TRIZフォーラム
 
翻訳のノウハウ:
   詳細資料: 翻訳推敲例 (その3)
  中川  徹 (大阪学院大学)  2004年6月21日
     [掲載: 2004. 6.30]
For going back to the English page, press: 

本ページは MannのTRIZ教科書『Hands-On Systematic Innovation』を翻訳出版したプロジェクトにおける、翻訳のノウハウの詳細資料をまとめたものです。より全体的なことはつぎの親ページを参照下さ い。

    
Mann のTRIZ教科書『TRIZ  実践と効用 (1) 体系的技術革新』 の出版案内と資料    [2004. 6.30掲載]
     翻 訳とデスクトップパブリッシングのノウハウ  (中川 徹)   [2004. 6.30掲載]


   このページには実際の翻訳推敲例とその説明を具体的に記述しています。順序は実際の試訳と推敲を行った順番であるため、章の順番はばらばらです。段落ごと につぎの5種のテキストを組にしており, それぞれフォントの色を替えて区別しています。


    (a)  原文    (黒字):   Darrell Mann の原文の英文。 
    (b)  初期試訳 (黒字):   知識創造研究グループの担当メンバ   (2002年11月〜2003年 2月)

              試訳者の補足 (灰青色字)
    (c)  推敲訳 (青字):   中川  徹   (2002年11月〜2003年2月)
    (d)  推敲意図の説明 (緑字):   中川  徹  (2002年11月〜2003年2月)。 上記(b)を(c) に推敲した意図の説明。
    (e)  最終稿 (茶色字):  中川  徹  (2004年4月〜5月)  




1.

Introduction

第1章

序論

第 1章

は じめに

TRIZの概要:ツールキット?手法?思想?


“People will agree with you only if they already agree with you, you do not change peoples’ minds.”*1  

Frank Zappa*2  *3  

人の同意が得られる場合は、すでにあなたに同意している場合のみである。

              人の心を変えることは出来ない。

           フランク ザッパ*2  (米国のロックミュージシャン)3  

人々の同意が得られるのは、彼らがその前からあなたと同意見 であった場合だけだ。

あなたが彼らの心を変えたの ではない。*1  

Frank Zappa*2   [米国のロックミュージシャン]*3

 

Or

若しくは*4  

または*4  

 

“For every complex problem there are solutions that are simple, easy and wrong.”**5  

H.L.Mencken

複雑な問題の解決策はどれも、単純か、どちらでもよい か、間違っているかである。*5  

H.L.メンケン (米国のジャーナリスト・批評家)
複 雑な問題に対してぱ、いつも、単純で、容易で、間違った解決策がいろいろある。*5  

H.L.Mencken [米国のジャーナリスト・批評家]

[推敲意図の説明]

*1  原文の時制は, 「未来 only if 現在, 現在」という形式です。しかし, その語順を変えないで (すなわち, only if の節を後で言う形で) 訳そうとすると, なかなか日本語になりません。そこで, この推敲訳では, 時制をシフトして, 「現在完了 only if 過去, 現在完了」の形で訳しました。日本語としてはそれで正しい 訳になっていると思います。三つの時制の一部だけをシフトすると, 意味関係が正しくなりません。

2  人名について, カタカナにするのは, 一般人に常識としてよく知られている人だけにし, その他の人々 (特に文献などを調べる必要がある人たち) は原語のままとします。(「推敲例(その2)17章の説明を参照ください。)

*3  この人の説明を加えているのは適切です。このような訳注は すべて [ ] で括ることに統一した いと思います。( ) は原文での注釈/補足あるいは, 原文で言っていることを訳すときに分かりやすさのために注 釈/補足の形式にしたものとします。なお, 小さな訳注の場合は [ ] を使うだけとし, 長い訳注の場合は, [訳注: ... ]の形式にして下さい。

*4 「若しくは」(「もしくは」) は文語的です。口語の「あるいは」または「または」を使う ようにして下さい。また, このような接続詞では漢字を使わず, ひらがなにするのを原則にします。

*5  原文は一見簡単で, それでいて意味が深いので, さらっと読むと真意が分かりにくい文です。原文の意図をで きるだけ忠実に訳したいと思います。直訳すると, 「すべての(一つ一つの) 複雑な問題に対して、単純で、容易で、かつ間違った解決策 が複数ある。」ということです。この関係を少し分かりやすくして, 話し言葉的にしたのが推敲例 の訳です。元の訳で, easy」を 「どちらでもよい」と訳しているのは, easyの非常に特殊な意味になっていて適切でないと思い ます。文の真意を図りかねて持って回った形になり, 意味がはずれていったようです。「容易で」 のかわりに「安易で」と訳すことも考えましたが,特定のニュアンスを強く出し過ぎるので採用しませんでした。


人々の同意 が得られるのは、彼らがその前からあなたと同意見であった場合だけだ。

あなたが彼らの心を変えたのではない。

Frank Zappa [米国のロックミュージシャン]

 または

複雑な問題に対しては、いつも、単純で、容易で、間違った解決策がいろいろある。

H.L. Mencken [米国のジャーナリスト・批評家]

 

In putting together the specification for this book, we set ourselves some interesting challenges.*6   We wanted a book that focused on benefits*7   (i.e. that it enabled the reader to successfully tackle any problem or opportunity situation they were working on)*8  , rather than being just another collection of features.*9  Given the possible number and type of different things that different readers might be expecting to tackle*10  , this seemed like no small ambition. If that wasn’t enough,*11   we also decided we wanted a book that would be useful to both experienced TRIZ users and complete novices; we wanted a book that could be read from start to finish, or could use as a quick-dip reference;*12   and we wanted it to be both academically rigorous and at the same time not the stultifyingly dull experience most academic books tend to be. In other words, we identified a number of contradictory requirements and decided we wanted to avoid compromising on any of them. How successful we have been remains to be seen.*13  

この本の仕様についてまとめる時 に、我々はいくらか興味深い挑戦に身をおいていた。*6  我々は単に機能の寄せ集めに過ぎない本よりは*9  、効用に焦点を合わせた本*7  (つまり、読者が取り組んでいるどんな問題や機会の状況にも取り組み成功するような)*8  が望みであった。

個々の読者が取り組むことを期待 している、異なった事柄の数とタイプの可能性を考え合わせると、*10  これは小さいどころのない野心のように思えた。それが充分ではなかったとして も、*11  我々は経験豊かなTRIZユーザにも、完全な初心者の双方にも役に立つ本が望みであったのである。つまり、終始一 貫して読み通せる本、参考としての拾い読みが出来、*12  学術的に厳密でありながら、これら学術書が陥りやすい、無益な退屈な経験でもない本で あった。言い換えると、我々は多くの矛盾する要求を確認し、それらの何れをも妥協することを避けたいと決めた。それでは残り物を如何にして成功 に見えるように出来るであろうか*13

本書 に対する仕様をまとめたとき、われわれはいくつかの興味深い挑戦を自分たちに課した。*6  われわれは効用に焦点を合わせた本を作りたいと考えた。*7  (つまり、読者が関わっているどんな問題や機会の状況をも、 読者がうまく取り組むことができるようにする本である。)*8  機能を寄せ集めただけのもう一冊の本にはしたくなかった。*9  さまざまの読者が取り組みたいと思っているだろうさまざまの 事柄の数とタイプの可能性を考え合わせると*10  、これは決して小さくない野心のように思えた。その上に*11  われわれは、経験豊かなTRIZユーザたちにも、また、完全な初心者たちにも役に立つ本を作 ろうと決めた。始めから終わりまで読むことができると同時に、拾い読みの参考文献としても使える本を作りたかった。*12  学術的に厳密でありながら、これら学術書が陥りやすい、無味 乾燥で退屈な経験でもない本にしたいと思った。いいかえると、われわれは多くの矛盾する要求を確認し、それらのどれについても妥協することを避けたいと決 めた。われわれがどこまで成功したかは、読者に見ていただきたい。*13  

[推敲意図の説明]

*6  ...する時」はひらがなで「...するとき」にする。「我々」も「われわれ」に直す。「some」の訳し方に注意下さい。「いくらかの」(程度) と訳すべきときもありますが, ここでは後ろの名詞が複数形ですから「いくつかの」()と訳すのが良いと思います。「set ourselves challenges」は, set ourselves in the challenges でなく, もっと単純に, set us challenges」の意味です。

*7  「語順を維持する」という原則で, まずここまでの短い部分を明確に訳すようにしました (その結果, 文をここで区切った。) そうすることで, 著者の意図を明確な宣言にしています。

*8  簡単な文だけれども訳しにくい文です。「working on」と「tackle」との違いをはっきり訳しわける必要があります。「working on」はそれについて仕事をしていることには間違いないのです が, 「担当している」, 「関わっている」レベルであり, tackle」が「正面から取り組む」, 「格闘する」レベルです。「successfully」も訳しにくい言葉です。「成功裏に」,「やった結果成功して」, あるいはもっと平易に「うまく」といった意味です。「enable ... to 〜」は「だれだれに〜できるようにさせる」の意味ですが, 日本語にするとごてごてして, 訳しにくいものです。

*9  この部分は原文の最後にありますので, 訳文でも最後に置くことにします。また, この前で文を区切りましたから, この最後の文に (前の文の) 動詞を補っておく必要があります。「just another collection」の「another (もう一つの) を生かした訳を試みたのが推敲例の訳文です。

*10  different」は通常「異なる」と訳しますが, 後ろに複数形の名詞を修飾しているときには, 「異なるものが複数ある」ので「さまざまの」と訳すとぴっ たりすることが多いのです。

*11  If that wasn't enough, 」の真意がなかなか分かりにくい。中川は If that wasn't enough as our challenge, 」の意 味であると考えました。前記の要求でも大変なのですが, 「それではchallengeというには不足しているというなら」ということです。そこ で, ここの訳ではあっさりと, 「その上に、」と訳しました。

*12  このあたり, 原文はセミコロン「;」で文を区切っています。ピリオドよりも区切りは弱いので すが, 訳文では「。」で区切るのがよい と思います。矛盾する要求をペアにして記述しているので, そのペアをできるだけ明確にしておくことが大事です。

*13  この文は, How successfull we have been」が主語で, remains to be seen」が述部です。「remains to be seen」というのは, 「見て貰って, 判断してもらうことは, これからするべきこととして残っている」という意味です。 だれが見るのかといえば, 著者ではなく, 客観的な判断ができる人という意味で, 読者ということになります。そこで, 中川の訳では 「読者に見ていただきたい。」としました。これで, きちんとおさまります。

本書に対する仕様をまとめるとき、いくつ かの興味深い挑戦を自分たちに課した。役立つことに的を絞った本を作りたいと考えた。どんな問題や機会 の状況にも、読者がうまく取り組めるようにする本である。TRIZのいろいろな特徴を寄せ集めただけのもう一冊の本にはしたくなかった。さまざ まな読者が取り組もうとしている事柄の多様性と膨大さを考えると、それはずいぶん難しい挑戦のように思えた。経験豊かなTRIZユーザにも、全くの初心者 にも役立つ本を作ろうと決めた。初めから終わりまで通して読むことができると同時に、拾い読みの参考文献としても使える本を作りたかった。学術的に厳密で ありながら、無味乾燥で退屈なものに陥らないようにしたいと思った。要するに、われわれは多くの矛盾する要求を確認し、それらのどれについても妥協するこ とを避けたいと決めた。それがどこまで成功したかは、読者の判断に委ねたい。


In keeping with all of the above aims
*14 , the book has been structured and sequenced in such a way*15  that anyone working on a problem (in the most general terms that word implies) could begin at the beginning of the book and be taken on a journey*16   through only those chapters necessary to solve the problem.

この本は上記目標をすべて外さな いよう留意し*14  、問題(この言葉の持つ最も一般的な意味に於ける)に取り組んでいる人がだれでもこの本 を初めから読み始め、その問題を解くのに必要な章のみ参照する*16  ことが出来るよう構成し、配列した。*15  

上記 のねらいのすべてに適するように*14  、本書の構成と順序をつぎのようにした。*15  すなわち, 問題 (この言葉の最も一般的な意味で)に取り組んでいる人がだれで も、この本を初めから読み始め、その後は、その問題を解くのに必要な章にだけ導いていかれる*16  ようにした。

[推敲意図の説明]

*14  in keeping with (something)」は熟語で: suitable (for something)」という意味だそうです。 (Longman英々辞典による)

*15  後ろが長くなるので、ここで一旦区切りました。

*16  ここでは, 本が (必要な章への) 「旅に連れていく」という言い方をしていますので, 読者が勝手に拾い読みをして良いというよりも, 本が「導く」というよう訳すのがよいと思います。

 

The main method of achieving this feat of navigation*17   is the small figure appearing at the top right hand corner of each page of the book. A larger version of that figure is shown in Figure 1.1 below.

Figure 1.1 Hands-On Systematic Innovation*18   Navigation Aid*19 

ナビゲーションの一助にと*17  、本著の各ページの右上隅に、小さい図形を示している。その拡大図をFigure.1.1に示す。

Figure 1.1  実用向け 体系的イノベーション*18   ナビゲーション エイド*19 

この誘導を行う方法として*17  、本書の各ページの右上隅に小さい図を示している。その拡大 図を1.1に示す。

1.1 『体系的技術革新の手引き』*18  の案内図*19  

[推敲意図の説明]

*17  feat」とは, (辞典によると)「努力やスキルを要する行為」なのだそうですが,achieving this feat of navigation」をきちん と訳すと仰々しくなるので, あっさり, 「誘導を行う」としています。 main method」も, 小さな図のことにしては仰々しいので, 単に「方法」と訳しました。あっさりざせているけれども, 本筋は外していないつもりです。

*18  ここの「Hands-On Systematic Innovation」は, もちろん本書の書名です。この書名をどうするかは大きな問 題です。(日本における営業的なセンスからの書名の付け替えの可能性 はなくもないですが, 今の段階では, ともかく原書に忠実にしておきたいと思っています。)

そ れで, まず「Systematic Innovation」は, カタカナの「システマチックイノベーション」ではなく, 日本語として, 「体系的技術革新」とするのがよいと思っています。「Innovation」は「革新」であって「技術革新」だけではないという意見 もあるかと思います。しかし, Mann, Prefaceでも書いているよ うに, 本書を技術分野に絞って書き, もう一冊を (今年の2月頃?) Business and management」の分野に絞って出版する予定だといいます。そこで, 本書はやはり「技術革新」の語を使うのがよいと考えていま す。

つ ぎに, Hands-On」ですが, Longman辞典によると, 形容詞で, providing or being practical experience of something, esp. of using computers, rather than just information about it.」と説明しています。考え られる訳語は, 「手引き」「手ほどき」「実践」「演習」などです。「実 用」は近いけれどもちょっと違う感じがします。「マニュアル」はカタカナ語であり, 適当でないと思います。

結 局, 本書の書名としては, 『体系的技術革新の手引き』がよいのでないか, (代案は『実践 体系的技術革新』といったところか)と思っています。ご意見/ご提案がありましたら, 寄せて下さい。

*19  navigation aid」も、やはりカタカナ表記でなく, きちんとした日本語にしておきたいと思います。

そ のガイダンスのために、本書の見開きの右上隅に、図1.1を小さくしたものを示している。 

1.1 『実践 体系的技術革新』の案内図

Three of the four steps contained in the box at the center of the figure are like any generic problem definition and solving process*20  ; it being necessary to define what the problem is, to generate some solutions and to then evaluate those solutions. We add in a fourth step – ‘select tool’ *21  because of the richness and breadth of the problem solving tools available to us through TRIZ and the other things we have found it necessary to include.  We examine this four step process in more detail in the next chapter, and follow this *22  by a chapter on each of the elements of each box in turn. As you will see*23  , some of the boxes – most notably the problem definition and generate solutions boxes, contain a host of other boxes.*24 


図の中心部にある箱に含まれてい る
4ステップ中の3つ はやや一般的な問題定義と解決プロセスと似ている*20  。つまり問題が何かを定義すること、ある解を生成すること、これらの解を評価することの 為に必要な3つである。我々はこれに4つ 目のステップ– ‘ツール選択*21   付け加えた。これは我々が得られる問題解決ツールは、TRIZはもとよりその他含めたい手法を加えると、豊富であり幅広いためである。我々はこの4つのステップを次章に於いてもっと詳細に考察吟味してみよう。そして順番に各々のボック スの各々の要素に対して一章を設けフォローしたい*22  。お分かりのように*23  ボックスのあるもの、特に問題定義ボックスと問題解決ボックスは他のボックスに対し主人 役に*24  相当するものである。

図の 中心部の箱に含まれている4ステップ中の3つは、一般化した問題定義・解決プロセスのどれとも似ている*20  。問題が何かを定義し、いくつかの解決策を生成し、それらの 解決策を評価するのは当然必要なことである。われわれはこれに第4のステップ、すなわち「ツールを選択する」*21  、を付け加えた。なぜなら, TRIZおよび含める必要があると判断したその他の諸方法によって, われわれに利用可能な問題解決のツール群は非常に豊富で幅広 いからである。この4ステップのプロセスをより詳しく次章で検討しよう。そして、 このプロセスに従い*22  、各ボックスの要素ごとに1章を設けて順番に検討しよう。すぐに分かるように*23  、いくつかのボックス、特に問題定義ボックスと解決策生成 ボックスは、多数の*24  他のボックスを包含している。

[推敲意図の説明]

*20  are like any generic ... process」の部分が訳しに くいところです。ここの意味は, 「問題定義と解決策生成のいろいろな手法について, それを抽象的な3ステップのプロセスで表現したとしたら, どれだってここの 3ステップと似たものになる」ということです。中川の訳がこ のことを適切に表現しているかはちょっと心もとないですが。「generic」は 「総称的」と訳しますが, 言葉や概念を抽象化/一般化したもののことです。「general」と似ていますが, 「普通にある」といったニュアンスは含みません。

*21  このプロセスの4ステップの名称を, 原文は動詞で表現しています。「(問題を) 定義する」,「ツールを選択する」「解決策を生成する」「(解決策を)評価する」です。そこで, 正式名称としてはこれらの動詞形を使うようにしたいと思い ます。'select tool' のように '  ' で括ってい ますから, 訳でも「... 」と括弧で括って表現するよいでしょう。

*22  follow this」の「this , four step process を指している。このfour stepで問題解決の(簡略な) 全体プロセスになっている。

*23  as you will see, 」と未来形になっているのは, 本書の後ろの方を読めば (少し後になって) 分かることだからである。「as you see」や as you might already know」など, それぞれの時制に気を配っておくとよい。

*24  a host of」は, 「多数の」と言う意味です。
 

図の中心部の4つ のステップの中の3つ は、問題定義や問題解決を一般化したどんなプロセスとも共通している。何が問題かを定義し、いくつかの解決策を生成し、そして解決策を評価することは当然 必要なことである。われわれはこれにもう一つのステップとして「ツールを選択する」を付け加えた。なぜなら、TRIZおよびここに取り上げたその他の諸手 法には、問題解決のツール群が非常に豊富で幅広く備わっているからである。この4ステップのそれぞれを次章でより詳しく検討しよう。その後に、各ステップ の諸方法にそれぞれ1章を設けて順番に検討しよう。すぐにわかるように、問題定義ステップと解決策生成ステップは、多数の方法を包含している。

The aim of this chapter is both to set the scene*25   for the book and also to discuss the triangle drawn behind the four boxes (hence the reason the top right hand corner of this page emphasizes the triangle to indicate that this is what we’re talking about at this point in the book). The triangle is there to define the existence of an underlying philosophy*26   behind the process being discussed in future chapters.

本第一章の目的は本書の予備的な 情報を与える*25  こと、このボックスの背景に描かれている三角形について議論することである。(従ってこ のページの上右隅で三角形を強調している理由は我々がこの本のこの部分について話しているのだということを示すためである。)

三角形が背景にあるのは、以降の 章で討論されているような、プロセスの背後にある強調すべき哲学*26  の存在を明確にするためである。

本章 の目的は、本書の基礎を与える*25  こと、4ボックスの背後に描かれている三角形について議論することで ある。(この理由で, 本ページの上右隅で三角形を強調し、ただいまわれわれが話し ているのがこれであると示している。)三角形が背景にあるのは、以降の章で議論しているプロセスの背後に、基礎となる思想*26  が存在していることを明確にするためである。

[推敲意図の説明]

*25  set the scene for 」は熟語で, 「基礎を与える」の意味です。 (Longman 辞典による)

*26  underlying<-- underlie」は, 「隠れた原因や意味がある」こと。「philosophy」は, 学問分野としての「哲学」のほかに, 哲学をベースにしたさまざまの (任意の) 「思想 (体系)」を指します。多くの場合に「思想」と訳す方が適当です。

本章の目的は、本書 の土台を作ることと、4つの四角形の背後に描いた三 角形について議論することである (このため、本ページの右上隅の図でこの三角形を強調した)。この背後に描いた三角形は、以降の章で議論しているプロセスの背後に、土台となる思 想が存在することを明確にするためである。



 

2.

Process Overview*1

プロセスの全容*1  

プロセスの概要*1  
 

2章

体系 的創造性プロセスの概要

 

‘Be sure you know the structure of all you wish to depict.’ *2  

‘描写をするときに は、その構成の全てをよく観察することである’ *2  

「描きたいと思うすべて のものの構造をまずよく理解せよ。」*2  

Leonardo Da Vinci

レオナルド ビンチ
 

[推敲意図の説明]

*1  overview」は, 全容, 全貌, 概要などですが, 普通の場合に「概要」を一番よく使うのでないかと思い, これにしました。

*2  structure」をやはり「構成」でなく「構造」と訳した方が適当と思い ます。ダビンチは人体を描くときに, 解剖学まで学んだということで, それを反映した言葉であると思います。

描 きたいと思うすべてのものの構造をよく理解せよ

レ オナルド・ダ・ビンチ

A COMPLETE PROCESS*3  

If it’s what we want, TRIZ offers us a complete start to finish process*4   through which – as shown in Figure 2.1 – will take us from whatever vague start point we might be at through a series of steps that will first help us to define what the right problem is, through to identifying the best solution to that problem. *5   While it might be said (often with good cause) that 99% of the problem comes in the implementation, we hope that the 1% we are covering is of value. *6   In any event, the other 99% will be full of other issues and problems to solve – all of which will benefit from the use of this process. *7     

一貫プロセス*3  

もしTRIZが人々が望むようなものならば、それは開始から終了までの一貫プロセスであり、*4  2.1に示すように、たとえ出発点が不明瞭であっても、一連のステップを進める中で本当の問題 が何であるかを定義し、その問題の最適な解を特定できるように導いてくれるようなプロセスであるである。*5  問題の99%は実施時に発生するとも(多くは正当な言いわけとして)言われるが、我々が カバーしようとしている1%にこそ価値あると思いたい。*6  しかしそうは云っても、残りの99%も解決しなければならない課題や問題の山積であり、 これらにもこのプロセスは有効に利用することができる。*7  

一貫 したプロセス*3 

もしTRIZがわれわれの望むとおりのものならば、それは開始から終了ま での一貫したプロセスを提供する。*4  そのプロセスは、図2.1に示すように、われわれの出発点がたとえどんなに不明瞭で あっても、本当の問題が何かを定義するのを一連のステップを通じて助けてくれ、その問題の最適な解を特定できるように導いてくれる。*5  問題の99%は実施時に発生するとも(多くは正当な原因が あって)言われるが、われわれがカバーしている[実施前の]1%にこそ価値があると考える。*6  それでもなお、残りの99%にも解決すべき課題や問題が山積 しており、それらにもこのプロセスの利用は有益であろう。*7  

[推敲意図の説明]

*3  complete process: 「一貫プロセス」でももちろん良いと思います。「一貫した プロセス」としたのは, 「一貫した」という言葉の印象を残すためです。「一貫プロ セス」とすらっと言ってしまうと当たり前のことを言っていると感じて, 注目しなくなるように思いましたので。

*4  もとの訳はよくこなれて, ほぼ著者が言っているとおりの順番で, 適切に訳されていると思います。ただ, 問題は, 原文が長いことが多く, そのまま文を切らずに訳していくと, 日本語ではどうしても主たる動詞が最後に来てしまい, 分かりにくくなります。そこで, この書の日本語版は, もう少し文を区切る方向にさせていただきたいと思います。 区切る位置は, この例のように, 関係代名詞で長い説明の節が続いているときには, その関係代名詞の直前がよいでしょう。それによって, 主たる動詞を早い段階で訳に表すことができ, わかりやすくなると思います。ここの「We」はやはり著者自身を含めた意味で「われわれ」が良いと思 います。

*5  原文は大変分かりにくい構文ですが, もとの訳で適切に解釈されていると思います。ただ, そのプロセスがわれわれを導き, 「曖昧な出発点から, 定義を助ける一連のステップを通過して, 解に到達するまで」 ずっと導いてくれるというように, 「プロセスが導いてくれる」というスタンスを一貫させると 良いと思いました。

*6  この文は, 原文の意図が何であるかが分かりにくい。もとの訳で, 99% が「実施時」であるという表現をしており, 恐らくそれが正しいのだろうと思う。そうすると, 残りの1% は「実施前」 (すなわち, アイデア出しから設計など) ということになろう。しかし, 99% 1% はやや極端な表現のように思う。上記の中川訳で [  ]内は一種の訳注 である。著者に確認の必要がある。なお,  cause」は「excuse (言い訳)」の意味に使われることはないようである。

*7  もとの訳も基本的には良いと思います。少しずつ表現を改良 したつもりです。

2.1  一貫したプロセス

もし TRIZが われわれの望むようなものなら、それは始めから終わりまでの一貫したプロセスを提供してくれる。そのプロセスは図2.1に示すように、われわれの出発点が どんなに不明瞭でも、一連のステップによって本当の問題が何かをまず定義するのを助け、その問題に対して最適な解決策を見出せるように導いてくれる。「問 題の99%は (それなりの原因があって) 製品の実現時に起こる」とも言われるが、われわれがカバーするその前段階(すなわち設計段階など)の 1%こ そ大事であると考える。しかしそれでもなお、残りの99%にも解決すべき課題や問題が山積しており、それらにもこのプロセスの利用は有益であろう。


The start point for the process has been that we should literally be able to begin from any place. *7   We have included inside that wide ranging ambition the desire *8  to look at business, political, social science, architecture and even what might be loosely termed ‘the arts’ in this start point. *9   While the focus throughout this book will be the application of TRIZ in engineering/technology centred situations (check out the other books in the series for examples of other application areas) *10  , it is worth noting that it is more or less exactly the same process that we can apply to any of these other problem types. *11  

もともとは、このプロセスは字義 通りにどのような所でも展開が出来るとされてきた。*7  ビジネス、政治、社会科学、建築、そして初期には*9  あいまいな言葉である‘技能’のようなことまで含めて広く期待されて来た。*8  本書の焦点は、TRIZの技術あるいは工学を中心とした問題への応用であり、他の分野へ の応用例についてはシリーズの他の著書を参照されたい。*10  どのような問題に対しても応用できるプロセスは多かれ少なかれ同じであるなどというつも りはない。*11  

この プロセスの出発点は、字義通りにどんな所からでも始めることができるはずであるとされてきた。*7  われわれはその広範囲の野望の中に、ビジネス、政治、社会科 学、建築、そしてあいまいな用語である「アーツ (学芸)」と呼ばれるものまでを、この出発点で見る*9  という欲望を含めてきた。*8  本書全体を通じて, 工学/技術を中心とする問題にTRIZを応用することが焦点であ る。(他の分野への応用例については本シリーズの他の本を参照され たい。) *10   それでも, これらの他分野の問題のどれに対しても, 多少なりとも全く同じプロセスを応用できることは言及に値す る。*11  

[推敲意図の説明]

*7  原文の「The start point」は, プロセスの始点から終点までというときの始点 「出発点」と解釈するのが良いと思う。だから, 「どこからでも始められる」ということばに繋がる。

*8  ここも構文の理解が難しい。主たる構文は「included inside A the desire ... 」であり, このA が「that wide ranging ambition」である。このambitionとは, 「どこからでも始められるはずだ」と言ったことを指す。

*9  ここの構文も, look at .... in this start point」が主要なものである と思う。この「....」の中にいくつもの項目が列挙されている。

*10  「本シリーズ」と言っているのは, CREAX社の出版物を指しており, 本書の他に, 生物学へのTRIZの応用がすでに刊行されており, ビジネス・経営への応用を近くMann自身が出す予定である。

*11  原文は「more or less exactly the same」 と言っている。「it is worth noting 」は「言うに値する」という意味。もとの訳では意味が逆に なって後退してしまっている。

このプロセスは、文字どおりどんな出発 点からでも開始できるべ きである。われわれはこの出発点に、工学/技術の他にも、ビジネス、政治、社会科学、建築、そして広い意味で「学芸 (the arts)」までを広く対象として含めたいと望んだ。本書の焦点は全編を通じて、工学/技術を中心とする問題へのTRIZの適用である (他の分野への適用例は本シリーズの他の本 [続刊予定] を参照されたい)。それでもなお、他の分野の問題に対しても、多かれ少なかれ全く同じプロセスが適用できることは言及に値する。

 

Any start points we could possibly imagine have to be amenable to treatment if the process is to be of generic use. *12   We have tried to validate the process on as many situations as possible, and always present the challenge to problem solvers to try and come up with a scenario the process cannot handle. *13   The sorts of start points we see emerging on a regular basis, and which the process has been validated against *14  include the following sorts of ‘perceived need for something to happen’ start point: *15  

こうしたプロセスは、一般的に利 用するときにはどこから開始しても処理が可能であることが必要であると想定される。*12  筆者らは、出来るだけ数多くの状況下でこのプロセスを検証することを試みてきた。そし て、その折りにはいつも問題当事者に挑戦させ、やってみてそのプロセスが取り扱うことが出来ないシナリオを見つけるようにさせてきた。*13  通常に見られる類の開始点と、これに対して検証されて来たプロセスには*14  、開始点のきっかけとしてとして次のようなニーズ認識がある。*15  

もしこのプロセスが 汎用のものであるなら、われわれが想像できるいかなる出発点も 処理可能でなければ ならない。*12  筆者らは、できるだ け多くの状況下でこのプロセスを検証することを試みてきた。そして、いつも、問題当事者に、「やってみてそのプロセスでは取り扱えないシナリオを見つけて みよ」と挑戦を投げかけてきた。*13  通常よく見られる類 の出発点で、本プロセスが検証されてきたものには*14  、つぎのような「何 かが起こる必要の認識」という種類の出発点がある。*15  

 [推敲意図の説明]

*12  主要な構文は, Any start points have to be amenable to treatment if ...」。中川の訳で原 意が明確になっていると思う。

*13  原文は複雑でなか なか訳しにくい。この例のように「...」を使って, 一部分に直接話法 を導入すると分かりやすくなることがある。

*14  ここの「which the process has been validated against 」は The sorts of start points」に掛かる。「通 常現われ, そしてすでに検証 されている出発点」という意味である。

*15  ここの '...'」は, Mann特有の表現であり, これ全体を一つの 「  」で括って, それを一つの単語 であると思うとよい。このような言い回しは非常に度々出てくるので慣れて欲しい。
 

このプロセスが汎用 性を目指すなら、想像できるいかなる出発点をも処理 できなければならない。われわれは実際にこのプロセスをできるだけ多くの状況で検証することを試みてきた。またいつも、問題解決者に「このプロセスを試し て、これでは取り扱えないシナリオを見つけてみよ」と挑戦を投げかけてきた。通常よく見られる種類の出発点で、このプロセスの適用可能性が検証されてきた のは、「どうにかしたいと気づいたこと」を出発点とするつぎのようなものである。


·         How do I improve process output rate by x%? *16  

·         How do I improve sales?

·         How do I improve the reliability of system Y?

·         What is the best strategy for exploiting solution Z?

·         How do I reduce noise by AdB? *17  

·         How do I improve efficiency by B%?

·         How do I cut down on scrap? *18  

·         How do I reduce the environmental impact of C? *19  

·         ど のようにプロセスの生産性をx%改善するか *16  

·         ど のように販売を増伸するか

·         ど のようにシステムの信頼性を改善するか

·         解 決案Zを実施する最善の方策はどのようなものか

·         AdBによりどのように雑音を削減するか*17  

·         ど のように効率をB%改善するか

·         ど のようにスクラップを削減するか*18  

·         ど のようにCの環境負荷を削減するか*19  

·         どのようにしてプロセスの生産性をx%改善するか? *16  

·         どのようにして販売を向上させるか?

·         どのようにしてシステムYの信頼性を改善するか?

·         解決策Zを実施する最善の方策はどのようなものか?

·         どのようにして雑音をA デシベル減少させるか? *17  

·         どのようにして効率をB%改善するか?

·         どのようにして廃材を削減するか? *18  

·         どのようにしてCの環境への影響を減少させるか? *19  

[推敲意図の説明]

*16  How do I .... ?」は 「どのように ... するか」よりも 「どのようにして ... するか?」と訳す方が明確。手段・方法を尋ねている。また疑問文を 明確にするために「?」を付ける。

*17  原文の「AdB」は「A dB」のミスプリ。「A デシベル」のこと。

*18  scrap」を「スクラップ」と安易に訳すと, 読者は日本語で「スクラップ」というときの狭い意味を連想 するように思う。できるだけ元の語の意味を狭めないように考える。

*19  environmental impact of C」は, Cが環境に与えるインパクト(影響) のこと。「環境負荷」という用語はあまり一般的でないよう に思う。



10.

Problem Solving Tools - *1  

Technical Contradictions/Inventive Principles*2  

10.

問題解決ツール、-*1  

技術的な矛盾/発明原理*2  
10

問題解決ツール*1  

技術的矛盾/発明原理*2 

10章

問題 解決ツール − 技術的矛盾/発明原理


“Every coin, I now realise, has at least two sides, but there are pathways through the paradoxes*3,
 if we can understand what is happening and are prepared to be different”
*4  

Charles Handy, The Empty Raincoat.

“あらゆるコインには少なくとも2つの面があると私は今そう認識しているが、*3  
我々が今起こりつつある事を理解し、異なる結果を受 け入れる用意があるならば、
*4  
そうした
2面性の矛盾を貫通する幾つかの途は存在する。”

チャールズ ハンディー、空の レインコート。

「あらゆるコインには、 私はいま分かったのだが、少なくとも2つの面があるだけでな く
、その
2面性の矛盾を通り抜ける 途が存在する。*3  
それには、今起こりつつ あることをわれわれが理解し、
異なる結果を受け入れる用意がなければならない。
*4  

チャールズ・ハン ディー、空のレインコー

[推敲意図の説明]

*1  章のタイトルのこのハイフン [棒引き?] , 原書でも付ける/付けないが不統一になっているようです。「2段になっている場合は省略, 1段の場合は付ける」というのが良いかと思います。後日 (日本側の) 編集者と相談して方針を決めます。いまはあまり気にしなく て結構です。

*2  technical contradictions」などで, technical」を訳すときに, 「技術的な」「技術的」「技術の」「技術--」などのうちのどれを採用するかというのは, 往々にしてデリケートでやっかいです。考え方はつぎのよう です。単発のものやこの語を強調したいときに「技術的な」とし, 複合した言葉として後ろと結合して用いられて, 形容詞として意識されている場合には, 「技術的」とする。この結合がさらに進んで後ろの語ととも に一つの単語として意識される場合には「技術--」の形にする。要するに, ひとまとまりで使われるようになればなるほど短縮された表 現になるということです。そこで, いまの段階では, technical contradictions」は「技術的矛盾」とし, technical problems」も「技術的問題」, technical system」は「技術システム」とするのが適当と考えています。この ような線で統一的にしていただけるようにお願いします。同様なことから, Inventive Principles」は「発明原理」, Inventive Standards」も「発明標準解」とするのがよいと考えています。

*3  ここの「..., I now realize, ...」は, 話し言葉的な挿入です。いま言おうとしていることを, 自分もつい最近に理解したのだと言っているのです。何を最 近理解したのかと言えば, (もちろんコインに裏表があるということではなくて) (コインのような) 裏表の2面性の矛盾を通り抜ける途がいつもあること」です。このこ とを適切に表現できるように, 訳文の繋ぎ方を考えねばなりません。推敲訳でそれを表現し たつもりです。なお, もとの訳で「paradoxes」を「2面性の矛盾」としのは非常に適切で分かりやすくしたと思い ますので, それを採用させていただきまし た。

*4  原文で「〜 if ...」節が文の後ろにあって長々しているときは, 訳しにくいものです。日本語では, 「もし....ならば〜」と条件の方を先に言うのが普通ですから, そうしようとすると, 「語順の維持の法則」が守れなくなり, 非常に分かりにくい文になります。このような場合には, 「〜。」でまず文を区切り, その後に, 「そのためには, ... でなければならない。」と条件を別文にするのが一つのやり 方です。ここでこの訳し方をしたことにより, この人が言おうとしたことが明確になったと思います。

「あらゆる コインには、私はいま分かったのだが、少なくとも2つの面があるだけでなく、

その2面性の矛盾を通り抜ける途が存在する。

それには、 今起こりつつあることを理解し、異なる結果を受け入れる用意がなければならない。」

Charles Handy、空のレインコート

Contradictions – or rather the elimination of contradiction, conflict, paradox, trade-off, or whatever we prefer to label them as – *5  are a central part of the TRIZ philosophy.  While many authors have begun to recognise and report the importance of not accepting the contradictions we normally take for granted, *6  TRIZ is unique in that it offers problem solvers tangible*7   tools to help to actually ‘eliminate compromise’.

矛盾, と言うよりはむしろ、矛盾、闘争、逆説、トレードオフ、あるいは我々が好んでレッテルを 貼るそうした事象を取り払うことが*5  TRIZ哲学の主要な部分です。多くの著者が通常我々が当然のことと考える矛盾を受け入れないこ との重要性を認しかつ報告し始めているが、*6  TRIZがユニークなのは、実際に‘妥協を排除する’為の助けとなる明白なツール*7  を問題解決者に提供する点です。

矛盾 が、と言うよりはむしろ、矛盾、対立、逆説、トレードオフ、その他いろいろに呼ばれているものを「取り除くこと」が、*5  TRIZの思想の中核部分である。通常われわれが当然のことと考えて いる矛盾を受け入れないことの重要性を、最近多くの著者が認識し、報告し始めている。だが、*6  TRIZがユニークなのは、実際に「妥協を取り除く」のを助ける具体 的なツール*7  を問題解決者に提供している点である。

[推敲意図の説明]

*5  原文で, Contradictions - or rather the elimination of contradiction ... - are ...」と言っていて, 長い挿入句があるのがやっかいです。その構文をできるだけ はっきりさせることが大事で, 推敲訳では, 最初に 「矛盾が、...」として, これが主語であり, その主語を言い換えようとしているのだということを分かる ようにしています。そして、言い換えたあとの主要点は、原文で「the elimination of ...」ですから、それを明確にするために訳では特に「 」を付けて, ...を「取り除くこと」が」としました。このあたりは英語と日 本語との語順の違いから来る紛らわしさを明確にするための努力です。「whatever we prefer to label them as」は, 「それらに対してわれわれが(よいと思って) 付けている名前はどんなものでも」といったことですが, これをあまり強く訳すと論旨が混乱してしまいます。そこで 比較的軽く「その他いろいろに呼ばれているもの」と訳しました。どの部分はしっかり強調して訳すのか, どの部分は表現上の綾であって主要なことでないのか, といったことを判断すると, 読みやすい訳文になると思います。(これらのことはもっと後で、(基本的な訳に誤りがなければ) 訳文だけを読んで推敲できることです。ただ, 今の段階でも心得ていると, 訳出作業がずっと楽になります。)

*6  While ..., TRIZ 〜」の構文では, はじめの「...」の部分は参照・比較のための記述であり, 言いたいことの中心はあとの「TRIZ 〜」の部分にあります。このこと が分かるように, そして後半が強調されるように前後に文を区切り, ... 。だが、TRIZ 〜」としています。Mannの文には長いものが多いので, いつも少し短くする方向に訳出を心がけて下さい。

*7  tangible」は, Longman 辞典によると, 1. clear and certain; real; not imaginary.  2. that can be felt by touch.」となっています。「実際のもの, 触れるもの」といったニュアンスです。ここでは「具体的 な」と訳しました。
 

矛盾」が、あるいはむしろ「矛盾」、「対立」、「逆説」、 「トレードオフ」、その他いろいろに呼ばれているものを「取り除くこと」が、TRIZの思想の中核部分である。当然のことと通常は考えられている矛盾を、 受け入れないことが重要であると最近多くの著者が認識し、報告し始めている。その中でもTRIZがユニークなのは、実際に「妥協を取り除く」ことを支援す る具体的なツール群を問題解決者に提供している点である。


The Contradictions toolkit has two parts; *8   technical and physical*9  . A technical contradiction occurs when we have two different parameters in conflict with each other*10   –for example ‘I want high strength, and low weight’, *11   while a physical contradiction defines a situation in which we are looking for conflicting values*12   of one parameter (‘I want high weight, and low weight’).  This chapter examines the technical contradiction aspects of TRIZ, while the next chapter examines physical contradictions*13  .

矛盾ツールキットには2つの部品があります*8  ; 技術的な部分と物理的な部分です。*9  矛盾相互で2つ の異なったパラメターを持っているとき技術的な矛盾は起るのです*10   − 例えば、‘私は高い強度と低い重量が欲しい' と言った様に、*11  物理的な矛盾は我々が(‘私 は高い重量と低い重量が欲しい')という1つ のパラメター上の相反する価値*12  を求めている状況を示します。本章はTRIZの技術的な矛盾局面を考察するが、次の章では物理的な矛盾を考察します。*13  

矛盾 を扱うわれわれの道具箱には2つのツールがある*8  。技術的な矛盾と物理的な矛盾に関するものである。*9  技術的矛盾は、2つの異なるパラメータが互いに対立するときに起こる。*10  例えば、「高い強度で、低い重量が欲しい'」という場合である。*11  一方、物理的矛盾は、われわれが一つのパラメータについて対 立する二つの値*12  を求めている状況を意味する。 「高い重量で、同時に低い重量が欲しい」という場合である。 本章でTRIZの技術的矛盾の局面を考察し、次章で物理的矛盾について考察 する。*13  

[推敲意図の説明]

*8  ここの「parts」は訳しにくい語です。この場合, その前に「toolkit(道具箱)と言っているのだから, その中身は当然「tool」です。だから, (toolkit) 部品/部分」と訳す代わりに, ツールといってしまうのが自然だと考えます。なお, Contradictions tool(kit)」を「矛盾ツール」と訳す可能性も考えられますが, ここでは, 上記で言っていることを踏まえて, 「矛盾を扱うツール」のように訳しました。あるいはもっと 明確に, 「矛盾を取り除くツール」(「矛盾除去ツール」) という可能性もありますが, ここはまだ説明の出だしですから, 少しやわらかく「矛盾を扱うツール」としています。

*9  ここでは, technical」および「physical」の後ろに名詞が省略されていて, その名詞は文面上は「parts」です。ただ, それを直接的に「技術的部分」「物理的部分」と言っても意 味が通じない。また, technical tool and physical tool」の 意味で訳しても意味が通じません。そこで, 少し言葉を補って, 「技術的な矛盾に関するもの」「物理的な矛盾に関するも の」と訳しました。こうすると, 読者にとってつぎの文がずっとスムーズに理解できます。

*10  ここの「in conflict with each other」 は「two different parameters」を修飾しています。そこで推敲訳のようにしました。

*11  ここは, ぜひ文を区切って, 明確にして下さい。技術的矛盾を先に述べ, 「そして一方、」物理的矛盾を後で述べているのです。この ような区切りは, 読者の理解を確実にするために, 大変重要なことです。

*12  ここの「values」は「価値」ではなく, 単にパラメータの「値」のことです。

*13  日本語訳できちんと「力を入れて」訳そうとすればするほど, 助詞の「は」が多くなります。「は」は (主語に限らず) その語を「強調し」それを文全体の「主題にする」働きを持 ちます。このため, 「は」が多くなると, どうしても「力みすぎた」文になり, 読んでいてしんどくなります。そこで, 「は」を無くせるところではできるだけ使わないように意識 すると良いのです。一つの文に「は」が 2箇所にでてきてしまうのは, この意味で望ましくありません。 (中川の文にも, ついつい2箇所にでてきている例があるでしょうが。)「は」を適切に使う, そしてできるだけ無しですませるのが良い訳です。

矛盾を扱うTRIZの道具箱には2つのツールがある。「技術的矛 盾」と「物理的矛盾」に関するものである。「技術的矛盾」は、二つの異なるパラメータが互いに対立するときに起こる。例えば、「強度を大き く、しかし重量を小さく」という場合である。 一方、「物理的矛盾」は、一つのパラメータについて対立する二つの値を求めている状況を意味する。「重量 を大きく、同時に重量を小さく」という場合である。本章で「技術的矛盾」の扱い方を述べ、次章で「物理的矛盾」を扱う。

 

Before we delve into the detail of technical contradiction definition and ‘elimination’, it is worth spending a few moments examining the expression ‘eliminate compromise’, which is used often in and around TRIZ.  The expression is both useful and dangerous. It is useful because*14   it is deliberately*15   trying to get us to think about doing things differently than the ways most engineering schools and colleges teach thing.  It is dangerous because it carries with it the implication*16   that we can literally eliminate contradiction. While there are indeed cases where this can be shown to be the case, it should be viewed as a good direction to travel rather than as a specific destination. *17   

我々が技術的な矛盾定義と‘除去'の詳細を調べる前に、しばしばTRIZやその周辺で使用されている‘妥協を排除する'と言う表現を調べるために若干の時間を費やすのは価値が有る事です。表現は、役立っと同 時に危険でもあります。 我々が、ほとんどの工業学校と大学が教える方法とは異なったことをする様に故意に*15  考えさせようとしている点で、それは役に立ちます*14  。一方で、それは我々が文字通り矛盾を排除することが出来ると思わせる*16  点で危険です。事例としてそれを示すことが出来る実例が実際にある内は、それは特定の目 的地と言うよりも、むしろ旅行のための良い指針と見なされるべきです。*17  

われ われが技術的矛盾の定義とその「除去」の詳細に立ち入る前に、TRIZやその周辺でしばしば使われている「妥協を排除する」という 表現を、若干の時間をかけて吟味しておく価値がある。

この 表現は、有用であると同時に危険でもある。有用である理由は, *14   ほとんどの工学の学校や大学で教えているやり方とは異なった やり方で、ものごとをするようにわれわれに考えさせることを意図的に*15  試みているからである。一方, それが危険である理由は、われわれが文字通り矛盾を排除でき るといった意味を含んでいる*16  からである。矛盾の除去が事実可能であるという事例が実際に あるけれども, 矛盾の除去は問題解決の具体的な目 的地というよりも、むしろ良い方向を示すものと見なされるべきである。*17  

[推敲意図の説明]

*14  ここでは, It is useful because ... 」の部分をまず訳してしまうと明快になります。つぎの文で もそ先頭に「It is dangerous because ... 」となっていて, その対立関係がはっきり分かるからです。

*15  deliberately」は「故意に」よりも「意図的に」がよいでしょう。このよ うな単語一つの選び方で文の分かりやすさが変わります。

*16  it carries with it the implication that 」は, ... できると思わせる」は意訳ですが, 「意味を含んでいる」がもっと原文に近い訳です。できるだ け原文に近い訳を心がけ, 意訳に走らないように努力下さい。

*17  ここの「a good direction to travel rather than as a specific destination」には, travel」とういう譬えが含まれていますが, それをそのまま「旅行」とするとわけが分からなくなりま す。この「travel」が「問題解決のプロセス」を指していることは明白ですか ら, そのように訳し直すと, 他の「destination」とか「direction」はそのままで明確な意味を持つようになります。「destination」は「目的地」(問題解決のゴール), そして「direction」は「方向」(問題解決で向かって行くべき方向) を意味します。「direction」には, もっと抽象的な意味で「指示」「命令」「指針」などの意味 もありますが, それらは派生してきた意味であり, ここでは本来の具体的な「方向」と訳すのがよいと思いま す。

 

10.1  「矛盾の解消」、「妥 協の排除」という表現についての予備的考察

10.1.1  「妥協を排除する」という表現について (流体を満たした袋のたとえ)

技 術的矛盾の定義とその「除去」の詳細に立ち入る前に、TRIZやその周辺でしばしば使われている「妥協を排除する」 という表現について、多少の時間を割いて検討しておく価値がある。この表現は、有用であると同時に危険で ある。有用である理由は、ほとんどの工学の学校や大学で教えているやり方とは違うやり方をするように考えさせることを、意図的に試みているからである。一 方、それが危険である理由は、われわれが文字通り矛盾を排除できるといった意味を含んでいる [そのように誤解させる] からである。矛盾の除去が事実上可能であったという事例が実際にあるけれども, 矛盾の除去は問題解決の具体的な目的地というよりも、むしろ良い方向を示すものと見なされるべきである。


5.

Problem Definition – Problem Explorer*1  

5.

問題定義&horbar;問題探索 ツール*1  

5章

問題 定義 &horbar; 問題探索


“In every assumption is contained the possibility of its opposite”

Pam Houston, How to Talk to a Hunter.

あらゆる前 提にはその逆の可能性が含まれている

Pam Houston, ハンターへの話し方.

 

*1  Problem Explorer: いろいろ考えてみましたが, もとの訳「問題探索ツール」が適切であると思いました。「Explore」が「探索する」で, Explorer」は「探索する人」を意味するわけですが, ここでは探索するための手段・方法を意味していて, 本書内の他のいろいろな用語を考えると「問題探索ツール」 という訳がやはり適切であると思いました。後に, Problem exploration」という言葉が出てきて, それは「問題探索」と訳す。一方, 手段を想定していて, 特に大文字で「Problem Explorer」としているときには, 「問題探索ツール」と訳すとよいと思います。

 

「あ らゆる前提にはその逆の可能性が含まれている」

Pam Houston, 『ハンターへの話し方』

In this chapter, we examine one of the essential parts of the problem definition process. The ‘problem explorer’ is where we will set the context for the problem or opportunity under consideration*2   and lay down the ground rules for what we can and can’t do when we start to generate possible solutions. *3   The problem explorer contains four basic parts:-

1)      Benefits Analysis*4  

2)      Identification of Resources

3)      Identification of Constraints

4)      Identification of ‘Sore Point’*5  

この章では、問題定義プロセスの 中の一つの本質的な部分を検証する。"問題探索"は 思考中の問題あるいは機会に対し背景状況を設定し、*2  そして実現性のある解決策生成を始める時何ができて何ができないかに対し基本原則を規定 しようとする部分である*3  。問題探索には次の四つの基本的な部分が含まれる:

1)      利益分析*4  

2)      リ ソースの特定

3)      制 約の特定

4)      泣 き所の特定*5  

この 章では、問題定義プロセスの中の一つの本質的な部分を検討する。 「問題探索」は考慮中の問題あるいは機会に対してそれが置か れている状況を設定するところである。*2  そして、可能な解決策の生成を始めるとき、われわれに何がで きて、何ができないかについての基本原則を規定する。*3  問題探索ツールは次の四つの基本的な部分を含む。

1) 利益分析*4  

2) リソースの特定

3) 制約の特定

4) 「泣き所」の特定*5  

[推敲意図の説明]

*2  ここも文が長くなるので, 区切って明確にすると良い。「The 'problem explorer' is where ... 」という言い方はあまり厳密/論理的でない。「問題探索ツールは ...するところである」という のは何か前後がきちんと納まらない。「問題探索 (というプロセス) ... するところである」という方がまだ良い (完全にはしっくりしていないが, 原文がそうだからしかたがない。まあ許容範囲と思われる)

*3  もとの訳で基本的に良い。「possible solutions」は訳しにく い。「実現性のある解決策」はちょっと明確に言い過ぎているように感じるので, 「可能な解決策」と訳した (「あり得る」といったニュアンス)

*4  benefits analysis」をもとの訳で「利益分析」とし, 「利益」の部分を赤色フォントにしているのは、「よりよい 訳を検討する必要がある」という意味と思われる。たしかにもう少し広い意味がよいと思われるが, いい代案が思い浮かばない。とりあえずママ。

*5  Sore Point: たしかに「泣き所」が言葉どおりの訳であると思う。「identification」を「特定(する)」と訳すのも適切。

本章では問題定義プロセス中の必須のものの一 つである「問題探索 (‘Problem Explorer’)」[訳注]を検討する。これは考慮中の問題または機会に対してその文脈を設定 し、「解決策の案を作るときに、何が許され、何が許されないか?」についての基本原則を規定する。問題探索にはつぎの4つの基本的な部分が含まれる。

1)  効用 分析 [5.1節]
2)  リソースを特定する [5.2節]
3)  制約を特定する [5.3節]
4)  「泣き所」を特定する [5.4節]

[訳注] 原著の’Problem Explorer’ という用語には、 問題探索のプロセスを指している場合と、 問題探索の手段あるいはより具体的な (本章の書式で代表される) ツールを指している場合があるように思われる。そこで、プロセスを意味するときには「問題探索」と訳し、手段/ツールを指すときには「問題探索ツール」と 訳している。

The four parts can be done in any sequence, *6   although it is useful to begin with a Benefits Analysis as this helps set the theme for all subsequent activities.

利益分析はこれ以降のすべての作 業に対しテーマ設定の手助けをするので利益分析から始めるのが役に立つけれども、四つの部分の順序はどれからでもできる。*6  

これ ら四つの部分はどんな順序ですることもできる。*6  ただし, 利益分析から始めるのが有用である。なぜなら、 利益分析がその後のすべての活動に対してテーマを設定するの を助けるからである。

[推敲意図の説明]

*6  この原文は 3つの節(A-B-C) から構成されており, もとの訳はこの3つを完全に逆順に (C-B-A) 訳しており, 推敲訳は原文と同じく前から (A-B-C) 訳している。これは, なぜ「語順の保存の法則」が重要なのかの非常に良い例に なっている。原文は, 大事なこと, 原則的なことから先に言い, 後ろにその補足・例外・理由・詳細などを付け足していって いるのである。すなわち, 「基本原則(A) - 例外事項の注意書き(B) - その例外を勧める理由(c)」の構成である。ところが、もとの訳文では, 「特定項目の意義(C) - 特定項目の推奨 (B) - 緩和した原則(A)」といった構成になる。もとの訳文は、いかにも日本語的な 表現であるが、原文の持つ論理性を曖昧にしてしまう。推敲訳は原文と同じ順序で述べ, 各節を区切った文にし, またその間の関係を各文頭の接続詞で明示して((A)。ただし, (B)。なぜなら, (C)), 論理性を明確にしようとしている。もとの訳の日本語的表現 では, (C)ので(B)けれども、(A)」となっており, 3つの節の区切りが明瞭でない部分があり, また, 節の間の関係がすべて節の最後部の接続助詞で示されてい る。推敲訳のようにすると, 日本語の表現であってもきちんと論理性を保てるのである。
 

これらの4つをどんな順序で行ってもよいが、効用分析から始めるのが有用である。なぜなら、こ れが後続のすべての活動に対するテーマを設定するからである。


Appendix 1 at the back of the book contains an example pro forma
*   usable for all types of problem and opportunity situation. Feel free to photo-copy this pro forma for every problem you intend to work on. The pro forma contains elements of Function and Attribute Analysis (Chapter 6), S-Curve Analysis (Chapter 7) and Ideality Analysis (Chapter 8). In this chapter we will just examine those elements of the pro forma relevant*8   to problem exploration and scene setting.

この本の最後部にある補遺1には 様式*  例が示されており、このような様式はあらゆるタイプの問題と機会の状況に役立てることが できる。自由にこの様式を複写し、読者が取組もうとするあらゆる問題に適用してよい。様式には、機能と属性分析(第6章)、Sカーブ分析(第7章)と理想 性分析〈第8章〉の要素が含まれている。本章では、問題探索と状況設定に関連した様式の要素だけ*8  の検証をするつもりである。

本書 の最後部の付録1に、あらゆるタイプの問題と機会に対しても使える書式*  の例を載せている。この書式を自由に複写し、あなたがが取組 もうとするあらゆる問題に使ってよい。書式には、機能と属性分析(第6章)、Sカーブ分析(第7章)および理想性分析〈第8章〉の要素を含んでいる。本章 では、この書式の中で問題探索と状況設定に関連した要素だけ*8  を検討しよう。

[推敲意図の説明]

*  pro forma: もとの訳の「様式」は非常に形式ばった語のように思う。 「書式」とした。

*8  ここの「relevant to」が修飾しているのは, 直前の「the pro forma」ではなく, もう一つ前の「those elements」である。そこで訳すときにも, これらが直接繋がるように語順を考える。
 

本書巻末の付録 1には、あらゆるタイプの問題と機会の状況に利用で きる [無記入の] 書式を掲載した。この書式を自由に複写し、あなたが取り組もうとする問題のそれぞれに適用 するとよい。書式は [本章で扱う問題探索に加えて]、機能と属性の分析(第6章)、Sカーブ分析(第7章)、および理想性分析 (第8章) の各要素をも含んでいる。本章では、問題探索と具体的な場面設定に関連した書式の要素だけを検討しよう。[なお、5.1〜5.5節では (小さな例示は別にして) 一般的な説明をしており、5.6節にこの書式を一貫して使った事例を説明する。]


We will detail each of the four parts of problem exploration in turn, before
*9   examining a typical example of a completed problem explorer analysis:-

まず我々は問題探索の四つの部分 を一つずつ順を追って詳細化してゆき、その後*9  問題探索分析を終了した典型的な事例を検証する。

まず われわれは問題探索の四つの部分を一つずつ順を追って詳細化してゆき、その後、*9  問題探索ツールによる分析をやり上げた典型的な一つの事例を 検討しよう。

[推敲意図の説明]

*9  原文の「..., before 〜」を, もとの訳で ...、その後〜」と訳しているのは大変適切である。英語と日本 語で一見逆の言葉を使っているように見えるが, 論理的にはまったく同じことを表現している。もう少し分か りやすくするために, 推敲訳では ...、その後、〜」と「、」を付け足している。

 

Benefits Analysis

In this first part of the problem exploration process, we are primarily setting the scene for a problem situation*10  . As may be seen from the front page*11   of the pro forma (Figure 5.1), this activity requires us to ask a series of questions:

利益分析

問題探索プロセスの最初の部分では、問題状況に 対し最初にシーンを設定してゆく*10  。最初の様式*11  (図5.1)から分かると思うが、この様式では一連の質問 に答えることが必要である:

問題探索プロセスの 最初のこの部分では、主として問題状況についての基盤を作る*10  。書式の最初のペー ジ*11  (図5.1)から分かるよう に、このためには一連の質問に答えることが必要である:

[推敲意図の説明]

*10  set the scene for ...」は熟語で, (話やできごとなどの) 基礎/基盤を与える」意味であるという。(Longman 辞典による) 字義どおり訳したのではぴんと来ないときに, 注意が必要である。

*11  ここで「front page」と言っているのは, あくまでも付録の構成を見ながら言っているのであり, それをここにコピーしてきたのが図5.1である。
 

5.1  効用分析

問題探索プロセスの最初のこの部分では、問題 状況に対して具体的な場面を設定するの が主たる作業である。書式の最初のページ(図5.1)から分かるように、この作業は一連の質問をすることを要請す る。




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『TRIZ 実践と効用 (1) 体系的技術革新』出版案内
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最終更新日 : 2004. 6.30   連絡先: 中川 徹  nakagawa@utc.osaka-gu.ac.jp