TRIZフォーラム: 読者の声
読者の声 (2015年 9月〜10月〜11月〜12月)

竹内 睦(新潟県在住)、片平彰裕、倉澤隆平、中川 徹;

遠藤明宏、高原利生、片平彰裕、林 利弘、山内健(新潟大学)、長谷川陽一、中川 徹;

高山直彦、中川 徹、高原利生

責任編集: 中川 徹(大阪学院大学)

「読者の声」ページの索引ページも参照下さい

掲載: 2015. 10.18; 11.27; 12.19

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  編集ノート (中川 徹、2015年10月12日)

読者の皆様から折に触れていただいた感想・ご意見を、まとめて掲載させていただいているページです。

竹内さんは、稲の品種改良の仕事の忙しい合間を縫って、「オモダカ」という水田の雑草について自分がまとめた文章を札寄せした経験を書いてきてくださいました。片平さんの応答が参考になります。

倉澤さんは、私の大学時代のYMCA寮での先輩で、地域医療に献身されてきた方です。「亜鉛欠乏症」が褥瘡 食欲不振 味覚障害など多様な症状の原因になっていることを見出し、その啓蒙に努めておられます。「見える化」に応答してメールをくださいました。

なお、「読者の声」のページの索引ページには、この間のもので別ページに掲載したもの、また海外とのやり取りなどをも一覧表にしておりますので、ご覧下さい。

  編集ノート追記 (中川 徹、2015年11月27日)

上記の9〜10月のページに、その後の読者の皆さんからのメッセージを追加させていただきました。いくつものトピックがありますので、文中の主要キーワードを太字で示しました。

  編集ノート追記 (中川 徹、2015年12月18日) 

さらに12月までのものを追記しました。下流老人の問題について、「アリとキリギリス」の見方から、どのように考えを進めるとよいのか?突き詰めると、「競争と助け合い」の矛盾関係をどう捉えるとよいのか?高山さん、中川、高原さんのメール討論を掲載しました。

 

本ページの先頭 竹内 睦   更新15. 9.17 倉澤隆平 更新15. 9.30

 

「読者の声」索引ページ  英文ページ
高原利生 更新 15.10.18 遠藤明宏 片平 彰裕 更新 15.11.11 林利弘 更新 15.11.16 山内 健 長谷川陽一 高原利生
更新2015.11.27

高山直彦

中川 徹 高原利生    

 


  竹内 睦 さん (新潟県) ==> 中川 徹   2015. 9. 3   「札寄せ]による見える化 

ご無沙汰しております、新潟県の竹内 睦です。9月3日/4日はTRIZシンポジウムで、有意義な集まりになっているものと思っております。

私の方は、本年早生品種の栽培試験がちょうど稲刈りにあたり、その合間を縫ってご挨拶しております。3月に試験設計を組んでから、なんとか飛び入りでも TRIZシンポジウムに参加したいと希望しておりましたところ、平成6年、平成22年に続く高温年が、急に秋雨で涼しくと言うことで振り回されておりま す。

さて、2015年になってから片平彰裕様との共同で「札寄せ道具」の活用記事を連載いただいており、興味深く拝見しています。連載にしていただいてありがとうございます。

ご存じの通り作物栽培技術の研究開発は、生物学や物理学、化学のベースに植物生態学や植物遺伝学、機械工学や環境工学などとの接点を持ちながら進んでおります。 新たな着想については なんといってもUSIT/TRIZを適用し、着想の実験的評価に実験計画法(とタグチメソッド)を使うようにしておりますが、着想に至る文献情報などの整理に使う道具に片平彰裕様と共同の「札寄せ道具」が良いのではないかと試し始めました。

日頃作物学以外に植物生態学や植物遺伝学、環境工学などの文献情報を読むと、「田植え技術」「水田雑草オモダカ」「デンプン合成経路」などのテーマ毎に整理する段階で少々困っておりました。 文献要約のワード文書ファイルやカード型データベースソフトでは、テーマ間を横断することも多い情報が埋もれやすく、文書ファイル毎、カード情報ごとのつながりがわからなくなってしまい、TRIZの問題分析にある9画面(マルチ画面)法のような整理ができなくなることが多 かったのです。 対策としては、ブレインマッピングソフトやアウトラインプロセッサの利用を考えなが らチラシの裏に落書きをする日々でした。

ですが「札寄せ道具」でも同様に、情報の視点(マクロ〜ミクロ)×時制あるいは技術進化ステップ(過去〜未来)の マルチ画面枠を埋めて行けるのではないかと考えて試しております。

「札寄せ道具」に期待しておりますのは、中川先生・片平様の記事事例にありますように 情報がグラフィックなつながりをもって示されるという点です。文献情報などにあったキーワード達 は、吹き出しやカードの形にすると、元の文献情報が何だったか、どのように一連の文献を構成していたのか忘れてしまうので困っていたのです。 それらの連関情報が図に示されれば、元の文献情報に戻る際に楽になるのではないでしょうか。「札寄せ道具」を使った情報整理の助けがありますように、しばらく農作業の空きを使いたいと思っております。

「札寄せ道具」記事の連載、重ねて感謝申し上げます。これからもご指導よろしくお願いいたします。

  片平彰裕さん ==> 竹内 睦 さん CC:  中川 徹   2015. 9. 4

札寄せ用具に興味を持っていただき、有難うございます。

> それらの連関情報が図に示されれば、元の文献情報に戻る際に楽になるのではないでしょうか。

札寄せ図を頼りに、元の文献情報に戻るということであれば、 札にハイパーリンクを挿入することが、役に立つ場合もあります。 札をクリックすれば、リンク先に飛ぶことができます。 ハイパーリンクで指定できるのは、 同じエクセルファイルの中の別シートや、名前を定義した部分の他に、 別ファイル(テキストやワード文書など)、Webページなどです。 札を右クリックすると表示されるメニューの中にハイパーリンクがあります。

また、札寄せ用具2.07版を昨日、第一考舎で公開しました。 曲線を直線やカギ線に変えられるようにしたものです。 お役にたつかどうかわかりませんが、取りあえずご参考まで。

  竹内 睦 さん ==> 中川 徹、片平彰裕さん    2015. 9. 7 

添付したエクセルファイル「オモダカ札寄.xls」は、札寄せ道具2.06の使い方を初めて経験しながら 自分の書いた文を事例にチェックしているものです。    [中川注: このファイルの図は掲載いたしません。]

ファイル内容は、オモダカという水田の雑草について勉強した内容を、小文にまとめたものから札・枠を寄せてみた途中の様子です。意図としては、情報を整理して「雑草の無いイネ栽培方法のアイデア出しにつなげたい」と設定しています。

ファイル名「オモダカ札寄.xls」は、”文コピー”、”セル読み込み”、”段落毎囲い枠”、”寄せ札チェック”の4シートを含んでいます。 これら4シートは、「札寄せ」しながら考える (2)〜 (短い)文章全体を「札寄せ」で図示(見える化)する」: 中川 徹、片平彰裕 (2015. 7.29記事)を読みながら、
@ ある文献(自分の書いた小文)から情報を取り込み、
A その小”文をコピー”して「札寄せ道具」の新規シートに貼り付け
B 一文ごとに札にした後で”段落毎囲い枠”で段落単位に札を整理
C 札の文章を箇条書きにするなどの整理して”寄せ札チェック”しているところ(作業は途中まで)です。

@からCまで、第一考舎サイトで「札寄せ道具」の使い方を見ながら 3時間ほどの作業です。

ざっと見てわかることは、
1) ワードファイルからエクセルファイルへの情報取り込みが楽で、「見える化」への作業が手軽に出来る。
2) 1文1意味、1段落1トピックなどのライティングの基礎が出来ていない部分を自覚できる。
3) 各札(文)の根拠となる文献との対応が、おろそかな部分があると自覚できる。
などでしょうか。

もとの文献が論文達(pdfファイルなど)なら 他のマインドマップソフトなどと併用して画像を貼り込み、問題分析(9画面法、時空間分析、Particles法)をしたり自分用のレビュー記事にまとめたりと言った作業が「見える化」できそうです。問題解決アイデアを練る際に、出したアイデアの体系化も可能でしょう。 ファイルの枠・札のグループ化がきちんとしていないなどは、私のソフトへの馴れが未熟であると言うことです。

片平様:  ハイパーリンク機能を使った文献・画像ファイルとのリンク設定、なるほどとても参考になります。一般的なオフィスソフトの使い方を利用すれば、もっと便利に使えると言うことですね。 私のように頭の中でイメージを作れないものにとっては、情報を手軽に「見える化」してワクワク出来ることは大変ありがたいです。

 


   『TRIZホームページ』更新(2015. 9.17 付け) 

読者の声(2015年5月〜8月)、「札寄せ」しながら考える(4)日本社会の貧困を考える(索引)、同(5)[A]高齢者の貧困化(0)はじめに、(1)下流老人とは

 

 

 

  倉澤 隆平 さん ==> 中川 徹   2015. 9.20 

『見える化』の「札寄せ」ツールでのまとめも凄いが、メール機能の進歩も凄い。

微量元素亜鉛のこと、今年は日本皮膚科学会総会や日本褥瘡学会総会でやっと、殆ど拒否的雰囲気はなく、受け容れられる様になった。 全国を廻っての講演会は今年12月末で、176回になる予定。 学会とは何のために、誰のために存在するのか?不思議なものとつくづく思う。

さりげなく集う会でお会いしましょう。

  中川 徹  ==>   倉澤 隆平 さん    2015. 9.20 

メールありがとうございます。 全国を廻っての講演会が176回とはすばらしいですね。 孤軍奮闘しておられたのが、全国で認められるようになって いままでの「よくわからなかった病気/症状」に明確な 治療と予防の指針を出され、素晴らしいことと思います。

注(中川、2015.10.12):  倉澤隆平 さんは、現在、長野県 東御市立みまき温泉診療所の顧問をしておられる、地域医療に献身されてきた医師です。私より3年ほどの先輩ですが、東大YMCAの寄宿舎で3年ほど一緒に生活させていただきました。

2002年に、地域診療を通じて、亜鉛の欠乏症がさまざまな病気の原因になっていることに気づかれました。長野県佐久地方で多数の検診・症例データを集め、診療・治療実績を積み上げて、亜鉛欠乏症が日本全国で広範囲に見られることを実証してきています。

2006年から、ホームページを立ち上げ、医学界だけでなく、広く一般に、この新しい情報の発信をしてきている。http://www.geocities.jp/ryu_kurasawa/  そのホームページ上では、亜鉛欠乏症を次のように紹介している。

「褥瘡 食欲不振 味覚障害 舌痛等.口腔咽頭症状、 皮膚疾患 かゆみ等皮膚症状、 元気度にも及ぶ 多彩な欠乏症状を呈する。」

なお、最近、理研の研究者により、亜鉛が細胞分裂の際に重要な働きをしていることが解明され、上記のような広範な症状をもたらすことが一部説明できるようになったという。

 


   『TRIZホームページ』更新(2015. 9.30 付け) 

TRIZCON2016 開催計画、ソフト「札寄せツール」の英語版、「札寄せ]しながら考える(7)[A](2) 下流老人の現実、案内:Matrix2010 シートの普及用販促セット、論文「Analogy-Based ideation」(S.S. Arshad)

 

 

     

  高原利生 さん ==> 中川 徹   2015.10.16 

[要請がありました論文集の解題の図を英訳した] 図をお送りします。

前から分からないことがあります。差異解消と両立の二つがあるというときの、「両立」を [英語で] どういえばいいのか和英辞書を見てもよく分かりません。going togetherと書いていますが。

英訳が課題であることは心の中にありますが、後回しになっています。今回は、前には少しはあった英訳が全くありませんでした。申し訳ありません。

  中川 徹 ==> 高原利生 さん   2015.10.16 

図の英訳ありがとうございます。

両立」の件、今回のEditor's Noteでは次のように説明してみました。

Extending his study further, Takahara clarified and described various types and methods of 'Resolving differences' and 'Resolving contradictions'. While developing the theory of 'Resolving differences', he noticed the importance of 'Coexistence/Compatibility' newly in addition to the previously-thought solutions of 'Change'/''Modification', he says. The coexistence of two opposing states, such as 'conflict' and 'harmony', is such a case, which may be understood as a contradictory AND compatible situation between the two states.

 [注: 和文ページでは、この部分は以下のようです。

高原さんは論考をさらに進めて、「差異解消」、「矛盾解決」などのいろいろなケースとその方法を整理・記述していっています。その中で、「差異解消」が、 これまでに意識していた「変化」「変更」(狭義の「差異解消」)だけでなく、「両立」(例えば、対立と調和という二者の両立、あるいはその二者の矛盾状 態)を含むことに気づいています。 ]

いかがでしょうか。

 


   『TRIZホームページ』更新(2015.10.18 付け) 

読者の声(9月〜10月)、「札寄せ」しながら考える(8)[A](3) 下流化のパターン

  遠藤 明宏 さん ==> 中川 徹   2015.10.19 

定期的なメール配信、拝見しております。  

別の経済評論家のコメントで、『高齢者の経済難民化は限られた人々の話であって、 全ての人に及ぶものではない』との記事を読み、安心していたのですが、この問題を もうちょっとしっかり勉強しなくてはと考えさせられました、ありがとうございます。  

特に、『現役世代の方がもっと深刻』、「昔の年収400万円と、いまの年収400万円では、 意味合いが大きく違う」という指摘にはぎくりとさせられ、かつこのまま他人事のように 傍観していてはいけないのだと問題意識を持たされました。

尚、[更新案内メールの] 文末あるいは添付のフローチャート [「見える化」の図] は拡大して見ることができません (何かソフトの問題でしょうか)。

  中川 徹  ==>   遠藤 明宏 さん    2015.10.19 

メールをいただきありがとうございます。
メルマガ(更新案内)につけましたのは、できるだけ軽くしたいと思い、28 KB だけの画像にしました。これにはハイパーリンクはつけていません。 『TRIZホームページ』のトップページから入っていただくことを想定しております。

段々大きなサイズのメールが許容されてきていますから、テキストベースだけでなく、HTMLベースのメルマガにするとよいのかなと、遠藤さんのメールを見て気づきました。 ありがとうございました。

  片平彰裕 さん ==> 中川 徹   2015.11. 3

「札寄せ用具」を3.00版にし、「札」または「枠」の大きさを文字列に合わせるためのボタンを追加しました。 これに合わせて英語版「札寄せ用具」も3.00ex版にしました。

タブレットでは、ペン先とポインタが同じ場所にあるので、マウスに比べてポインタの位置が分りにくい事があります。 このために、札を動かそうとしたときに、意に反して札の大きさが変わってしまうことがあるので、その修正用にも「寸法合わせ」ボタンを使えます。

また、図考室に「札寄せ用具の操作説明書(PDF版)」を追加しました。

  中川 徹  ==>   片平彰裕 さん    2015.11. 4

3.00版の公開、ありがとうございます。今、ダウンロードして、「初めての方に」を使ってみました。大変わかりやすくなったと思います。

今週末にはまた『TRIZホームページ』を更新したいと思っているのですが、高原利生さんの最新の三部作が随分の力作で、それを含んだ高原利生論文集(3)を掲載しようとしており、それで手一杯です。

下流老人の札寄せはその次の回にするつもりです。 とりいそぎ、お礼まで。

 


   『TRIZホームページ』更新(2015.11.11 付け) 

『TRIZ 実践と効用』出版案内、『TRIZホームページ』満17年にあたって(中川 徹)、

  林 利弘  さん ==> 中川 徹   2015.11.16

[『新版矛盾マトリックスMatrix2010』 (Darrell Mann 著) の] 本と付属A2シート(6式)、先ほど到着しました。ありがとうございます。

Matrix2010で追加された「生物学からの解決策」は必然と思いますが、これまで、そのことが提案されてきてこなかったことは技術者世界の視点が狭かったということなのでしょうね。これは大きな進展とおもいます。

また,「無形のものの矛盾」も近年の「ことの時代」「感性の時代」においてTRIZの有効性の範囲を広げるのに重要な視点とおもいます。

上記の意味においてもMatrix2010は着実に正しく進化していることを実感しました。

この意味でも古典的Matrixへの執着から解き放すための活動は重要で、今回のISO規格の中に古典的Matrixが中心的に述べられることは何としても排除すべきと改めて確信しました。

 


   『TRIZホームページ』更新(2015.11.16 付け) 

高原利生論文集(第3集): 『差異解消の理論 (3) 弁証法論理と生き方』 (2013-2015)、 「弁証法論理と生き方」(高原利生)(第一部) 「粒度、矛盾、網羅による弁証法論理」、同(第二部) 「中川徹の6箱方式へのコメント 」、同(第三部) 「弁証法論理の応用展開 」

  山内 健 さん (新潟大学) ==> 中川 徹   2015.11.18

いつもメールをありがとうございます。

17年という長い期間の [『TRIZホームページ』の] 運営を想像するだけでも感銘しております。2001年にビンセント先生 [Prof. Julian Vincent, Univ. of Bath(英国),当時] の元から戻ってきてから何度となく検索して、参考にさせていただいております。

先日、研究相談させていただいた際に紹介いただいた先生の著書一式(『TRIZ 実践と効用』シリーズ)も購入させていただき、勉強させていただいております。

また、先月には大阪大学・小林秀敏先生のおかげで、ビンセント先生を招聘することができ、貴重な機会となりました。 準備期間が短く、中川先生のご都合が合わない日程となり、誠に申し訳ありませんでした。 ビンセント先生からは中川先生のご様子を何度となく訊かれました。前回の研究相談のことをお伝えすると大変に喜んでいらっしゃいました。

中川先生から頂戴したアドバイスを参考にバイオTRIZデータベースを構築中ですので、今後ともご指導のほど、よろしくお願い致します。

  長谷川 陽一 さん ==> 中川 徹   2015.11.18   [高原利生さんにも転送]

おはようございます。長谷川 陽一です。  [「高原利生論文集(第3集)」の論文解題(高原利生)を読んで:]

高原> 設計の方法 と 生きて行く態度 を統一する思想を探して 半世紀経った。

これは すごいですね。
私は、 設計の方法(TPS・TOC, 知財, 会計・金融 を含む)を統一する思想を探して11年弱。
生きていく態度(世界観・価値観の差異に起因するトラブル対策 を含む) に関しては、今まで TOCのクラウドをかじった程度で、私の意識的研究の範囲外でした。

高原 (中川の紹介文)> <『差異 (Difference)』を認識して解消を目指す>ことが人間の活動の根幹にあり、 それが目標設定、問題認識、設計、問題解決など さまざまな段階と活動形式を取る

その通りですね。
<問題解決とは、
・理想/目標 と 現実 の 間の『ギャップ』、 
・正常時 と 異常時 の 間の『違い』 を解消すること>
と 一般には言われているのに、
TRIZ界では この<言い方>をされないのが、 私は 以前から 気になっていましたが、
高原さんが『差異』を持ち出して 「矛盾」を包み込んでくださったおかげで スッキリしました。

要は、 「矛盾」状態があるから、理想/目標 と 現実 の間に 『差異』ができてしまう。 のですよね。
これは 当たり前といえば当たり前なのですが、 TRIZ界は今まで こう丁寧に説明することなく、 いきなり 世の中へ「矛盾」を押しつけがちだったと思います。 (もともと「矛盾」に着目して できた体系なので)

「矛盾」状態があると、理想/目標 と 現実 の間に 『差異』ができてしまう。
→ 理想/目標を達成したい、
すなわち、理想/目標 と 現実 の間の 『差異』を埋めたいから、 「矛盾」状態を把握して、あの手この手で対策を考えるのがいい。
と言っていれば、 もっと多くの人にスンナリと TRIZを普及できていただろう、と思います。

高原(中川の紹介文)>  技術と制度の考え方、人間の生き方、などが一つの枠組みの中で論じられている。 世界観 (価値観)、態度、認識のしかた、などを論じており

社会問題 (ミクロには家庭問題, 職場の人間関係問題。 マクロには格差問題、環境問題、政治問題) の解決には、 世界観・価値観の『差異』解消が とにかく重要ですね。

・「言論の自由」という金科玉条 vs 「偶像崇拝NG」という金科玉条
・「米仏露」 vs 「ISIL」
・「グローバル大企業の株主,経営陣」 vs 「国内中小企業、労働者」
の対立があるのも、 一言で言えば、世界観・価値観の『差異』があることが原因だと思います。

まず『差異』の存在を認めて、根本原因と矛盾関係を探り、理想と目的を一緒に考え、 『差異』によって起きる不都合を解消する。
(相手方を滅ぼしたり教化することだけが 『差異』解消策ではなく、 共存・棲分けをする分離原理 が有力な『差異』対策であるのは明らかですね。)

それが、拡張された弁証法、TRIZが拡張されたCrePS、だと思います。

  高原 利生 さん ==> 長谷川 陽一 さん、中川 徹   2015.11.18  

長谷川陽一 さんには、早速お読みいただき、深いご理解を書いていただきました。

矛盾という言葉をどうするかは、かなり悩みました。
運動といってもいいのですが、これではさらに混乱します。悩んだ末に、従来の意味の拡張として「矛盾」という言葉にしました。今回の「THPJ2012」にその辺の事情を書きました。
論理構築には、新しい言葉を使えば楽なのですが、そうすれば分かりにくさが増えるので、なるべく従来の言葉の意味を含むようにして拡張しています。オブジェクト、粒度などもそうです。

この矛盾は、TRIZの物理的矛盾、技術的矛盾を含みます。この両者は、両立矛盾に属します。TRIZの物理的矛盾、技術的矛盾の定義は、例を示しているだけなので、いくつかの論文できちんと定義しています。TRIZの物理的矛盾、技術的矛盾も、少し拡張したものになっているはずです。

ただ、FIT2013以降、特にそうなのですが、弁証法論理は、半ば自動的に論理が進んでいき、思いもかけない結論が出ます。
それで、ネットでは、用語が難しい、文章が分からない、論理についていけない、結論が常識,良識とかけ離れ過ぎ、という四点で評判が極めて悪いです。

シカフスさんの潜在意識と方法の関係についての講演の訳を古謝さんと一緒にお手伝いさせていただきました。シカフスさんと少し違い、ふつうは意識していない世界観、価値観を意識化することが重要と思っています。

今回、詳細な立派な説明をしていただいた中川先生、早速、お読みいただいて丁寧なコメントをいただいた長谷川さんに感謝申し上げます。

  長谷川 陽一 さん ==>  高原 利生さん、(CC: 中川 徹)   2015.11.19  

おはようございます。 長谷川 陽一です。

「TRIZは 技術の世界の弁証法」 http://patent-japan.sakura.ne.jp/page-66.html [柴 大介]
「TOC思考プロセス(TOCfE)は 弁証法を実務の世界で使えるようにした」 http://melma.com/backnumber_171712_4025334/ [佐々木俊雄] 
http://www.slideshare.net/hisashinakatsuyama/140412-40993239 スライド19の解説 [中津山ひさし]
とまでは言われていますが、まだ 弁証法の認知度は低いですね。 (おっしゃるとおり、多少知っていて その上で嫌いな人もいますね。。)

なんとか 弁証法の良さを 多くの人にわかってもらいたい。 そのためには、
   ・ TRIZが 技術の世界以外でも使える
   ・ TOCfEが 技術の世界でも使える
と示すことが 手近な所では第一歩では?? と 最近 私は考えていました。
と申しますのも、 実は 既に アイディエーション・ジャパン社CTOの長谷川公彦さんが セミナーで公に そうおっしゃっていて、 それに影響を受けたからです。 http://kokucheese.com/event/index/334012/

そんな長谷川公彦さんですが、 <『差異』(にまつわる問題の)解消> という包括概念までは 述べられていません。
高原さんの目から 最新の長谷川公彦さんの考えをご覧になると、 グッと もう一段 弁証法の世界に前進が生まれるのでは?? と 私は感じています。

ぜひ、今後も お考えを色々とお聞かせください!

 


   『TRIZホームページ』更新(2015.11.27 付け) 

 「札寄せ」しながら考える (9) [A] 高齢者の貧困化 (4) 「努力論」「自己責任論」があなたを殺す日 --- 意識と理解の問題 (中川 徹)、高齢者の貧困化の親ページを英文でも掲載、読者の声(11月)

黄葉の下で (ベルリン、ドイツ) (2015.10.26 中川 徹)

「見える化」した図。[A] 高齢者の貧困化 (4) 意識と理解の問題 (中川 徹)

  高山 直彦 さん ==>  中川 徹    2015.12. 1  

いつも『TRIZホームページ』のメール、ありがとうございます。

札寄せによる下流老人のまとめ、わかりやすいですね。

以下の点が良くわかりませんでした。
1. 長方形と角落し四辺形の区別がされているのでしょうか。
2. フローチャートのように分岐で菱形(Yes/Noの判断)も利用したほうが  わかりやすくならないでしょうか。
3. 色使いで記述内容を分けると、モノクロ印刷ではわからなくなってしまいます。 枠線を二重線や破線で表現できるようにするのも併用すると利用しやすく ならないでしょうか。

ここからは「下流老人」の内容に対するコメントです。

1. 私もやや批判的に見ているような面があります。これは、汗を流した者にはそれ相当の対価が得られる。アリとキリギリス的な見方です。これは、確かに厳しすぎる面がありますが、 夜遊びや放蕩の限りを尽くして貧困に落ちた人と、 身内の不幸により借金を 背負って貧困に落ちた人を区別できないことにあります。これを切り分けるのは困難だと思いますので、受給者が白い目で見られる状態と言うのは、ある程度、やむ得ないのではと思います。

2. 下流老人の人口に占める割合は、昔に比べて増えたのでしょうか。この点が、どうしても疑問になります。もし増えたとしたら、今までと何が変わってきたのか?
    ・ 平均寿命が伸び、下流になる前に死んでいた。
     ・ 核家族化が進み、今までなら家族が面倒見てくれていたのが、対応できなくなった。  
このようなことが問題であるなら、こちらの手当てをするのが根本対策なるのではないでしょうか。

  中川 徹  ==>  高山 直彦 さん    2015.12. 5

メールありがとうございました。返信が遅くなってすみません。
札寄せによる下流老人のまとめを、分かりやすいと評価してくださり、 ありがとうございます。

まず表記法の件:

(1) 角落としの四角形は、「枠」で、基本は複数の札をグループ化してその見出しとして使っています。 ただ、そのようにして作った「詳細版の札寄せ図」を要約して、大部分の札を消し、大事な少数の札(四角形)と、見出しの 「枠」とだけにし、関係の矢印を明示しているのが、「要約版」になっています。「要約版」をそれ自体として推敲しなおすとよいのかもしれませんが、とりあえずはそのままで、先の章に進んでいるのが現状です。

(2) 場合分けの菱形など、それを使うとずっと良くなる場合には使って行こうと思います。いまのところ、2方向への (分岐条件を 明示しない)矢印や、テキストの表現で、それなりに分かるものと 思っています。

(3) モノクロ印刷のことは、あまり考慮していませんでした。 一つは濃淡の程度で判別できる場合もありますが、今の私のものは、「比較的淡い色」をつかっていて、ほとんど濃淡の 差がありません。 枠線を変える、矢印の形状を変える、テキスト内にマークをつける 濃淡の差をつける、などの対処を、今後考えます。

内容面で:

(4) 「やや批判的に見ている」というのは、下流老人だけでなく、貧困の問題全体、(あるいは、その前の教育の問題や、ビジネスでの競争なども含めた全体的な問題)での、社会規範からきているものですから、それを完全になくすことはできないと思います。(なくすべきでない、なくすことをしようとしてもできない、なくすように奨励してもなくせることはない、といった意味です。)

ただ、大事なポイントは、「それぞれの個人が失敗したのだ、その個人のせいだ」というだけでよいのか、それで、社会が良くなるのか? ということだと思います。

各人がもっと努力する、(例えば、もっと受験競争がし烈になる、 就職活動がし烈になる、レベルが上がる)と、「すべての人」が失敗しないで済む/貧しくなることはないというように社会システム がなっているか? 

−−それは明らかにNOです。 いくらかの人が、(努力しても) (例えば就職に)失敗してその結果貧しくなることが、避けられない。 そのような人たちの割合が、1%とかではなく、10%−20%になって 来ている。 そのような「社会システム」に現在なっている。(それが今後さらに 悪化する方向にある)。というのが大事な認識だと思います。

そのような中で、「基本的人権」がある。 その中核に「生存権」があり、具体的には「健康で文化的な最低限の生活」がある。 本来は、すべてのひとが「健康で文化的な生活」を望み、それを 実現しようとしているのだけれども、それを必ずしも実現できなかった人に対しても、「最低限」の生活は保障する。 その最低限とは、単に「生活する(生きる)最低限」ではなく、 「健康で文化的な生活」の範囲(の最低限)になければならない、 ということと理解しています。

大事なことは、最低限を保障された人たちが、ふたたびそれ以上の レベルの「健康で文化的な生活」に向上できるように、各個人も努力し、そのような努力をサポートできるような社会システム(いろいろな制度や活動)になっていることだろうと思います。

この、「競争社会における(最低限の)保障」、あるいはもっと突き詰めると、 「競争と相互扶助」、「競争と分かち合い」といった「矛盾」の問題になっているのだと思います。

高原利生さんが考察しておられる、「両立の矛盾」の一つの重要な 事例であろうと思います。 (例えば、対立と調和、自由と規律、愛と自由、などいろいろあります。)

「競争」だけではいけない、「分かち合い」だけでもいけない。 その「中間」といった静的な状態でもいけない。「競争」と「分かち合い」が両方あって、ある緊張関係の中で、ダイナミックに適用され、ダイナミックにかつ正しく理解されて いるような状態(「両立の矛盾」あるいは「矛盾のなかの共存」) が望ましいのであろうと思います。

ともかく、「批判的に見る」のと、「受容的に見る」のとの(ダイナミックな) バランス、すなわち、個別の事例に応じてダイナミックに適切に 適用すること、が大事なことと思います。

(5) 下流老人の割合は、大事な指標と思います。 年代(年齢) 別の、老人の数と、その中での下流老人の割合、上記の経年変化(例えば5年ごと) などがグラフになっているとよいと思いますが、探していません。

割合が増えている理由は、高山さんの指摘のほかに、 経済の停滞で、雇用が不安定になり、現役・若年層の生活に余裕がなくなり、高齢者を支援できなくなった (非正規雇用の増加の方向に政治・経済が誘導されたから) などもあると思います。

対策、解決の方向など、この本の残りの章にいろいろ考察して おり、いまその札寄せによる「見える化」を急ごうと思っています。
本件、いままで関心を持っていただいていた数名の方にも CCさせていただきます。

  高原 利生 さん ==>  中川 徹、高山 直彦 さん、他   2015.12. 7

お送りいただきありがとうございます。

A.内容についてのコメントをまず述べさせてください。

「問題解決」に三つの粒度、階層があると思います。
第一の粒度、階層: 今の制度の完全な履行の粒度での解。
第二の粒度、階層: 資本主義内での制度改良を行う粒度での解。
第三の粒度、階層: ポスト資本主義を作る解。

「それぞれの個人が失敗したのだ、その個人のせいだ」の対策の問題を含む藤田さんの本は、(読んでいませんが、引いておられるのを見ると)第一、第二の粒度の対策だと思います。それらは正しいと思います。これはこれで、多数の意見を変えることと予算措置も必要で大変な課題です。

第三の粒度、階層: ポスト資本主義を作る解は、根本的でまったく別の問題かもしれません。今、ポスト資本主義を作ろうとか検討している政治勢力にはおらず、いわば「未来論」として述べる人がいるだけです。 たとえば、2014年11月21日Huffpost Japan に「ポスト資本主義社会を考えてみた:『価値主義』と『情報経済』」という記事が載っているのをネットで見ました。 ぼつぼつ検討は必要と思っています。

B.次は中川先生が触れられた両立矛盾について、「粒度、矛盾、網羅による弁証法論理ノート」(高原利生ノート 2015-1) について補足しておきます。

まず、矛盾のいくつかある分類から抜粋を少し。

・矛盾の内部構造の型 (種類) 、機能上の分類

矛盾の二項は、機能(属性)上、片方がなるべき姿、もう片方が今の姿を表わすか、同時両立を表わすかである。 前者は普通の意味の「変更」で(狭義の)T) 差異解消矛盾である。後者 両立矛盾が従来の矛盾を含む。

・矛盾の解の実現形態の分類 :  矛盾の解に五つの実現形態の型がある。

1.  両立矛盾の解が両立の実現形態を示すことがある。 二項の同時成立が 両立矛盾の解である。
2.  差異解消矛盾の解が片項または両項の量的変化を起こす場合、さらにそれが量質転化を起こす場合。
3.  両立矛盾の解が、質的変化を起こす場合。 これに、次の三つの場合とその組み合わせがある。
     31.  両立矛盾の解が、片項の質的変化を起こす場合がある。
     32.  両立矛盾の解が、両項の質的構造変化を起こす場合。両項の弁証法的否定による向上をもたらすのはこの場合である。 (ここまでは、従来の弁証法論理の整理です)

     33. 両立矛盾の解が、質的構造変化を生起しないまま、両項の向上をもたらす場合がある。一体型矛盾の場合である。
           一般の両立矛盾と一体型矛盾の違いは、前者が、両項両立の運動形態を作りその特殊なケースとして高度に否定し統合するのに対し、後者は、両項がそのままお互いが入れ子になり否定せず高度になって行くという違いである。(粒度、矛盾、網羅による弁証法論理ノート(高原利生ノート 2015-1) から抜粋)

マルクスが矛盾そのものについて述べている個所は少ないと思うのですが、そのうちの一つが資本論第一巻にあります、

「諸商品の交換過程は,矛盾したたがいに排除しあう諸関係をふくんでいる。商品の発展は,これの矛盾を解消しはしないが,これらの矛盾の運動を可能にするような形態をつくりだす。これは,一般に現実の矛盾が解決される方法である。たとえば,一物体が絶えず他の一物体に落下しながら,また同時に絶えずそれからとびさるということは,一つの矛盾である。楕円は,この矛盾が実現されるとともに解決される諸運動形態の一つである。」(資本論第一巻、国民文庫版、第一分冊、交換過程p.182,183)

マルクスが「矛盾の運動を可能にするような形態をつくりだす」と言っているのは、二項「絶えず他の一物体に落下する」運動と、「同時に絶えずそれからとびさる」運動の両立です。二項が、存在の属性でなく、運動である例ですね。

TRIZの「物理的矛盾」、「技術的矛盾」もどちらも両立矛盾です。両者の違いは、値の両立と、「属性」(を「属性または運動」と言い換えないといけませんね。気が付きませんでした。)の両立の違いです。
二属性の両立矛盾を「技術的矛盾」としてきた定義の「二属性」の両立を「二属性または二運動」の両立に、将来直す必要があります。

一体型矛盾については、あまり明らかになっていません。二項がお互いに入れ子になっていることが、両立矛盾が一体型矛盾になるために必要十分であるような気がします。

一般の両立矛盾は、解くとそれで終わりなのに対して、二項が入れ子になった一体型矛盾は、終わりがなく永続する矛盾です。
それと、一体型矛盾というのは人が作る矛盾なので、入れ子にする意識が必要だということです。全員がそういう意識になることは、おそらく至難の業ですね。 入れ子は、一般的に矛盾の解を求めるのにも重要で、三部作の第二編「六箱方式へのコメント」 の後ろのほうで、入れ子について少し述べています。根本的発明原理の一つにも挙げています。もちろんTRIZの40の発明原理にも入っています。

C.さて両方合わせた考察です。

中川先生が高原のノートから取り上げていただいたのは、両立矛盾の最後に出てきた特別な両立矛盾である一体型矛盾です。 中川先生の「競争と相互扶助」、「競争と分かち合い」という矛盾は一体型矛盾であると思います。

一般的な仮説ですが、おおざっぱな言い方で、問題の時間空間粒度が大きくなるにつれ、問題の矛盾(高原のノートの「事実の矛盾」か「解の矛盾」?)は、 差異解消矛盾 → 一般的な両立矛盾 → 特別な両立矛盾である一体型矛盾 を解くことが必要になるように進んでいくのではないかと思います。
検討が必要な仮説です。

 

本ページの先頭 竹内 睦   更新15. 9.17 倉澤隆平 更新15. 9.30

 

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最終更新日 : 2015. 12.19    連絡先: 中川 徹  nakagawa@ogu.ac.jp