高原論文: [50] 哲学ノート 第一部

論理学、世界観、生き方へ :

永久に未完成の哲学ノート 第一部

高原利生、
『TRIZホームページ』寄稿、2019年11月 5日、
推敲 2019年12月 6日

『TRIZホームページ』掲載、2020年 1月14日

掲載:2020. 1.14; 更新: 2021.12.23

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編集ノート (中川 徹、2020年 1月  6日)

本ページは、高原利生論文集(第5集) 高原利生論文の2018-2019年のまとめ の中心にある、 [50] 『永久に未完成の哲学ノート  第一部』であり、 「論理学、世界観、生き方へ」というタイトルが付けられているものです。 これは、2018年の高原論文[44-47] 「矛盾モデルと根源的網羅思考による人類の生き方の基本原理についてのノート --未完成の哲学ノート(2018 年)」を繰り返し推敲して、2019年12月に自費出版したものです。ここには、その前書きと概要の部分を HTMLで読めるようにしています。論文の全体は膨大ですので、目次だけをここに示し、全文を(A5版での出版の形式で)PDFで示します。

 

この(出版物の)第一部 [50] の目次は以下のようです。      (本ページでの 論文の先頭 

はじめに                                                p.3

大阪学院大学 中川徹 名誉教授による解説                                 p.3

論理学、世界観、生き方へ 永久に未完成の哲学ノート 第一部

前書き                                                                                   p.8      

概要  第一部 (2019年10月)                                     p.10    

1.事実、価値と論理                                             p.21

1.1 思考が生まれる歴史と論理                               p.21
1.2 基本概念:事実、オブジェクト、粒度、網羅              p.23
1.3 思考の機能                                                           p.37
1.4  価値の全体                                                           p.47

2.根源的網羅思考 その1 生成と内部構造                                  p.48

3.矛盾モデル(運動モデル)                                                     p.53

3.1 矛盾とは何か:差異解消矛盾と両立矛盾                    p.53
3.2 矛盾の構造の発展1:両立矛盾内の発展                    p.61
3.3 矛盾の構造の発展2:両立矛盾から一体型矛盾へ        p.63
3.4 小さな問題の認識と変更                                          p.68
3.5 大きな問題の認識と変更                            p.69
3.6 矛盾の運動領域、矛盾の原動力                               p.70
3.7 矛盾の種類(まとめ)                                                p.73

4.根源的網羅思考 その2 内容、その3 方法                                p.75

4.1 生きることの全体                                                     p.75
4.2 根源的網羅思考とは? その2内容:全体、本質への指向    p.77
4.3 根源的網羅思考とは? その3方法: 粒度決定と推論          p.78
4.4 根源的網羅思考の原理と使い方のまとめ                      p.83

5.世界観と対象化と一体化、自由と愛の統一による生き方                p.91

5.1 弁証法論理と歴史                                                    p.91
5.2 物々交換の開始以前                                                p.92
5.3 物々交換の開始とその後                                           p.93
5.4 対象化と一体化の矛盾                                              p.108

 

以下、第二部 [51]  ==>

はじめに

宇宙論理学とポスト資本主義の準備へ 永久に未完成の哲学ノート 第二部

前書き

概要 第二部

5.世界観と対象化と一体化、自由と愛の統一による生き方  (続き)

5.5 実現の課題               
5.6 実現の課題の検討         

6. 人類の統一理論                                   

7.宇宙論理学

8.ポスト資本主義の準備

8.1  ポスト資本主義のニーズとシーズ                               
8.2 世界観、常識と支配層                                
8.3 政治のインフラストラクチャー                        
8.4 情報のインフラストラクチャー1:マスメディア                 
8,5  情報のインフラストラクチャー2:人工知能                     
8.6 教育のインフラストラクチャー                                 

後書き

文献

概要 第一部

おわりに  

 

本ページの先頭 論文概要先頭 前書き 概要 1.はじめに 2. 生き方 3. 矛盾モデルと網羅思考 4.世界観と生き方 5.結論的考察 第一部全文 PDF

第一部 HTML 前書き・概要 第一部 全文 PDF 第二部 HTML 概要・後書き 第二部 全文 PDF

高原利生論文集(第5集) 高原論文まとめ(2018‐2019)

 

 


 

                  

 論文 [50]第一部 の 概要        論文[50] 第一部 全文 PDF  

 

論理学、世界観、生き方へ  − 永久に未完成の哲学ノート  第一部

高原 利生

『TRIZホームページ』寄稿 (第5版) 2019年11月 5日、 掲載 2020年 1月14日

注: 表記について: 
     過去に述べた内容と他文献からの引用は青字で示す。
    
緑字は例または注を示す。
          濃赤字は 強調   を示す。
     下線は、文章上の単語の強調か、課題を示す

 

(前書き、概要部の目次) 

前書き

概要        1.はじめに: 事実とその網羅的把握       

2.生き方  

3.哲学1: 矛盾(=運動)モデル、根源的網羅思考からなる論理学  

4.哲学2: 人類の基本原理の作る世界観と、生き方  

5.結論的考察   

 

前書き

本稿はノートである。この第一部では、
     1. 根源的網羅思考、矛盾モデルによる論理学
     2. あるべき世界観(対象化と一体化の矛盾の歴史)、
     3. これによる生き方
を述べた。

別冊の第二部では、
       第一部についての課題検討、
       応用として人類の統一理論、宇宙論理学とポスト資本主義の準備
を述べる。

「概要」に内容のあらましを示した。「はじめに」に書いた初版との違いは、次の二点である。

1)  ほぼ毎日、間違いが見つかり新しい発見もあり、多くを考え直し関連する箇所の修正をした。特に、事実、矛盾の歴史などは大きく直した。

2)  重複が多かったところを整理した。B5版では約40ページ短くなった。本版は小型のA5版にしている。

・  感情、感性は、論理以上に生き方にとって重要だが、本稿は論理だけを扱う。

・  提起している根源的網羅思考により、考えている事項の全体の中の位置が分かるように粒度、網羅の結果を書きながら記述をしているので煩わしい。
自分の常識になっておらず身に付いていない粒度、網羅の内容と論理を書こうとするとぎこちない悪文になる。中身のない美文よりはいいと思っている。

・思考の経過、分かりかけていることは何か、分かっていないことは何かをなるべく書くようにした。
分かった内容だけを閉じた形にして書くとすっきりするが、将来への展開の途中であり、未完であることも示そうとした。

・  定説、常識は、全て近似で仮説であり、常に見直しを行うべきものである。書いている内容も、近似で仮説であり常識と異なるところが多く理解されにくい。

・  全てが関係していて同時に決まる内容が多いので、直線的に記述が進まない。そのため、後で述べる内容を前提にしている内容を書く場合、構成に苦労する。

 

以上から、 本稿は、おそらく読みにくい。自分でも読むのに苦労し、読むたびに、「全体の推論が成立する粒度」が不十分なところがいくつも見つかる。読みにくい、分かりにくいところは、推論と粒度が合っていないか、より展開の必要なところである。読みにくい、間違っていることを直していただくことを望んでいる。

それに、自分で考え納得したことだけが身に付き、理論と応用を発展させることができる。これは、読みにくくても読んでいただくための弁解である。

述べた理屈は、今あるものをこう変えた方が良い、共有した方が良いと思っているものである。応用は各自が展開されると良い。 理屈と応用は同時にできた。自分にはどちらも同じように大事な意味を持っている。

 

・  書いている内容は、常識と異なっているものが多い。

現在、多様であいまいな意味で使われている用語を、意味を限定して使っていることがある。限定と言っても、用語を「今までの意味を含み、今までの意味の拡張になっているようにする」ことと「推論と合う」ことを両立するような一般化である。少し苦労した。存在、オブジェクト、粒度、網羅、矛盾、自由、愛、機能、構造、価値、技術、制度などである。
おそらく最も常識と異なるのは事実、存在、粒度、愛、制度であろう。これらによって、今までのいつまで経っても終わらない混乱が解消されて問題がはっきりし前に進むことができた。現に論理学、世界観(を合わせた「哲学」)が作れた。例えば、ものと同様、観念のやや固定的状態も存在と扱い、その変更を起こす運動が思考である。今扱うオブジェクトを事実から粒度で抽象化して抽き出す。検討して得た結果の粒度の具体化を行い現実を変える。

自分の使っている意味と異なる用語が多いと読みにくい。この点をお詫び申し上げる。

 

2019年9月以降、気づいた年月を付記していることがある。

[引用文献名はかっこ内に、文献は最後に示す] 
下線は文章上の強調か課題を示す。
章以下の項の振り方は、1 1.1  1) 11)  文字下げの1.11.が基本である。

 


 

概要   第一部

本稿はノートである。
感情、感性は重要だが、本稿は論理だけ扱う。
書いている内容は仮説である。
新しい論理学、世界観、生き方を述べる。

 

1.はじめに: 事実とその網羅的把握

おそらく、無か何かから、存在と関係(運動)が分離したことが、空間と時間の分離と始まりをもたらした。宇宙が誕生し、事実が時間的歴史的に変化していく。知的生命、知的生命の観念が生まれる。事実の変化が知的動物の観念の中に思考を生む。

存在の形式が空間である。関係、運動の形式が時間である。関係、作用、変化、運動、過程は、同じものである。関係、作用は、やや空間よりに見た表現、変化、運動、過程は、やや時間よりに見た表現である。
例えば、自動車の運動は、自動車と大地の関係である。自動車と大地は存在である。

「ある」ものを事実ととらえる。事実を、客観的世界と知的生命の観念に、ある 存在、関係(運動)の全体ととらえる。

つまり、事実のある場所が、客観的事実と知的生命の観念の中の像の二つで、事実の要素が、存在、関係(運動)の二つで網羅されているものととらえる。以下、知的生命を人に限って検討する。

補足する。

1)   要素である存在も「固定的にとらえられる実在の もの と固定的観念」で網羅する。観念の固定的状態にある存在のとらえ方は常識と異なる。これに代わるいい用語がない。
ある木の部品の集まった状態が椅子Aであることが持続する時間は数十年かもしれない。観念のある状態Bが持続する時間は数マイクロ秒かもしれない。このAもBも、ある関係によって別の状態に変化するまでの持続の間、存在と扱い、関係、運動(Aの場合は労働、Bの場合は思考)と対等に扱う。

2) 存在と関係(運動)が分離した後の世界を扱う。

存在と関係(運動)については、
   ・ 存在であり運動である場合、例:光が粒子であり波動である
   ・ 存在と関係(運動)が独立して関係する場合、
                 例: (後に出てくる)矛盾モデル、素粒子とその間の運動、
   ・  存在と運動(関係)が相互転換する場合、例:E=mc2
   ・ ある存在と関係(運動)が別のある存在と関係(運動)と相互転換する場合、
        例: 50リットル容量の汲み上げ装置を1回使用する運動(関係)でも、
           この汲み上げ装置に10リットル汲んで5回使用しても、機能は同等

がある。

3)   客観的事実は問題が少ない。人が認識できるかどうかは別である。
               例:  縄文時代のある集落の制度の内容、宇宙人がいるかいないか。

主観的内容は人によって異なる。現に人の観念に「ある」ものには、各個人の脳内の過去、現在、未来についての事実の像、価値観を含む。観念の中の事実の変化、変更の無数の考えられる可能性も事実である
               主観的内容の事実の例:  ある人の脳内に昔浮かんでいた幻想。変更の可能な未来像。

従来からの把握を網羅した事実概念ができた。最も単純かつ必要十分な事実把握である。これだけは、新実在論に近い。

 

 ・  目の前の現実は、宇宙誕生以来の歴史の論理的網羅的総括である。

 ・  論理的網羅は今までの人の努力の歴史を総括する態度、方法である。
    何かを把握するとは、本質理解とその要素の論理的網羅である。

現在、多様であいまいな意味で使われている用語、概念を、意味を限定して使っていることがある。
限定と言っても「今までの意味の網羅になっている」ようにする一般化である。こうすれば、読む人は、自分の使っている用語の意味をそのままにして読むことができるかもしれない。

用語、概念の網羅的一般化は、仮説であり発見に近い。
用語、概念の意味、事実の法則的認識、根源的変更も、論理的根源的網羅的に行うのが本稿の態度、考え方の基本である。

知覚した事実から、ある抽象度(粒度)により観念内で扱う情報を抽き出しオブジェクトとして扱う。事実の歴史的変化からオブジェクト間の論理ができ、人は事実を把握し論理により変更する。

そして、歴史を総括しゼロベースで網羅的に全体を考え直した結果、本稿ができた。
以下、従来の哲学を網羅した哲学(論理学、世界観)、生き方を作る過程を記す。

  

2.生き方

人の、事実との向き合い方、態度には、事実のとらえ方である世界観と、事実に対する認識、働きかけの方法(論理学)の二つが中心にある。

この世界観(と価値観)、論理学(方法)を哲学ととらえる。

知覚と哲学が、潜在意識、態度、感情を作り、さらにこれらが生き方を作る。
人は、知覚と生き方によって、事実を認識し現実に働きかける。

人は、事実を変更してきた歴史、事実に向き合う世界観,価値観と論理、生き方を変更してきた歴史を持っている。

これからは今までと異なり、人はより意識的により良い価値を歴史から引き出しより良く事実を変更することができる。

感情や芸術ではなく哲学がこれからの歴史をより良く作っていく。
しかし、人の作った何事にも完成したものはない。完成したと思う思考は、死んだ思考の絞りかすである。哲学も、虚構、フィクションかもしれない仮説である。無意識に哲学によって作られる常識も科学も仮説であり、より「正しい」常識、哲学、科学を目指して変更を続けていく必要がある。

普及している思考体系、常識などの共同観念、制度は、技術と同様に、認識、外界への働きかけの有効な手段になっている。
これは、今までのいつの時代も、支配層が中心となり労力をかけ実現してきた。人は、作られた共同観念、常識を疑わず生きる。社会は、200年前に比べると格段に進歩したが、この数十年は殆ど停滞している。一方、科学・技術の進歩により解けるのに解決していない課題も大きくなった。もし全ての人が、これからどう行動するかをゼロから考え直すとしたら、人類の活動そのものが止まってしまう。この変更を始めるにはどうすればいいか?

1)古くなった既存の思考体系や常識などの共同観念の、根本的な変更必要性とその内容を理解し、
2)同時に、それによる行動が、今、有益で、今から始められると理解する必要がある。
変革の根本的必要性と内容は世界と古い思考の問題の内容とその解消方法である。この理解は絶望的に困難である。

本稿は、古い既存の思考の論理、方法や世界観、常識などの共同観念と世界の変革の内容を、歴史の総括によりゼロから作り直す。本稿は変革と新しい生き方から遠い自分への要求書、全ての人に対する提案である。

自分が他のあらゆるものに「生かされている」という認識は必須である。
まず自分と現在をありのまま認め
人の主観的な幸せと客観的に世界の価値に寄与することが両立する生き方を作りたい。
これが第一の問題、目的である。
この両立は自明の要件と考える。

もし、1) 個々の人が外の世界と関係無く存在し、
       2) 人が何もしなくても、良い価値に向かっている客観的事実とその認識があるなら、
自分の幸せだけを求めてもいい。
しかし この1) の条件はなく人と世界は共に支え合って生きている。
2) は、全ての人と世界の良き共有価値があることが前提になる。
今は、利益を増すことだけが共有価値になっていて、問題を起こしているので、今はこの条件もない。
従って第一の目的は達成できない。

そこで、人類の歴史を貫いている基本法則、基本原理、新しい世界観、価値観の把握がいる。
これを作る論理学も要る。これによる具体的生き方を作ることを目指す。

これが第二の問題で、(第一の目的、問題にとっては)手段、方法である。
この基本法則、基本原理は、今までの人の全ての歴史と知見から得られ、今後百年、千年の、全ての人や生命にとって共通の基本法則、基本原理、生き方であるのがよい。

全てはお互いに関係しあっているから、論理的、理想的には、全部を求めない限り、その一部も求められない。これは空間から述べた理想実現の仕方である。

理想を、極めて高い水準を超える状態ととらえると、努力を持続しても、なかなか理想は得られない。(少し努力して得られる状態を理想とは言わない。)
理想を、努力する過程だと考えると、持続する努力が不可欠であるという「欠点」はあるものの、理想は常に得られしかも「理想の状態」にも常に近づく。
これは時間から述べた、あるべき理想への近づき方である。

カントのように人は先験的に理性や悟性を持っていてその上で判断しているととらえない。西田幾多郎のように純粋経験を前提にしない。

人は、知覚と、後天的に作られる世界観、価値(観) に決められる潜在意識、感情、態度と、論理により、外界を認識し外界に働きかける。

人が今、生きることを次の相互作用の系列の繰り返しで近似する。

今、生きること=事実 ⇔(知覚 ⇔ (世界観→ 価値観)⇔ (潜在意識、態度、感情)  ⇔(論理(学)、認識,行動の決定象)⇔ 文化・文明の支援による認識と行動)

生き方=事実((世界観→ 価値観) ⇔(潜在意識、態度、感情) ⇔ 論理(学))

潜在意識そのものは、直接意識できないが、意識し続けると自然に潜在意識に入る。態度、感情についても同様である。

哲学=(世界観→ 価値観)⇔ 論理(学)

大雑把に世界観、論理は同じようなものである。哲学を、空間を全体的に、時間を長期的に見たら世界観であり、今、着目する空間を今、変更する短期で見たら論理である。

 

今は労働疎外、いじめ,復讐,戦争などの諍い、エネルギー問題、環境破壊が大きい。
これらに対しては条件を変えるだけでなく、内容を根本的に解決する必要がある。技術、科学の進歩により、これらを操作し解決できる力、範囲が、強く広くなった。そのため、人類の発展の法則、原理を正しく知れば、生き方をつかむ必要性,可能性も大きくなっている。

人は哲学を意識しない。教育やマスメディアによる哲学と生き方が多くの人を支配している。
人は常に意識的に、哲学、生き方の変革を続けていく必要がある。

 

3. 哲学1: 矛盾(=運動)モデル、根源的網羅思考からなる論理学

1)  目的と定式化

目的は、完全で単純な(存在と運動の)論理学を作ることである。
作るのは、数理論理などの形式論理と文法の中間の完全でシンプルな論理学である。
これは、扱う対象の特定の後、その対象間の関係である論理の展開を経て望む結果をもたらす。

論理学を作るということは、「全ての対象についての体系的に網羅された論理」という役割、機能を持つ構造を作ることである。この論理学をゼロベースで作る。

・ 対象の要件: 事実から、扱う対象を漏れのないように正確に特定できる。

・ 論理の要件: 事実の認識、変更の論理を漏れなく正確に単純に扱える。

2)  解の検討

対象と論理をシステムと運動に言い換える。

1.矛盾(運動)モデルをシステムとして使う。
   システムは、オブジェクトから作る矛盾(運動)モデルである。運動のモデルをシステムと扱う。

11. 光が粒子であり波動であるように存在であり運動である場合、
E=mc2の場合のように、存在と運動が直接相互転換する場合
の運動,矛盾モデルは、今表現できない。

12. 存在と運動が別々にある場合
矛盾(運動)モデルは、オブジェクト間の関係を表す「オブジェクト1−関係−オブジェクト2」で表される。

これは世界の近似単位であり、矛盾モデルの合成で世界の(11以外の)事象を近似的に表せる。

2.解をシステムと運動の二つに分けて作るのだった。システムが済んだ。

運動の一つはこの矛盾特定のための適切な抽象化、具体化である粒度決定、
二つめは粒度決定の後行う認識、事実変更のための推論、さらに周辺にある論理である。
矛盾モデルを命題で表しその変更を行うのが
推論である。

つまり論理に大きく、に進む対象特定のための抽象化解の具体化である粒度決定、変更と、に進む推論がある。

推論は、演繹帰納、粒度と論理的網羅が正しい限り正しい仮説設定で網羅される。
この推論と粒度決定およびこれらを遂行するための全てを、根源的網羅思考ということにする。

本来の思考議論は、事実、自分の過去の観念、他人の観念を活かして新しい像を作ることである。

抽象度(粒度)と網羅の見直しを続け、仮説設定を行う根源的網羅思考がこれを実現する。
これで、思考、議論ができある。
根源的網羅思考には、謙虚さが必要である。一般論だが、考えるということは自分の考えを対象化相対化し変えることなので考える人は謙虚になり易い。

根源的網羅思考は、機能的内容的には、事実と価値のより大きな全体と本質を、求め続け実現し続け得る思考である。

矛盾モデルと根源的網羅思考をあわせて弁証法論理学ができあがる。

 

4. 哲学2: 人類の基本原理の作る世界観と、生き方

人は皆、持っている無限の可能性を開花させることができず生き死んでいく。
次の課題は、その可能性を開花させ世界を変えるための世界観、価値観、これらによる生き方の検討である。

前提として、種の存続−個体の生−生き方、生の属性」というこの順に次第に小さくなる価値、目標の系列仮定している。

新しい生き方が実現していなくても、個体の生は、生き方、「生の属性」より重要である。
1) 生は、生の属性の前提であり、
2) 生きているとその人に関わる努力の一歩が人類に小さくとも必要な何かをする可能性があり、その一歩が大きな全体の革新のための一歩かもしれないからである。
その一歩がいつの誰によるかは全ての人が生きてみないと分からない。
地球や宇宙から見れば全ての人は生きなければならない。本稿は2016年相模原事件の犯人を含む全ての人へのメッセージである。

求めようとしている価値は、種の存続−個体の生という仮に自明とする価値に続く、「得られる可能性があれば「種の存続」を取りあえず究極の目標にしても良いような」生き方生の属性」の内容である。

これを次の準備と仮説で検討する。

準備: 目的は、全てのものの全ての価値をお互いに高めて行く客観と、その主観的な実感である幸福の両立ではなかろうか?
しかし、実際には、多くの人、人生の相談者も評論家も、個人の「幸せ」だけを述べ求めて終わる。

そうなってしまうのは、この主観的な幸せと客観的な全価値の増加との両立という表現が一般的抽象的過ぎ具体的内容が伴わないからではないか。一つ一つの行動、態度を規定する具体性が必要である。
これがないと、今のように「幸せ」を求めるだけになってしまう。そうすると、「幸せ」には、なれない。全体でなく一部であるからでもあるが、なぜかは分からない。

分からない時は、歴史全体を総括した上での現実のゼロベースでの再構築を行い、現実の細部をありのまま認めゼロベースのこれからの変化の重視をする態度になってみる。
人類は今まで、対象化を行い、より高い機能とそれを実現する構造を求めてきた。
言い換えると機能と構造(内容と形式)の矛盾を解き続けその解の運用を続けたということである。物事を変更するのは機能と構造の矛盾である。

これに対し概念を変更する方法は何か?
対象化という概念を高度にする方法は何か?

仮説1: 何かの本質(正)とその真の反対の本質(反)の矛盾の弁証法的止揚(合)が行えると根本的に今の何かが一段高まる。全体がAと単なる非AではないBで網羅されているとき、その全体に関しAの真の反対はBであるということにする。
歴史の教訓の一つは、正と反が、秩序と非秩序、合理主義と非合理主義のような単なるAと非Aでは、有益な議論ができなかったことである。

仮説2: 人の今扱う対象であるオブジェクトへの態度、認識、行動は、対象化とその真の反対である一体化の二つで網羅されている。
対象化は、対象を自分と切り離した対象として扱う態度、行動である。
一体化は、自分と対象を一体として双方の価値を高める態度、行動である。

仮説3 仮の結論:人類に必要なのは、この対象化と一体化の統合という一体型矛盾の解のための努力である。

以上が論理的検討の全てである。

歴史の検証:人類の歴史を見てみよう。歴史の中で対象化と一体化の初期形態を探し、その後の対象化と一体化の変化を見るためである。優先度の高い種の存続、個の生という価値が実現されてきた歴史がある。

1) 地球に生命が登場してから農業革命まで

地球が生まれ、多様な環境の星になった。生命が登場し、動物が生まれ、知覚と反応という特性に加え意図的な運動が始まる。長い時間が経ち人による狩猟、採取の中で言語、道具が生まれ、対象化の原型が始まった。対象化が主観と客観の原型を生む。主観と客観は、今は重要であるが、生まれた当初は、主観は初歩的で客観と主観は矛盾ではなかった。

第一の目的の幸せという主観と世界の価値に寄与する客観はまだ抽象的静的関係だった。これは農耕開始後も続く。

2) 物々交換の開始とその後

約一万年前、太陽エネルギーを利用する農業革命が始まる。農耕地開拓、農耕という対象化が、その後の人類を決定的に変える。保管可能生産物が増え保管が進む。

保管食料を奪いに来る相手との闘いで死者が出るようになる。この問題の解決が集団リーダーの悩みだった。この闘いの中で、次第に「所有」やそれに基づく「奪う」という概念が数千年かかって生まれる。

六千年前物々交換という偶然の解決策が得られ広まっていく。物々交換は「所有」というあるものを自分(達)に一体化する一方向一体化概念と同時に生まれた。「所有」が最初の一体化観念だった。

物々交換の発達が経済を発展させたため人口が増え、それから約二千年後増えた多くの個をまとめるために集団や神や自然への「帰属」が作られる。帰属は、自分(達)をあるものに一体化するもう一つの一方向一体化である。地球では帰属を作ったのも物々交換だった。

物々交換によって生まれた等価原理が、科学、制度を進歩させていく。「所有」も普及して法的概念になり制度化される。既にあった技術、芸術、科学に加えて制度がここで出来上がる。

表  四つの文化と対象化、一体化

 

働きかけ

認識

対象化の手段

技術

科学

一体化の手段

制度

芸術

 

   1.生産を行う技術と労働の体系と運用、
   2.生産、交換の管理のための経済制度、
   3.そのための初歩的な政治・宗教制度、
   4.行政機構
の四者の複合体が四千年前の中国、中近東の文化・文明の原型である。
1が技術、2,3,4が制度である。

これで対象化に全ての人が参加する初歩が出そろった。
以後の人の歴史は、技術と制度における機能と構造の矛盾を解き続けてきた対象化の歴史である。

ただ等価原理は「罪と罰」や復讐も生んでしまった。

3) 結論:対象化と一体化の一体型矛盾の完成が必要な今

化石燃料利用による産業革命、資本主義は、対象化を急速に発展させ、人の自由の増大とお金がその価値だった。対象化は、500年に一度の人類の大災害を認識させそれを防ぐ力も人類に得させた。

だが対象化は、対象の価値を高めなかった。人が地球を破壊しつつあり、「国」間、民族間や人の復讐による諍いも続いている。

産業革命以後の対象化の急速な発展が、一体化の不足を顕在化させ、対象化と一体化の統一による解決という定式化をやっと今もたらした。

対象化が起こした問題を解決することと、所有と帰属という一方向一体化でなく双方向一体化によって対象の価値を高める必要性が、今、同時に明らかになっている。今後の生き方を規定する基本法則、原理は対象化と一体化の矛盾、自由と愛の矛盾[NKGW2016]である。二つはほぼ同じものである。この矛盾は一体型矛盾でお互いに相手を変化させる永続的運動を作る。

対象化は、対象を自分と切り離した対象として(さらに自分も相対化し対象として)操作する態度、行動である。一体化、愛は、自分と対象を一体とし双方の価値を高める態度と行動である。

誠実さはこれらの前提である。

理想の目的である抽象的な主観と客観の統一の具体的実現方法が、個々のオブジェクトへの具体的な向き合い方である対象化と一体化、自由と愛の一体型矛盾である。課題が解決されるにつれ、二項自体もより完全になっていく。

やっと、第一の目的:抽象的な客観と主観の一体型矛盾つまり価値を高めて行く客観と主観的な実感である「幸福」の二つの両立が、第二の目的、手段:対象化と一体化,自由と愛の統一によりできるようになった。

実現まで(と実現後も)より大きな価値と真理の全体を根源的網羅的に求め続ける態度が必要である。

自分が他のものに「生かされている」一方向の認識から進み、対象化と一体化の統一、自由と愛の統一の実現のための努力が必要だとわかった。

そのために、あるいはその実現の中で、事実と価値の全体と本質を、網羅的に求める努力が必須である。

実現例を二つ述べる。

例1:  労働を、良いものを効率的に作り利益を増す「合理的」目的に、材料や使う人など対象の価値を増す目的を加えた労働に代える。

この労働には、ものやサービスを作り運用する労働だけでなく、技術、制度を作り運用する労働、子育てなど今、賃労働として扱われていない労働も含む。

労働(と生活)の、ものの対象を相手にする場合、キーは今より大きな全体に向かうための網羅の態度と対象との一体化という内容、価値である。今の労働運動、働き方改革は、条件改善だけの運動という欠点がある。

対象化と一体化、自由と愛の矛盾の統一という価値の実現、全体に向かうための網羅の態度の労働運動を労働にし、同様に生活運動を生活にしよう。

例2: 思考を、自分の前の意見と新しい意見とを弁証法的に統合するものにする。
      議論を、相手の言(の整合性)を理解した上で、相手の意見と自分の意見とを弁証法的に統合するものにする。

これらは全くできていないに等しい。

思考や議論に共通に、この統合のキーは、今より大きな全体に向かうための網羅の態度である。議論の場合、キーに、相手への敬意と、自己の対象化、客観視、相対化の態度が付け加わる。これが本来の議論、思考の内容である。

しかし、今はこの思考も議論もなく、民主主義は名前だけである。全ての人の思考と議論が豊かな内容に変わる必要がある。

この二つの例の、対象化と一体化、自由と愛の矛盾の解の実現と、その過程における
    1.より大きな全体、より大きな価値、より正しい真実を求め続ける全体への志向、
    2.自分の対象化、相対化
は、過労死もいじめもない生き方とポスト資本主義を作り、同時に豊かな生き方そのものである。

お金を価値とする資本主義の矛盾の解は、お金だけが価値でないポスト資本主義に進むことである。

機能と構造の矛盾の先に、地球の条件下で対象化と一体化の矛盾が出てきた。対象化の人類から新しい段階に進み得るようになった。

この論理学、世界観、生き方を、地球の全ての人の哲学、生き方、常識にしたい。
もし、人類が
対象化と一体化、自由と愛の統一をすることができるならその時に、人という種は、いかなる災害があり太陽がなくなっても存続に値する存在になり、価値の系列の仮定が正しいことが実証される。
さらに他の生命、宇宙の存続、他の宇宙人の価値も検討しなければならない。

条件整備は本質の解決にならず、生きる目的や生き方の内容が重要であることはどの問題にも共通である。
民主主義国と社会主義国の差は、生き方や制度の条件の差である。内容が重要である。

 

5.結論的考察

物々交換開始から第一の)目的を達成する手段が分かるまでに数千年かかった。
人間は、意識的に努力して文化・文明を介し、認識と世界の変更を行える稀な生命になった。それを可能にしたのは、地球の特殊な環境とそれによって生まれた物々交換であった。

本稿は、結果的に「対象化と一体化」=「自由と愛」という概念を見つけ、これと「客観と主観」との二つの関係の関係から見えてきたことを述べている。

今後、今の「常識」とは異なるものが少数の理解と努力から始まり、この理想が実現されるのに千年かかるというのが私の予想である。

提案している生き方は常識を変え常なる努力を必要とする。努力する人は全能力、全人格を発揮し、自分と他人、他オブジェクトを良くし続ける。

気になることは、常識を変え、常なる努力を必要とする生き方を本質的に受け入れない人、本質的構造があるのではないかということである。困ったことにこの解決は難題である。

本稿は、今までの乏しい経験と検討の結果、2019年時点で分かったこと、分かっていないことを書いた。
本稿で論じていない感情や芸術を付け加える必要がある。これを除くと、必要な哲学と生き方は、これで全てである。

本稿はユバル・ノア・ハラリとジャレド・ダイアモンドにないものを書いた。

本稿は、
    1) デカルトの「網羅」の詳細とその他の要素との関係を明らかにした。
    2) パースが探求した仮説設定について演繹、帰納を含む定式化を行い、推論を網羅した。
    3) 初期マルクスとTRIZから、既存「マルクス主義」の世界観や「弁証法」を含みそれらを網羅したものを作った。

彼らの求めたものを根源的網羅的に求めた。

これらは世界観と思考の論理の見直しに必要な最低限の対象だった気がする。

 


 

 以下   第一部 [50] 全文 PDF 参照 

 

      第二部 [51] 概要、後書き  (HTML)     

      第二部 [51] 全文 (PDF) 

 

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最終更新日:  2021.12.23    連絡先: 中川 徹  nakagawa@ogu.ac.jp