TRIZ/USIT教材

「ヒューリスティック・イノベーション 」(HI法)とその開発

Ed Sickafus (Ntelleck, 米国)、
USIT News Letter No. 69、2007年 3月19日

訳:  古謝 秀明 (富士フイルム)、川面恵司 (元 芝浦工業大学)、中川 徹 (大阪学院大学)、2008年 3月26日

[掲載:2008. 3.30]  著者の許可を得て翻訳・掲載、無断転載禁止

Press the button for going back to the English top page.

編集ノート (中川徹、2008年 3月29日) 

ここに翻訳、掲載しますのは、USITの開発者であるEd Sickafus博士のちょうど一年前のエッセイです。博士から不定期に送られてくる「USIT News Letter」の69号に掲載されたものです。それを読んで、非常に大事な文章であると思い、すぐに博士から翻訳・掲載の許可を貰いました。ただ、その翻訳は予想以上に難航しました。博士の内面での思考の歴史をダイナミックに綴ったエッセイであり、USITから大きく飛躍した新しい方法「HI法」を作り上げた考え方を述べたものだったからです。

このエッセイで述べられていることの主要なモチーフは、Sickafus 博士が、第2回TRIZシンポジウム (2006年8月30日〜9月1日、パナヒルズ大阪)基調講演で話されています。左脳の論理だけでなく、右脳の直感をも活用することを主張しています。そして、TRIZやUSITのような構造化した問題解決法における(論理的)「構造」は、学び、教えるための便法である。それをマスターし、その論理を超越したより高度な方法ができるのだと主張します。それには「メタファ (隠喩)」を活用すること、言葉によるメタファだけでなく、問題状況のスケッチや図式という非言語のメタファを活用するとよいのだと主張していました。

HI法 (「ヒューリスティック・イノベーション」) というのは、その頃から書き進めておられた新しい方法です。2007年3月に約240頁の新著『Heuristic Innovation』が完成し、Sickafus博士のWebサイトが大幅に更新されて、新著の登録が完了したのです。News Letter-69はそれを伝えるものでした。News Letter のまえがき部分にはつぎのように書いています。

読者の皆さんへ

私はこの新著を昨年3月に3/4ばかり読みましたが、読了していません。すぐに紹介できないのが残念ですが。

さて、このエッセイの翻訳には、古謝さんと川面さんがボランティアで協力くださいました。昨年 5月の連休に古謝さんが和訳下さり、さらに5月21日には川面さんがそれを推敲して下さいました。しかし、内容が難しいので、ここで、TRIZシンポジウムのSickafus博士の論文をまず翻訳することにしました (スライドはシンポジウムの際に三原祐治さんが訳されています)。川面・中川訳でシンポジウムの基調講演論文を掲載したのが、6月24日です。また、同日には川面さんがこのエッセイの訳を再推敲して下さっています。その後の推敲は中川の担当だったのですが、なかなか時間が取れず、この度、ようやく推敲完了しました。古謝さんと川面さんに、遅延をお詫びし、改めてご協力に感謝します。

Ed Sickafus博士は実験物理学が専門で深い素養を持った人です。その人が 60歳を過ぎてから問題解決の思考法に入り、TRIZの刺激を受けてUSITを作り上げ、そして75歳をすぎてから認知心理学の刺激を受けて USITを改造したこのHI法を作り上げているのです。その内面の発展をフランクに記述したすばらしいエッセイであると思います。本ホームページに和文と英文での掲載を許可いただいたことを、博士に深く感謝します。


「ヒューリスティック・イノベーション 」(HI法)とその開発

Ed Sickafus (Ntelleck, 米国)、
USIT News Letter No. 69、2007年 3月19日

訳: 古謝秀明 (富士フイルム)、川面恵司 (元 芝浦工業大学)、中川 徹 (大阪学院大学)、
2008年 3月26日

本講義では新しい本『ヒューリスティック・イノベーション』が何であり、なぜ必要なのかを紹介する。

1. 発端

   「ヒューリスティック・イノベーション」(HI法) はUSIT(統合的構造化発明思考法)をベースに開発されたものである。この開発の動機は、[USITを] 自己参照する論法の結果であり、それは以下のように進んだ。

 これは、より進んだ形の構造化問題解決法を開発する妥当なアプローチのように見える。しかし、われわれはどこから始めたらよいのだろうか?

2.新しく、常套的でない [視点] からの革新的思考

  あきらかに、USITに従うと、われわれは「適切に定義された問題」から出発しなければならず、それは「望ましくない効果」から発しなければならない。上述の「USITに対する新しく、常套的でない視点を確立する」という目標は、望ましくない効果を正確に特定してはいない。これは問題 [解決] の最初の段階でよくある状況である。ふつう、その状況について少し話合うことが必要で、それによって望ましくない効果の候補が分かり始める。[そこで] 私はUSITの現状を全体的な観点から再検討することから始めた。これはUSITの顕著な特徴とそれらの目的を特定することを必要とした。

3.過度な詳細の下に潜むものを見出すために、単純化せよ

  多分、USITの最も強力な特徴は、「単純化」というヒューリスティックを使って、問題解決に適用するための革新的思考の論理的な方法を構築していることにある。早い時期の仕事で、Horowitz博士とその共同研究者たちがASITを開発したときには、この目標を持ってTRIZを単純化する作業をしたのである。

  突き詰めると、単純化の最初の段階は問題を三つの基本的要素に還元することである。それらは、オブジェクト、その属性、そしてそれらが支えている機能 (ここでは、望ましい効果と望ましくない効果を含む)である。この単純化の後、統合化アプローチにおけるその後のすべての開発は、これらの三要素を基本としている。

  この議論が進む中で、USITを組織化し適用するに際して、論理を重視して用いていることに注目せよ。これはUSITの魅力的な側面であると考えられている。しかしながら、論理は科学技術者には大いに魅力的であるが、活発な想像を働かす芸術家、夢想家、その他の人々にとってはそれほどでない。この認識が、望ましくない効果として私が最終的に採用した案にいくらか影響した。

4.論理: 夢想家にとっての障害

  ある意味で、論理の必要は、革新的な思考を作り、新しい見方を採用しようと試みているときに、[二方向への] 期待の矛盾を引き起こす。科学技術者は、可能性のある一つの思考パスについて、そのパスに勇敢に分け入る前に、そのパスの論理を評価する傾向を持つ。それと比較して、詩人は一つのパスの新しさに注目し、それが提供するものを見つけようと飛びついていき、その論理にはお構いなしである。科学技術者は、時間の浪費を避け、予想される失態を避けることを望む。一方、詩人は、磨きをかければ何かアピールするものになりうるアイデアの核心をなんとか見つけ出そうとする。両者とも、他方からの影響なしに最終のコンセプトを使うことはできない。

  この推論の流れが私に明白なことを突きつけた。すなわち、「USITは論理的過ぎる」と。これが私が探し求めていた望ましくない効果なのだろうか?ここで、私が決心したのは、誤った方向への思考や軽率な思考から保護するためにUSITの周りを包んでいる論理の程度を吟味することであった。

5.ツールとルール

  問題解決の核心は、問題を定義することである。それは非常に創造的な演習である。適切に定義された問題は、適用しようとしている解決技術で扱いやすいように定義された問題となる。(これは循環論法のように聞こえる。あなたの方法論に適合していれば、適切に定義されている! というのだから)。問題が一旦定義されれば、USITの「考えられる根本原因」ツールを用いて、問題を分析できる。ここで、分析者は、原因と結果を結び付けている技術的論理について、自分自身の理解を総動員して、自問自答していく。原因とその結果の間に内在する繋がりは、一つまたは複数の活性化された属性である。この論理のパスに従って,分析者は自分の論理と経験をその極限まで辿ってゆく。

   問題の解決策の中心にあるのは、一つのコンセプトであって、工学的な、うまく動くプロトタイプではない。USITが科学技術者に教えるのは、そのコンセプトの見つけ出し方である。USITでは、そのコンセプトを実在するものにまで持っていくのに、これ以上の訓練をわれわれが必要としない [それだけの能力がある] と仮定している。われわれに必要なのは、決まりきった工学的な実践から離れて、新しい考え方を吟味することである。

  USITには6つの問題解決の方法(ヒューリスティクス) が選ばれており、論理的な思考の流れに関係づけて名前が付けられている [訳注 (中川): 以下の [ ] 内は、日本で改良した現行USIT法における、解決策生成法の用語である。一部に組み換えをしているので、Sickafusの用語とは1対1の対応でないところがある]。つまり、ユニークネス [時間空間分析法]、次元性 [属性次元法]、複数化 [オブジェクト複数化法]、分配 [機能配置法]、変換 [解決策組合せ法の一部]、そして一般化 [解決策一般化法] である。ユニークネス [時間空間分析法] は効果の空間的、時間的特性に焦点を絞っている。次元性 [属性次元法] は属性の活性化と不活性化に焦点を当てている。複数化 [オブジェクト複数化法] はオブジェクトの複数化 (乗算) や分割 (割り算) を吟味する。分配 [機能配置法] はオブジェクト(および機能)の再配置を行う。変換 [解決策組合せ法の一部] は問題定義の構成要素の結合性に着目している。そして、一般化 [解決策一般化法] は、既知の解決策コンセプトを思考の開始点にして、新しいコンセプトを見つけるのに使う。これらを一緒にすると、創造的思考の領域をカバーできる基本要素を構成している。(しかし、本当に構成できているだろうか?)

6.最善を保て

  最終的に、USITの全体は一つの論理的な組織体にまとめ上げられている。それは、問題の定義からその解決策コンセプトの発見までの道筋で採るべき行動のフローチャートを提供している。USITの学習者や実践者たちは、この構造化された問題解決の論理的統一性に満足していると述べてきた。確かにそれは、育て、保持する価値がある。そのとおりだ。では一体、どのように「論理性が強すぎる」のであろうか?

  それはこういうことだ。この論理が、育て、保持する価値があるのは、次の理由による。USITのようにして問題を簡単化するやり方、そして新しい洞察を見つけ出す過程は、直感に反し、自明ではないことがある。われわれの好きな思考法を脅かしさえする。そこで、方法論を学ぶことは、そこに論理が組み入れられていなければほとんど絶望的に困難である。同じことがUSITを教える場合、あるいは他のあらゆる技術的テーマを教える場合にも当てはまる。論理は、新しいアイデアをメンタルに受容するための入口なのである。われわれは論理を用いて、科学技術を学び、教え、意思疎通する。[そのために] USITの構造は論理的なのだ。

  USIT方法論を理解し実践することは、興味深い学習曲線を描く。それはまず、用語を学び、実世界の問題に適用するにつれて、坂を上り始める。進歩はゆっくりしている。用語を記憶し、方法論の適用を経験するにつれて、進歩 [の段階] が進み、坂は平らになり始める。どんな技術テーマの学習についてもそうであるように、習熟してくるとフローチャートも手順の詳細もその必要がなくなり始め、その方法は無意識の思考になっていく。論理がこれを可能にする。だから論理は、学び、教えるのに基本的な役割を果たしている。USITの手順的なツールは、方法が無意識の中に定着してしまうと、その教育的役割を果たし終える。では、何が?

7.USITが根づくにつれて

  「では、何が?」という疑問を長く考えていて、それが興味深い方向に転換したのは、問題を解決する脳の能力に関する認知心理学の研究成果を私が読み始めたときである。われわれはみんな認識エンジンを二つ持っている。それは脳の二つの半球であり、一つの同じ問題を解決するのに両方が同時に働く。しかしながらそれらは、一つの問題を扱うのにそれぞれが得意とするやり方が異なっている。一つのエンジンは論理を好み、他方は直感を好む。両者ともに解決策コンセプトを創り出す。この時点で、私は閃いた! USITは [脳の] 一つの半球をプッシュして新しい能力を持たせたが、他方の半球には同等の機会を与えていなかった、と。

  [USITの] 望ましくない効果について、いくつかの表現の候補が顔を出し始めた。つぎのような諸案である。

  これらについて議論する前に、USITに対する、新しく、常套的でない見方を見出すことができないだろうかと、私が考えるに至ったわけについて一言ふれておこう。

  私が構造化問題解決法の実践を始めて半年以内の時に、私が気づき始めたのは、この方法が教える図表のすべてを描かないで、自分が様々な近道を用いていることであった。これに気がつくと、私が考えさせられたのは、自分がこの方法に十分 [の労力] を払わず、その結果、検討すべき可能な解決策へのパスを見逃しているのでないだろうか、ということであった。もちろん、考えたことさえもないのなら、自分の考えの中で何かを見逃したか見逃してないかを知る術がない。しかし、方法に手を抜いたかどうかという問題は吟味することができる。吟味した結果、私が結論づけたのは、潜在意識が新しい思考法を採用していることを示しているのだ、ということであった。その後何年かして、USITをより進んだ段階に拡張できないだろうか、どうすればそれができるだろうかと、私は考えはじめた。

8.直感に注意を払わないこと

  上に述べた望ましくない効果のうちの最初の三つは、どちらかというと一般的 (総称的) で、いささかありふれている。それらは多くの方法論についてもあてはまる。しかし [第四の]、 USITの拡張として直感的な思考を育てるというのが、貴重でユニークな機会になるだろうと私は思い至った。そこで、私が選んだ望ましくない効果は、「USITは論理を強調して、直感的思考を犠牲にしている」というものであった。

  「考えられる根本原因」として明白になったのは、必要なときに直感的思考を刺激する方法を欠いていることと、[直感的思考からの] 応答を認識する手段を欠いていることであった。後者、すなわち応答への認識は、USITでも他の方法論でも、アイデアが生じたときにそれを直ちに批判することをしないように注意する、という形で扱われてきた。前者、すなわち直感的思考を刺激することは、強調されていなかったが、許容されてきた。メタファ(隠喩)の力は認識されていて、メタファを意図的に創くるのに、オブジェクト、属性、機能に対する言葉を使い、さらに問題状況のスケッチを使ってきた。しかし、それらの働きは十分に展開されず、有効なツールにも開発されなかった。最も強調されたのは、脳とコミュニケーションし、創造的思考を刺激するに際しての、言語とイメージの力であった。

9.無意識的思考のタネとしてのメタファ

 認知心理学の研究を読むと、脳の一つの半球が言語について優れる傾向にあり、それによって意識的、論理的思考を制御している様子が明らかになっている。他方の半球は言語を理解するが、問題を考えるときに別の関心を持つ。私が学んだ一つの重要な点は、両半球がメタファ(隠喩)を理解することであった。これから生じた私のアイデアは、メタファを用いて両半球に同時にタネを播き、無意識から新しいアイデアの芽を出させることができるということであった。各半球はそれらのタネをそれぞれが望むように使う自由があり、言語的な論理を使っても使わなくてもよい。

 これから「タネの材料は何か?」という疑問が生じる。種々の辞書では、言葉を中心にしてメタファの定義を与えている。私はこの定義を一般化して、思考を引き起こす手段(すなわち、言葉)[の面] を意図的に省略し、その代わりにその意図を強調した。すなわち、言葉では何をも表現しないようなコンセプトを創りだすことである。これが導いたアイデアは、われわれの二つの認識エンジンへのすべての感覚的入力(何も特定のものを意味しないもの)が、われわれの過去の経験への無意識的な連想を作ることができ、そこから新しいアイデア(有用なものも、そうでないものも)を意識 [のレベル] にもたらす、ということであった。新車の臭いが、缶詰「新車の香り」という補修市場での製品を生み出したように。

10.われわれは経験を持たなければならない

 たとえば、私が思い出すのは小学校での経験で、クラシック音楽を聴いてそのときに頭に浮かんだことを絵に描いたことである。私はいまでも、バス−ンの音色と、よたよた歩くアヒルのイメージとをよく覚えている。もっとさかのぼると、私は祖母のコーンパンの味と、キッチンを暖めている薪ストーブの情景、温かいベーコンの微かな匂い、燃えさしのぱちぱちと撥ねる音、新鮮なパンの生地をよく覚えている。これらの感覚的入力のどれか一つで、その記憶を取り戻すことができることを、私は知った。

 解決策コンセプトは通常、最終製品の形で思いつくのではなく、過去の経験からの簡単な連想として思いつく。そしてそれが、それらを [現在の問題解決に] 関連あるものにしようとする意識的努力を刺激する。だが、われわれはまず経験をもっていなければならない。 

11.ヒューリスティクス

 かくて一つの戦略が発展しはじめた。すなわち、問題を速やかにそのエッセンスに還元し、考えられる原因結果を見出すためのUSITの方法論を捉えて理解することである。これがひとたびわれわれの思考の第二の天性となると、この戦略は、意識的に論理構造を強制することから、脳の両半球を発火させて行動させるためのメタファのタネを創ることへと、変化する。これらは論理的である必要はない。火がぱちぱちと撥ねる音が温かいパンをあなたに思いつかせることは多分ないだろう。しかし、その音はきっと何かの経験をあなたに思い起こさせるだろう。

 これらのアイデアをまとめると、メタファが [新しいアプローチの] 目標となった。そして、認識する両半球にともに有用であるためには、メタファはヒューリスティクス中に表現できるべきである。ヒューリスティクスを見る新しい方法として、図式の技法を問題定義に用いた。この図式のメタファから、解決策コンセプトへの思考パスを特定する [見つけ出していく]。これらのアイデアは、[私の新しい著書] 『ヒューリスティック・イノベーション (HI法)』に提示している。図式から出発すると直ちに直感を刺激できるが、他方、論理は、熟考するべき関連語を選択するために立ち止まらせる。

 しかしなお、「論理は直感を依然軽視しているのではないだろうか?」と私は考えた。このことは再び、直感的思考を刺激するだけでなく、[直感的思考からの] 応答を認識するという課題を、提起した。

12.天性の思考、問題定義、そして「ヒューリスティック・イノベーション (HI法)」

  一見すると、これ [いままで述べてきた考え] は間違ったパスに見える。結局のところ、科学と工学の成功は明らかに論理に基づいている。さらに、この論理を終始注意深く数学が支えている。この理由は、われわれが若いときに科学で学んだように、われわれの直感は間違うこともあるからである。数学を用いるのはこのような間違いを発見し、訂正するのを助けてくれる。

  しかし、もう一度よくみると、多くの発明、創造的アイデア、および驚くべき洞察が、数学とは明白な関連がなく、そして論理とさえ関連がなかった、ということに気がつく。論理は、一つのコンセプトを、さらに発展させたりコミュニケーションするのに分かるようにするために必要であったかもしれないが。また思い浮かぶのは、思考そのものが論理的でなく、整然としたものでなく、予測できるものでもないことである。われわれが思考プロセスを開始すると、それはすぐに探求すべき別な対象 (関連するものも、しないものも) を見つけ、絶えず飛び回っている。意識的な努力をしないと、初期の問題を押し通して、思考の泥沼で適切なアイデアを探求することは難しい。しかし、それでも思考はうまく働く。これが天性の思考である。その[天性の思考の] 成功とUSITの最善の特徴とを結合させて、天性の思考を有益に使うことをすればよいではないか。

 いまやわれわれは構造化された方法論をわれわれの潜在意識中に取り入れたので、 それは無意識の思考を、必ずしも直接のパスではないが、少なくとも回り道をしてももとの課題に立ち戻るように、保つように働く。この信頼性はわれわれに天性の思考の効用を探求する可能性を開いた。すなわち、意識的なルールの重荷がない思考である。まず、二つの点に注目しよう。問題解決の取掛かりは問題を定義することで、USITでは、われわれは問題単純化のパスを辿り、問題定義を改良するのに努力する過程で多くのメタファを通る。これは最も革新的な行為が存在するところである。そこで、「ヒューリスティック・イノベーション (HI法)」ではここに一つの指示があり、「問題の定義を反復せよ」という。反復のたびに言葉と図解を変えて、新しく、常套的でないメタファを呼び起こし、それによって脳の両半球に刺激を与えるタネを提供せよ。最も効果的なメタファは問題解決より以前には分からないものである。したがって、繰返しの行為は土地を掘り返して複数回タネを播くのである。

 コンセプトが一旦見出されれば、つぎにはそれらを磨き、再構築し、組合せ、あるいは剪定することができる。「統合的構造化発明思考法(USIT)」と「ヒューリスティック・イノベーション (HI法)」 は、その仕事を果たし終えたのである。

                                                                                                 2007年 3月 Ed Sickafus

 

本ページの先頭 本エッセイの先頭 Sickafus 第2回TRIZシンポジウム基調講演 Sickafus Web サイト

英文ページ

 

総合目次  新着情報

TRIZ紹介

参 考文献・関連文献 リンク集 ニュー ス・活動 ソ フトツール 論 文・技術報告集 教材・講義ノート フォー ラム Generla Index 
ホー ムページ 新 着情報 TRIZ 紹介 参 考文献・関連文献 リ ンク集 ニュー ス・活動 ソ フトツール 論文・技 術報告集 教材・講義 ノート フォー ラム Home Page

最終更新日 : 2008. 3.30     連絡先: 中川 徹  nakagawa@utc.osaka-gu.ac.jp