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編集ノート (中川 徹、2025年 5月23日)
この約5年間活動してきましたWTSPプロジェクトの一つの成果として、「TRIZ(関連)の分野を代表するWebサイトを、国際協力で創設するべきだ」という結論を得ました。6月以来、WTSPのGlobal Co-editors(グローバル共同編集者)内で熱い討論をし、『Systematic Innovation Review』Webサイトを国際協力で創設しょうという提案を、世界のTRIZコミュニティに呼びかける活動を開始しました。
その趣旨の概要は、(TRIZシンポジウムでのWTSPの発表の最後に(和文&英文で)追加した)下記のスライドのようです。
編集ノート (中川 徹、2025年 5月23日)
この提案の詳細の内容は、英文ページに TRIZ/eTRIZ/eWTSP/eSIReview/ フォルダーを作って、引き続き掲載しました。まず、8月30日付で、詳細説明の第1節「目的と理念」を掲載し、9月16日にはその第2節~第7節の全文テキストを掲載しました。
さらに、ETRIA TFC2022(2022. 9.27-29)での、WTSPプロジェクトの第5報の発表のほかに、討論のセッションで、”SI-Review" Webサイトの提案を発表させてもらうべく、スライド(7枚)を作りました。このスライドを9月16日に『TRIZホームページ』に掲載し、また、LinkedInで記事を3回に分けて連載しました(9.18; 9.23; 9.25)。ETRIA では、9月28日にオンラインのビデオ発表(5分半)をさせていただきましたので、そのビデオを10月14日に英文ページに掲載しました。
和文ページには、上記のテキストも、スライドも、ビデオも、いままで和訳掲載しておりませんでした。このたび、『著作選集』に採録するにあたり、和訳が必要と判断し、急遽用意しました。とりあえず、テキストの第1節「目的と理念」、およびスライド(7枚)を掲載します。
編集ノート (中川 徹、2025年 7月13日)
テキストの第2~第8節を、英文ページから和訳しました。ここに追加掲載します。
テキストの目次: "Systematic Innovation Review" Webサイトの設立の提案
1. "Systematic Innovation Review" Webサイト開設提案のビジョン
1.1 何を目的/価値として提案するのか?
1.2 背景: 関連分野における方法論とWebサイトの現状![]()
1.3 "Systematic Innovation Review" Webサイトのスコープ![]()
1.4 Webサイトの名称: "Systematic Innovation Review" (Webサイト)![]()
1.5 記事のカテゴリー、性格、質
1.6 良い原稿を集める/入手する方法
1.7 推進と運営のための組織
1.8 他の組織やWebサイト/ジャーナルなどとの関係2. われわれのユーザ/読者そして著者は誰か? コンテンツに対するニーズ
TRIZの専門家たち、 TRIZの一般ユーザ/実践者、 TRIZの初心者とTRIZをまだ知らない人たち、
TRIZ周辺の諸方法論の専門家たち、 TRIZ周辺の諸方法論における一般ユーザ/実践者たち 、
どの方法論をも知らない人々、 "SI-Review" Webサイトにおける、論文/記事のカテゴリ分けの必要性提案の開始: WTSPグローバル共同編集者たちによる提唱、
さまざまな組織/グループの協力を得るための、われわれの基本的な考え方、
TRIZ国際組織と協力を得ること: MATRIZ、AI、ETRIA、SSI、 TRIZコミュニティにおける大きな対立 --- どうすれば解決できるか?、
"SI-Review" Webサイトの提案推進および運営のための組織の可能な形態について、
TRIZコミュニティの支援による"SI-Review"プロジェクトの形成 、編集委員会、 編集顧問団、 編集室/編集室スタッフ 、
編集部による準備、 論文/記事の収集/招待: 候補原稿のプール、 著者による論文/記事の原稿の提出、
査読プロセス: シングルブラインドの査読方式、"SI-Review" Webサイトの立ち上げ: クラウド上のWebプラットフォーム 、 "SI-Review" Webサイト内の基本的な編集操作
"SI-Review" Webサイトの構造: カテゴリ分けしたセクション群、 参考文献と関連記事へのリンク、SI-Review"の利用:登録させるか、否か、 読者による利用の許諾、 読者/ユーザからの通信
考えられる費用、 収入を得るための考えられる代替法、
1.8 他の組織との関係 | 提案スライド |
英文ページ |
2. ユーザとニーズ | 3. 推進/運営組織 | 4. 編集委員会等 | 5. 原稿と査読 |
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提案書 テキスト
"Systematic Innovation Review" Webサイトの設立の提案
2022年 9月16日
中川徹 & WTSPグローバル共同編集者
Darrell Mann、Michael Orloff、Simon Dewulf、Simon Litvin、Valeri Souchkov
1. "Systematic Innovation Review" Webサイト開設提案のビジョン
1.1 何を目的/価値として提案するのか?
世界のTRIZおよび関連する諸方法論の分野において、その諸作品(成果)と諸活動の全体を代表することができる、新しいWebサイトを設立する。
私たちは、現実世界におけるさまざまな困難な問題を、創造的かつ体系的に解決することを目指した、諸方法論とその応用に焦点を当てる。
このWebサイトは、その分野全体において、さまざまな人々がさまざまなアプローチで執筆した優れた作品を、募集・収集して、それらを定期的にオープンアクセスで発表する。
このWebサイトは、既存の多数のWebサイトの中のもう一つの優れたWebサイトを意図しているのではなく、それらとの良好な協力関係を基盤にして、この分野において「それらを代表する」ようなWebサイトになることを、意図している。
このWebサイトが奉仕するのは多数のユーザー/読者たちである。彼ら/彼女らは、この分野のいくつかの方法について、専門家、実務家、ユーザー、または学習者であるかもしれず、あるいはどの方法をもまだ知らないかもしれない。それらの人々が、さまざまな方法とその応用を理解して、自分たち自身の問題をよりよく、より効果的に解決することを、助けるように奉仕するのである。
この目的のために、私たちのWebサイトは、さまざまなカテゴリーのいろいろなスタイルの記事を掲載する。その中には、諸方法に関する科学的論文、応用事例に関する技術的な記事、確立された諸方法の標準的なテキスト、学生たちや子供たち向けのやさしい指導記事、諸活動のお知らせ、などがあろう。
異なるアプローチのさまざまな方法に関する(多数の) 記事を、公正で非商業的なやり方で掲載することによって、それらを理解する共通の場ができ、諸方法/諸アプローチの一層の発展と統合が、徐々に刺激されるだろうことを、私たちは期待する。
このようにして、この(新しい)Webサイトが、創造的な問題解決の諸方法論を、よりよく理解し、より効果的に活用することに役立ち、それが、科学、技術、産業、社会などに広く貢献していくことを、私たちは願っている。
このWebサイトのこのようなビジョンが実現するには、関連する諸分野のコミュニティの、国際的かつ学際的な協力を基盤にして、編集に携わる人々の良い仕事が必要不可欠である。
1.2 背景: 関連分野における方法論とWebサイトの現状
本提案は、 WTSP(世界TRIZ関連サイトプロジェクト) の 5 年にわたる活動を通じて、生まれたものである。
(広い意味での)TRIZの分野では、いくつかの国際的な協会/会議が存在し、多数のコンサルティング会社や学術グループが、独自にまたしばしば競合して活動している。そしてそれらの大多数がそれぞれ独自のWebサイトを持っている。
しかし、世界のTRIZコミュニティには、上記のような意味での「(分野を)代表する」Webサイトを持たない、ことに気づかされる。
The Official Foundation of G. S. Altshuller のWebサイトは、TRIZの創始者によるTRIZ文書の重要な情報源である。 このWebサイトは、アルトシュラーが関与した文書 (彼の死後 (1998年) に出版された彼の著作/書籍を含む) の原本を (その遺族が) 保存・公開することを意図しており、 2008年頃から一度も更新されていない。 したがって、TRIZの最近の発展を反映していない。
TRIZ Journal は、西側諸国におけるTRIZ普及の初期段階をリードした、デジタル・ジャーナルであった。1996年から10年以上にわたって、毎月数本のTRIZ論文を掲載し、活発に活動してきた。 しかし、その後の歴史は、オーナーが3回断続的に交替するという破綻状態になり、訪問者が減少していった。復活させようとする最後の試みが2018年に始まったが、残念ながら2020年4月に失敗した (その後、更新されていない)。
このように今日、TRIZは、多数のWebサイトを持ち、それらがさまざまなアプローチで、互いに競合しており、発表や議論のための共通の場(Webサイト)を持っていない。この状況は、TRIZコミュニティが (その中の人にも、外の人にも)混乱しているように見えている。
さまざまに異なるアプローチがあることは、(TRIZであれ何であれ) 進化のエネルギーと動機を示す。しかし、その健全な進化のためには、優れた作品を発表し、議論し、協力する共通の場が必要である。本提案の新しいWebサイトは、そのような場、すなわち、「この分野を代表するWebサイト」を提供しようとしている
TRIZ周辺の諸方法論(すなわち、創造的問題解決の方法論の全般)をめぐる状況は、多かれ少なかれ同様である。 異なる方法論やアプローチのために、さまざまな協会、会議、コンサルティング会社、学術グループなどが、より一層大きな規模で競合しつつ存在しており、それらの諸方法論を横断する共通の議論の場を持っていない。
1.3 "Systematic Innovation Review" Webサイトのスコープ
私たちの提案のWebサイトのスコープの焦点は、TRIZ(発明的問題解決の理論)とその拡張である。
現在、TRIZには、さまざまなアプローチがあることを、私たちは認識している。古典的TRIZ、工学におけるTRIZ、簡略化TRIZ、現代化TRIZ、拡張TRIZ(ビジネス/経営、IT/ソフトウェア、バイオなど)、再構成/再構造化TRIZ、他の関連諸方法論と統合して使うTRIZ、など。
私たちのWebサイトは、これらすべてのアプローチ (およびさらなる拡張) を、公正なやり方で受け入れ、扱い、科学的・技術的な議論をする。私たちが信じているのは、さまざまなアプローチが、それぞれ、異なる適用領域で独自の利点と需要を見出すことができることであり、それは、TRIZのような汎用の方法論においては、自然な進化である。
われわれのスコープはTRIZよりもさらに広く、前述のように、創造的な問題解決のためのさまざまな方法論の全般をカバーしている。 "Systematic Innovation Review" という名称は、このような諸方法論の広い範囲をカバーすることを意図している。
しかし、推進と運営の初期段階では、主としてTRIZに焦点を当て、TRIZ周辺の諸方法論はなんらかの招待ベースで含めるつもりである。その後、私たちがTRIZの分野で成功し、より広い分野の専門家たちに認知されてきたときに、私たちは私たちの組織とスコープを、そのような広い分野にまで拡大するであろう。
1.4 Webサイトの名称: "Systematic Innovation Review" (Webサイト)
私たちは、このWebサイトの名称を"Systematic Innovation Review"(Webサイト)、略して"SI-Review"と仮称することにした。
この意味は、体系的 (システム的) な方法論的アプローチによって、イノベーション(すなわち、創造的に問題を解決し、成功し(他に)影響を与えた事例)に貢献することを意図している。この名称は、 方法論のアプローチを適用する分野を限定していない(例えば、エンジニアリング、ビジネス、農業、医療、社会、人間関係、などいろいろ)。
"Systematic Innovation" という用語は、Darrell Mannがその著書 "Hands-On Systematic Innovation" (2002) の中で用いており、いくつかの周辺の方法論と統合した、現代化した形でのTIRZを表現している。 この用語はまた、体系的な(すなわち、TRIZ的な)方法論的アプローチを、(当時はほとんどまだ、アート(工芸)的であった)イノベーションのプロセスに導入することを意図している。
「Review」という語を名称に含めているのは、論文/記事を掲載・発表するという(ジャーナルの)役割とは若干異なることを (意味) 表現している(1.4節の議論を参照)。
私たちがWebサイトを利用する理由は、低コスト、迅速な発表、国際的なオープン・アクセス、利用者にとって無料/廉価、などである。
主要な記事は毎月(定期的に)掲載し、他方、アナウンス、ニュース、ユーザーからの通信などは、もっと頻繁に掲載することが、Webサイトを活発に保つために有効だろう。
1.5 記事のカテゴリー、性格、質
私たちは、さまざまなタイプのユーザー/読者のニーズを満たすために、複数のカテゴリーの記事を掲載する。そして、各カテゴリーごとに、(異なる) 適切な選択基準を用いて、信頼できる質の高い記事を掲載する必要がある。
科学的 (学術) 論文は重要なカテゴリの一つであり、方法や方法論、ツール、新しい知見などに関する研究を報告する。 それらには、科学的論文の選考基準を適用するが、その際に観点を少しシフトして、「新しい未発表の論文」から、「最近確立された研究の総説/レビュー」へと重点を変える。(本節末の補足を参照されたい。)
技術的や実践的報告が、第2のカテゴリーである。(現実世界での、あるいは教育/研修の場での)問題解決のための方法/方法論/ツールの適用、また、適用のためのプロセスや組織、さらに、具体的な適用事例、などを報告する。 選考基準は学術論文と同じではない。実践的な容易さ/有効性、そして具体的な状況の記述、などにより重みを置くべきである。
技術者やビジネスマンなどに向けた、方法とその応用に関する、標準的な(教科書的な)テキストは、もう一つのカテゴリーであろう。 確立された方法のエッセンスを、分かりやすい適用例とともに説明する、優れた記事を選ぶべきである。伝統的な方法/プロセスに固執しないで、より容易で効果的な方法の応用を採用するべきである。
学生や子供向けの教育テキストもまた、重要なカテゴリーである。 テキストは、学生や子供たちの、何らかのグループやレベルに向けて、注意深く作られるべきである。問題や応用の分野は、学生/子どもの興味を引くように選ぶべきである。また、方法のエッセンス(あるいは、もっと基本的に、考えるやり方)は、分かりやすく魅力的に、例やイラストなどの助けを借りて、説明する必要がある。
ニュースや活動のお知らせは、当Webサイトに掲載するべきもう一つのカテゴリーである。ニュース(特にイノベーションや特許に関連するものなど)は、科学/技術ジャーナリズムのセンスで掲載/報告されるだろう。 しかし、マスメディアや技術ジャーナリズムが数多く存在しているから、当Webサイトではあまり重きを置かずに、どのような方法やプロセスが成功事例で使われたかに、焦点を当てるのがよい。私たちの関連分野での諸活動の告知については、非商業的な、国際的/地域的/国内的な活動について(だけ)、掲載するべきである。 コンサルティング会社などによる営利目的の活動は、掲載しない。当サイトでは、営利目的の広告は一切掲載しない。
ホットな話題や重要な問題に関する議論は、特別なカテゴリーとして掲載するだろう。 (専門家たちや読者たちからの) 議論は、掲載前に編集者によってモデレート(調整)/選択されるだろう。
読者からの質問や通信を歓迎し、編集者による調整のもとで、定常的に掲載するだろう。
当Webサイトは英語だけを使う。 図、写真、表、要約スライドなどを活用するよう、著者たちに推奨される。 動画はYouTube や Vimeoにアップロードして、そのURLを当Webサイトの記事に表示するとよい。
―――
補足: 重要なポイント: 私たちのWebサイトは、「ジャーナル論文」よりも、「レビュー」を好む。
学術的なセンスでは、ジャーナルはしばしば、「新しい、未発表の、原著論文」であることを、発表の掲載基準としている。 しかし、当Webサイトで好むのは、(広義の)「レビュー」、すなわち、「オリジナルな記事で、著者自身の独自の仕事(著作)を俯瞰した(まとめた)もの、特定の分野やテーマに関して(自他の)参考文献をレビューしたもの、あるいは、基調講演タイプの講演、など」である。 私たちが重点を置くのは、「新しい、未発表のもの」ではなく、むしろ、「最近確立されたもので、すでにその一部が発表されているもの(の新しいレビュー)」である。私たちの分野には、多数の学会(会議)やジャーナルが存在し、「新しい、未発表の、原著論文」を受け付けている(そしてときには、総説やレビューの記事は却下される)ことを、理解している。 しかし、一般のユーザーはもちろん専門家たちでさえ、あまりにも多くの論文を調査して読むだけの、時間と関心を持っていない。 そこで私たちは、異なる評価基準で記事を選ぶことにより、これらの既存の学会/ジャーナル/Webサイトと、協力していくつもりである。 すなわち、それらの学会などは、新しい未発表の原著論文を掲載し、他方、私たちは、総説/レビューのタイプの記事で、(少なくとも)いくつかの論文ですでに部分的に発表した基盤をもっているもの、を掲載する。 このようなやり方で、当Webサイトは、優れた確立された著作(記事)を、(原著の参考文献を明示した上で)掲載・発表する(また、ときには再掲載する)ことができる。
1.6 良い原稿を集める/入手する方法
"Systematic Innovation Review"のWebサイトは、編集委員会(約10名の編集委員)と編集顧問団(約100名の編集顧問)を持ち、関連分野のさまざまな協会、国、アプローチ・グループから参加してもらう計画である。
これらの編集委員/顧問は、優れた作品を見つけることを常に念頭に置いていて、さまざまな学会、ジャーナル、個別のWebサイトなどで発表されたものに気を配っている。
SI-Review Webサイトへの掲載を希望する著者たちは、投稿の初期段階で、このような編集委員/顧問の中の誰かにアクセスすることが、推奨される。
当Webサイトに掲載する優れた記事の推薦を、編集委員および編集顧問の誰でも、編集委員会に提出することができる。
編集委員会は、"SI-Review" Webサイトへの(近い将来の)掲載の候補として、いくつかの作品(記事)を招待することを決定し、それらの候補のプールを常時蓄えておく。
著者から編集委員会に提出された原稿は、後述する査読プロセスに渡され、(その後に)"SI-Review" Webサイトに掲載される。
編集委員会および編集顧問団は、TRIZのコミュニティ全体(また、一部はTRIZ周辺のいくつかの分野)をカバーし、"SI-Review"の目的と理念を理解していることが重要である。
1.7 推進と運営のための組織
"SI-Review" Webサイトを運営するためには、(上に簡単に述べたように、)TRIZ (および関連する諸方法論) のコミュニティ全体を代表できる、編集委員会と編集顧問団を中心とし、それを編集スタッフとマネジャーがサポートするような、組織を設立すべきである。その組織のメンバーは、"SI-Review" Webサイトのビジョンと理念を共有することが必要であり、また、TRIZと関連諸方法論のグローバルなコミュニティが、そのビジョンと理念を広く理解し、支持することが望まれる。
私たちにとって重要な問題は、このようなビジョンや理念を、(特に初期段階において)誰がどのように推進して、グローバルなコミュニティにおいて、広範な支持と合意を形成できるかということである。現在のところ、このような提案を提出して議論すべき、公式で国際的な場が存在しない。
最初の提案者である中川徹は、幸いにも(5名の)WTSPグローバル共同編集者を持っている。それは、国際的なTRIZ指導者のグループであり、この5年間WTSPプロジェクトのために議論し、活動してきた。 (また、中川は彼らの大部分と20年以上の良好な仕事上の関係を持っている。) みんな合わせると、私たちは、MATRIZ、Altshuller Institute、ETRIA、SSI (Society of Systematic Innovation) のすべてと、積極的に活動してきた。
WTSPグローバル共同編集者のTRIZ指導者たちはそれぞれ、その専門家としての活動(例えば、出版/研修/コンサルティング/ネットワーキング/Webサイト/会議開催など)を通じて、世界のTRIZコミュニティ(の諸部分)でよく知られ、影響力を持っている。 WTSPを通じたTRIZ指導者/仲間たちのネットワークは、そのような例の一つに過ぎない。
この状況において、私たち6名は、"SI-Review" Webサイトの提案の、初期のプロモーションを、WTSPプロジェクトを基盤として自主的に、開始することを決心した。
私たちはこの提案を、(本Webサイト『TRIZホームページ』やその他の場所で)公開し、TRIZに関連する国際的/地域的/国内的な諸団体に提示し、その検討・議論を依頼する計画である。そして、それらからのフィードバックは、このWebサイトに掲載する。
しかし、このような大きな提案は、さまざまな組織や多くの団体・個人が協力して、より公式に議論され、推進されるべきものであると、承知している。
したがって、近い将来、この提案を世界的規模で推進し、議論するための組織が、何らかの共通認識のもとに結成されることを望んでいる。そのときには、このWebサイト (『TRIZホームページ』中の"SI-Review"サイト) の内容と役割は、そのような新しい準備組織に移されるだろう。
今のところ、このような準備組織をどのように作るのか、そのメンバーには誰がなるのか、その方向性をどのように決めるのか、などは分かっていない。すべては、さまざまな組織やグループからのフィードバックとともに、徐々に明らかになっていくだろう。
"SI-Review" のWebサイトを運営するための組織の最終的な形は、現時点ではまだ明確になっていない。私たちのビジョンや理念に沿った編集運営を行うためには、安定した財務基盤と良好な人事管理が必要である。組織の形成と運営の方法にはいくつかの選択肢があり、その選択が編集の運営やコンテンツ、その評価にある程度の影響を与えるだろう。
1.8 他の組織やWebサイト/ジャーナルなどとの関係
前述のように、"SI-Review" Webサイトは、他のTRIZ関連の組織(たとえば、国際的な協会/会議、Webサイト、ジャーナルなど)と競合しようとはしない。 私たちは、これらの団体と良好な win-win の協力関係を築こうと努めている。
"SI-Review" の編集委員会および編集顧問団は、TRIZ 関連の諸団体の TRIZ 専門家たちを、メンバーとして受け入れる。 このようなTRIZの専門家たちは、"SI-Review"の編集作業に直接貢献し、彼らの考え/理念/成果を"SI-Review"の活動に反映させることができる。
"SI-Review"は、このような個々のTRIZ関連団体の活動を想定し、奨励し、その告知(会議開催、出版など)を掲載し、それらのWebサイト/ジャーナルなどへのリンクを張る。
"SI-Review"では、これらの団体の出版物の中から、優れた作品を精選して論文/記事として招待し、査読プロセスを経て、"SI-Review"に掲載する。新しい未発表の論文や記事はそれらの個々の組織に投稿・掲載されるのに対して、総説/レビューの論文や記事で、(複数/多数の原著発表があり)ある程度確立されたものが、"SI-Review"に招待され掲載されることが、重要である。だから、"SI-Review"に論文/記事が掲載されることは、著者たちにとっても、その組織にとっても、名誉なことである。
論文/記事を"SI-Review" Webサイトに掲載する際、"SI-Review"は、(再掲載の場合に)出典を明記し、また、原著の論文/記事を参考文献として(出版物やURLの形式で)示すべきである。
著者や出版社から著作権の許諾を得ることは、もちろん従来どおり必要である。 著作権の取り扱いについては、"SI-Review"とTRIZコミュニティの多くの組織との間で、あらかじめ基本的な合意を作っておくことが望ましい。
このようにして、"SI-Review" は、世界の TRIZ 関連分野の多くの組織やグループと、競合するのではなく、協力し合う。
以下、2. 節~7.節を、英文ページ (2022. 9.16) から和訳して、ここに追加掲載する (中川、2025. 7.13)
2. われわれのユーザ/読者そして著者は誰か? コンテンツに対するニーズ
われわれのWebサイトのコンテンツに対する一般的なニーズを明確にするために、われわれのユーザ/読者たちのタイプ、そして著者たちのタイプを検討しよう。そのために、3 × 2 のグループの人々について考えよう。すなわち、3グループの人々 (専門家たち、 一般ユーザ/実践者たち、初心者/まだ全く知らない人たち) × 2グループの分野 (TRIZ、TRIZ周辺の他の方法論) に分けて考え、それらの人々がわれわれのWebサイトに対して、どんな行動をし、どんな欲求を持っているかを考えよう。
2.1 TRIZの専門家たち
TRIZの専門家たちは、当 "SI-Review" Webサイトに、著者としてまたときには編集メンバーとして、主たる貢献をする可能性があり、また他の著者たちが書いたさまざまな記事を、注意深く 批判的に読み・研究する可能性がある人々である。
TRIZの専門家たちは、学界で研究者や教員として働き、コンサルティング会社でコンサルティングや研修をし、産業界ではTRIZを使って問題解決をする、などをして 活躍している。これらの人たちはみなそれぞれに欲求を持っていて、自分の方法をさらに発展させたい、自分の能力をもっと伸ばしたい、自分の問題をもっとうまく解決したい、自分の仕事で成功したい、自分の組織で昇進したい、自分の業績や出版物で有名になりたい、などと願っている。これらすべての欲求が、 (TRIZ)方法論の開発と普及の原動力であろう。したがって、われわれの "SI-Review" Webサイトは、このような人びとに、場と機会を提供して、彼らが貢献して彼らの欲求をかなえるようにしなければならない。
彼らの職業や、(TRIZ)方法論に対するスタンス/アプローチや、作品発表のスタイルや場などは、さまざまに違っているから、"SI-Review" は、彼らの作品を掲載するにあたって、さまざまなカテゴリー/タイプ/スタイルを提供すべきであり、そのような違いを受け入れる寛容さを持つべきである。たとえば、学術界で働いているTRIZ専門家は、論文を査読付き学術論文として発表し、サイテーションインデックスに認められることを望む。しかし、コンサルタントや企業内実践者や学校教師などとして働いているTRIZ専門家たちは、学術界で引用されることをあまり重視しないだろう。
このような専門家たちにとって、他の専門家が書いた優れた著作を(自分と同様のカテゴリー/アプローチのものに限らず、 異なるカテゴリー/アプローチのものも)読むことは大事である。専門家たちはみんな、関心をもつ諸分野の優れた作品を見ようと探している。しかし、現状では、さまざまな作品がいろいろ違った機会/場所/言語で発表されているため、それは容易なことではない。そこで、幅広いカテゴリー/アプローチ/言語での(多くの)優れた作品が、精選されて、定期的に、"SI-Review"のような信頼できるWebサイトで、発表されることが強く望まれている。
さまざまなカテゴリー/方法/アプローチ などの優れた作品(特に、自分と類似のカテゴリー/方法でも、異なるアプローチや異なるグループによるもの)を読み・学ぶことは、専門家たちにとって有益で刺激的である。それらは、新たな発見や知識、批判、新たな方向へのひらめき、などのきっかけになるかもしれない。
そのような刺激が、関連分野の専門家たちの間で、議論、競争、協力などに、さらに発展するかもしれない。これらすべてが、(TRIZ) 技法とその応用のさらなる発展をもたらし、(TRIZ) 方法論の進化を刺激する結果となるであろう。
2.2 TRIZの一般ユーザ/実践者
ここで意味しているのは、TRIZ(の何らかの部分)をすでに学び、TRIZをさらに学習しつつあり、彼らのさまざまな問題を解決するために、TRIZを(適用しようと試みている、あるいは) 実際に適用している人々である。このような人々がわれわれの"SI-Review" Webサイトの主要な読者対象である。 すなわち、訪問者数として最も多く、われわれのWebサイトの記事を通じて情報を与えるのに、最も実り多い人々である。
彼らは、非常にさまざまな状況や職業で、勉強したり、働いたりしているだろう。彼らは, 学部や大学院の学生であったり、 学術界や産業界の研究者であったり、さまざまな産業界の技術者であったり、ビジネスやプロジェクトの管理者であったりするだろう。彼らは、 何らかのアプローチのTRIZを紹介され、(そのアプローチの) TRIZをすでにある程度学び、彼らの問題にその方法を適用することを準備中あるいは試行中であるかもしれない。そして、彼らはTRIZについてもっと学びたいと思っている。しかし、われわれが覚えておくべきことは、彼らの理解や経験や適用能力のレベルはさまざまに異なっており、彼らがなんらかのカテゴリとアプ ローチのTRIZを知っていることである。 したがって、彼らが種々の背景を持ち、TRIZ (および他のTRIZ周辺の)方法を学ぼうとするときの、態度や熱意のレベルもいろいろと異なっている。
彼らの多くが、新しく提案された方法よりも確立された方法を好み、科学論文よりも応用レポートを好み、概念的な説明よりも分かりやすい例を好む、などという場合が多いかもしれない。このように一般ユーザや実践者の関心が、専門家たちとは違うことを知った上で、われわれの "SI-Review" Webサイトは、適切なカテゴリー/アプローチ/レベル/スタイルのさまざまな記事を、提供しなければならない。
このような一般ユーザ/実践者たちが(TRIZの)諸方法をよりよく理解し、より高い適用能力を身につけられるように、それに適した良い論文/記事を提供することが、"SI-Review" Webサイトにとって、TRIZ (および関連の)諸方法論を普及させる、最も効果的で有用な貢献であることを、銘記すべきである。
このような人々からの感想、コメント、質問などのフィードバックが、"SI-Review" Webサイトの内容を改善するのに有用であろう。
2.3 TRIZの初心者とTRIZをまだ知らない人たち
TRIZをある程度知っている人の割合は、どの国でも現時点ではごくわずかである。したがって、その他の人々は、TRIZをまだ知らないか、あるいはTRIZの初心者であるといえる。初心者たちはTRIZの普及の最前線に位置するから、われわれの"SI-Review" Webサイトの読者対象として最も重要である。
TRIZをまだ知らない人々にもいろいろなタイプがある。TRIZがある程度導入されている分野でも、 TRIZをまだ知らない技術者や研究者たちが多く残っている。TRIZがほとんど導入されていない分野では、もっと多くの知的な人々が働いている。たとえば、工学以外の学問分野、製造業を除くさまざまな産業、ソフトウェア/医薬/化学などに関連する産業、ビジネス、社会サービス、教育、政治などの諸分野である。われわれの "SI-Review" Webサイトは、このような多くの人々に配慮した編集活動を行う必要がある。
初心者たちが理解し、興味を持つためには、入門的で魅力的な(多くの)論文/記事が必要である。簡単で効果的な諸方法と明快な応用例を示す必要がある。TRIZをまだ知らない人たちやTRIZの初心者たちには、さまざまなタイプの人があるから、その人たちに適したいろいろな論文/記事や文章を用意する必要があろう。TRIZをまだ知らない人たちに紹介するに当たって、古典的TRIZを紹介する従来からの伝統的な方法も含めて、いろいろな方法を受け入れるべきである。このために、"SI-Review" Webサイトは、初心者たちのための (広い意味での) TRIZ の論文/記事やテキストを複数種類、掲載するであろう。
子供たちや 学校の生徒たち、そして 学部学生たちは、まだTRIZを知らない人々のもう一つのグループを形成している。彼らは、(将来) さまざまな問題を創造的に考え、解決できるように、注意深く教育されるべきである。具体的な知識や方法(の教育)は(まだあまり)重要でないが、TRIZの本質や考え方は若いうちに教えられるべきであろう。したがって、われわれの"SI-Review" Webサイトには、TRIZ教育学と青少年向けの教育テキストという、特別なカテゴリを含むべきである。
2.4 TRIZ周辺の諸方法論の専門家たち
1.3節で述べたように、われわれの"SI-Review" Webサイトは、(初期段階ではTRIZ (とその拡張) に焦点を当てているが) そのスコープはTRIZよりもずっと広く、創造的問題解決の方法論全般を対象としている。われわれ (TRIZコミュニティの人々) は、TRIZ周辺の諸方法論を、学び/適用し/協力したいと思っており、また、われわれのTRIZ方法論をTRIZ周辺の諸方法論のコミュニティの人々にも紹介し、TRIZを理解/利用してもらって協力関係になりたいと願っている。このような学際的な交流と協力が、(創造的問題解決の方法論を社会のより良い発展に役立てるという目標を共有している)諸方法論全体の普及に大いに貢献する、とわれわれは信じる。
TRIZ周辺の諸方法論の専門家たちは、TRIZの専門家たちと多かれ少なかれ同じような状況にある。したがって、彼らのさまざまなタイプ、そして彼らのさまざまな関心とニーズは、2.1節で述べたことと同様であり、違いがあるとすれば、彼らの諸方法論へのアプローチがさらに多様なことであろう。
まず第一に、われわれは彼らからTRIZ周辺のさまざまな方法論を学びたい。そこでわれわれは、TRIZ周辺諸方法の専門家たち何人かを招待して、彼らの優れた論文や記事を "SI-Review" Webサイトに寄稿してもらい、(再) 掲載するだろう。目標設定、問題定義、アプローチ、ツール (技法) などにおける(われわれとの)違いは、われわれに刺激を与えるだろう。また、われわれの諸方法や活動に対する、彼らのコメントや議論も、実り多いものとなるだろう。
それらの専門家もまた、われわれからTRIZを学び、TRIZから何らかの影響を受けるだろう。学際的な交流と協力は、双方の方法論と活動にさまざまな影響をもたらすであろう。
"SI-Review" Webサイトの初期段階から、TRIZ周辺の専門家たちの何人かを編集顧問に招聘し、そして将来(数年後)には、"SI-Review" Webサイトのスコープを「創造的問題解決方法論の全般」に明確に拡大し、編集委員会と編集顧問団を再編成して、TRIZ専門家たちとTRIZ周辺の専門家たちの双方で構成することも、一案である。
このようにして、さまざまな方法論の相互理解と統合的/協調的な利用が、"SI-Review" Webサイトを通じて促進されることになる。長い目で見れば、さまざまな方法が協調的・統合的に利用され、分かりやすく効果的な方法へと進化することが、期待できる。
2.5 TRIZ周辺の諸方法論における一般ユーザ/実践者たち
TRIZ周辺のさまざまな方法論における一般ユーザ/実践者たちの数は、TRIZの一般ユーザ/実践者たちの数の100倍近いかもしれない。彼らの多くは、何らかの方法論に熟達したユーザ/実践者たちである。
彼らは、最初はTRIZの初心者としてTRIZに出会うことになる。したがって、2.2節で述べたように、彼らはまず分かりやすく、応用指向の記事を読みたがる。そして、TRIZの長所について、いつ、どこで、どのように適用し、どの程度の効果があるのかを、知りたいと思っている。
したがって、"SI-Review"の記事は、(TRIZは初めてだが、他のなんらかの方法論はよく知っているという)このようなユーザにとって、分かりやすく、(図などにより)明快なのがよい。彼らは、異なる方法論の専門家たちの論文/記事やその間の議論から、多くの指針を得、影響を受けることであろう。
2.6 どの方法論をも知らない人々
創造的問題解決のためのどの方法をも知らない人々は沢山いる。経営者、ビジネスマン、普通の技術者、学生たち、などである。
マスメディア、書籍、教科書、Webサイトなどの紹介記事(またはニュース)は、彼らにある程度の影響を与えるかもしれない。"SI-Review" Webサイトでは、そのような情報源 (記事やニュース) への簡単な言及が有用であろう。
TRIZ (および関連する諸方法) の簡単な紹介を"SI-Review"のWebサイトに掲載すべきである。
2.7 "SI-Review" Webサイトにおける、論文/記事のカテゴリ分けの必要性
2.1節から2.6節までの議論で明らかになったのは、"SI-Review" Webサイトでは、種々のタイプの多様な背景をもつ、無数の読者/ユーザ/著者たちの要求を満たすために、さまざまなタイプの記事が必要だということである。
読者たちの混乱を避けるために、"SI-Review"は、記事や論文を、その性質や対象読者などに応じて、明確にカテゴリ分けするべきである。 そのような分類のアイデアについては後述する (6.3節参照)。
3. "SI-Review" Webサイトの推進/運営組織
1.7節(推進/運営組織)において、本提案の推進を開始する必要性、また、その提案をさらに推進し、"SI-Review" Webサイトを健全に運営する組織を樹立するために、国際的な協力を得ることの重要性を論じてきた。これらは、「TRIZ (と関連の諸方法論) の分野を代表するWebサイト」を設立するというビジョンを実現する上で、最もデリケートで困難な課題である。
本節では、このような問題に対するわれわれの現在の考え方とアイデアを提示する。そして、あなたがた、TRIZ コミュニティに属する多くの人々/グループ/組織の皆さんに、検討いただき、オープンでグローバルな議論のためにフィードバック下さることを、お願いする。
本節の後半では、"SI-Review" Webサイトを運営する組織について、さまざまなタイプとその可能性について考えてみたい。それらの記述は現在、その実現可能性が不透明であるため、非常に漠然としている。われわれは今後、どのようなタイプの組織が考えられるかを、ビジョンの一部として慎重に検討する必要があろう。
3.1 提案の開始: WTSPグローバル共同編集者たちによる提唱
1.7節で説明したように、本提案のアイデアは、最初に中川徹がWTSPプロジェクトの活動を通じて得たものであり、WTSPグローバル共同編集者たちの内部で示され、(熱く)議論された。WTSPグローバル共同編集者の間では、当初は「ユートピア的幻想」といった反応もあったが、それを乗り越えて、"SI-Review" Webサイトのビジョンを実現するために、本提案を開始するという総意が得られた。
現在、本提言書の共著者6名が、"SI-Review" Webサイト提案を提唱するための有志グループを形成し、中川徹がそのリーダーを務めている。
われわれは、「"SI-Review" Webサイトを樹立するための提案と議論」というサブサイトを、既存のWTSPサイト内に立ち上げた。URL: https://www.osaka-gu.ac.jp/php/nakagawa/TRIZ/eTRIZ/eWTSP/eSIReview/ 。今後、このサブサイトをオープンな発表と議論のためのプラットフォームとして使い、"SI-Review" Webサイトの提案を推進していく計画である。
3.2 さまざまな組織/グループの協力を得るための、われわれの基本的な考え方
全世界のTRIZコミュニティのさまざまなグループの協力を得ようとする前に、我々の基本的な考え方を(再度)述べておきたい:
"SI-Review" Webサイトは、既存のさまざまな組織/グループ/会議/ジャーナル/などと競争しようとするのではなく、それらの組織/グループ/会議/ジャーナル/などと、Win-Winの関係で協力しようとする。
われわれは、歴史的、地域的、方法論的な(わずかな)違いを反映して、3つの主要な国際TRIZ組織が存在するという事実を、受け入れる。
"SI-Review" Webサイトは、その編集委員会および編集顧問団を形成するに際して、さまざまな組織/グループ、そしてさまざまなアプローチ/方法からのメンバーを受け入れる。
"SI-Review" Webサイトは、TRIZおよびその拡張(そしてさらに、TRIZ周辺の諸方法論)の、さまざまなアプローチ/方法(の論文や記事)を、その質を保証するための査読(ピアレビュー)のもとに、受け入れる。
"SI-Review" Webサイトは、他の諸組織/グループの方針や活動を統制/介入しようとはしないが、なんらかの重要な課題について、公開の討論をWebサイトに掲載することはあろう。
3.3 TRIZ国際組織と協力を得ること: MATRIZ、AI、ETRIA、SSI
MATRIZ (International TRIZ Association) は、1989年から活動していたTRIZ Associationの後継として、1997年にG. Altshullerによってロシアで設立された。90年代以降、徐々に西側世界に拡大していった。各地域(各国)のTRIZスクール/協会/グループなどの連合体として形成されている (現在46の組織が加入している)。最近、MATRIZは、TRIZフェストやTRIZ開発者サミットの開催、TRIZ認定制度の運営などに、積極的に取り組んでいる。
MATRIZは、その起源と長い歴史、そしてアルトシュラーによって認定された多くのTRIZマスターたちを擁することから、TRIZの世界における権威者の地位にあり、TRIZの世界的なリーダーでありたいと考えている。しかし、同じ理由からMATRIZには、TRIZの拡張に関して、伝統主義と保守主義の傾向がある。
したがって、MATRIZと合意を形成し、協力し合うことは、われわれにとって最も重要であり、またデリケートなことである。われわれのスタンスは次のとおりであろう。
伝統主義は、TRIZの方法論を古典的/伝統的な形で維持することに固執する。 あるTRIZマスターが国際会議で、「TRIZを触るな(変えるな)」という論文を発表したことがある。類似の論文が査読を通過して"SI-Review" Webサイトに掲載されるかもしれない。伝統主義と進歩主義との間のオープンな議論は、"SI-Review" Webサイトでは有意義であろう。
MATRIZはTRIZ認証制度を運用している。われわれはその長所を理解しているけれども、偏狭な伝統主義による弊害のために、その制度に関与しないつもりである。MATRIZは、認証のために、古典的TRIZの伝統的な形式を踏襲した「標準化」教科書を提示している。われわれは、今日では、たとえば、「物質-場のモデリング」を「機能分析モデリング」に置き換えてもよいし、アルトシュラーの矛盾マトリックス (70年代初期に作られ、39個のパラメータを持つ) を、Darrell Mann の新しい矛盾マトリックス (2010年に新しく作られ、50個のパラメータを持つ) に置き換えた方がよい、と考える。TRIZの教科書を古いスタイルで「標準化」することは、TRIZのさまざまな積極的な進化を妨げるという弊害があると、われわれは考える。
もちろん、世界中の人々は、MATRIZで活動するTRIZ専門家たちとその活動から、多くを学ぶことができる。そこで、われわれは、MATRIZと合意をつくり、MATRIZの人々との良好なWin-Winの協力関係のもとで、"SI-Review" Webサイトを樹立・運営したいと考えている。われわれのWTSPグローバル共同編集者のうちの2人(S. LitvinとV. Souchkov)はMATRIZの主要メンバーである。
[注(中川、2025. 7.13): 2022年 9月初旬に、MATRIZのBoard(幹部会)が改変され、その結果、多数(大半)のTRIZ MasterたちがMATRIZを去って、新たに「MATRIZ Official (International Official TRIZ Association)」を設立した。MATRIZ Officialは、その後毎年国際会議ITC (International TRIZ Conference)を開き、活発に活動している。伝統主義が強いMATRIZから、より進歩主義的な人々がMATRIZ Officialに別れたと思われる。"SI-Review" は、ここに書いているとおり、この両組織とWin-winの関係を作って行きたいと、考える。]
The Altshuller Institute for TRIZ Studies ((TRIZ研究のための)アルトシュラー協会) は、1998年に米国で、TRIZを特に西側世界に普及させるための世界的センターとして、設立された。個人ごとのメンバーシップによって構成されている。毎年定例の国際会議 TRIZCONを、米国の諸都市を回って開催している。アルトシュラー協会のWebサイトには、TRIZCONの告知やProceedingsのほかに、会員から投稿されたさまざまな記事が掲載されている。
アルトシュラー協会は、00年代には非常に活発であったが、近年は苦境にあるようである。われわれは、同協会とは設立当初から良好な関係を保っている。
ETRIA (European TRIZ Association) は2001年に設立され、毎年TRIZ Future Conference (TFC) をヨーロッパ各国を回って開催している。ETRIAは欧州に強固な基盤を持ち、学術的なアプローチ、特に産学連携の良さが特徴である。
TFCで発表された科学的論文はSpringer社から(citation index 付で)出版され、一方、実践者の論文は主催大学が運営する技術雑誌の特集号の形で出版されてきている。われわれは、これらの論文を出版してきているETRIAの経験を学びたいと思う。ETRIAの5人の創立メンバーのうちの3人が、われわれWTSPグローバル共同編集者(6人)に加わっており、われわれはずっとETRIAと良好な関係を保っている。
SSI (Society of Systematic Innovation)は、TRIZの分野で4番目の国際団体である。台湾を本拠にしており、(その組織名を少し変えてきたが)2010年から国際会議ICSI (International Conference on Systematic Innovation)を運営している。SSI はまた、2010 年からジャーナル IJoSI (International Journal of Systematic Innovation) をダブルブラインド方式の査読で発行している。ICSIやIJoSIへの参加/寄稿は、台湾や中国、近隣のアジア諸国からのものが多いようである。われわれWTSPグローバル共同編集者の何人かは、彼らと緩やかな協力関係を築いている。
まとめると、TRIZコミュニティ全体の国際協力により"SI-Review" Webサイトを設立しようというわれわれの提案は、4つの国際協会すべて(すなわち、MATRIZ、AI、ETRIA、SSI)に理解され、支持されるものと確信している。
3.4 TRIZコミュニティにおける大きな対立 --- どうすれば解決できるか?
多くのTRIZ専門家たちが、TRIZコミュニティにおいて大きな対立を経験したことがある、と言う。TRIZの異なるアプローチを持つグループ (あるいは企業や組織) 同士が、産業界や国々の市場シェアをめぐって、しばしば競争し、時には争っている。
われわれは、ほとんどの対立の根本的な原因は、TRIZがそれ自体で、また現実世界のさまざまなニーズを満たすために、大きく拡張されてきた、という事実にあると考える。TRIZはその中核部分においてすら、大きな知識ベースを用いた複数の(大きな)技法を持っており、そのため、問題解決に適用するプロセスが(複数の選択肢を持ち)複雑で、専門家でないユーザには理解しにくく、あまり効果的でない。また、さまざまな分野 (たとえばビジネス/経営) におけるさまざまなタイプの問題 (たとえば将来予測) を解決するニーズが、TRIZのフロンティアの拡張を強く求めている。そのためTRIZは、ハイエンドのフロンティアでさまざまな側面/アプローチを拡張しているが、他方、TRIZの多くの一般ユーザたちは、ローエンドで、より単純でより効果的な方法を求めている。これは、破壊的イノベーションが起こるだろう典型的な状況である。そのような状況では、正統的なハイエンド開発者たちと新しいローエンド開発者たち (部外者を含む) との間に対立が生じる。
このような認識のもと、われわれ"SI-Review" Webサイトは、TRIZの多様なアプローチを、その一部を抑圧することで統一しようとはしない。さまざまなアプローチの論文や記事が、公正な形で書かれ、査読制度を通過したものである限り、われわれのWebサイトに掲載され、オープンに議論されることを認める。さまざまなTRIZ専門家たちとユーザたちとの間のこのようなオープンな議論が、著者たちと読者たちとの間でしだいに何らかの形に落ち着き、何らかの (複数の) 方向性に収斂していくだろうと、われわれは期待している。それはTRIZのような方法論にとっての自然な進化であろう。われわれは、一つのアプローチ/方法を「標準」として選ぼうとはしない。「対立を解決」しようともしないし、「異なるアプローチを統一」しようともしない。新しいアプローチ/方法が出現して、対立を解決し、諸アプローチを統一する新しい方向性を自然に示す、のを待つであろう。
さらに、我々がもっと認識するべきなのは、創造的問題解決の効果的な諸方法と実践を求める市場の全体は、ずっと大きいことである。
3.5 "SI-Review" Webサイトの提案推進および運営のための組織の可能な形態について
"SI-Review" Webサイトの設立のわれわれの初期提案が、(4つの国際協会を含む) TRIZコミュニティの大部分の人々の支持を得たと仮定しよう。するとその次に、われわれが考え決定していかないといけないのは、どのようにして(特にどのような組織で)、ビジョンをより明確にし、合意を形成し、"SI-Review" Webサイトの開設の詳細を決定し、さらにどう運営していくかについての、推進方法である。
準備段階の組織は、一時的なもので、運用段階の組織とは異なるものであってもよいだろう。そうであっても、"SI-Review" Webサイトを運営するための組織の形態を、準備の目標として考えておく必要がある。
次表に、"SI-Review" Webサイトを運営する組織として考えられる、6つの形態の案を大まかに示す。ただ、私(中川)にはほとんど経験がないので、多くの皆さんのご助力をお願いしたい。
タイプ
基盤
運営
編集
協力関係
(A)
"SI-Review" 協会
会員費(個人、グループ、協会)
会長
編集委員会
+メンバー諸協会と強く協力する (?)
(B)
NPO法人 "SI-Review"
会員費
+ 出版収入マネジャ
編集委員会
+会員会員のグループと強く協力する
(C)
"SI-Review" 社
出版収入
マネジャ
編集委員会
協力関係は弱いかもしれない
(D)
"SI-Review" 財団
寄付
+ 出版収入理事長
編集委員会
+編集顧問団個人、グループ、協会との良好な協力関係
(E)
"SI-Review"プロジェクト (EU)
(EU)基金
+研究・出版活動リーダー
編集委員会
+プロジェクトメンバー+アドバイザープロジェクトメンバー間の強い協力
(F)
"SI-Review"プロジェクト(自主的)
寄付
+ 自主的活動リーダー
編集委員会
+編集顧問団自主的なメンバーの強力な連携
3.6 TRIZコミュニティの支援による"SI-Review"プロジェクトの形成
現在、われわれ (WTSPグローバル共同編集者) が、"SI-Review" Webサイトの初期の推進に取り組んでいるのは、(F) 自主プロジェクトの形態である。この形態は柔軟で、簡単に始められ、プロジェクト内部の合意形成が容易で、明確なビジョンを持ちやすい。しかし、コミュニティからの承認もなく、人々や組織に影響を与えるようなことを決定する力もなく、資金力もほとんどない。だから、これは提案を推進する初期段階だけの、一時的な自主グループ(おそらく、私的有志プロジェクト)である、ことをわれわれは承知している。
近い将来、われわれは、"SI-Review" Projectという名称を持ち、多くの人々/組織(4つの国際協会を含む)から明示的に支持される、新しい自主プロジェクト(まだ (F) の形態である)を持ちたいと考えている。おそらく、そのような新しい自主プロジェクトは、さまざまな組織/国/アプローチ/背景から自発的に集まった20-30人のTRIZ (およびTRIZ周辺) の専門家たちによって形成され、"SI-Review" Webサイトの樹立を準備するために、オープンに議論し決定するであろう。その議論と(予備的な)決定は、オープンに開示され、さらに議論と準備を進めるために、それぞれの組織/グループなどにフィードバックされるべきである。このようにして、"SI-Review"プロジェクトは、公式なものではないが、実質的に"SI-Review" Webサイトを立ち上げる準備のための、さまざまな方針とその詳細を決定する能力を持つことになる。
このような広く支持される自主プロジェクトが、どんなプロセスで形成できるかは、現時点ではまだわからない。
"SI-Review" Webサイトを運営する組織の形態については、まだ議論されていない。(A)〜(F)の6形態を検討し、今後段階的に準備していく必要がある。この課題ついての議論や選択は、もう少し先まで ("SI-Review"プロジェクトがスタートするまで)先延ばしにするべきであろう。
4. 編集委員会、編集顧問団、および編集室とスタッフ
ここで、"SI-Review" Webサイトの編集のための実際的な組織について考えてみよう。それは、上記3.5節で議論した運営・管理の形態とはほぼ独立している。ここでは、編集委員会、編集顧問団、および編集室(事務局)とスタッフについて議論する。
4.1 編集委員会
編集委員会は、"SI-Review" Webサイトのコンテンツを作成し、"SI-Review"自体の方針・方向性を決定する責任を負っている。したがって、編集委員会は "SI-Review" という組織の頭であり、本体である。 ("SI-Review"の組織形態によっては、編集委員会の上に組織の長としてPresident/Manager/Directorなどが存在する場合もある)。
編集委員会は、編集委員長(および場合によっては編集副委員長)を含む(ほぼ)10名の編集委員によって構成されるだろう。
編集委員は、(広い意味での) TRIZ (およびTRIZ周辺)の専門家であるべきである。彼らは(全体として)、さまざまな方法論的アプローチから、さまざまなカテゴリーから、さまざまな経歴 (たとえば、学界/コンサルタント/産業界/その他) から、さまざまな組織から、さまざまな国から、来ていることが望ましい。
編集委員への(候補)推薦は、自薦、個人および団体からの推薦などによって行うことができる。編集委員への任命は、何らかの選挙や、準備のための交渉/協議によって行われるだろう。(これらのプロセスはまだ一切明確になっていない)。
編集委員長は編集委員会のメンバーの中から決定する。(または、編集委員候補者の中から編集委員長をまず決定し、その後、選挙その他の方法で編集委員を決定する。)(このプロセスはまだ明確になっていない)。
編集委員会のメンバー(すなわち、編集委員)は、"SI-Review"のコンテンツのどれかのカテゴリーと、編集委員会のさらにいくつかの役割を担当する。
任期は2年とし、延長(重任)を許す。
編集委員は無報酬の名誉職とするのが通例。(特に編集委員長の負担を考えると、何らかの報酬が必要かもしれない)。
4.2 編集顧問団
"SI-Review" Webサイトには、多数(100名程度)の編集顧問(編集アドバイザー)からなる編集顧問団を持つべきである。彼らは編集委員会の編集業務全般、方針決定などをサポートする役割を持つ。
編集顧問は、"SI-Review"に掲載する価値のある優れた仕事(著作)を編集委員会に推薦したり、編集委員会からの問い合わせに対して助言を行ったり、編集委員会にさまざまなアイデア/意見/コメント等を提案したりできる。
また、編集委員会から依頼があれば、投稿論文の査読者としても奉仕する。
編集顧問団のメンバーは、 (広い意味での) TRIZ (およびいくらかのTRIZ周辺) の専門家 (あるいは実践者) であり、編集委員会のメンバーよりも多様な構成にする。その全体として、さまざまな方法論、さまざまな方法的アプローチ、さまざまなカテゴリー、さまざまな背景 (たとえば、学界/コンサルタント/産業界/その他と、専門家/実践者/ジャーナリスト/経営者/その他)、さまざまな組織、さまざまな国、などから来ていることが望ましい。
編集顧問団のメンバーへの候補登録は、自薦、編集委員による推薦、個人・団体からの推薦などにより受け付ける。編集顧問団のメンバーへの委嘱は編集委員会が行う。(これらのプロセスはまだ明確になっていない。)
任期は2年とし、延長(重任)も可能とする。
4.3 編集室/編集室スタッフ
編集室は編集委員長の監督の下に設置される必要がある。
[注(中川、2025. 7.11): 「編集室」という用語を、「編集/掲載の実務を担当する部門」の意味に使う。一方、編集委員長をトップとし、編集委員会、編集顧問団、編集室の全体を含み、編集活動の一切を担う部門を「編集部」と呼ぶことにする。英語の文面ではこの区別が曖昧であった。]
編集室はバーチャルなものとすることができ、クラウド/インターネット上のウェブサーバー、編集ツール、通信ツールなどをフルに活用する。
編集スタッフ(編集室のスタッフ)として望ましいのは、プロの編集者(一人)、ウェブデザイナー&テクニカルスタッフ(一人)、秘書スタッフ(一人)である。そのようなスタッフをボランティアで集められるだろうか?それとも雇う必要があるか?(後で議論する必要あり)
5. 論文/記事の原稿作成プロセス
5.1 編集部による準備
"SI-Review" Webサイトを正式にスタートさせる前に、そのすべてのシステムを準備しなければならない。すなわち、さまざまな方針、スキーム、ルール、ハードウェア/ソフトウェア/通信システム、人員、などである。それらの主な項目をメモとして下記に挙げる。
ポリシーの策定、告知、編集委員会/編集顧問団/編集室の構築、査読システムの構築、論文/記事の募集、などが必要である。[より広範には] 公的な行政上の登録や、財政基盤の確保、なども必要である。
サーバーやプラットフォームの準備: ウェブサーバー、編集プラットフォーム(Easy Chairなど)の準備。
Webサイトの準備: アクセスコントロールの設定、フォルダ構造の構築、Webデザインの決定など。
記事の準備: 論文/記事のカテゴリの設定、執筆者へのガイドライン、論文/記事原稿のテンプレートなど、
5.2 論文/記事の収集/招待: 候補原稿のプール
編集委員と編集顧問たちは、さまざまな学会、学術誌、Webサイト、出版物等での発表や論文を見て、"SI-Review" Webサイトへの掲載候補として推薦するに値する優れた仕事(論文/記事)を見つけることが望まれる。
編集委員と編集顧問たちによって提案・推薦された論文/記事の候補をプールする(場を設置する)。
この候補論文/記事のプールは、Easy Chairのような編集用プラットフォームに、学会サイトのような形で設置することができる。各(提案)候補と(後の段階の)原稿へのアクセスには、以下のような特別なルールを設けてもよい:
編集委員と編集顧問たちは、所定の「論文/記事提案書」に必要事項を記入の上、論文/記事の候補を提案/推薦することができる。(編集委員や編集顧問でない著者は、初期段階で適当な編集委員/顧問に連絡し、協力を得ることが推奨される。著者と支援編集委員/顧問が協力して論文・記事提案書に記入し、支援編集委員/顧問がプールに提出することができる)。
論文/記事の提案/推薦は、(通常の学会における著者によるアブストラクトの申請と同様に)編集委員/顧問が(プールに)申請できる。すべての編集委員/顧問は(プール内の)いずれの提案/推薦にもアクセスできる。また、提案された論文の著者(の可能性がある者)は、(編集委員/顧問でない場合には)その特定の提案にのみアクセスすることができる。編集委員/顧問は、論文/記事提案書(の支持者欄に)自分の名前を追記して、その提案の指示を表明できる。
編集委員会は、これらの論文/記事提案の中から選択/決定して、(任意の示唆/要望を付して)著者に寄稿を依頼する。
その次の段階で、論文/記事の原稿を寄稿して査読プロセスに載せる段階では、著者だけが原稿そのものをアプロードすることができる(また必要なときに改訂できる)。そして、(編集委員と編集室スタッフ以外には)指定された査読者(複数)だけが原稿にアクセスできる。
5.3 著者による論文/記事の原稿の提出
著者は、指定されたテンプレートを使用し、編集委員会からの示唆/要望に従って、原稿を作成する。
著者(たち)は、編集委員会が招待した論文/記事の原稿を、編集プラットフォーム(例:Easy Chair、5.2項参照)に提出する。 原稿の提出は、著者(代表)が編集プラットフォームに直接アプロードできる(編集室が許可設定をしておく)。
編集プラットフォームに提出された原稿は、(編集委員および編集室スタッフの他には)その著者(代表)および査読者(たち)だけがアクセスできる。原稿の作成および編集プラットフォームの操作に関して、著者は編集室スタッフの支援/指導を受けることができる。
5.4 査読プロセス: シングルブラインドの査読方式
原稿はつぎに査読プロセスを通る。
"SI-Review" Webサイトは、ダブルブラインドの査読プロセスではなく、シングルブラインドの査読プロセスを採用する。この選択は以下の判断による:(a) 論文/記事の提案プールの段階で、タイトル(案)、要旨、著者(たち)という情報のセットが編集委員/顧問の全員に公開されていること。(b) "SI-Review"の論文/記事の性格上、「最近確立された仕事の総説・レビュー」(1.5節)であるため、通常、複数の既発表文献をベースにしていること。(c) 査読者たちが、著者が誰であるかに関わらず、内容を公正に判断するものと信頼するべきであること。(査読者の判断が公正でないことが明らかな場合には、編集委員会が対応し、査読者に適切な警告/注意を行う)。
査読の基準は、われわれの"SI-Review"の目的に対応するように、通常の科学ジャーナルとは若干異なり、またカテゴリーによっても異なるように、あらかじめ設定する必要がある。査読の主な目的は、原稿の質をチェックし、できれば改善することであり、原稿の正しさ、明瞭さ、有用性、新規性、独自性、参考文献の公正な引用、などの点で、"SI-Review" Webサイトに掲載する価値を保証することである。
編集委員長は各原稿に1名+2名の査読者を指名する。 最初の査読者は、論文/記事提案プールに提案を提出した編集委員/顧問(または、その編集委員/顧問が指名した別の編集委員/顧問)とする。他の2名の査読者は、編集委員/顧問またはその査読に適したその他の人とする。
編集委員会は、2週間ごとに、これらの原稿の査読プロセスに対するGO/NGを決定する。
必要な場合には、編集委員長が編集委員/顧問の中からさらに1名の査読者を任命する。
査読を通過した原稿は、著者が最終原稿(多くの場合、査読者から示唆された微修正を加えたもの)を編集プラットフォームにアップロードする。
6. "SI-Review" Webサイトの構成と編集運営
6.1 "SI-Review" Webサイトの立ち上げ: クラウド上のWebプラットフォーム
"SI-Review"は、クラウド上のウェブサーバーに独自のWebプラットフォームを持つべきである。そこでは、原稿をWebページ(の一部)に変換するための編集作業を行い、Webページを掲載して、Webサイト全体をオープンに公開し、管理する必要がある。
"SI-Review"のWebプラットフォームには、2つのサブサイトを設置することが考えられる:
第一のサブサイトは、作業用サブサイトであり、最終原稿を利用して"SI-Review"のWebページを作成するための編集作業のすべてを行う。作業用サブサイトはクラウド上のアクティブな作業用プラットフォームであり、編集室スタッフ、編集委員、およびそのアシスタント(たち)が協力して運用する。作業用サブサイトは、一般公開しない。
作業用サブサイトは、"SI-Review" Webサイトの3つのエディションを保持する。(a) 現行のドラフト版、(b) 公開予定版、(c) 公開版のアーカイブ。
第二のサブサイトは、通常の意味での「"SI-Review" Webサイト」であり、一般公開のサイトで、一般の利用者が閲覧/利用できるように "SI-Review"のコンテンツを掲載する。この公開サイトは、常に現行の最新版 "SI-Review"を掲載し、一般利用者がインタラクティブに閲覧/利用できるようにする。
Webサイト(特に作業用サブサイト)の編集には、Adobe DreamWeaverなどの、優れたソフトウェアツールを使用する。
6.2 "SI-Review" Webサイト内の基本的な編集操作
現行ドラフト版は、編集プラットフォーム(Easy Chairなど)からダウンロードした新規の論文/記事の最終原稿をベースに構成する。それらは、"SI-Review"のWebページへと編集/調整し、整合性を保つ検証を行う。この現行ドラフト版の編集作業は、まず編集委員が行い(あるいは指示し)、編集室スタッフが仕上げる。
公開予定版は、現行の公開版をベースにして、現行ドラフト版から来る新しいWebページを適応させ、統合したものである。既存のWebページを改訂して、新ページを反映させ、ハイパーリンクを設定する、などの修正が必要であり、改訂の整合性をテストすることが重要である。この版の編集作業はすべて、編集委員長の監督の下、編集室スタッフが行う。
公開予定版を、次回の掲載予定日までに、十分にチェックしテストすることが必要である。
(テストを完了した)公開予定版は、公開サブサイトにアップロードされ、公開サブサイトの現行最新版に差し替えられる。
"SI-Review"の新規掲載は、編集スタッフが定期的(例えば毎月第一営業日)に行う。
更新された公開版は、編集委員/顧問の有志によって迅速にチェックされ、必要であれば編集室スタッフによって修正される。
(c) 公開版のアーカイブは、現行公開版をバックアップすることによって、定期的に(例えば毎月の掲載の1週間後に)更新される。この作業は編集室スタッフが行う。公開版アーカイブは、記録を目的として、毎年新たに保存するとよいだろう。
6.3 "SI-Review" Webサイトの構造: カテゴリ分けしたセクション群
"SI-Review" Webサイトは、いくつかのセクションにカテゴリ分けされる。考えられるセクションは以下の通りである:
科学的論文、 応用と実践、 基礎と入門、 子供たちと学校、 ドキュメント、 ニュースと活動。
セクションごとに、記事を収集、査読、編集、掲載する独自のやり方(ガイドライン)を持つ(定めておく)べきである。編集委員会の中で、各セクションを担当するセクション編集者がいることが望ましい。
"SI-Review"のトップページには、全セクションについて、各セクションの毎月の新着記事リストが表示され、3か月間のものが保持される。
各セクションごとに、(すべての)記事は蓄積され、必要に応じてさらに分類される。すべての記事を、永続的に、アクセス可能で活用される状態に保つ。これは、われわれの"SI-Review"の理念を反映したものである。すなわち、われわれは「新しい、未発表の、原著論文(著作)」ではなく、「最近確立された、原著論文(著作)」を公表することを意図している、のだから。
(各)記事の後ろに「コメント&討論」の短いノートがあると有用かもしれない。読者たち、特に編集顧問たちが、そのようなノートを(記名つきで)書くことが奨励される。
6.4 参考文献と関連記事へのリンク
出典の参考文献は、リンクつきで明確に示さなければならない。これは特に、他のジャーナル/Webサイトなどから論文/記事を再掲載する場合や、既に他のジャーナル/Webサイトなどに掲載された論文/記事を改訂/統合する場合に重要である。
論文/記事は、"SI-Review"の内外の論文/記事への(完全な)参照と、それらへのリンクを示すべきである。
"SI-Review"の論文/記事には、リンクで容易にアクセスできること(トップページから、なんらかの索引ページや関連記事のページを経由で)。
"SI-Review" Webサイト内に、インタラクティブなキーワード検索機能を、設置することが望ましい。
7. 読者による"SI-Review"の利用
7.1 "SI-Review"の利用: 登録させるか、否か
"SI-Review" はオープンアクセスで、無料を原則とする。(ただし、例外的なケースを検討する可能性もある(後述)。)
読者に(有償あるいは無償で)登録することを求めるか否かは、検討し選択するべきである。
登録不要とすることは、読者たちにとっても、また"SI-Review"にとっても、より簡便である。読者たちのアクセスや行動を(たとえばGoogleアナリティクスなどにより)統計的に分析することは、有用であり、それで十分かもしれない。新しい記事を計画通りの日時に定期的に公開すれば、記事更新のアナウンスを読者たちにプッシュ(メール配信)しなくても、十分かもしれない。
他方、読者登録は、"SI-Review"が読者の特性を知り、読者に情報をプッシュしたい場合に有効である。通常、読者登録は、読者の名前、所属、特性、興味など、そしてパスワードを要求する。パスワード管理は読者にとって煩わしいことである。読者たちに個々に情報をプッシュするには、さまざまな手間がかかる。たとえば、メールアドレスの管理、読者に適した情報を(選択)設定すること、などである。
"SI-Review"の会員登録をユーザが選択できるようにするのが、一つの代替案となる方針かもしれない。
代替案の方針として、(パスワード)登録した"SI-Review"会員に、"SI-Review" Webサイト内のより詳細な文書にアクセスできるメリットを与えることも、考えられる。
われわれにとって、"SI-Review"会員を、無料にするか、定額制にするか、あるいは、購読/ダウンロードに応じて有料にするかなど、さまざまな選択肢が考えられる。(そして後者の場合には)どの文書を有料にするか、料金をいくらにするか、なども決めなければならない。
--- この有料会員制の問題は、われわれの財政基盤の問題と関連している。(8.2項参照)
7.2 読者による利用の許諾
本Webサイトに掲載された全ての論文/記事に対して、"SI-Review"がその完全な著作権を持つ。同時に、著者たちは自分の論文/記事に対して著作権を持ち、"SI-Review"の源出典を明記することを条件に、非営利の他のいかなる場所にも論文/記事を再掲載または再出版することが許される。
読者は、"SI-Review"の論文/記事を個人的に利用するため、閲覧、印刷、ダウンロード、保持することが許される。論文/記事の一部(図表を含む)の引用は、非商用目的であれば、引用文献を明示することで認められる。
論文/記事の全体または一部(図表を含む)を営利目的で使用することは、"SI-Review"の書面による許可を得る必要がある(有償の場合もある)。
"SI-Review"の論文/記事を他言語に翻訳し、翻訳版を非商用Webサイトに掲載/公表することは、"SI-Review"への事前通知と引用文献の明示を条件に、無償で認められる。営利目的で他言語への翻訳/掲載を行う場合は、"SI-Review"の書面による事前の許可が必要である(有償の場合もある)。
7.3 読者/ユーザからの通信
読者/ユーザからの通信を歓迎する。読者/ユーザからのメッセージは、編集者による調整の下で、"SI-Review"の適切なページに記名つきで掲載される。
8. "SI-Review"の財務的課題
"SI-Review"を安定に活発に運営するためには、財務基盤と経営の問題が重要である。ここでは、財務基盤についてさまざまな可能性を示して議論するが、まだ何も決定していない。組織形態の課題については、3.5節も参照されたい。
まず、考えられる費用について考え、次に考えられる収入について考えよう。
8.1 考えられる費用
ここに、考えられる費用を列挙する:
(1) クラウド上のWebサーバ("SI-Review" Webサイト用)のレンタル費用。
(2) 編集プラットフォーム(例:Easy Chair)の使用料。
(3) 編集作業用のソフトウェアツール(例:Dream weaveなど)の費用。
(4) 編集室の設備と通信の費用
(5) 編集部/編集室に勤務するマネージャー/テクニカルエディターの人件費。
(6) 編集部/編集室に勤務するテクニカルスタッフ/デザイナーの人件費。
(7) 編集委員長および編集委員への支払いは行わない。
(8) 査読者への支払いは行わない。
[注(中川、2025.7.13) : 著者への支払いは想定していない。]
(1)~(4)は機器やソフトウェアに関する費用であり、明示的に支払う必要がある。
(5)-(6)は、編集室スタッフの業務に対する対価である。これらは比較的高額であり、"SI-Review" の円滑な運営に必要である。
(7)-(8)は、編集委員および査読者たちへの支払いであるが、彼らの仕事は自発的なサービスであるから、支払いをしないと仮定している。しかし、われわれは再検討する必要があるかもしれない。
8.2 収入を得るための、考えられる代替法
ここでは、考えられる代替的な収入方法を列挙するが、実現可能性や可能な金額はまだ評価していない。
(a ) 支援者たちからの収入: 資金提供や寄付など、定期的または一時的なもの
(a1) 国際的な協会(MATRIZ、ETRIA、AIなど)から
(a2) 各国の協会から
(a3) コンサルティング会社および産業界から
(a4) その他のボランティアから
(b) 資金提供団体から
(b1) 研究プロジェクトの予算として(例:EU予算など)
(c) 著者から:論文/記事掲載料(学会発表の料金と同様)
(c1) 学術界の著者と商業的な著者とでは、異なる料金であるかもしれない。
(d) 読者から:なんらかの限定的な形で
(d1) 読者からの自発的な寄付。
(d2) 一回限りの会費として、なんらかの会員限定の文書やその他のサービスを利用可能にする。
(d3) 毎年の会費として、なんらかの会員限定の文書やその他のサービスを利用可能にする。
(d4) 会員専用エリアのなんらかの特別な文書をダウンロードする料金として。
(e) 商業的ユーザから
(e1) コンサルティング会社が研修のために、"SI-Review"の論文/記事を商用利用する際の対価として。
(e2) 産業界で社員研修のために、"SI-Review"の論文/記事を商用利用する際の対価として。
(e3) "SI-Review"の論文/記事を商業出版する対価として。
(e4) 言語翻訳の後に、 "SI-Review" の論文/記事を商業出版する対価として。
考えられる収入源は、(e) > (a) > (b) > (c) > (d) の順が望ましい、と考えられる。
ただし、(d)についてもまた、妥当な方策があるだろう。--- この財務基盤の課題については、しばらく議論/判断を延期する。
-------- 現時点での記載はここまで。2022年 9月 8日 中川 徹 ------------ 以上
提案 スライド
1.8 他の組織との関係 | 提案スライド |
英文ページ |
2. ユーザとニーズ | 3. 推進/運営組織 | 4. 編集委員会等 | 5. 原稿と査読 |
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最終更新日 : 2025. 7.25 連絡先: 中川 徹 nakagawa@ogu.ac.jp