TRIZフォーラム: |
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「中川 徹のミッション・ステートメント」 と その心 | |
中川 徹 (大阪学院大学)、2010年 1月 1日 | |
初出: 大阪学院大学 情報学部 2009年度後期 ゼミナールIB S53、S54クラス レポート文集 「ショーン・コヴィー著 『7つの習慣 ティーンズ』 を読んで - このゼミで 学んだこと、考えたこと」 (2009年12月15日) | |
掲載: 2010年 1月 3日 |
編集ノート (中川 徹、2010年 1月 1日)
皆さま、新年おめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いいたします。
昨年の12月14日に、1年次のゼミナールに関連して、自分の「ミッション・ステートメント」を書きました。これは、自分の「使命」を意識し、きちんと書き出したものです。それは「モットー」であり、「ありたい姿」を書いたものです。年頭の抱負あるいは目標として、ここに掲載させていただきます。
本ページの表題のように、もともとは、1年次のゼミナールの学生たちのレポート文集に書いた原稿です。ですから、文のところどころに、学生諸君に向けて書いていて、本ホームページの読者の皆さん (ほとんどが社会人、技術者のみなさん)に向けて書くのとは違った書き方をしています。
なお、この1年次のゼミナール (大学統一テーマ「読み・書き・考え・発表する訓練」) については、「教育実践」 として別ページに説明しておきます。とくに、このゼミで学んでいる、ショーン・コヴィー著 『7つの習慣 ティーンズ』 (キングベア出版) という本についても、紹介しています。また、私がどのようにしてこの本に出会い、どのような意図でこの本を1年次のゼミナールで使っているのか、学生にどんなレポートを課し、レポートにどのようにコメントしているかも、そこにに書いています。それをお読みいただけば、なぜ私が自分の「ミッション・ステートメント」を書き、またここに掲載する気持ちになったのかが、分かっていただけるだろうと思います。
大阪学院大学 情報学部
ゼミナール IB 2009年後期、クラス S53(火曜日)・S54(木曜日) レポート文集ショーン・コヴィー著 『7つの習慣 ティーンズ』 を読んで
このゼミで 学んだこと、考えたこと2009年12月14日 中川 徹
趣旨:
ゼミIB のテキストに 『7つの習慣 ティーンズ』を選び、一年次の諸君と一緒に学んできました。諸君のレポートを文集の形にし、各人のレポートに書き方と考え方の両方からコメントを書いてきました。その中で、やはり私自身が学んだこと、考えたことを、学生諸君と一緒の文集に収めておきたいと思いました。そうでないとフェアでないように思いました。また、この文が後日の記念になるだろうと思いました。ミッション・ステートメントに絞って、ここに書きます。
「中川 徹 の ミッション・ステートメント」 と その心
2009年12月14日 中川 徹
私は、 今年度のゼミの授業中に、初めて自分の「ミッション・ステートメント」を書き上げました。恥ずかしい話ですが、『7つの習慣』 の一連の本を感激して読んだ 2008年5月以来、昨年のゼミでもこの本を学んだのですが、自分のミッション・ステートメントを書き上げることができていませんでした。ここに書き上げて、皆さんにお見せします。
中川 徹 の ミッション・ステートメント
1. 誠実で、真剣であること
2. 我を捨てて、広く暖かい心を持つこと
3. 健康に努め、明るい心を保つこと
4. 柔軟で創造的な思考を磨くこと
5. 人と社会の役に立つこと
2009年12月14日 中川 徹
(1) 「誠実で、真剣であること」:
私はいま69才になったとこです。いままでの人生の中でもちろんその生き方に信条や特徴があったことは当たり前です。言うのはおこがましいですが、この第1項はずっと私の信条であり、非常に素直に書いたものです。これを第一とすることに、迷いも、恥ずかしさもありません。
(2) 「我を捨てて、広く暖かい心を持つこと」:
このことに努力していますが、いままでの人生でも、そしていまでも、なかなかできずに、ときに失敗し、しばしば悩み、苦労している点です。なぜ悩みがあるのかといえば、明白です。誠実で真剣であろうとすると、人や組織と衝突することがしばしばあります。そのときに、相手と激しくぶつかるときがあり、相手を批判し、非難することがありますし、激怒することもあります。この怒りをとっさに抑えられないこともあります。『7つの習慣』 (注: 『7つの習慣 ティーンズ』の元になった本) を読んでいつもいつも考えさせられるのは、このようなときの対処法の問題です。
そこで大事なこととして私が書いているのが、「我を捨てる」ということです。自分の利益、自分の名誉 (面子)、自分の考え (思想や案)、自分の感情に固執しないことが必要だと思っています。幸い私はすでに人生の山を越えていますから、いま、自分の利益や権力や名声などを強く追い求めるという欲求からは随分自由になっています。(もちろん、なんとか老後の生活に困らない程度の蓄えがあるから言えていることです。) それでも、守りたい名誉があり、大事にしている考えがあります。相手とぶつかるとき、それが「我 (エゴ)」から来ているものでないように、やはりいつも気をつけなければなりません。
つぎの「広く暖かい心を持つ」というのも、なかなかできずに苦労しています。よく言われる「大きな包容力を持つ」ということです。誠実さや真剣さは、下手をすると、(相手を認めないために) 包容力を失わせる方向に行きます。包容力の大きな人たちを見ると、うらやましいと思います。
ただ、「暖かい心を持つ」というのは、もっと根本のことのようにも思います。自分の心が、多くの人々に対して暖かいか、冷たいかは、真剣さとは別のことです。だから、「真剣だから暖かい心が持てない」というのは、言い訳にもならないことのように思います。自分の心は、自分で育て、磨かないと、いけないことです。そのような感性、心情が必要なことです。
(3) 「健康に努め、明るい心を保つこと」:
これは、段々と歳を取ってきているいま、特に大事なことです。健康を保たなければ、多くの人々に迷惑を懸け、自分も何もできなくなります。4年ほど前に視野のごく一部が突然短時間空白になり、精密検査の結果、眼の中の毛細血管が一時的に塞がったのだろう、血液の粘性が高くなっていると言われました。またこの半年、右腕にしびれがあり、検査の結果、首の骨に軽度のヘルニアがあると言われました。すべて生活習慣と関わる老化の症状です。
「健康」には前から気をつけてきています。40才頃から水泳を始め、いまもできるだけ毎週1回 (実際には月に2〜4回) プールで泳ぎます。いまは、1200 m をクロールのノンストップで、約35〜40分かけて泳ぎます。できるだけ歩くとよいのですが、あまりできていません。今年6月の健康診断の後から、一念発起して、節食・減量に努めています。ご飯を軽めにし、コーヒーはブラックにし、パンのバターを止め、ヨーグルトを豆乳に替えました。半年で4kg程度減らし、なんとか安定しています。これからも、気をつけていかねばなりません。
「明るい心」はまたもう少し別のことです。学生時代も今も、ずっと勉強や仕事一途でやってきました。学生時代にハンドボール部に属し、遊びで野球をやりましたし、いまは、家の (狭い)庭や花壇の手入れなどをしていますが、「趣味」といえるほどの時間を使うことはできません。「明るい心」を維持するのはなかなか大変です。この点では、家庭での妻の貢献が大きいだろうと、感謝しています。
(4) 「柔軟で創造的な思考を磨くこと」:
これは、大学院、大学助手、企業研究員、そしていまの大学教授という私の一生が、基本的にずっと研究者でしたから、その仕事のあり方に関わるものです。特にこの13年ばかりは、TRIZという「創造的な問題解決/技術革新の技法」をテーマとして研究しています。「創造的な解決策を出す方法」を研究している自分が、「柔軟で創造的な思考」ができなければお話になりません。一つの考え方、技法、解決策などにこだわらずに、新しいことを受け入れ、新しい考え方を作っていく、そのような考える力を磨いていく必要があります。こういった技法を習得することはなかなか大変で、沢山の人たちの優れた考え方を学んで行かねばなりません。一般的にいえば、70才近くになっているのですから、どんどん頭が固くなります。だから、固くならないように、いつもいつも柔軟に頭を使っていなければなりません。
なお、このような「柔軟で創造的な思考」を磨いていくことができれば、それは自分の人生の中でも沢山のことに応用できるのです。私のミッション・ステートメントの中での最大の課題である、(2)の問題 (「真剣さ 対 包容力」の問題) に対しても、その場その場で具体的な解決策を考えていけるようになるはずだと、思っています。
「柔軟で創造的な思考を磨く」のによいことは、いつも新しい問題、新しい領域に関心を持つこと、新しいことを試みることだろうと思います。いままで自分が関わってきた問題や領域は、そんなに広いものではありませんでした。
(5) 「人と社会の役に立つこと」:
これももちろん、いままでずっと心がけてきたことです。研究生活においても、それは明白です。私の研究分野は、物理化学の学問的研究、ソフトウェア関連の企業内研究、そしていまのオープンな創造性技法の研究と、3段階に大きく変化しました。当初の「学問のための純粋な研究」から、段階的に、「広く社会のために使える研究」にその目的が変化してきているともいえます。
私はいま、学生諸君の教育が仕事です。この1年次のゼミでも、学生諸君にできるだけ役に立つ教育をしたいと思っています。また、この教育実践が、直接教えた諸君だけでなく、できればもっと広く (行く行くは社会のためになるような) 役に立つものにしたいと思っています。
私は、大阪学院大学に来てからずっと、上記の「TRIZ」という技法の研究をし、その普及に努めています。TRIZは、単なる技法でなくもっと深い考える方法を提供していますから、その発展と普及が、産業界での技術革新のためにも、また将来は学校における創造性教育のためにも、役立つものと信じています。いまの私が「人と社会の役に立つ」ことができているのは、このTRIZの研究と普及を通してであると考えています。
そのTRIZの普及のための主要な手段として、『TRIZホームページ』というWebサイトを創設し、丸11年間編集者として活動してきました。自分で沢山の記事を書くだけでなく、日本と世界の多数の人たちの原稿を貰って和英両方で掲載してきました。この分野での世界と日本の研究内容や普及活動の状況が逐一分かるように努力しています。大学教授という自由な立場で、ボランティアでこのサイトを運営し、宣伝などは一切掲載していません。また、第二の手段が、TRIZシンポジウムという (全国的、かつ国際的な)学会を毎年開催することであり、プログラム委員長を最初からいままで 5年間ずっと努めています。
いまの私の懸案は、大阪学院大学の定年退職後に、どのようにしてこれらの活動を継続していくとよいかということです。どんな場が得られるか、どんな活動が実際に可能かは分かりません。いまのTRIZの仕事をさらに発展させたいと思っています。いまよりもいろいろ自由に広くできると思わなくもないですが、それは幻想かもしれません。ともかく、なにか、「人と社会に役に立つ」ことを続けて行きたいと考えています。そのためには、いろいろな場を積極的に探し、新しい繋がりを見つけることが当面の課題です。
もちろん、だんだんと歳を取れば、活動規模が縮小していくでしょう。それでも、「人と社会に役に立つ」ようにしたいと思っています。そのためには、自分の健康(3) と精神的な若さ (4) を維持することが、一番大事な基礎になるのだろうと思っています。
ここで少し書いておかないといけないことは、いままで家族 (特に、妻) に対して随分の負担を懸けてきたことです。研究者の生活は、どうしても研究一筋、仕事一筋になります。おまけに、最近の24年間ばかりは、平日は単身赴任で週末にだけ自宅に帰る (そして自宅でも夜遅くまで仕事をしている) 生活を続けていますので、妻の負担はやはり大きなものだったろうと思います。定年退職後はもう少し家庭生活に時間を割きたいと思っています。家庭を基盤として地域などで活動することも、将来的には考えていく必要があるでしょう。
もっと歳を取ったら、結局は、私自身がどんな人生を送ったのか、「どのように、人として生きたのか?」 の総決算が問われるのでしょう。そのときに、私を知って下さっていた多くの人たち (学生の皆さんも含めて) に、私が一人の先人、先例としてお役に立てるようでありたいと、願っています。
以上が、「中川 徹のミッション・ステートメント」とその心です。
思いもかけずこの原稿を執筆しました。4時間で書き上げたものです。読んで下されば幸いです。
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最終更新日 : 2010. 3.11. 連絡先: 中川 徹 nakagawa@ogu.ac.jp