TRIZ/USIT論文: TRIZ シンポジウム 2011 講演
USIT法の考え方・使い方
−創造的問題解決のための新しいパラダイム−

中川 徹 (大阪学院大学)

日本TRIZ協会主催 第7回日本TRIZシンポジウム、2011年9月8-10日、東芝研修センター、横浜市港北区

掲載:2011. 9.19

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編集ノート (中川 徹、2011年 9月19日)

本稿は、10日前に、日本TRIZ協会主催の第7回日本TRIZシンポジウム2011において、「テーマ講演」の一つとして話したものです。シンポジウムの「セミナーの日(A)」というプログラムで、TRIZの初心者および経験者の人たち向けに話しました。

討論を含めて70分の時間がありましたので、USITについてきちんと話をすることができました。もちろんいままでにも何回も書いたり、話したりしていますが、全体的なことをきちんと話していますので、読んでいただけると幸いです。

日本語でのセミナーでしたが、TRIZシンポジウムでは英語でのスライド作成も奨励しています。今回作成した英語のスライドは、会場では投影されませんでしたが、デジタル版資料集には収録されています。USITについては、日本語での講演や解説は随分していますが、英語での発表はどうしても間遠になります。この機会に、英語ページに英文スライドを掲載して、世界の人たちにアピールしております。

[なお、今年のTRIZシンポジウムは、参加者118名 (うち海外参加者 11名 (留学生2名含む))、発表は招待と公募を合わせて合計40件 (うち 海外からの発表 9件)であり、充実したシンポジウムになりました。
今後、「Personal Report」 (英文) を書いて発表内容を紹介してくことと、著者の了解を得て逐次発表スライドを公開することとをして行きたいと考えております。(まだ昨年のシンポジウムのスライド公開の途上ですが、今年のものは公開を半年程度早めるように努力したいと考えております。)]

 


[1] 論文概要

USIT法の考え方・使い方
−創造的問題解決のための新しいパラダイム−

中川 徹 (大阪学院大学)

概要  

USIT (ユーシット、統合的構造化発明思考法) は、TRIZの影響を受けて、Ed Sickafus (米国) が1995年に開発した問題解決の一貫プロセスである。1999年以来、「やさしいTRIZの実践プロセス」として日本に導入し、発展させてきた。TRIZのすべての解決策生成法を一旦ばらして再編成して、「USITオペレータの体系」を創った。また、USITがどんな情報を扱うのかを、情報科学で知られているデータフロー表現で表した結果、従来の (科学技術一般とTRIZが基本とする) 「4箱方式」に対して、新しく「6箱方式」という概念を得た。これは、「創造的な問題解決の新しいパラダイム」を成す。いつも標準的な方法を使って、現在のシステムの理解と理想のシステムの理解を作り、(USITオペレータで) 新しいシステムのためのアイデアを得て、それをベースに (適用分野の素養・知識を使い) 解決策コンセプトを構築していく。USITはこの新しいパラダイムを実行する、やさしい、具体的な方法を提示している。身近な例を使いながら、USITの考え方、使い方を解説する。

内容説明

TRIZは膨大な方法を持ち、膨大な知識ベースとソフトウェアツールを持っていて、初心者はもちろん、2-3年の経験者にとっても、その極一部しか実際には使えないのが一般的な状況である。これは、1997〜1999年の日本で、TRIZがまだ謎に満ちていた頃もそうであったし、その後十数年、TRIZの情報が随分普及した現在の世界でも似た状況にある。

その問題は、TRIZでの問題解決の方法が多岐に渡り、互いが部分的であり、輻輳していて、すっきりとしたプロセスになっていないからである。

これに対して、Sickafus は、問題解決の一貫したプロセス (いつも標準的に使える思考の手順) を作ろうとした。TRIZ をずっと簡略化した (イスラエルの) SIT法をベースにして、USITを創った。

日本にUSITを導入したのは、ソフトツールに頼らず、柔軟な思考、体系的な思考を促す、「やさしいTRIZの実践プロセス」としてであった。その普及の過程で、TRIZの持つ膨大な解決策生成法を一旦ばらして再編成し、「USITオペレータ」を作った。TRIZの発明原理も、標準解も、進化のトレンドも、すべてこのUSITオペレータに吸収したのである。

USITプロセスは、大学や諸企業で取り入れられ、身近な事例、企業での実地問題での事例が報告されている。

このUSITプロセスを、通常のフローチャートでなく、データフローの形式で表現したときに、新しい理解を得た。それは次図のような「6箱方式」で表現できる。

特長は、第3箱 (左上) の必要情報を明示したことである。問題となっている現在のシステムについて、その構成要素、構成要素のもつ属性 (性質)、機能、および空間と時間を基礎概念として、そのメカニズムを理解する 。同時に、理想とするシステムについて、それがどのような振る舞いをし、そのためにどんな性質をもっているとよいかを、理解する。これらのために、標準的な分析法を持つ。

第4箱 (右上)は、新システムのための核になるアイデアであり、それは通常 (たとえ大発明でも) 非常に小さな発想である。これは、(理論的には) 「USITオペレータ」を第3箱の情報に作用させて得られるが、(実際には) USITオペレータを知っている人は分析の過程において自然にこれを得る。

第5箱の情報を構築するには、その (技術) 分野の素養を必要とする。知識ベースが一部支援できる。

この「6箱方式」は、創造的な問題解決のための「新しいパラダイム」を示したものである。

講演では、具体例を示しながら、このUSITの考え方とその実践プロセスを説明する。


[2] 発表スライド全文:

和文発表スライド (51 スライド、648 KB)    (公開、変更禁止、コピー許可、印刷許可)

英文発表スライド (51 スライド、559 KB)    (公開、変更禁止、コピー許可、印刷許可)

 


[3] 発表スライドのアウトライン

USIT法の考え方・使い方−創造的問題解決のための 新しいパラダイム−

はじめに

USIT(統合的構造化発明思考法) と Ed Sickafus、 中川が推奨していること (TRIZ とUSITの位置づけ)

[1] TRIZ からUSITへ

TRIZの発展: 西側文化との融合 (TRIZとUSITの歴史)、 
TRIZの全体プロセス (Darrell Mann の教科書による)、
問題解決の基本的な方式 (従来の「4箱方式」)、 伝統的なTRIZの問題点、
TRIZのエッセンスを再考する必要、 TRIZのエッセンス (50語の表現)、
USIT (Unified Structured Inventive Thinking) 、 日本におけるUSITの発展: USITの意義

[2] USITの身近な適用例

裁縫で短くなった糸を止める方法、
問題を定義する、
問題を分析する (1) 現在のシステムの理解、 (2) 理想のシステムの理解
解決策を生成する: アイデアを発想し、解決策を構築する

[3] USITによる問題解決プロセスの一部始終

USITの全体プロセス(フローチャート表現)、 USITの適用例: 額縁掛けの問題

問題定義の段階: 「適切に定義された問題」にする

USITの基礎概念: オブジェクト-属性-機能、 USITにおける機能分析、 USITにおける空間・時間特性の分析、

USITにおける解決策生成段階: 「USITオペレータ」、 USITの解決策生成法の体系「USITオペレータ」(TRIZのすべての解法をばらして再編成したもの)、 USIT解決策生成法一覧、
USITオペレータのサブオペレータの一例 (1c) オブジェクトを分割する、 USITの解決策生成オペレータを作用させた例、 一つの解決策を多様に解釈できる(導出できる)、
USITの「解決策組合せ法」(=アルトシュラーの「矛盾を解決するための分離原理」のエッセンス)、 USITの解決策一般化法
USITの解決策生成法の使い方・学び方

[4] 創造的問題解決の新しいパラダイムという理解: 「USITの6箱方式」

USITプロセスをデータフロー図で表現した、 問題解決の基本的な方式 (従来: 「4箱方式」) 、
創造的問題解決の新しい方式(USITの「6箱方式」)、 6箱の説明、 箱から箱へのプロセスの説明、
USITの「6箱方式」の理解: 「4箱方式」との違い、 抽象化と具体化、 現実の世界と思考の世界、
まとめ: 「6箱方式」は創造的問題解決の新しいパラダイムである

[5] USITの実践のために

USITの企業での使い方・実践法、 USIT 2日間トレーニングセミナー、
日本におけるUSITの企業内導入・適用の公表事例 (TRIZシンポジウム 2005〜2011)、

Ref. USIT/TRIZの情報源

[参考] TRIZの伝統的パラダイムとUSITの新しいパラダイムの比較

比較 (1) 手順、 (1A) 分析/モデル化、  (2) アイデアの生成 (発想)、 (3) 解決策の空間、 (4) 実世界との関係、 (5) エキスパートの理想像、 (6) 能力の基盤

 

 

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最終更新日 : 2011. 9.19    連絡先: 中川 徹  nakagawa@ogu.ac.jp