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編集ノート (中川徹、2008年 1月11日)
本件は、昨年8月末の 第3回TRIZシンポジウムにおいて、その第2日午後のポスターセッションの中で発表されたTRIZ適用事例です。なお、中川はこのシンポジウムの全体をレビューして、英文で 'Personal Report of The Third Japan TRIZ Symposium in Japan' を書き、海外に紹介しておりますので、ご覧下さい。
本研究発表の優れている点は、企業の実地の問題に対してTRIZを体系的に適用し、その適用の方法および分析・考察過程や得られた知見と解決策を、明確にかつ詳しく記述していることです。このような記述は、本件だけでなく、このLS Cable社および他の韓国企業から最近発表された数例の発表に共通しており、TRIZを学ぶ人々に対して、その使い方を分かりやすく示し、その実用性を教えてくれている点で、大変貴重なものです。本件をTRIZシンポジウムで発表され、またこの『TRIZホームページ』への掲載を許可いただきました、4人の著者の人たち、およびLS Cable 社に、厚くお礼を申しあげます。
本件は当初シングルのオーラル発表として全員で聴くようにプログラムを組んでいたのですが、発表者 (Jae-Hoon Kim氏) が多忙で来日が危ぶまれ、発表者からの希望でポスターセッションに変更しました。発表者は第2日の数時間だけの参加・発表となり、あまり多くの参加者と討論できなかったのは、勿体ないことでした。
本ページは、和文と英文で以下のように構成しています。一部分しか和訳できていませんので、英文ページもぜひご覧下さい。
ポスターセッション紹介スライド PDF (仲畑 光蔵訳)
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[1] 論文紹介 (中川 徹、2008年 1月11日)
中川 徹: 「Personal Report of Japan TRIZ Symposium 2007」 (2007.11.18、『TRIZホームページ』掲載 (英文)) 中の関連部分を和訳して示す。
Jae-Hoon Kim、Joon-Mo Seo、Young-Ju Kang、Byoung-Un Kang (LS Cable、韓国) [19] が行ったポスター発表は、「印刷可能な接着剤の物質特性改良」と題するもので、優れた適用事例であった。問題は、プリント回路基板 (PCB) 上に接着剤を印刷塗布する過程に関係している。この印刷塗布工程は、つぎのスライドの工程1〜工程5に示すようである。印刷塗布において生じる欠陥は 3つのタイプがあり、右端 の欄(すなわち、工程5) に示した。これらは、上から順に、目詰まり (clogging)、はみ出し、泡、と呼んでいる。
本事例研究 (および、この会社 (すなわち韓国のLS Cable社) から最近発表された数例の他の適用事例も同様) のよい点は、問題を分析する方法が体系的であり、得られた知見を明確かつ詳細に記述していることである。印刷塗布工程の全体を観察した結果、これら3種の欠陥を起こさせるのが、一つの共通した原因であることが分かった(上記のスライドを参照)。すなわち、工程3で、マスクを持ち上げるときに、ペースト (粘着剤) の粘度がかなり高いために、くっついて持ち上げられることである。著者らはこの問題を体系的に分析し、(Structure analysis [構造分析] を使って) プロセスの観点から、また(Knowledge analysis [知識ベースの分析] と特許分析を使って) 材料の観点から分析した。
これらの分析により、またTRIZの知識ベースの助けによって、著者らはこの問題のメカニズムを、つぎの図に示したように理解した。粘着剤の粘度が高く、マスクを持ち上げるときに、マスクの縁で粘着剤が持ち上げられる。ペースト (粘着剤) というのは、ポリマーの単純な液ではなく、微小な粒子を混ぜて「チクソトロピー性」を持たせている。その意味は、自由な状態では流動性がないが、剪断応力 (横にずれる力) が働くと流動性を示すことである。IMC社のツール Goldfire Innovator のEffects 知識ベースの説明によれば、「剪断応力によって、チクソトロピー性媒体中の粒子のまわりのミクロ構造が破壊され、流動するようになる。よって、粒子が微小であればあるほど、流動させるに必要な剪断応力は小さくてもよい」という。この知識を基礎にして、著者らは、粘着剤のポリマーにより微小サイズの粒子を配合する実験を行い、本件の3種の欠陥を解決する結果を実現した。
[2] ポスターセッション紹介スライド [訳: 仲畑 光蔵 (日立)]
[3] 英文ページ
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最終更新日 : 2008. 1.29. 連絡先: 中川 徹 nakagawa@ogu.ac.jp