TRIZ/USIT論文
問題/課題を捉えるための複数モデルによる考察法:
創造的な問題解決/課題達成の方法の確立と普及のために

中川徹 (大阪学院大学 名誉教授)
第8回 日本TRIZシンポジウム 2012、
2012年 9月 8日、早稲田大学 (東京)

掲載:2012.12. 5    英文掲載:  2012.12. 5

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編集ノート (中川 徹、2012年11月30日)

本稿は9月の第8回日本TRIZシンポジウム2012  で一般オーラル発表として話したものです。スライド (31枚) を和文と英文とで作りましたが、文章化は (TRIZシンポジウムに際しては) していません。

5月14日に発表申込みをしました。別ページの「解題」に説明していますように、本発表の土台になっているのは、研究ノートとして掲載しました、「「若者向けのTRIZ」、「若々しいTRIZ」のために: TRIZ協会 中長期計画のための 検討基礎資料 (B) 文章化資料」です。

本発表では、その資料で得た結果の面よりも、その考察のプロセスについて強調しています (そのプロセスが理解されないと、その結果が納得されないと思われるから)。「若い人たちにTRIZを普及させるには?」というのは、技術問題でなく、非技術領域の漠然とした問題です。そのため、TRIZにとっては得手でない (TRIZの個別ツールは使い難い) 問題です。そのような問題を考えるのに、「複数のモデルによる考察法」を使いました。その方法は問題/課題を捉えるのに大いに有効でした。このような考察法は、狭い意味のTRIZ技法ではありませんが、ものごとを体系的に考察して解決するというTRIZのエッセンスを使っているのです。

考察しました内容の面では、若い人たちにTRIZを普及させるにはどうすればよいかを考え、結論として、TRIZよりももっと上位にある「創造的な問題解決/課題達成の方法」を確立し、普及させることを、大目標とすることを提案しています。この結論に至るまでの一段一段の考察をガイドしてきたのが、本発表での「複数のモデルによる考察法」であり、それは多数のモデル (問題をいろいろな観点から考察し、記述した図) によって記録され、再現・議論ができることを示しています。

本ページには、拡張概要 (1頁)和文スライド を掲載し、英文ページ英文スライドを掲載します。

なお、本稿に関連した一連の資料と学会発表について、その「解題」を別ページにまとめていますので、参照下さい。特に、研究ノートとして掲載した基礎資料 (原図と文章)ETRIA での発表論文、そして、TRIZシンポジウムの後に和文論文としてまとめたもの、などがあります。

 


 拡張概要:

問題/課題を捉えるための複数モデルによる考察法:
創造的な問題解決/課題達成の方法の確立と普及のために

中川 徹  (大阪学院大学 名誉教授)

第8回 日本TRIZシンポジウム 2012、
2012年 9月 8日、早稲田大学 (東京)

概要

創造的な問題解決の技法TRIZが、なぜもっと普及しないのだろう?どうすればよいのだろう?というのが本研究の出発点である。この問題は、技術領域の問題ではなく、もっと「普通の」、人々や組織や社会が関係する問題である。これに取り組むために、本研究では、問題の状況を種々の観点から見た複数の「モデル」を構築する方法を採った。
第一段階では、人の学習のモデル、企業の技法受容モデルを考察し、特に、一人の人が (外部情報や社内活動の中で) TRIZ技法を学習・適用・習得していくモデルを作った。
第二段階では、いろいろなTRIZ推進の母体が総体としてするべき活動のモデルを作り、また国のスケールでTRIZを適用・普及するべき領域のモデルを作った。その結果、われわれが追求するべきこととして、「全体目標(要求課題): 創造的な問題解決/課題達成の方法を確立し、広範に普及させて、国全体のさまざまな領域での問題解決/課題達成に適用する」という表現を得た。
第三段階では、この目標をブレイクダウンして、確立すべき方法の内容面のモデル、および確立と普及のための活動のモデルを得た。
第四段階では、普及を阻む問題のミクロ場面をモデル化することによって、問題の解決策の方向を考察する。
-- このようなモデル化の方法は、まだ試行段階であるが、分かりやすく、多数の人々の合意を得やすいという特長がある。

内容説明

TRIZは、技術領域において、問題が明確に把握され、そのメカニズムが分析できるときに、矛盾を解決した強力な解決策を提案することができる。しかし、そのTRIZの普及が必ずしも順調でない。

TRIZがいままで得手でなかったことは、現実の複雑な状況から問題を取り出す (さらに絞り込む) ことと、非技術の領域でメカニズムが明確でない問題を扱うことである。「TRIZの普及が困難である」という問題は、まさにそのような、非技術領域の複雑な (しかしある意味ではまったく「普通の」) 問題である。

そこで、このTRIZの普及困難の問題に、いままで自分が習得したTRIZの素養を適用して、考察してみようというのが本研究の発端である。

普及の困難についていままでいろいろに議論されているが、より深く考えるには、問題を複数の観点からモデル化する (構造を図示する) ことが必要だと考えた。

第一段階で得たモデルの一つを以下に図示する。ここには一人の人(技術者) が、適切な基本素養をベースにして、TRIZを知り、実地適用を通じて習得していくプロセスを描いている。必要な外部情報と、社内の適用活動とを併記しており、一人の人が習得する (すなわち、その人に普及する) ためにはこれらの環境が必要なのである。

第二段階で多数のモデルを作って考察した結果、上記の概要に示した「全体目標」の記述を得た。ここで特筆すべきは、TRIZという具体的な個別の技法名が消えて、「創造的な問題解決/課題達成の方法」と一般用語で表現していることである。それはいまのTRIZよりももっと包括的なものであることを意味している。また課題達成というのは、現状に問題はなくとも、より高い目標 (すなわち課題) を実現したい場合をいう。

このモデル化の方法はまだまだ試行段階である。TRIZの「システム思考」を活用しているが、使っているのはTRIZだけではない。一つの「創造的な問題解決/課題達成の方法」を模索しているのである。

 


 

   発表スライド (和文)   (31枚)    PDF  (342 KB)

   発表スライド (英文)   (31枚)    PDF  (257 KB)

 

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最終更新日 : 2012.12. 5     連絡先: 中川 徹  nakagawa@ogu.ac.jp