TRIZ 論文

「TRIZ-リーン」でなく、「リーン-TRIZ」を

Christian M. Thurnes (Univ. of Applied Sciences Kaiserslautern、ドイツ)、 Frank Zeihsel (Synnovating GmbH、ドイツ)

第13回  ETRIA TRIZ Future 国際会議 (TFC2013)、 2013年10月29-31日、Ecole Nationale d'Arts et Metiers of Paris、 パリ、フランス

和訳: 中川  徹 (大阪学院大学)

掲載:2014. 5.31

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編集ノート と 論文紹介(中川 徹、2014年 5月22日)

本件は、昨年10月末のETRIA(欧州TRIZ協会)主催の国際会議で発表されたものです。その国際会議で発表された優れた論文数編を和訳・紹介しようとしており、その第3弾です。この論文は、実践的であるとともに、理論的(方法論的)であり、非常に深い洞察を与えてくれます。

本稿で、「リーン(Lean)」と言っていますのは、「Lean Engineering」で、それはトヨタ自動車で樹立され、全面的に使われている「トヨタ方式」(トヨタ生産方式など)の欧米での言い方です。(私も学習していますが、本当に身についているとは言えませんので、この訳の用語など訂正・改良すべき点はご指摘ください)。

本稿で述べていることをまとめると、以下のようです。

(1) 本論文の背景と問題意識は、つぎのようです。
   − トヨタの成功を見て、多くの企業で「リーン」の導入(「リーンへの移行」)が組織的・本格的に行われてきている。
   − その中で、TRIZ/TRIZ実践者たちは、リーン/リーン実践者たちに受け入れられていない。
   − その目的とすることは、問題解決、不断の改良であり、両方法論で基本的に同じである。
   − リーン実践者たちは、TRIZを (ある程度) 知っているが、使わないし、好まない。--> それは何故か?
   − 「リーンへの移行」が進む社内体制の中で、TRIZが伸びていくにはどうすればよいのか?
   − 「リーン」とTRIZとが、両方が相手を認めて、両方にとって益になる、企業にとって益になるやり方がないのか?

(2) 本発表が取り組んだやり方は、つぎのようでした。
   − 「TRIZとリーンの統合(協働)」をテーマとして、TRIZの学会(ドイツ/オーストリア)で発表し、議論した。
   − 最初は、「TRIZの原理をリーンの事例を使って分かりやすくする」という発想(「TRIZ-リーン」アプローチ)。
   − これを実践・テストしたが、(TRIZ実践者には受け入れられても) リーン実践者には受け入れられなかった。
   − リーン実践者をも含むTRIZ研究会で議論し、「リーンの足りないところを、TRIZが補う」という発想(「リーン-TRIZ]アプローチ)を得た。
   − これを試行するとともに、組織論的に(活動のしかた)、また方法論的に(やり方を理論的に考えて)考察・改良した。
   − この実践結果は、リーンの体制の中でも受け入れられ、有効であることを実証した。

(3) 最初のアプローチ「TRIZ-リーン」は、次のようなものです。
   − リーンの考え方(リーンの原理、用語など)を用いて、TRIZの40の発明原理を(より具体的に)説明した。
   − リーンでの理想(「あるべき姿」)の考え方を用いて、TRIZの理想(「究極の理想」)を説明した。
   − これは、TRIZをリーンの考えを使って具体化することで、融合させる、ハイブリッドを作ることになる。(TRIZの変質の面も)
   − これらの説明(のしかた)は、TRIZ実践者たちには受け入れられた。
   − しかし、リーン実践者たちは、この意義を認めなかった。「リーンの原理を使えば十分」と判断した。

(4) 第2のアプローチ「リーン-TRIZ」は、つぎのようです。
   − 「リーンへの移行」、リーンの考え方による企業内の組織活動のしかたを、受け入れ、前提として考える。
   − リーンの考えを変えることを試みず、また、TRIZの考えを変えることもない。両者をそのまま保つ。
   − そのうえで、リーンの盲点、弱いところを考え、そこをTRIZで補う、寄与することを考える。
   − 具体的には、リーンが「必要な無駄」として後回しにしている問題を、TRIZの「矛盾」として捉えて、解決を図る。
   − また、リーンでの製品開発プロセスにおける適切な所/段階に、TRIZのツールを使う、TRIZのセッションを行う。
   − リーンにおける「イベント」などの機会に、TRIZセッション/ワークショップなどを持つのもよい。
   − リーンにおける「テストして設計」(また、「セットベースの並行開発」)の思想は、TRIZ本来の「設計してテスト」の考えと異なるので要注意。
   − TRIZセッションを短くして、リーンの製品開発の体制・テンポの中の一つのサブセッションとして理解するとよい。
   − 実践の結果、TRIZがリーンに価値を付加する(そしてリーンの活動を邪魔しない)ことがリーン実践者からも認められた。

(5) 結論: 「TRIZ-リーン」でなく、「リーン-TRIZ」のアプローチが有望である。

以上のようで、現実を踏まえ、実践面と方法論的な面とを考察し、議論し、試行して、明確な方向を示しています。非常に参考になる、素晴らしい論文です。所感を編集ノート後記に記しました。

論文を和訳し、HTMLページとして掲載します。スライドも和訳して、PDFで掲載しました(HTMLにはしていません)。なお、英文の論文とスライドは、後日ETRIAから公表された段階でリンクを張ります。原文を読みたい方は、著者に直接連絡されるとよいでしょう。

 

論文の目次

概要

1. リーン-TRIZか、TRIZ-リーンか?

2. 「TRIZ-リーン」: リーン知識/原理を持ち込んでTRIZツールを適応させる

2.1. リーンで具体化した発明原理
2.2. 理想性の概念の利用

3. 「リーン-TRIZ」: リーンのツールセット中の盲点を見つけ、そこにTRIZツールを導入する

3.1. 矛盾に取り組むことにより、「必要な無駄」を解消する
3.2. リーン製品開発プロセスにTRIZセッションを使う

4. 批判的レビューと結論

[4.1 「TRIZ-リーン」のアプローチの検討]
[4.2 「リーン-TRIZ」のアプローチの検討]
[4.3 結論: 「TRIZ-リーン」でなく、「リーン-TRIZ」を ]

謝辞

参考文献

 

スライド 和訳 PDF 

英文ページ (紹介(中川))  [英文 論文・スライド PDF(公開許可待ち、リンクなし)]

 
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 発表論文  

「TRIZ-リーン」でなく、「リーン-TRIZ」を

Christian M. Thurnes (University of Applied Sciences Kaiserslautern、ドイツ)、
Frank Zeihsel (Synnovating GmbH、ドイツ)

和訳: 中川  徹 (大阪学院大学)

TRIZ Future 2013 (欧州TRIZ協会(ETRIA)主催 国際会議)、
2013年10月29-31日、ANSAM、パリ

概要 

最近の学会で注目を集めたテーマの一つは、「TRIZをリーンツール群の中でどのように使うのが良いか?」、「リーン(工学)とTRIZをどのように結合させるか?」、あるいは「一方を他方に統合するにはどうすればよいか?」ということであった。実情として、TRIZのツール群がリーンマネジメントの文脈で用いられるのを見ることはほとんどない。これは驚くべきことのように見える。なぜなら、TRIZはシステムの改良に関係しており、そのシステムが製品であろうとプロセスであろうと適用できるからである。これら二つの方法論はこの点で同一の目的を持っている。本稿では、リーンの世界でTRIZの受容が低いことのいくつかの説明を議論する。それに続いて、本稿はTRIZの展開について、いろいろ違った文脈で開発されてきたさまざまなアプローチを提示する。これらのアプローチは、リーンマネジメントの視野や観点の外に出て形成されたものであり、それゆえTRIZを統合し使用するのに有用である。

キーワード: TRIZツール、リーンマネジメント、統合

 

1. リーン-TRIZか、TRIZ-リーンか?

現在、多くのTRIZユーザが直面しているのは、彼らの会社が「会社をリーンマネジメントの方向に変えていこう」という、いわゆる「リーンへの移行」の体系的なアプローチに強く関わっていることである。リーンマネジメントの一つ重要な部分は、体系的な問題解決をすべての従業員の日常活動に組み入れていくことである。そのような会社のTRIZ信者たちはいま、リーン信者たちによって困惑させられている。なぜなら、リーン信者たちは通常、TRIZのツールやTRIZ関連のアプローチを受け入れないからである。

本稿の著者たちは、この点の実践的な研究を行ったので、ここにTRIZとリーンを統合するさまざまなやり方を記述し、その経験を述べる。

本稿のタイトルに使った言葉の遊びは、つぎの二つを区別したものである。

●  「TRIZ-リーン」: TRIZツール群を変化あるいは適応させて、リーンの知識を統合する観点。これは二つのツールをなんらかの形でハイブリッドにしようというアプローチである。

●  「リーン-TRIZ」: リーンのツール群の中の盲点を見出し、そこにTRIZツール群からの照明を (そのあるままの形で) 当てようとする観点。

[TRIZの人たちはあるいは次のようにいうかもしれない:] 「いわゆるリーン専門家たちがTRIZの使用を拒否することは、科学的な観点からは理解しがたい。彼らは新しいツールの学習にもっと関心を持つべきではないのか?特に、リーンマネジメントは組織的学習に焦点を当てているのではないのか?」と。その答えは「Yes」かもしれないが、それは的確な質問でない。
リーンの実践に関する本は多数あるけれども、リーンは理論的なコンセプトではなく、実践的なコンセプトなのである。だから著者たちは、リーン-TRIZの観点の方が、TRIZ-リーンの観点よりも将来性があると信じている。

実際、世界中の多くの会社が、リーンの組織、文化、製品、オフィス、製品開発、その他に、巨大な投資をしている。このような文脈中で、発明的問題解決のための最も強力な方法論の一つであるTRIZがどのように育ちうるだろうか?
リーンの基本のいくつかを見ることが、この全貌を見る助けになるだろう。この基本原理を選択するにあたっては、リーンのもともとの発信元であるトヨタとの親近性を基準にするべきであろう。(文献[1]、あるいはもっと最近の[2][3]参照)。

リーンマネジメントの14の原理を Liker [3] の記述に従って詳しく見てみよう。それらは、哲学、人、プロセス、そして問題解決に分類されている。

(a) 哲学: その最初には、リーンマネジメントが長期志向の意思決定と戦略に関わっていることを述べている。この哲学はTRIZのテーマといくらかの関係がある (例えば、組織のS-カーブ[4]など) が、実際的な統合には直接関係しない。

(b) 人間: 人間指向のマネジメントの原理は、スタッフやリーダーやサプライヤを育成し、その行動を変えることに関わっているが、これらもTRIZの世界とは直接関係がない。

(c) プロセス: プロセスに関するマネジメント原理が扱っているのは、プロセスフローの実現、かんばん原理(方式)の利用、プロセスの平準化、品質問題の事前予防、手順の標準化、見える化による制御、十分にテストしたテクノロジーだけを用いること、などである。これらのマネジメント原理のすべてが扱っているテーマは、TRIZ技法の扱う範囲と非常によく対応している。しかしながら、リーンツールには「治具の一瞬での交換(SMED)」[5]などが存在し、リーン専門家たちは通常、ツールや方法をさらに増やす必要があるとは考えていない。しかし恐らくここに、リーンの知識や言語にTRIZツールを注入して、リーン専門家に理解できて望ましいものにするというチャンスがある。このアプローチと経験を本稿の「TRIZ-リーン」の節(2.節)に示す。

(d) 問題解決: 「問題解決」と呼ぶカテゴリのマネジメント原理は、TRIZの応用にぴったり向いているように見える。問題解決はTRIZが基本的に意図していることなのだから [6]
リーンマネジメントは問題解決に独自の焦点の当て方をする。使用されているツールはその大部分が品質管理のツールセットの一部であり、その他にいくつかの一般的なツール (例えば、A3-テクニック[7]) がある。リーンツールについての本の中でTRIZに言及しているものが少数ある (例えば[8]) が、リーン移行プロセスにおけるツールセットの中にTRIZが実際に見られることは決してない。
リーン問題解決のいくつかの機能は、古典的なTRIZを適用して実現することは困難であろう。「問題が起こった場所で解決する」、「直ちに実現できることを指向して解決する」、「継続的考察により、小さなステップの継続的改良を指向して解決する」、などである。TRIZツールをこれらの特徴に適応させることは可能かもしれない。
しかしながら、もっと有望なアプローチは、両者のツールセットをそのままに保って、リーンのツールセットの中に、TRIZツールがその効用を発揮できるようなギャップを特定することである。「リーン-TRIZ」の節 (3.節) を参照されたい。

[なお、] これらのマネジメント原理のほかにも、リーンマネジメントの基本的なルールのいくつかは、TRIZツールの適用を厄介にする。特に、動作の強調 (いわゆる優れた動作[3])、無駄の撲滅 (ここで、「無駄」は特定のやり方で定義される[1][2][3]) などである。

 

2. 「TRIZ-リーン」: リーン知識/原理を持ち込んでTRIZツールを適応させる

このアプローチの背後にある考えは、「TRIZツールが抽象的すぎて、実際的なマインドセットを持つ人々があまり使おうとしないのだろう」という想定に対処しようとするものである。著者たちはいくつかの会社でこの状況を見かけた。そこでは、熱心なTRIZ信者がリーン専門家たちを説得しようとしていた。理論面でもこのテーマが扱われていた。例えば、2011年のウィーンでの「TRIZ学会」で、 C.M. Thurnes, A. Riedl, W. Diesenreiterが、TRIZ発明原理をリーン言語に翻訳して補強することを始めた。その学会の後で、著者たちはこのテーマでの仕事を強力に進め、2013年には「オーストリアTRIZ学会」で総括的な報告 [9] をしたが、それが本稿の土台になっている。

以下のサブセクションに、TRIZをさまざまな分野に移転するこの典型的なやり方 (他の諸分野で先になされたのと同様な方法(例えば[10])) について述べる。それによる経験と批判的なレビューについては 4.節に記す。

2.1. リーンで具体化した発明原理

発明原理 [11][12] は、TRIZツールの中のよく使われる方法である。他のいろいろな目的 (例 [10]) でもなされるように、抽象的な原理の解釈をサポートする諸事例を提示することができる。

われわれの観点から、方法論的に考察すべき面が一つある。すなわち、特定の意図(今のケースではリーン原理に向いた解釈の方向づけ)で事例を追加することによって、発明原理の効果もまたほんの少し変化する。それは例が示されたというだけではなく、それらの例が抽象的な元の原理をその方向で具体化したのである。ユーザはリーンの世界に関連したある特定の思考法へと導かれる。だから、この試みは、発明原理とリーン原理とのハイブリッドを作っているといってもよい (そのハイブリッドでTRIZの部分が勝っていることは確かだが)。

さて、リーンの事例で説明された発明原理は、このようなものである。

例えば、「分割」原理について:

●  装置を取り外し可能に設計せよ
●  装置を設計するに際して、コアユニットと周辺デバイスとで構成せよ
●  より多くの、しかしより小さなロットで作業せよ
●  より多く、しかしより小さなロットで運べ

この例では、第一の文はまだ非常に抽象的で、通常与えられている事例に非常に近く同じだといってもよい、ことが分かる。しかし、他の3つの文はもっと具体的である。それらは、リーンの世界のツールセットと原理 (1.節参照) から持ってきたものであり、TRIZの発明原理 [のうちの最も適当なものとしてここ] に関連づけたものである。

このような具体化を例示するもう一つの例は、発明原理「分離」に対する事例である。

●  物質の流れを、プロセスのステップの順序と技術的特性に基づいて分離せよ
●  プロセスステップを、価値付加ステップと価値無付加ステップとで互いに分離せよ
●  顧客がそれにお金を払いたくない部品を分離せよ
●  マシンを止めておくことが必要なセットアップのステップを、マシンが稼働中にでも実施できるステップから分離せよ

このリーン事例のリストについてのより詳しい情報が欲しければ、著者らにコンタクトされたい。

リーン事例を含んだ発明原理のその後の利用は、通常のアプローチに従う。例えば、ブレーンストーミングのためのヒントのリストとして使う [13]、矛盾マトリックスと一緒に作業するために使う [14]、など。

2.2. 理想性の概念の利用

[TRIZの] 理想性の概念 [15] は、リーンの目的に非常に容易に翻訳できる。この場合、リーン思考のいくつかの側面が非常に有用である。

リーン哲学において、望ましい「あるべき状態」に対する多くの側面は、非常に明瞭な指令として与えられる。これらの指令はなんらの調整の必要なく、リーンの観点からの究極の理想解に対する記述として使うことができる。ここにいくつかの例を挙げよう。

●  理想の生産ロットサイズは: 1個
●  理想の輸送ロットサイズは: 1個
●  理想の生産速度は: (ある期間の顧客のニーズ)/(この期間の利用可能行動時間)
●  動作のための理想の瞬間は: (それが必要な瞬間)−(処理時間)
●  システムの理想の機能は: 顧客がお金を払いたいと思う機能だけ

これらの例からわかるように、多くの場合に究極の理想解は達成できないだろうが、(これはTRIZコミュニティにとっては興味深い論点であるが) ここのいくらかのケースでは達成できるかもしれない。方法論の観点からは、理想性の概念は、 これらの [リーンの] 理想性の記述ではあまりにも切り込み過ぎになっている。方法論の正確性の議論を別にして、可能な解決策空間のスコープがここでは明確に切り取られている。

理想性の概念は、通常のように使われる。例えば、理想への道において使う ([16]参照)。

 

3. 「リーン-TRIZ」: リーンのツールセット中の盲点を見つけ、そこにTRIZツールを導入する

前節(2.節) に記述したツールに関する実験と、TRIZ実践者とリーン実践者との突っ込んだ討論との結果として、われわれが導かれた洞察は次のようであった。

「(2.節に記述した)これらのツールは、(たとえいくらかの積極的な側面を持っているにしても (4.節参照)) おそらく、TRIZをリーンアプローチに統合する適切な方法ではないだろう。」

特に、(TRIZ実践者とリーン実践者の両方をメンバーに持つ)ドイツのTRIZ研究グループが、実践的な実験を実施した後の討論セッションにおいて、このような洞察を述べた。

多くの、さまざまに異なった、会社のアプローチやキャンペーンが、組織と個人の変革の必要をもたらしている。特に、リーンのキャンペーンは、特定のマインドセットの開発と関連づけられている。そこで、TRIZを導入する上でのよい方法は、さらなる変革を放棄することであろう。
それはすべてのものをあるがままに保つことを意味する。リーンアプローチとツールセットもそうだし、TRIZツールもそうである。だから、TRIZツールをリーン世界に適合させることもない。また、彼らのリーンツールセットに適切なツール群を持っているとリーン実践者たちが考えているにもかかわらず、他のツール [例えばTRIZツール] を使うようにリーン実践者たちを説得する必要もない。
リーンツールセット中の盲点で、適切なTRIZツールでそれを充足できるものを、特定するべきである。

以下のサブセクションで、これらの [TRIZツールで補強できるリーンツールセットの] 盲点を例証しよう。

3.1. 矛盾に取り組むことにより、「必要な無駄」を解消する

リーンの基本で最も重要なものは、「無駄を削減する」ことである。プロセスの成果に対して価値を付加しないものはすべて、「無駄」と呼ばれ、さらに、「明白な無駄」と「必要な無駄」とに区別される。定義に使われる言葉は異なっていても、いかなる種類の仕事もこれらの3つのタイプの活動から成り立っているという点が重要である。 すなわち、「価値付加のもの」、「価値無付加で必要でないもの (明白な無駄)」、そして、「価値無付加だが必要なもの(必要な無駄)」[1][2][3]

例えば、一つの商品を商品受入れ場から商品発送場に運ぶことは、製造会社としては必要なことに見えるが、顧客はそれに対してお金を払いたいとは思わない。だから、この運搬は必要な無駄である。
もし同じ商品が、製造プロセスの間に、施設内で異なる場所を行ったり来たりして数回運ばれているなら、この運搬プロセスにはなんらかの明白な無駄が存在し、容易に解消されるべきものである。

(上記のTRIZ研究グループのメンバであり推進者である) Jurgen Hess の協力で、「通常のTRIZツールを、特に「必要な無駄」の解消にうまく使えるだろう」というアイデアが、生まれ、討論され、そしてテストされた。

このアプローチは、組織的・方法論的な状況の次のような側面に依存している。

(a) 組織的状況: 

リーン実践者たちは通常、「明白な無駄」の解消に注意を払っている。「必要な無駄」は、減少されるかもしれないが、最初に取り組まれることはない。より教義的なリーンツールであるほど、「明白な無駄」という低いところに成る実に焦点を当てる。 だから、大抵の企業では、「明白な無駄」を解消するためのツール群は広く普及しており、これらのツール群を変えることは、機会もないし、意味もない。「必要な無駄」の削減などの、より複雑な課題を主目的とするツールセットは、はっきりと定義されていないし、多くの人々に普及していない。そこで、発明的問題解決のセッションを、「必要な無駄」を削減するそしてさらには解消するための、特別なリーンツールとして組み込むチャンスがある。

(b) 方法論的状況:

方法論の観点からいうと、「必要な無駄」は(自然に/当然のことで) 矛盾を提供する。
[リーンでは] 無駄は通常、7つのカテゴリに分類される: 過剰生産、過剰処理、人の動き、物の運搬、待ち、在庫、そして欠陥である。
「必要な無駄」を扱うということは、先述の観察で述べたように、例えば、商品をA点からB点に運搬する必要があるが、その一方で、運搬は無駄だという場合である。 これは矛盾として定式化できる。その物は生産フローのためにはAからBに動かすべきであるが、運搬は無駄だから、動かすべきでない。同様に、どんな必要な無駄もひとつの矛盾として定義できる。

そこでこのアプローチは、(たとえリーンの人々にとっては最優先でなくても) 重要であり、通常まだ組織的な組み込みやツールセットがあまりよく定義されていないような分野をターゲットにする。 そして、「必要な無駄」のどんな記述も (当然のこととして) 一つの矛盾を表現している。
そこで、矛盾を解決するための作業セッションで、TRIZ実践者たちが今までやってきたのと同様にして(例えば [17][18] 参照)、リーンの人々が関わって「必要な無駄」について取り組むものを、作れるだろう。

3.2. リーン製品開発プロセスにTRIZセッションを使う

3.1節で主として扱ったのは、(生産、オフィス、管理などでの) プロセスにおける問題解決であった。
製品開発はまた、TRIZツールをうまく組み込む大きな可能性を提供するように見える。

しかしここでもまた、組織的・方法論的な状況で考察しておくべき側面がある。

(a) 組織的側面:

組織的な面では、リーン製品開発は通常、なんらかの明確に定義した構造を用いる [19][20]。「フェーズゲートアプローチ」などである。だから、TRIZセッションを制度化するのには問題がないはずである。標準的なプロセスの、適用可能な所に、TRIZセッションを容易に追加できるだろう。
あるいは、会社がイベント指向のアプローチ (Mascitelli [21] による優れたアプローチを参照) に従っているなら、TRIZをイベント/ワークショップの形式で使うこともよくマッチするだろう。
TRIZセッションを、コンセプト企画 [4]、リスク分析と事前防止 [22][23]、そして、発明的問題解決一般、また、組織の知識ベースのインストールなどに、実施することができよう。

(b) 方法論的側面:

方法論的な観点では、解決しておくべき点がただ一つある。

実際のリーンの製品開発においては、その基本パラダイムは「テストして設計」と呼ばれている [21][24]。このパラダイムに従うと、少数の代替解決策が探されて、生のテストと実験で評価され、その後に選ばれたいくつかの可能な設計、部品、プロセスなどが創出される。
一方、「設計してテスト」というパラダイムがあり、そこでは、一つの最善の解決策を深く詳細に開発し、非常に高度なプロトタイプを創出し、コンセプトを詳細に改良する。そこでもし、TRIZ実践者がこの「設計してテスト」というパラダイムに従ってそのワークショップを実施すると、方法論的なミスマッチが生じる恐れがある。
この場合、TRIZセッションのスコープを当分非常に小さくして、TRIZセッションが学習サイクルの単なる一つのサブセクションに過ぎないと理解されるようにするべきである。そこでは、唯一の回答を出そうとするのではなく、さまざまな選択肢の開発のセットの中に一つの回答を加えるように、導かれるべきである。

うまく働かせることと同時に、ここには議論するべき一つの論点がある。すなわち、一つあるいは複数の解決策を開発することに関して、「セットベースの並行開発」のアプローチと、基本的なTRIZの哲学がマッチするだろうか?という論点である。

TRIZ実践者たちはこのシナリオのなかでTRIZのいつものツールを利用することができる。恐らく利用できるのは、矛盾 [17][18]、AFD (Anticipatory Failure Determination) とその関連技法 [22][23]、DE (Directed Evolution) [4]、その他であろう。AFDは、解決策に含まれるリスクの可能性を (可能な欠陥を発明することによって) 決定し、DEは次世代の製品を (リーン開発チームが思ってもみなかったものを含めて) 見出すことをする。

 

4. 批判的レビューと結論

実世界の経験がわれわれに教えるのは、「リーン専門家たちはTRIZを知っているけれども、TRIZをほとんど使っていない」ということである。これは驚くべきことである。なぜなら、これら二つの思考法のスクールは、その目標や価値観において互いに重要な部分で重なり合っているのだから。

[4.1  「TRIZ-リーン」のアプローチの検討]

「TRIZ-リーン」の観点 (2節参照) からは、TRIZツールをリーン実践者たちが使えるように適応させることは、非常に容易にできるように見える。

発明原理の場合には、単に組み込んだという以上のことができよう。組み込んだ事例がリーン指向に特化すればするほど、創造的アイデアの空間は特定化していく。その結果、両者のツールが真にハイブリッド化 (融合)するだろう。しかし、それが発明原理に本質的な変化を起こしていると考えるか、あるいは単に特定の事例を集めただけだと考えるかは、読者が判断するべきことである。
リーン原理を用いて究極の理想解を定義することは、リーン思考をTRIZ方法論に持ち込む非常に簡単な方法である。リーンの目標は達成可能でありうる (これは理想性の概念とは矛盾するかもしれない) とともに、解決策空間の視野が限られている。

実際問題として、これらの「TRIZ-リーン」のアプローチはうまく働く。現実に、著者たちはつぎのような経験をしてきている。

● リーンの会社のTRIZ実践者たちは、そのようなツールを使うことにオープンである(容易に受け入れる)。
● この種のツールは、TRIZ実践者たちが焦点を絞り、自分たちの成果をリーン実践者たちが理解するように表現するのに、役立っている。
● リーン実践者たちは、このようなツールを使うことにまったく興味を示さない。なぜなら、これらのツールに自分たち自身の原理が入っていることを見つけ、「適切なリーンツールを使えば、問題解決を達成できるのだ」と主張する。

したがって、われわれが(本稿で)「TRIZ-リーン」と呼ぶものは、リーン思考とその言葉をTRIZユーザに移入するのにはよい方法である。しかし逆に、リーンの会社にそのリーンキャンペーンに組み込んでTRIZを導入するには、適切な方法でないように見える。

[4.2  「リーン-TRIZ」のアプローチの検討]

「リーン-TRIZ」の諸アプローチは、「組織のリーン移行」に非常によくマッチする。なぜなら、それらは価値を付加するだけであり、明確に定義され、(ときには教条的な) リーンキャンペーンを邪魔しないからである。

これは3つの理由で受容性を増加させる:。

● それほど多数のひとびとを説得したり訓練したりする必要がない。
● それは成功を加えるのであり、他の対策やアプローチを置き換えるのではない。
● 組織変革のプログラムをまったく修正する必要がない。

認識された「必要な無駄」から矛盾を定式化した事例は、TRIZを成功裏に(TRIZの方法論的な力を失うことなく、真にシナジーとして)実装するための高い可能性を示す。リーン実践者たちとTRIZ実践者たちの共同の議論と実験の結果、このアプローチが両グループのニーズにマッチすることが分かった。

そこで、最後の問題は、組織的な組み込みの適切な形を見つけて定義することである。例えば、必要な無駄を解消するための月例のセッションなど。これは、各企業に個別に適した形にデザインする必要がある。

リーン製品開発プロセスの中の「イベント」として、TRIZセッションを組み込むことは、非常に容易な計画のように見える。実際、イベントの形式はリーン方法論では非常によく知られており (例えば、3P-イベント、改善イベントなど)、多くのTRIZ実践者たちがそのワークショップを組織するやり方とよくフィットする。
しかし、TRIZイベントの配置とそのスコープは、きちんと定義しておかなければならない。「テストして設計」指向であり「セットベースの並列工学アプローチ」なのだから、TRIZセッションの一つずつは、非常に短い学習サイクルに適合しなければならない。

[4.3 結論: 「TRIZ-リーン」でなく、「リーン-TRIZ」を ]

そこで結論として、本稿は、リーンとTRIZを統合するのにさまざまに異なるやり方を持ったアプローチがあることを示した。しかし、さまざまに異なったターゲット・グループがある。

● 「TRIZ-リーン」アプローチは、TRIZ実践者たちが自分たちの結果をリーン原理に向けるのには適しているけれども、リーン実践者たちはそのようなアプローチを必要とせず、好まない。方法論の観点から、議論すべきことがいくつかある。

● 「リーン-TRIZ」アプローチが、本稿の基本的な問い、すなわち、「高度なリーンマネジメント環境の中にTRIZを統合するにはどうすればよいか?」に関して、有望である。 組織的な統合は処理可能であり、リーン実践者たちにとってパラダイムの変換の必要がない。他方、TRIZ実践者たちにとっては、「セットベースの並行工学」の側面に対処しなければならない。それは、哲学的な課題であり、スコープを適切な大きさにすることによって解決できる。

 

謝辞

2011年のオーストリア・ウィーンでのTRIZ学会でわれわれと一緒に「TRIZとリーン」に関する議論を始めた Angelika Riedl と Wolfgand Diesenreiter に感謝する。 さらにわれわれは、TRIZとリーンを結合する可能性について実りの多い討論をしてくれた Jurgen Hess (B/S/H Home Appliance, Berlin) と Andreas Wagner  (WA-Consult) に感謝する。 ベルリンのTRIZユーザグループに特に感謝したい。TRIZとリーンの知識を待ったその参加者たちによって、両方法をハイブリッド化することの困難を解く鍵が与えられた。最後になったが、TRIZに関する知識をわれわれに共有してくれた Alla Zusman と Boris Zlotin に厚く感謝する。

Directed Evolution (DE) は Ideation International Inc. (Farmington Hills, MI, USA) の登録商標である。

参考文献

[1] Ohno, T., Rosen, C.B., 1988, The Toyota Production System: Beyond Large-scale Production, Productivity Press, 1988, ISBN 978-0915299140

[2] Rother, M., 2009, Toyota Kata: Managing People for Improvement, Adaptiveness and Superior Results; Mcgraw-Hill Professional, 2009, ISBN 978-0071635233

[3] Liker, J., 2004, The Toyota Way: Fourteen Management Principles from the World's Greatest Manufacturer, Mcgraw-Hill Professional, 2004, ISBN 978-0071392310

[4] Zlotin, B., Zusman, A., 2004, Directed Evolution; Ideation International Inc., 2004

[5] Shingo, S., Dillon, A.P. 1985: A Revolution in Manufacturing: The Smed System: Single-minute Exchange of Die System, Productivity Press, Shopfloor Series, 1985, ISBN 978-0915299034

[6] Altshuller, G.S., 1986, Erfinden – Wege zur Lösung technischer Probleme, 2nd edition (German), (creativity as an exact science), VEB Verlag Technik, Berlin, 1986

[7] Sobekk II, D.K.; Smalley, A.: Understanding A3 Thinking: A Critical Component of Toyota’s PDCA Management System, Productivity Press 2008; ISBN 978-1563273605

[8] Bicheno, J., 2008, The Lean Toolbox: The Essential Guide to Lean Transformation, Picsie Books, 4th edition, 2008, ISBN 978-0954124458

[9] TRIZ-Konferenz “Kompromisslos Neu”, 18.04.2013, Philips Innovation Center, Klagenfurt, Austria

[10] Retseptor, G., 2005, 40 Inventive Principles in Marketing, Sales and Advertising, AVX Israel Ltd., 2005, http://www.trizjournal.com/archives/2005/04/01.pdf

[11] Altschuller, G.S., 2006, And suddenly the Inventor appeared, Technical Innovation Center Inc. Seventh Printing, Translated by Lev Shulyak, 2006, ISBN_0-9640740-2-8

[12] Altshuller, G.S., 2005, 40 Principles Extended Edition: Triz Keys to Technical Innovation, New edition with commentary by Dana W. Clarke, Sr., Technical Innovation Center, 2005, 978-0964074057

[13] Terninko, J., Zlotin, B., Zusman, A., 1998, Systematic Innovation: An Introduction to Triz (Theory of Inventive Problem Solving): Introduction to the Theory of Inventive Problem Solving, St Lucie Press, 1998, ISBN 978-1574441116

[14] Kaplan, S., 1996, An Introduction to TRIZ- The Russian Theory of Inventive Problem Solving, Ideation International Inc., 1996, ISBN 1928747000

[15] Hipple, J., 2012, The Ideal Result: What It Is and How to Achieve It, Springer, 2012, ISBN 978-1461437062

[16] Rantanen, K., Domb, E., 2002, Simplified TRIZ: new problem-solving applications for engineers & manufacturing professionals, CRC-Press, 2002, ISBN 1-57444-323-2

[17] Zlotin B., Zusman A., Altshuller G., Philatov V., 1999, TOOLS OF CLASSICAL TRIZ. Ideation International Inc., ISBN 1928747027

[18] Hentschel, C., Gundlach, C., Nähler, H.T., 2010, TRIZ – Innovation mit System, 2010, ISBN 978-3446423336

[19] McGrath, M. E., 2004, Next Generation Product Development, McGraw-Hill.

[20] Morgan, J. M., Liker, J.K. 2006, The Toyota Product Development System, Productivity Press.

[21] Mascitelli, R. 2011: Mastering Lean Product Development – A Practical, Event-Driven Process for Maximizing Speed, Profits, and Quality. Quality Books, Inc., 2011, ISBN 13-978-0-9662697-4-1

[22] Thurnes, C.M., Zeihsel, F., Visnepolshi, S., Hallfell, F., 2012, Using TRIZ to invent failures – concepts and application to go beyond traditional FMEA, in Proceedings of the TRIZ Future Conference, 24.-26. October 2012, Lisbon, Portugal, ISBN978- 989-95683-1-0

[23] Zeihsel, F., Thurnes, C.M., Visnepolshi, S., 2012, New Risk Assessment for Innovation Management The XXIII ISPIM Conference – Action for Innovation: Innovating from Experience – in Barcelona, Spain on 17-20 June 2012. The publication is available to ISPIM members at www.ispim.org

[24] Ward, A., 2007, Lean Product and Process Development, Lean Enterprise Institute, ISBN 978-1934109137

 


 編集ノート(後記) (中川 徹、2014年5月30日)

この論文を読んで考えたことを書きます。私たちが学ぶべきこと、考えるべきこと、行動するとよいことが沢山あります。

* トヨタ方式の世界史的な意義を再認識し、よく理解し、よく考察したい。

* 日本においても、トヨタ方式、畑村-中尾研の創造設計工学、VE、TRIZなどの「異なる流れの考え方」の間での討論・理解・協力を深めていく必要がある。この面で最も継続的で深く活動してきているのが、日本VE協会関西支部の(略称) TRIZ研究会であろう。首都圏ではあまり組織化できていないように思う。

* 日本の自動車産業におけるTRIZの受容の状況(歴史的な経過と現状)をよく理解し、本論文を参考にして、アプローチを再検討したい。実際に自動車産業あるいはその関連で仕事をしておられる人たちの経験と所感が大事であろう。

* 日本の産業界でも学界でも、「TRIZを(ある程度)知っているが、使わない」という人たちは多いと思われる。その実情はどうなのだろう。― 90年代末でのTRIZでなく、現代化されたTRIZが伝わっているだろうか。また、他の技法や思想の方がよいからTRIZを使わないのだろうか?

* 日本では、「TRIZを(ある程度)知っているが、使えない」という人たちはもっと多いと思われる。考える方法、技法というものが、聞いて、読んで、学んだだけでは、どうしてもこの段階(「知っているが使えない」)にとどまる。具体例で学ぶ、自分で(仲間と)やってみる、実地に使ってよい結果を得る、繰り返し使ってその方法を体得するというように進むこと、成功体験を作ることがやはり大事であろう。

* 成功体験が得られる「場」を作ることが大事。-- リーダの役割が大事 (日本のリーダも、各社内のリーダも、個別のプロジェクトのリーダも)。

*  成功体験が語られ、発表されることが大事。 -- プロジェクト内でも、社内でも、日本でも、世界でも。学会での発表も。そして微力ながら、この『TRIZホームページ』でも。

* この論文の特長は、単に実践・経験だけでなく、方法論の面からの反省・考察をしていることだと思う。

* 「継続的改善」に関連して思い出すのは、昨年読んだ永谷研一著『絶対に達成する技術』(中経出版)での、目標達成の日常的な活動指針である。私の「創造的問題解決の6箱方式」の考え方でいえば、ともに「現実の世界」での大きな目標と枠組の設定の後に小規模で継続的な改善活動を繰り返している。その中でときとして大きな問題にぶつかり、あるいは「必要な無駄」のような問題点を認識して、「立ち止まって考える」。その時に、「思考の世界」の技法としての、TRIZなど「創造的な問題解決の方法論」が真価を発揮する場になるのだと思われる。本論文でいう、「リーン-TRIZ」のアプローチである。

* いま、『TRIZ 実践と効用』シリーズの第3巻に、Larry Ball著『階層化TRIZアルゴリズム』を出版するべく準備を進めている。Ballは、新製品開発プロセスの全体を、「市場を見出す」ことからスタートして、機能やシステムを理想化する(理想を考える)、そして矛盾を解決する、ことに進んでいる。ここでも、「現実の世界」の活動・考察と、「思考の世界」での考察との切り分けとつながりが大事なことである。学ぶことが多くある。

多くの考察と実践に進むきっかけを創っていただいた本論文の著者、Prof. Thurnes と Dr. Zeihsel に改めて感謝します。

 

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最終更新日 : 2014. 5.31    連絡先: 中川 徹  nakagawa@ogu.ac.jp