講義ノート:
レポートの作り方・書き方
−内容の準備、構成、そして文章の心得−

中川 徹  (大阪学院大学 情報学部)、
『大阪学院大学通信』 第41巻第7号 1-27頁 (2010年9月30日発行)

掲載:2010. 10. 10

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編集ノート (中川 徹、2010年10月 3日)

ここに掲載します記事には、二つの前史があります。

まず第一は、私の情報学部での講義「科学情報方法論」の中の1回(90分) で行ってきた「レポートの書き方」の講義です。この講義全体を、本『TRIZホームページ』に「講義ノート: 創造的問題解決の方法論 (全13回) − 大阪学院大学情報学部 2年次「科学情報方法論」講義ノート」として掲載しました(2002年2月〜7月)。その中の一つが「レポートの書き方」 (2002. 2. 4 掲載) です。講義資料をそのままのスタイルで (すなわち、「べた書き」でなく、途中改行、字下げ、箇条書き、空白行などを活用して、分かりやすく表現)、掲載しています。

第二は、いままで知らなかった方から、昨年10月にいただきました、下記のメールです。

「突然のことながら、先生のホームページ「レポートの書き方」を見せて頂き、連絡させて頂きました。
当方は和歌山県看護協会の角谷(かどや)と申します。
当方の研修で「レポートの書き方」に関する講師をお願い致したく、メールを差し上げたような次第です。
当方では「認定看護管理者制度ファーストレベル」という研修会を150時間で開催しております。
研修後、6テーマの課題を提出し、担当講師の審査を受け、評価により委員会で承認(認定)するような仕組みになっております。
ところが、看護界は文章力が乏しく、せっかくの多くの取り組み(課題)の表現が上手くできず、委員・受講生とも毎年頭を痛めております。
そこで、インターネット検索を致しまして、先生にご相談させて頂くことになりました。
先生のホームページにございます「レポートの書き方」のようなご講義をお願いできませんでしょうか?
先生のご都合等によると存じますが、もしお引き受け頂けますようでしたら、2日間(10時間)を予定しております。」

まったく思いがけないことでしたが、これも何かのご縁と思い、2010年7月1〜2日に12時間の研修の講師をさせていただきました。(中川の活動カレンダー参照 )。この際に、研修テキストして、上記のものを第一部とし、そして新しく「実務の文章の書き方 (実際的な指針)」を書いて第二部としました。第一部が、トップダウン (全体から細部へ) に説明し、第二部が、文章を書くための具体的な注意をボトムアップ (細部から全体へ)に説明しています。

これら二つを合わせて、きちんと公表したいと考え、2010年7月15日に今回の原稿を作りました。その際に、「実務の文章」としての、簡潔性と分かりやすさを体現した一枚ものを作って追加したのが、今回の原稿の【資料2】です。全テキスト (A5版) 26頁の内容を、A4で1枚の形に書いた備忘録になっています。

最終的に、当大学の機関誌の一つ、『大阪学院大学通信』 の10月号 (9月30日発行) に掲載していただきました。大学の許可を得て、本ホームページに再掲載いたします。『通信』のPDF版 とともに、ここにHTML版で掲載し、アクセスしやすくしておきます。また、【資料2】「レポートの作り方・書き方」は、PDF 版とともに画像(GIF) にもしておきます。ご活用いただけますと幸いです。

なお、大学1年生のゼミで、ショーン・コヴィー著『7つの習慣 ティーンズ』を学びつつ、そのレポート指導をしました。ゼミの趣旨とやり方学生たちのレポートに対する詳細なコメント例、および学生たちのレポート文集(抜粋) を掲載していますので、参考にしていただけましたら幸いです。

[注:  英訳ページはありません。ただ、本稿に書いたことのほとんどすべては、「日本語」での書き方に限定されるものでなく、「英語で書くレポート」でも同じことだ、と思います。何かの機会に英訳できれば、と思うようになりました。]

本ページの先頭 はじめに 第一部先頭 HTML 第二部先頭 HTML 資料1 資料2 備忘録 本稿 PDF 資料2 備忘録 PDF レポートの書き方(2002年) 英文ページ

 


 

レポートの作り方・書き方
−内容の準備、構成、そして文章の心得−

中川 徹 (大阪学院大学 情報学部)

『大阪学院大学通信』 第41巻第7号 1-27頁 (2010年9月30日発行)

はじめに

レポート (報告) を書くことは、学生にとっても社会人にとっても、非常に大事なことである。実社会において情報を的確にまとめて、それを正しく、速く伝えるために、いろいろな性格と形態のレポートを使う。しかし不幸なことに、教育の場でのレポートは、教科書や文献の単なる要約や感想文の域からなかなか出られない。卒業論文を書くまでには懇切な指導が必要であり、多くの場合に個別指導にならざるを得ない。本稿は、学生にも社会人にも役立つように、レポートの作り方と書き方を記述したものである。

本稿は、明確に分けた二部で構成している。

第一部は、「レポートの作り方・書き方」について、トップダウンに (全体から細部へと) 説明している。すなわち、そのレポートを書く目的を個別に明確にすることから説き起こし、中身を準備する研究や調査のやり方、執筆の準備と執筆活動、レポートの形式と記述すべき項目などを説明している。文章の書き方はその要点を書くだけに留めた。この第一部が、学部での講義の一回分 (90分) である。

第二部は、レポートなどの実務での「文章の書き方」を、ボトムアップに (細部から全体へと) 説明している。ここでは、文学や随想や作文などの「楽しみのための文章」での書き方でなく、なんらかの情報を正しく、速く伝達するための「実務のための文章」の書き方を説明している。文章の書き方の実際的な注意を、単語や語句のレベルから始めて、一つの文のレベル、文と文の繋がりのレベル、そして、数文からなる段落のレベル、さらに多数の段落を節や章に構成して、最後に文書全体にわたるレベルで、説明している。これらのレベルでそれぞれに大事なことがあるが、最も重要なのは「段落」を明確にすることである。それは、行数とか、形式ではなく、内容面での単位 (ひとまとまり) でなければならない。

書くべき内容を準備し、レポート全体の骨組みを作っていく、トップダウンでの構成 (第一部) と、語句を選び、簡潔明快な文にし、まとまった段落に書き上げていく、ボトムアップでの文章力 (第二部) との両方が必要である。この両方を身につけてはじめて、よいレポートを作る (書く) ことができる。この全体像を示すために、A4一枚のシート ([資料2]) にまとめた。このシートは、論文のような形式を採らず、一覧性と簡潔性を重視する企業実務で好まれる情報提示のしかたの一例でもある。

レポートの書き方を習得するには、比較的短い文章で、個別に具体的に文章の添削指導を受けて自ら推敲し (第二部)、その中で全体構成のしかたを学び、また研究や調査そのもののやり方の指導を受けて習得していく (第一部) ことが必要であろう。それは単なるハウツウの学習ではない。学習・研究や仕事そのもののやり方、論理的な思考力、その上での表現力を、身につけていくことである。


第一部

レポートの作り方・書き方

 

要約:

本稿は『レポートの作り方・書き方』について、レポート形式にまとめたものである。学習・調査・実験・研究などの結果を報告し、提言し、発表していくのがレポート (報告) である。レポートを作るためには、そのレポートの目的を明確にし、中身の調査や研究を行い、そしてレポートの構成を考えてから、書き始める。書くべき項目、その構成、形式など、レポートの目的や性格に応じて、適切に書かねばならない。これらのための基本的な心得を、学生にも社会人にも役立つように、トップダウンに記述している。

1. はじめに

本稿は『レポートの作り方・書き方』について、レポートの形式でまとめた講義資料である。レポートを書くために一般的に心得ているべきことを記述した。レポート (報告) にはいろいろな性格のものがある。その最も正式なものが論文である。レポートを書くためには、まずその中身を作ることが、最も大事である。そこで本稿では、レポートの書き方だけでなく、作るためのプロセスをも説明している。さらに、論述のしかた、レポートの形式、文章の書き方の要点などを記す。

はじめに、このレポートを作成した趣旨は以下のとおりである。

(1) レポートを書く (きちんと書ける) ことは重要である。レポートを書くことは、自分の学習・調査・研究などをまとめることである。大学や社会での学習は、広範な分野・素材に渡るから、まとめることが必須である。自分の理解、自分の分析、自分の主張は、自分でまとめるしかない。レポートによって、他者に理解を求め、他者に提案し、協力を得ることができる。実社会で何らかの仕事をしようとすれば、必ず必要になる。また、大学や社会での成績評価は多くがレポートで行われる。学生諸君には特に卒業研究をまとめる卒業論文が重要である。このため、レポートを「きちんと書ける」ことは、学生にも社会人にも必須のことである。

(2) 本稿はもともと、情報学部の「科学情報方法論」という講義の中の1回である。講義では、学習・調査・研究のやり方、特に創造的な問題解決の方法について説明している。その習得には、自分で具体的に演習・実践することが不可欠である。そこで、演習・実践した成果をレポートとして提出させ、成績を評価する。評価したいのは、レポートの書き方よりも、レポートの中身である。その中身の作り方を含めるために、本稿もレポートの「作り方・書き方」と表現したのである。

(3) レポートの書き方を具体的に例示する。そのために、この講義資料自身をレポートの形式で表現した。

(4) さらに、従来不足していた「レポートなど実務のための文書の書き方の教育」を補うことを目的としている。従来の書き方教育は、文学や随想や感想文などを主として想定しており、それは「楽しみのための文章」というべきものである。これに対して、「実務のための文章」というべきものがあり、内容の情報を正確に速く(簡潔に) 伝達することを主目的とする。これらの二つのタイプの文章・文書の書き方の違いが、従来教えられていなかった。本稿は、この点を補い、実務のための文書の書き方を説明している。

なお、「実務のための文書」にもいろいろな目的・性格・形式のものがあり、この『大阪学院大学通信』は学術的報告の標準的な形式をとっている。だから、意を尽くした文章にして、段落内では文章をべた書きし、読者はその文を逐一読んでいくと想定している。しかし、実際の使用の場 (すなわち実務の場) ではもっと柔軟で、簡潔である方がよい。

実際に、本稿の元の講義資料では、講義で説明しやすく、理解しやすいように、非正式な書き方を使っている。すなわち、各段落をべた書きの文章にせず、改行・字下げ・箇条書きを活用している。講義資料の一部を【資料1】として末尾に例示する。

さらに、企業などでの実務のためにはもっともっと簡潔な表現が推奨される。そこで、本稿の趣旨をA4 1枚で表現した例を、【資料2】として巻末に折り込みの形で例示する。それは、結論だけをまとめて、備忘録の形にしたものといえる。

以下には、レポート作成の手順に従って説明する。

 

2. レポートの目的を明確にする

ここでは、レポートの作成に取りかかる前に、一番はじめの段階で明確にしなければならないことをまとめる。これらの事項が課題提出者から与えられる場合と、レポート作成者が自分で判断して決める場合がある。

2.1 文書の「性格」を明確にする

文書にはいろいろな性格のものがある。関連するいくつかを以下に挙げる。

(a) 感想文:自分が思ったこと、考えたこと、感じたことを書く。課題が与えられることもあるが、内容的には自由である。形式も自由でよい。小学校その他の学校での「作文」はこの範疇である。内容の伝達とともに、感受性・表現力などが評価基準の中心になる。

(b) レポート (報告書): 何らかの課題で調査・検討して報告し、検討資料とする。内容の正確性・客観性が要求される。同時に、報告者 (執筆者) の観点の明示が求められる。報告対象は誰かが作ったものでよいが、報告記述は自分で作る。

(c) (学術) 論文: (学術的な) 価値のある内容についての、客観的な記述と、それに基づいた (学術的) 主張の記述。学術的価値とは、新しい事実、新しい概念、新しい技術など、「新規性」を大事な要素とする。客観性と正確さは当然の前提である。

(d) 提案書・企画書: レポートの一種である。調査・分析などをベースにして、新しいものを考え、提案する。提案や企画の内容に重点がある。その提案・企画内容の有効性が最も大きな評価基準である。

これらの文書の性格に応じて、文書の基本的な書き方・形式が異なる。スタンス (書く姿勢)、構成のしかた、項目の重点、文書の形式 (スタイル) などが異なる。

特に、「感想文」(a) は「楽しみのための文章」に属するのに対して、(b)(c)(d) は「実務のための文章」に属する。これらの二種には書き方に本質的な違いがある。(倉島 [2-3] 参照)

不幸なことに、教育の場での多くの「レポート」は性格が曖昧である。大部分は本来、上記(b) レポート(報告書) [一部は (d)] の範疇のはずであるが、実情の多くが(a)感想文になってしまっていると思われる。

例えば、「小論文」がレポートの一つの小さな形態と考えられている。しかし、大学受験などの「小論文」は時間の制約から 1000文字足らずであり、ある程度の「意見」を表現するにしても、「随想」や「感想文」の域を出ない。

また、例えば、大学の授業で教えた範囲内のある課題に関して、「調査・考察してレポートにまとめよ」という場合がある。調査レポートの本来なら、扱っているテーマでいろいろな本や事例を学び、それらを比較考察した上で、自分なりの考えをまとめて記述する。しかし学生は、時間的余裕がないから、教科書だけでまとめる、あるいはインターネットで検索してその結果を要約してくる。本当の調査や、独自の考察になっていない場合が多い。

大学の講義の単位履修のための「レポート」が、上記のどの性格であるかは、各教員の意図により違い、さらに、実際に書く学生の力量で違ってしまう。それでも、成績認定の「レポート」は、「感想文」ではないはずである。

結局、「生徒が書いた、点数を貰うためのレポート」ではなく、「内容そのものに主張を持った、問題提起、調査報告、技術提案、学術論文、企画書などの性格を持った、本式のレポート」を書くこと/書けることが、大事なことである。

なお、本稿ではしっかりした記述のレポートを想定しているから、分量もA4 で5枚〜100枚といった規模であろう。ただ、その考え方や構成のしかたは1〜2枚のレポートであっても、基本的に同じことである。

2.2 文書を書く「目的」を明確にする

つぎに、「何のためにその文書を書くのか」を、改めて明確にするのがよい。

ときには、自分の考えをまとめる、記録することが目的のことがある。誰かに見せるのが目的ではない。この場合には、自分だけに分かればよいから、形式にはあまりこだわらなくてよい。略記でもよい。それでも、後日 (場合によっては何年か先) でも分かるように書くとよい。きちんと書くと、それだけ自分の思考が整理されるからである。

多くの場合は、誰かに提出する、見せる、発表するのが目的で書く。このときは、「誰に対して」提出・見せ・発表するかを、まず明確にするとよい。相手によって予備知識や当事者としての意見が違うから、書くべき内容や範囲が変化する。書くべき表現のやさしさ、スタイルが違う。相手への訴えかたが違う。

さらに、「どんな効果・影響を期待して書くのか」を考えるとよい。つぎのような場合があろう。

また、「何のために書くのか?」を上記のような一般的な意味だけでなく、もっと個別で具体的に考えることが必要であり、それを正しく理解しておかないと、ピントがずれた文書になるだろう。相手 (読者あるいは課題提出者) がこの文書に何を期待しているのかを考える。与えられた課題や文書のときは、相手に聞くか、そうでなければ推測する。自分で立てた課題や文書のときは、自分で考えて判断することが必要である。

2.3 制約条件を明確にする

締め切り: 最も大事な制約条件である。社会では、締め切りをすぎると受け付けて貰えない。後で出しても役に立たない。

時間的状況: 二つの側面がある。第一は必要とする時間であり、内容の広がりと質、自分の力量に依存する。第二は利用可能な時間であり、自分の状況に依存する。自分で時間を作る、他の時間を削る、などする。ともかく時間内にできたもの (提出したもの) しか評価されない。

分量: 指定されることもある (何文字以下、何ぺージ〜何ページなど)。少し超過するくらいに書いてから削ると、良いものができる。水増しすることはたいてい難しく、結果の質が良くない。

その他、内容的、形式的な制約がある場合がある。

2.4 課題の大枠を明確にする

課題 (テーマ、主題ともいう)とは、内容面の大枠あるいは中心であり、それを明確にしなければならない。課題が与えられることもある。例えば、何かを調べる、報告するときには、調べる範囲、調べる目的 (何に使うのか)を明確にする。また、何かを提案する場合には、何の目的で提案するのか、提案が受け入れられるための制約条件があるか、などを明確にする。一方、自分で立てた課題のときには、これらの要素をすべて自分で判断し設定する必要がある。

 

3. 中身を作るための調査・研究などを行う

レポートの課題が与えられてもすぐに書き始められるわけでない。中身がなければ、なにも書けない。

実際の順番はいろいろある。課題が与えられてから、調査・研究・検討する場合もある。また、逆に、調査・研究などができてから (目処が立ってから) 執筆を考える場合もある。しかし、後者の場合でも、調査・研究を開始する前にその目的をはっきりさせておかないと、効率的な調査・研究にならない。

調査・研究などのプロセスはいろいろある。(「科学情報方法論」の講義で説明している。)典型的にはつぎのようなプロセスから成る。

これらの過程を通じて、適切なノート (記録) を作っておくことが大事である。

 

4. 執筆の準備と執筆活動

4.1 執筆の準備と構想メモの作成

基本的な記述内容 (概要) を自分の頭に入れた上で、つぎのような作業を始める。

内容のポイントをメモ書きし、基本構成とアウトラインを考える。このメモは自分のためのメモである。つぎのようなことが要点である。

メモの段階で、明らかにするべきことは、主要な内容(キーワードのレベルで)、観点の明確化、そして、基本的な構成(章立て、アウトライン (目次案)など)である。

4.2 執筆の資料と基礎原稿を作る/揃える

まず、既存の資料 (図、表、文献、自分のノートなど) を揃えて、手元に置く。

 ついで、基本資料となる原稿を作るとよい。例えば、調査の集計の記録、分析結果のグラフや表、そして、図 (説明の図、システムの構成図、設計図など) など。これらの原稿は、後にレポートの一部として挿入・添付することになるだろう。もちろんおもてに出ないこともあるが。

また、文献リストも作っておくとよい。

これらの基礎原稿 (図・表など) を先に作る方が、本文を執筆しやすい。本文の執筆は、これらの基礎原稿の要点を強調し、その間を補っていくように書けばよいからである。この基礎原稿の作成の段階からワープロを使うとよい。少し長い文書のためには、アウトライン (目次案) もワープロで作る。

4.3 本文の執筆を開始する

執筆活動は、できるだけワープロを活用すること。手書き原稿を作らずに、直接ワープロに打っていくのが速くて便利である。もちろん手持ちの環境や習熟度に依存するから、自分で試行してみるとよい。

メモと基礎原稿を中心にして、その他の資料を参考にしつつ、文書 (レポートなど) の最初から書いていくこと。文書 (レポートなど) の構成と順序は、「読んでもらう順序」である。それは、読者に理解してもらう順序と等しい。書く側は、自分の考えをそのような順序・構成に組み上げていく、書き上げていく。書くときに、一度でそのような構成に書けなくてもよい。少し書いては、また前に戻って書き足す、書き直す。

レポートなどには、典型的な記述順序・構成法 (「書式」) がある。論文、報告書、特許など、それぞれに多数の人の長年の経験・試行で定着したものである。これらの「書式」は、読んでもらう順序であり、同時に、書く側の思考をまとめる順序である。問題を説明、分析、解決する順序でもある。だから、通常は、この書式に従って、頭から書いていくとよい。もちろん、前に戻って書き足し、書き替えすることも多い。「書式」の形式は後述する。

注意: 論文などで、「要約」を文書の先頭に置くが、最初に書こうとしてもうまく書けない。これだけは、文書全体を書き上げてから最後に書く (書きなおす) のがよい。

なお、実務においては、常時使う多数の定形の文書があり、(A4 1枚などの)「書式」が作られ、記述するべき項目が詳細に規定されているものも多い。それらに比べると本稿で扱っている「レポート」は、内容的にやや非定形で、記述量もより多い場合であるといえよう。

4.4 書いたものを推敲する

推敲 (すいこう)とは、文章を読み直し、書き直して、良くしていくことである。推敲することは非常に大事であり、文書の質を向上させる。書き上げたものを、一晩 (以上) 置いてから、読み直すとよい。しばらく置いてからやるのは、「頭を冷やす」ためである。思い込みをなくして、客観的になる、冷静になる、間違いを見つけやすい、感情に流れないですむ。推敲するとだんだん、質がよくなっていく。論文などは、5 回とか10回とか真っ赤になるほどに推敲と清書を繰り返す。

 

5. レポートの形式と記述すべき項目

ここには学術的、公的な文書の場合を書いている。企業内などでは、もっと簡潔にして、A4 1枚の表書きで全体のことが分かるように書き、必要ならその後ろに本文を添付する形式を採ることが多い。

5.1 表紙部分 (先頭部分)

一般につぎのような項目がある。形式例は、【資料1】を参照されたい。

(a) 提出先: 提出する所 (機関、会議、投稿先など)および資料の位置づけ (...報告書、...資料、...提案書など)。

(b) 提出日: 提出する年月日 (ただし、原稿の段階では、作成年月日の方がよい)。

(c) 表題:  内容を簡潔に表わす題名 (半行程度の長さ)。副題をつけてもよい。副題は観点などを示し、主題を補足・限定する。

(d) 著者名:  姓名をきちんと書く。誰が著者かは、公的なレポートや論文では非常に大事である。著者の資格がない (自分で書いたものでない、自分で考えたものでない、など)のに著者であるかのように書くと、盗作になる。グループでやったものは、連名にする。記述した人だけでなく、中身を作った人も著者として書く。連名の時は順番も大事なことがある。筆頭著者が最も寄与が大きいとみなされることがある。

(e) 所属: 正式名称を書く。学生の場合は、大学、学部/学科、学籍番号まで。論文では、「研究が行われた場所 (機関) 」を書く。

(f) 連絡先: 脚注に書くのが普通。所属機関住所。最近は、電子メールアドレスを書くことも推奨されている。

5.2 概要 (Abstract)

これだけを読んで (本文を読まなくて)、内容のエッセンスが分かるように書く。抄録誌(各分野で各国・多種の学術雑誌から論文を要約して掲載する雑誌) などは、著者による概要(Abstract)をそのまま載せることも多い。中身で扱っているテーマ、新しく見出した事実、提案する新技術などを簡潔に書く。重要な数値、結論などを明確に書く。イントロダクション (まえがき) は要らない。長さは、5 行〜10行程度 (文字数上限を指定されることあり) 。通常 1段落。日本語の論文でも、この概要だけは英語で書くように指示される場合もある。

5.3 序論 (はじめに、序、Introductionなど)

読者に対して、この文書および文書の課題に対する導入をする。

以上のことを、できるだけ分かりやすく、簡潔に書く。読者対象を想定して、分かりやすさの程度を考える必要がある。また、この序論の記述で、本論を書く方向付けが決まるので、執筆においては苦労することが多い。後から書きなおすことも必要であろう。

5.4 本論

文書の性格と内容に応じて、この中の構成や形式は変わる。全体の構成を理解しやすく、論理的に配置することが重要である。以下に代表的な場合について、構成を例示する。

(a) 調査結果の報告の場合 (実験結果の報告も同様である)

       ・ 調査の目的:問題意識 (序論に書く)
   ┌ ・ 調査の方法:調査対象範囲、調査手段、調査項目など
本│・ 調査の結果:調査で分かった事実、調査の集計結果など
論│・ 調査の分析:分析の方法、分析の結果
   └・ 調査結果の解釈と考察
      ・ 結論:調査結果から明確になった事実、提言など (結論に書く)

(b) 概念・技術の理解のための調査報告の場合

       ・ 調査の目的:問題意識 (序論に書く)
本┌・ 調査の対象
論│・ 調査結果の内容:各事例の要約・説明
   └・ 調査対象の吟味:いままでのものとの比較検討、長所短所などの考察
      ・ 結論:調査結果から明確になった事実、提言など (結論に書く)

(c) 新しい技術・方法などの提案の場合

       ・序論:問題意識(序論に書く)
   ┌ ・従来の技術や方法:広く調査して簡潔にまとめる
本│・従来の技術や方法の問題点と解決すべき課題
論│・新しい技術・方法の提案:基本的な構成法、その根拠や原理
   │・新しい技術や方法の実験結果、実施例
   │・新しい技術や方法の効果:有効性、従来法との比較
   └・考察・検討:新しい技術・方法の適用可能範囲、残っている課題など
      ・結論:提案の骨子と提言(結論に書く)

5.5 結論 (Conclusion、まとめ、おわりに、結語 など)

文書としての主張点の簡潔なまとめ。要するに、何が分かったのか、何を提案するのかを書く。なお、結論と概要は同じように比較的短くまとめた文章であるが、その目的が異なるので、書き方 (書くべき事項) も少し異なる。すなわち、

5.6 参考文献・資料・付録など

参考文献: 必ず明記すること。記述の形式は、本の場合、本の中の一つの論文の場合、雑誌論文の場合、などについて、それぞれの学会や雑誌など規定していることが多い。本稿末尾の参考文献の記述は、その一つの例である。

資料・付録など: 本文には記述しきれない詳細なデータや情報を添付する。ただし、それらの要点を記した図や表で重要なものは、本文に入れる。

 

6. レポートの記述の形式

細部の常識や規定がいろいろある。実例をみること。本稿 (本講義) では省略する。

 

7. 文章の書き方の要点

どんなことを書くのかを明確にしてから文章・文を書く。あらかじめ全体の計画を練って、構成をきちんとすることが大事である。

文章の構成としては、段落単位での内容的なまとまりが大事である。一つの段落に一つのことを書く。通常の文章では(40字/ 行で) 3〜8行程度で 1段落にする。各段落の先頭の文が特に大事である。ここに「主文」をもってくるとよい。「主文」は、段落の全体を代表する文であり、「一つのこと」を述べた文である。主文の後ろに、その説明、詳細事項、理由、展開などを書く。主文が段落の最後に来るのは特別のケースであり、日本人の文章には時々あるが、あまり良くない。段落の先頭の文を拾っていくとほぼ文章全体がわかるのがよい。

文は、簡潔に論理的に書く。レポートでは、 (感想文とは違って) 論理性が一番大事である。言いたいことを先に書いて、説明と詳細は後で書く。文のテンポが大事で、簡潔に歯切れ良く進めていく。

ここで、重要な注意が2点ある。

注意1: 各文が、「事実の記述」か「意見の記述」かを明確に区別すること。

注意2: 各文について、誰が書いた文であるかを明確に区別すること。

なお、文や文章の書き方については、習得すべきことが沢山ある。本稿の第二部「レポートの文章の書き方−実際的な指針」に、語句のレベルから、文、段落、全体構成の各レベルまで、詳しく説明しているので参照されたい。

 

8. おわりに

以上をまとめると、レポートの作り方・書き方の要点は以下のようである。

(a) 書こうとするレポートの性格・目的・ねらい・制約などを明確にして書く。

(b) 課題を明確にして、書くべき中身をきちんと調査・研究・考察する。中身がなければ何も書けない。

(c) 執筆開始にあたって、基本構成のメモを作り、主要な図・表などを作ってから、本文を書き始めるとよい。

(d) レポートの表紙部分、概要、序論、本論、結論、参考文献、資料など、それぞれに書くべき範疇があるので、適切に書き分けることが必要である。

(e) 記述の形式について細部の注意事項がある。

(f) 全体構成とともに、文章そのものの書き方も大事である。一つの段落で一つのことを言い、主文を明確にするとよい。

(g) レポートにおいては、内容の客観性・正確性が最も大事であり、感想文とは異なるが、それでも著者自身の観点と見解の表明が求められる。

 

9. 参考文献

[1] 『レポートの組み立て方』、木下是雄、ちくま学芸文庫、筑摩書房 (1994年)、269頁

[2] 「日本語ライティングの世界」、倉島 保美、URL: http://www2u.biglobe.ne.jp/~kurapy/jwriting.html

[3] 『書く技術・伝える技術』、倉島保美著、あさ出版 (1999年)、182頁

[4] 『理科系の作文技術』、木下是雄、中公新書、中央公論新社 (1981年)、244頁

[5] 『「超」文章法』、野口悠紀雄、中公新書、中央公論新社 (2002年),265頁。

謝辞

このような文を書いているのは、大学院と助手の時代に、故森野米三教授と朽津耕三教授から懇切に論文の添削指導をいただいた賜物である。また、大学から企業に移ったときに、故後藤憲一氏からカルチャショックをいただいた。その他多くの方のご指導を受けたことを思い、ここに深く感謝する。

 

添付資料:

【資料1】 講義資料「レポート(論文)の作り方・書き方」(一部)、中川 徹、大阪学院大学情報学部「科学情報方法論」講義資料(第4回)、2009年10月27日      [==> 末尾に掲載]

[資料2] 「要点: レポートの作り方・書き方」、中川 徹、2010年7月15日   [==> 末尾に掲載]

 

以上

 


第二部

 

レポートのための文章の書き方 -- 実際的な指針

 

要約:

本稿は、レポートのための文章の書き方について、実際的な指針を示す。その指針は、文学や随想・作文などの楽しみのための文章の指針とは異なる。論理的に構成され、簡潔、明快で、分かりやすいことが主たる指針である。語句のレベルから始めて、文のレベル、文の繋がりのレベル、複数の文で構成する段落のレベル、さらにそれらを節や章にし、文書(レポート)全体のレベルについて、注意するべき実際的な指針を示した。特に、段落を明確にして、論旨を組み立てることを重視する。

 

はじめに、「実務のための文章は、楽しみのための文章とは違う」

日本で「よい文章」というと、多くの場合に、文学や随想などから選ばれる。そして、「よい文章」を書くための「作文教育」は、これらを手本・目標にしている。文学や随想というのは、倉島保美[1] がいうところの、「楽しみのための文章」の典型である。読者が「読んで楽しむ」ことを主たる目的とする。興味を引くように、感性・感受性を大事にし、話の展開を面白くする。

しかし、実社会で必要な文書 (文章) は、「中身の情報を伝達する」ことが主目的である。著者が伝えようとすることを、的確に書く必要がある。その判断基準は、「読む者が、正しく・迅速にその情報を取得できること」である。すなわち、その情報が正しく、迅速に読者に伝わるように、書く者が表現しなければならない。

実社会で必要な文書 (すなわち、実務のための文書)の要件を敷衍すると以下のようである。

本稿で扱う「レポート」も、実社会で必要な文書 (文章) の一つである。すなわち、「楽しみとしてレポートを読んでもらう」ことが主目的ではなく、その内容としての情報の伝達こそが大事な目的である。この違いを認識した上で、「実務のための」よい文章の書き方を、学習・習得する必要がある。

本テキストは、この趣旨で、レポートに書く文章の実際的な指針をまとめたものである。ただし、文書としての大局的な事項は、本稿第一部「レポートの作り方・書き方」で記述しており、その習得が必要である。この第二部は、第一部の「7. 文章の書き方の要点」を敷衍して記述しているものである。

本稿の特長は、文章の書き方の実際的な指針を、語句のレベルから始めて、文のレベル、文の繋がりのレベル、複数の文からなる段落のレベル、そしてさらに節や章、文書全体のレベルへと順次スコープを広げて記述していることである。実際に文章の書き方を習得しようとすると、このような細部からの積み上げが最も適切であると考えている。本稿はまだやや粗削りであり、あまり具体例を例示できていない。後日もっと充実させたい。

 

1. 語句のレベルでの実際的な指針

(1a) 文章語を用い、話し言葉、口語表現、俗語、などを避ける。

(1b) 略号、特殊用語、業界用語などは、初出のときに 簡単な説明をつける。

(1c) 標準的で分かりやすい表記法を使う。
         - 漢字とかなの使い分け。例えば、接続詞はひらがなで (および、または、など)
         - カタカナ表記を統一的に。

(1d)「です、ます調」でなく、「である調」を基本にする。文書の中では統一する。どちらを使うべきかは、文書の性格と、相手 (読者) と自分の関係などによる。
客観的に書く場合は「である調」が基本であり、お客さんや上司などに向けて書く場合は「です、ます調」が適している。この調子が崩れやすいのは、文書の性格や想定読者に関して、文書の一部が全体のものと異なっている場合である。

(1e) 重要な語句、特記すべき語句に、太字、「 」、下線などを使うこともある。私自身の文章は、通常よりも「 」の利用が多い。強調のためと、長い語句を括るために使っている。

(1f) 持って回った表現を使わない。
        例: 「〜なのである」-->「〜である」。「〜することができる」-->「〜できる」。
             「〜はいかがなものであろうか?」-->「〜は適切でない」
             「〜でなくもない」(二重否定) -->「〜ことがある」

(1g) わざと曖昧にする表現、主張を不明確にする表現は避ける。
       例: 「〜であると考えられなくもない」 --> 「〜であると考えられる」
            「〜なのではないだろうか?」--> 「〜と考える」、「〜と推測する」

 

2. 文のレベルでの実際的な指針

(2a) 文を句点(、)、読点(。) で適切に区切り、読みやすくする。だらだら長くて、区切られていないのは、よくない。

(2b) 一つ一つの文をできるだけ短くし、簡潔、明瞭にする。

(2c) 一つの文の中に、違う観点の複数のことを盛りこもうとしない。そのような文は、いくつかの文に分離して、接続詞で文と文の関係をつなぐ。

(2d) 文の 主語と 述語 (述部) との対応関係を正しく取る。ねじれを起こさない。

(2e) 修飾語 (形容詞や副詞) を修飾先にできるだけ近い位置に置く。

(2f) 強調の助詞「は」を、一つの文の中に2回 (以上) 使わない。
         悪例:  「助詞「は」は、強調の意味があるから、一つの文には2回(以上)使ってはならない。」

(2g) 一つの文が、事実を述べているのか、著者/他者の考えを述べているのかを区別して書く。
        事実のとき: 「〜である」、「〜ことがあった」
        著者の考えのとき: 「〜であると(著者は)考える」、「〜だと推測する」、「〜するのがよい」
        他者の考えのとき: 「〜であると、〜は書いている」、「〜によれば、・・・」

(2h) 一つの文が、他者からの情報に基づくときには、そのことを明示する。
        例:  「X氏は、その著書〜において、〜を推奨している」、
              「文献Yによると、以下のように報道されている。・・・」

 

3. 複数の文に跨がるレベルでの実際的な指針

(3a) 文は簡潔に、論理的に書き、それらを論理的に、テンポよく展開していく。

(3b) 前の文と次の文、次々の文が、自然な論理の流れに沿って展開されることが望ましい。時間的な流れに沿った記述、論理的な因果関係に沿った記述など。

(3c) 重要なこと、全体的なことを先に述べ、副次的なことや詳細の説明はその後で述べる。

(3d) 複数の項目を書き並べる場合には、同じスタイルにする。箇条書きにするのもよい。

(3e) 論理的な関係、原因-結果の関係、などは、接続詞を用いてその関係を明示する。
         例: 「だから、・・・」、「その結果として、・・・」、「それにもかかわらず、・・・」、
              「なぜなら、・・・」、「考えられる一因は、・・・」など。

(3f) 別の観点での記述、特にいままでと逆の面からの記述は、そのことを明示する。
         例: 「しかしながら、・・・」、「ところが、一方別の情報によると、・・・」、
              「以上のような長所がある反面で、短所としては、・・・」

 

4. 複数の文の構成にかかわるレベルでの実際的な指針: 段落 (パラグラフ) による構成

(4a) 文章が全体として長くなってくると、文 (「。」で区切った単位) の集まりとして、その上のレベルで「段落」ごとにまとめて表現することが大事である。

(4b) 「段落」を形式面からいうと、数行のレベルのひとまとまりの文章であり、(通常) その先頭行の頭を一文字分字下げし、その最後では改行する (また、空行を入れることもある)。

[注意: 先頭行の字下げは、(文学などで通常の) いわゆる「べた書き」での書き方である。実務の文書では、箇条書き、段落や行の単位での字下げなどが多用されるので、この先頭行の字下げという方法が馴染み難い。本稿第二部の主要部では、箇条書きを基本にして、字下げと逆の「ぶら下げ」を使用している。]

(4c) 「段落」は、その内容面が大事であり、「内容的にひとまとまりの文章」であることがその趣旨である。複数の文が集まったひとまとまりが段落であり、段落を単位として全体の文章を構成していく。

(4d) 一つの「段落」では、ひとまとまりの、一つのことを述べる。複数の文から構成されていても、段落全体として「一つのこと」を述べたものにする。

(4e) 各段落の先頭には、段落の「主文」を置くとよい。主文は、段落全体で述べようとしている「一つのこと」を述べたものである。ひとまとまりにしたのだから、それを一文で言えるはずである。[これは、論理的な思考、抽象化する思考を必要とし、やはり学習していく必要がある。]

(4f) 段落内の後続の文は、「主文」の内容をさらに説明、例示、詳細化したものにする。この説明が複数の文になるのはもちろんかまわない。例示が数項目になるのも当然。

(4g) 各段落の先頭に「主文」を置き、段落の内容をまとめて述べるようにしてあれば、読む人はこの「主文」だけを拾い読みしても、全体の概要を理解できるはずである。

(4h) 段落ごとの関係は、必ずしも、逐次的であったり、対等であったりする必要はない。段落の単位で、論理的な関係、階層的な関係を作り、文書全体を構成していく。

 

5.  より大きなまとまりで構成していくレベルでの実際的な指針

(5a) 文章が全体として長くなると、章、節、下位の節などに分けて、階層的に構成していく。それぞれの階層や部分で、前項の「段落」と同様の考え方で、構成していく。

(5b) 段落ごとや複数段落ごとに一つの「小見出し」をつけるとよい。小見出しは、そこで取り上げていることがら、あるいは主張の要点を短く述べたものである。

(5c) 文章の各階層での分割項目数は、多すぎないのがよい。2〜3から、多くて 7±2。分割項目数が多くなるときは、中間にもう一つの階層を考えるとよい。

(5d) これらの階層に応じて、階層化した節番号をつけるとよい。
         例: 1.、 2.2 、 3.3.3 など

(5e) それぞれの階層で見出しをつけ、フォントを大きくしたり、太字を使ったりする。

(5f) 階層の深いもの (すなわち、細部の項目)を、段落単位で字下げすることもある。

[注: 公的文書でこのような字下げをしない場合があり、非常に読みにくい。公的文書には、一つのフォントしかなかった和文タイプライタの時代の慣習が残っているようである。]

 

6. 文書全体のレベルでの実際的な指針

(6a) 結局、文書の「タイトル」が、文書全体で言いたいことをまとめた表現である。だから、このタイトルのつけ方は、随分注意して検討すべきである。

(6b) 一般的に与えられた課題名は、そのままでタイトルとするべきではない。その課題で、自分の文書が何を取り上げ、何を主張しようとしているのかを明示するとよい。
        例えば、「職場の現状と課題」が与えられた課題名であるとき、自分は職場の何を問題として取り上げたのかをタイトルにする。

(6c) 文書全体 (レポート全体) の構成のしかたや書き方などは、本稿の第一部「レポートの作り方・書き方」を参照されたい。

 

参考文献:

[1] 「日本語ライティングの世界」、倉島 保美、 URL: http://www2u.biglobe.ne.jp/
~kurapy/jwriting.html

 

謝辞:

この第二部は、和歌山県看護協会 認定看護管理者制度教育課程ファーストレベル研修 (2010年7月1日〜2日、和歌山市) のためのテキストとして書き下したものをベースにしている。機会を与えていただいた和歌山県看護協会に感謝する。

 


[資料1]     ==> PDF 版

講義資料「レポート(論文)の作り方・書き方」(一部)、中川 徹、大阪学院大学情報学部「科学情報方法論」講義資料(第4回)、2009年10月27日 

「科学情報方法論」講義資料 第4回

レポート (論文) の作り方・書き方

                                                 2009年10月27日
                                                 大阪学院大学 情報学部 中川 徹

要約:
       本稿は『レポートの作り方・書き方』についてレポートの形式にまとめた。
        レポートを書くために一般的に心得ているべきことを記述した。
        レポートを作るためのプロセス、レポートの形式、書き方の注意事項などを
              記述している。

1.  はじめに

  本稿は『レポートの書き方』について、レポートの形式でまとめた講義資料である。

         レポートを書くために一般的に心得ているべきことを記述した。
            レポートを書くためのプロセス、レポートの形式、書き方の注意事項など。

  はじめに、このレポートを作成した趣旨は以下のとおりである。

     (1) レポートを書く (きちんと書ける) ことの重要性:
                レポートを書くことは、自分の学習・調査・研究などをまとめることである。
                      大学での勉学は、広範な分野・素材に渡るから、「まとめる」ことが必須。
                      自分の理解、自分の分析、自分の主張は、自分でまとめるしかない。

                レポートにより、他者に理解を求め、他者に提案し、協力を得ることができる。
                      実社会で何らかの仕事をしようとすれば、必ず必要になる。
                      大学での成績評価は多くがレポートで行われる。特に、卒業研究。

               このため、レポートを「きちんと書ける」ことは、学生・社会人に必須。

     (2) レポートの書き方を具体的に例示する。
               このために、この講義資料自身をレポートの形式で記述した。

【注意】 なお、講義で説明しやすく、理解しやすいように、
                    この講義資料では、つぎの点で非正式な書き方を使った。

          各段落を「べた書き」の文章にせず、
                   改行・字下げ・箇条書きを活用している。

              「べた書き」では、段落内の文章はつぎつぎに続けて書き、
                      ページの右端にぶつかると、行頭(左端) に戻って書く。

          ここでは、2行に跨がる文は、意味の区切りを重視して改行して、
               続きの部分は文の先頭位置から右にずらす。(字下げ)
          文や段落の単位で、字下げを行い、文の階層的な構造を明示する。

    この書き方から、つなぎの言葉を補ってべた書きすれば、一応出来上がる。


[資料2]    ==> PDF版

「要点: レポートの作り方・書き方」、中川 徹、2010年7月15日  

 

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最終更新日 : 2010.10.10    連絡先: 中川 徹  nakagawa@ogu.ac.jp