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編集ノート (中川徹、2009年 4月16日)
本件は、昨年9月に日本TRIZ協会主催第4回日本TRIZシンポジウム
において発表されたもので、初日の午後のオーラルセッションで発表されました。これは中学2年生の男の子とその父親による発表という、楽しく、またびっくりさせられた発表でした。
本発表は、「私にとって最もよかった発表」のオーラル発表第一位の表彰を受けたものです。おめでとうございます。この表彰制度
は今回から始められたもので、オーラル発表とポスター発表の両部門で、国内参加者が日本人発表に対して投票した結果によるものです。日本TRIZ協会は、表彰された発表 (各第三位まで) を公式Webページに公開で掲載し、できるだけ広く皆さんに読んでいただけるようにすることにいたしました。
発表スライドを、和文では日本TRIZ協会公式サイトと日本TRIZ協議会公式ページ
とに掲載し、英文では日本TRIZ協議会公式ページ
に掲載しています。論文形式のものはありません。
本ぺージには、この素晴らしい発表についての中川の紹介を掲載し、より多くの読者の皆さんにこの発表を知っていただきたいと思います。紹介文は、中川が英文で2008年10月26日に掲載しました、Personal Report 「第4回TRIZシンポジウム2008の紹介」
から抜粋したものです。このたびそれを和訳し、ここに掲載します。
著者メッセージ (2009. 4.21 追記中川): 二人の著者から今夜メッセージをいただきました。追記します。
中学1年のときの夏休みに取り組んだ自由研究が、こんな形で盛り上がるとは思いもしませんでした。
これは、続編にも取り組まないとだめかなぁ・・・?! どうもありがとうございました。 (宮西 太一郎)反響を頂きびっくりしています。機会をくれた長男と、ご支援を頂いた皆様に感謝します。ありがとうございました。
TRIZやそれを支える創造的思考は、技術的な課題解決手法にとどまらない、「ひとの思想・生き方にも通じる哲学的なパワー」を持っていると思います。 私はTRIZを知ってから、多くの気づきと刺激的な毎日に出会えました。 これからも自らのライフワークとして、仕事で、また日常の生活で、 「枠にとらわれない"活きた"TRIZ活用」を、楽しみつつ続けていきたいです。 (宮西 克也)
本ページの先頭 | スライド PDF |
紹介 (中川) | 第4回TRIZシンポジウム |
TRIZシンポ2008 Personal Report |
英文ページ |
[1] 発表スライド:
[2] 発表の紹介 (中川):
「Personal Report of The Fourth TRIZ Symposium in Japan, 2008」
、
中川 徹 (2008年10月26日) から抜粋、和訳。
和訳: 中川 徹、2009年4月16日。(掲載: 2009. 4.21)
宮西太一郎 (金沢市立兼六中学校2年/長男)、宮西克也 ( /父親) [O-1 #10] は、びっくりするような、また楽しいオーラル発表であった。題名は、「親子で取り組むTRIZ 〜夏休み自由研究: 「アメンボ」へのTRIZ活用〜」。この発表の二人の著者はつぎのスライドに写真がある。筆頭著者は、中学2年生の男の子 (12-13才)、そして第二著者がその父親で、IT企業で働いている技術者である。
この父親がTRIZを知ったのは、本発表の物語が始まるわずか半年前だったという。発表概要の前半 (約2/3) に書かれている物語をまず読んでみよう。
『「なぜアメンボは水面に立っているように浮き、移動できるのか?」を調べ自由研究にしたい』・・取組みのきっかけは、昨夏、当時中学1年だった長男からのこんな相談からだった。
本報告では、父親がTRIZ的な課題解決方法をアドバイスしながら親子で一緒に取り組んだ、長男の『アメンボの自由研究』プロセスを紹介する。
具体的には、水辺での"シーン展開"も用いて、あらゆる水面浮上・水面移動手段を付箋に書き出し"なぜなぜ展開"ツリーを作成。アメンボの評価尺度で"強み弱み分析"し、全容俯瞰のうえで理想解を選定し仮説を立案した。次に真因を調査確認し、アメンボの"プロダクト分析"で原理理解を深めた。最後に"SFR"を活用し、家庭内にありタダで使える材料を洗い出して、原理モデルを試作し、親子で性能を競い合った。また事後にはリバースTRIZも行った。
父親がリードした著者らのアプローチは、非常に体系的であり、かつユニークであった (つぎのスライド参照)。かれらはまず図書館に行ったのではないし、アメンポを虫メガネで観察することもしなかった。かれらが最初にしたのは、できそうなメカニズムを仮説として考えてみることであった。それは、この昆虫の「発明」を推測しようとしたのだともいえる。
この発表のスライドはしっかりと構成されていて内容豊富である。そこで私は、著者らの32枚のスライドから多数 (16枚) を抽出して、あまり説明を加えずに並べて、著者らのロジックを明確にすることにした。彼らが最初にしたのは、可能性のあるメカニズムを多数リストアップして、それらをグループにまとめ、ツリー形式にして示すことであった。そしてそれらの可能性のあるメカニズムを強化するために、連想思考を使い、シーン展開による思考を使っている。
それから、それらのアイデアの強み弱みを検討し、かれら自身の仮説を作り上げるためのアイデアの候補を選択している。そして最終的に、アメンポが水面上に浮かび、水面上で滑ることができるための可能なメカニズムとして、4つのアイデアを選び出した。
この段階になってはじめて著者たちは図書館に行って、アメンポについて知られていることを調査した。彼らが推論して導いた4つの仮説のうちで、3つの仮説が正しいことがこれらの参考図書から確認できた。
彼らはさらに、自宅にある身近な材料を使って、モデルを設計・制作することに進んだ。彼らの模型は、スライドの写真に示しているように、水面上に浮かんだ。
著者たちはその取り組みをまとめ、コメントをしている (つぎの二つのスライドを参照)。
![]()
さて、結論として、著者たちの発表概要の最後の部分 (約1/3) を読み、そして彼らの「まとめと提案」のスライドを読もう。
本取組みを通じて、TRIZの可能性・有効性を親子で体感できた。また本取組みは「身近な謎に興味を抱き科学的な探求を行った」点で、金沢子ども科学財団(佳良賞受賞)など中学校外からも反響を頂くことができた。「理科離れ」「ネット検索」の時代、探求心や自ら考えるチカラを養うツールとして、子供達には小中学校時代から楽しんでTRIZ思考に触れさせたい。
*** [中川所感] 今まで読んできたように、この発表は実に素晴らしいものであった。宮西太一郎君 (12-13才) がこの発表の正真正銘の第一著者であり、この課題を熱心に喜んでやったのである。太一郎君は(学校があったから) TRIZシンポジウムには出席できなかったけれども、この発表の最後の部分でビデオ発表をしてくれた。著者らの家族の人間関係の暖かさと積極性が伝わってきた。もちろんそれがこの発表のベースにある。この発表のスライドの完全版を、和文と英文の両方で、本Webサイトに1、2ヶ月のうちに掲載できるであろう。[注 (中川: 2009. 4.16): この掲載が結局半年以上掛かりました。実に申し訳ないことで、また残念なことです。]
*** [中川所感] この発表のアプローチは、教育方法の観点からも非常に興味深い。もっとも簡単な (だから、深くない) やり方は、本を調べること (あるいは、インターネットで調べること) であろう。良い先生たちはこのやり方を薦めないだろう。おそらく、標準的な良い方法は、アメンボをよく観察することである。最初は小さな流れの水面上で、そしてつぎに卓上の洗面器の水面上で、そして最後にはアメンポをピンセットでつまんで虫メガネで、観察することであろう。この観察のアプローチというのは、自然においてこの昆虫が発明した特定の手段を見つけよう (見て、知ろう) と試みるものである。他方、本発表は、さまざまな方法を自分自身で思いつこうと試みている、あるいは、その昆虫のために沢山の方法を発明しようと試みている。この試みが、子どもの興味を大いに刺激したのである。
*** [中川所感] もう一つ異なる観点から見ると、この発表は「問題解決」をしているのではない。著者は「なぜなぜ展開」(すなわち、根本原因分析) を使っている。しかし、実際に彼らがやっているのは、原因を探そうとしているのではなく、可能性のある手段を探そうとしているのである。だから、そのプロセスは分析ではなくて、アイデア生成である。(この紹介では省略したスライドの中で著者たちは機能分析などを使っているけれども) その基本的なアプローチは、直接的なアイデア生成であり、それをグループ化、連想思考、シーン展開思考、などを用いて活性化している。そのようなアプローチがこの事例の場合に生産的であったように見える。
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最終更新日 : 2009. 4.21 連絡先: 中川 徹 nakagawa@ogu.ac.jp