.2 ICMM レベル2: チャンピオンを作る(Championing) 要約表
8.3.3 ICMM レベル3: 管理する(Managing) 要約表
8.3.4 ICMM レベル4 戦略化する(Strategising) 要約表
8.3.5 ICMM レベル5 挑戦する (Venturing) 要約表9.1 組織はこれらのレベルを「飛び越える」ことができますか?
9.2 レベル5は「最終レベル」ですか?
9.3 なぜあなたは、現在のイノベーションの急増が(「断続平衡説」により)今後15年間続く、と言うのですか?
9.4 15年間が経過するとどうなりますか?
9.5 私の組織はレベル5にまで到達する必要がありますか?
9.6 あなたの言っていることが真実だと、どのようにして知ることができますか?
9.7 上司を説得するにはどうすればよいですか?
9.8 他にもすでに、イノベーション能力を測定するツールや方法が、多く存在していませんか?
9.9 これは私自身にはどれくらいの費用がかかりますか?
9.10 これにはどのくらい時間がかかりますか?11.1 一般的な参考文献
11.2 本書に引用した参考文献
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最終更新日 : 2021. 4.18 連絡先: 中川 徹 nakagawa@ogu.ac.jp