本稿は、大阪学院大学情報学部における、2年次後期配当の正規科目 (選択) 「科学情報方法論」の講義の授業資料一式を掲載したものです。学部創設時 (2000年4月) に正規科目として設定され、2001年後期から現在まで中川が引き続き講義してきました。初年度(2001年度) の講義ノート (全13回) を本『TRIZホームページ』に掲載いたしました。その後毎年、少しずつ改良を続けていますが、全体構成は少ししか変わっていません。2007年に、本講義を中心とした小生の教育実践をまとめて、大学の紀要、ETRIA TRIZ国際会議、本ホームページで報告しています。
今回掲載しましたのは、2010年度の授業 (全14回) で学生諸君に渡しました講義資料の一式です。各回ごとにPDFファイルにしています。下記の一覧表からダウンロード下さい。また、授業の骨子が分かるように、各資料の節見出しを抜き書きして、末尾に目次の形で掲載しました。
なお、授業では、このプリントを渡し、同時にそれをプロジェクタで投影して、話しています (講義資料は、ベタ書きの形式でなく、改行・字下げ・空白行などを活用して、話しやすく聞き (読み) やすい形式にしてあります)。ところどころで学生に質問し、また小演習で複数の学生を出させてホワイトボードに書かせたりもしています。小規模な階段教室での授業です。
実は、この年度の授業を全回 DVDで撮影・録画して貰い、学内の「授業アーカイブズ」の第1号として、学内に登録しました。ところが、質問の際に学生の名前が出たり、小演習で個々の学生の姿が写ったりしているために、編集しないで公開するのは不適当という判断になっています。授業のしかた、撮影のしかた、動画の編集など、よく準備してしないと、録画を公開できないことを悟りました。本件、大学のITセンターのスタッフの皆さんにお世話になり、感謝いたします。
月日 |
テーマ |
|
主資料 |
[1]
10/5 |
やさしい導入:
技術革新に必要な 柔軟な考え方 |
1.本講義『科学情報方法論』について (その1)
本講義の趣旨と概要(『講義要項』より)
2. やさしい導入 (技術革新と問題解決のいろいろな事例)
[副資料] (PPT ) やさしい導入:技術革新に必要な 柔軟な思考
0. はじめに、いくつかの事例で学ぼう、
最近「創造的な問題解決のための方法論」が樹立されてきた、
1. 課題: ホッチキスの針をつぶれないようにしたい
2. 身近な適用例: 裁縫で短くなった糸を止める方法
3. 矛盾を解決するアルトシュラーの方法: 適用事例 「節水型トイレ」
4. 課題: コード、ケーブルが絡まる問題を解決したい
5.おわりに
3. 本講義『科学情報方法論』について (その2)
講義テーマと予定、 学習上の留意点
|
副資料
|
[2]
10/12 |
科学・技術の研究と学習の方法:
「観察から」、「原理から」、「問題から」のアプローチ |
1. 科学と技術のアプローチの概要
2. 観察 → 経験的知識 → 仮説 → 実験検証 のアプローチ
科学は 観察と疑問から始まる、経験的知識から 仮説を得る、
仮説は実験で確かめる必要がある、観察 →経験知識 →仮説 →実験確認 のプロセスを「帰納」という
3. 原理・理論 → 科学的推論 → 応用 のアプローチ
「原理」は高度に抽象化され・検証された仮説である、原理からいろいろな分野の「理論」が導かれる、実際の問題に「理論」を適用して, 結果を推論する、原理・理論 → 科学的推論 → 応用 は「演繹」のアプローチである、「物理学は自然と生命の認識のすべての基礎である」
4. 問題 → 分析 → 解決策 → 応用 のアプローチ
「問題」の認識、問題を分析する、解決策を考え出す、 解決策を適用する、 問題 → 分析 → 解決策 → 応用 のアプローチ を「問題解決」という
|
|
[3]
10/19 |
問題を見つけて絞り込む,
情報を収集する |
1. はじめに
2. 「人生の大事な問題」についての捉え方
3. 「心」の問題、生活習慣と生涯への心構え
4. 問題を捉えるための一つのヒント
5. 問題を適切に捉えるための諸観点
6. 問題の明確化のプロセス (USIT法の問題定義段階)
7. 情報の収集 (1) 学術情報の図書・雑誌による情報収集
学術上の情報の一次資料、2次資料・3次資料、
8. 情報の収集 (2) インターネットによる情報収集 ** |
|
[4]
10/26 |
「発想」とは何だろう?
試行錯誤とひらめきと創造性 |
1. はじめに:「発想」とは何だろう?
2. 「ひらめき」: 種々の逸話とその教訓
3. 試行錯誤による実験
4. 自由奔放な発想を促す技法: ブレインストーミング法
5. 「心理的惰性」: 創造を阻む自分の内面の要因
6. ヒントを探して活用する方法: 「市川亀久彌の等価変換理論」
7. 野口悠紀雄の『「超」発想法』 とその批判
8. 樋口健夫の「アイデアマラソン」法
9. 発想と問題解決の心理モデル (Ed Sickafus による図) |
|
[5]
11/9 |
「システム」とは:
構成要素とその関係,
階層性, 技術システム |
1. 「システム」という言葉
2. 「システム」の階層性
3. 「問題」の「体系 (=システム)」を捉えた例
「大学生活で何をしようとするのか?」という問題の体系、
「高層ビルの火災対策」の問題
4. 「ブラックボックス」としての「システム」の働き (機能) の表現
5. 技術的システムの捉え方
6. 「技術システムの完全性の法則」という考え方
|
|
[6]
11/16 |
問題の分析(1)
問題 (困ること) の「原因」をつきとめる |
0. 「システム」のイメージ (復習)
1. 「問題 (テーマ, 課題)」の捉え方
「問題」を捉える重要性と選択の判断基準 (復習を兼ねて)、 (技術的問題における) 問題の明確化のプロセス (USIT法の問題定義段階)
2. 問題の分析のはじめに: 何が「問題 (困ること)」 なのか?
3. 「問題 (困ること) 」が起こる原因は何なのか?
4. 技術システムにおける原因分析の例
例: 「額縁掛けの問題」、例: 「発泡樹脂シートの製造における発泡倍率の増大の問題」 、例: 「トラックの燃料タンクが回転する問題」
5. 原因-結果のネットワークによる表現とその利用法
|
|
[7]
11/16 |
レポート (論文) の
作り方・書き方 |
1. 本日の講義の趣旨
2. 本講義の成績評価のための「レポート課題」
[副資料] レポート (論文) の作り方・書き方
1. はじめに
2. レポートの目的を明確にする
文書の「性格」を明確にする、文書を書く「目的」を明確にする、 制約条件を明確にする、 課題の大枠を明確にする
3. 中身を作るための調査・研究などを行う
4. 執筆の準備と執筆活動
執筆の準備と構想メモの作成
、執筆の資料と基礎原稿を作る/ 揃える、
本文の執筆を開始する、 書いたものを推敲する
5. レポートの形式と記述すべき項目
表紙部分 (先頭部分)、 概要 (Abstract)、序論 (はじめに, 序, Introductionなど) 、 本論、結論 (Conclusion, まとめ, おわりに, 結語 など)、 参考文献・資料・付録など
6. レポートの記述の形式
7. 文章の書き方の要点
8. おわりに
9. 参考文献 |
副資料
|
[8]
11/30 |
問題の分析(2)
技術システムの
機能と属性の分析 |
[副資料] 問題の分析(1) 補足: 問題 (困ること) の影響と原因
[主資料]
1. はじめに: 「メカニズム」の理解のための各専門領域の知識とその限界
2. システムの機能分析 (その1: 記述ルールが簡単な表現法)
3. システムの機能分析 (その2: 有益/有害な機能を区別する表現法)
4. 「オブジェクト - 属性 - 機能」による分析 (シカフスのUSIT法)
「オブジェクト - 属性 - 機能」の概念、 シカフスによる機能分析の表現 (「閉世界ダイアグラム」) と適用例、 問題 (困ること) に関わる「属性」(性質) の分析: 「問題因子」と「抑制因子」、
|
副資料
|
[9]
12/7 |
問題の分析(3)
空間と時間の特性;
理想解からイメージする |
[副資料] 問題の分析(2) の補足: 機能と属性についての簡単な演習 (宿題)
1. 「属性」の復習 (前回の演習のまとめ)
2. 空間と時間による特性の分析
「空間」の特性の表現、 「時間」の特性の表現、USIT法における空間・時間特性分析の例、
3. 「理想」の認識と技術システムの「理想性」 (TRIZにおける概念)
問題解決の探索における「理想」の認識の役割、「理想性」と「究極の理想解」 (TRIZの認識)、
4. 理想をイメージして問題を解決する具体的な技法 (USITのParticles法)
現状のスケッチと「理想」をイメージしたスケッチ、「Particles」をスケッチに記入する、「Particles」に託したい「行動」、 「Particles」に持ってほしい「性質」を列挙する、
|
副資料 |
[10]
12/14
|
解決策の生成法 (1)
知識ベースの活用 |
1. はじめに
2. 問題解決の基本モデル
3. 問題解決のための種々の「知識ベース」の枠組み (TRIZの全体像)
4. 「技術システムの進化のトレンド」とその利用
5. 技術の逆引き: 目標機能から実現手段を求める
6. TRIZの「40の発明の原理」
7. 「アルトシュラーの矛盾マトリックス」 (矛盾解消マトリクス)
8. TRIZの「76の発明の標準解」 |
|
[11]
12/21 |
解決策の生成法 (2)
「壁」を破る方法
(ブレイクスルー) |
1. はじめに
2. 「矛盾」の克服: TRIZの「分離原理」の考え方
3. アルトシュラーの「賢い小人たちによるモデリング法」(SLP)
4. 「発明的解決策であるための二つの条件」: イスラエルのASIT法
5. USITの解決策生成技法 (その1)
5. 演習: 「授業をよりよくする方法を考えよ」
[副資料] 矛盾を解決するアルトシュラーの方法:適用事例: 「節水型トイレ」
|
副資料
|
[12]
1/11 |
解決策の生成法 (3)
解決策を生成する方法の
体系 (USIT) |
1. (復習) 矛盾を解決するアルトシュラーの方法:適用事例: 「節水型トイレ」
2. USITの解決策生成技法の概要
3. USITの解決策生成法の簡単な適用例
いろいろな解決策のアイデアとUSITの解決策生成法の理解、USITの「解決策一般化法」を用いた連想的思考の例、
4. USITの「解決策一般化法」を用いた連想的思考の例 |
|
[13]
1/18 |
問題解決の
身近な事例 と
USIT 法のまとめ |
(1) 問題解決の全体のプロセスと、解決策の生成法の種々のやり方 (まとめ)
問題解決の全体プロセスと 解決策生成の過程、「解決策の核になるアイデアを見つける方法」の流れ、
(2) 身近な問題での問題解決の事例
1. USIT (統合的構造化発明思考法) の全体像
2. USITの全体構造 (データフロー表現)
3. USIT法全体のフローチャート
4. USITの問題解決のプロセスの 問題定義段階
5. USITの問題分析段階
6. USITの 解決策生成段階
7. USITの問題解決の 6箱モデル
8. USIT法の企業への導入法
[副資料] TRIZ/USITによる身近な問題解決の事例
裁縫で短くなった糸を止める方法、
ホッチキスの針をむしゃげなくする方法
|
副資料
|
[14]
1/25 |
創造的問題解決の方法論
のまとめ (2)
TRIZ
および 全体まとめ |
1. TRIZの概要
TRIZの歴史、TRIZの全体像、TRIZの主要な参考資料
2. TRIZのエッセンス (思想)
3. TRIZの知識ベース
技術発展の方向: 「技術システムの進化のトレンド」、 技術の逆引き: 「目標機能 → 実現手段」の体系と事例、「発明の原理」: 特許の事例から抽出した発明のアイデアのエッセンス40原理、矛盾マトリックス: 問題設定に応じて, 発明の原理を示唆する一覧表、「発明の標準解」: 問題を分類して, 問題解決の方法を示唆する、
4. TRIZの問題解決の方法
9画面法 (「システムオペレータ」) 、原因-結果の分析 と ネットワーク図、 機能の分析: 「物質-場」モデルと「物質-場」分析、技術的矛盾の解決: 矛盾マトリックスの利用、物理的矛盾の解決: 「分離原理」による、賢い小人たちによるモデリング (SLP法)、ARIZ (アリーズ): 「発明問題解決のアルゴリズム」、TRIZ/USITなどの問題解決技法の学び方
5. 創造的問題解決の意義: 技術開発と社会への応用 |
|