子どものための教材: 子どものためのCIDコース (導入編)


子どものためのCIDコース: 新しいことを思い描く力をつける

(日本語版) 導入編

原著 (ロシア語): ナタリア・V・ルービナ (1999年)

英訳版:  イリーナ・ドーリナ 訳 (2000- 2001年)
   『TRIZホームページ』(中川 徹)掲載 (2000- 2002年)

日本語版: 福田ちはる、高原利生、中川 徹 訳 (2019年−)
  『TRIZホームページ』(中川 徹)掲載 (2019年−)
   
発行者:  クレプス研究所 中川 徹 2019年2月20
  © 2019 Toru Nakagawa

掲載:  2019.2.23

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  編集ノート (中川 徹、2019年 2月23日)

原著では、1年生1学期の指導の手引きに「おとぎ話への招待(序の代えて)」という3頁のメッセージがあるだけです。英語版で、4項目のメッセージが増え、1年生1学期のテキストの前に置きました。日本語版ではさらに増えましたので、「導入編」という名前で分割した小冊子にしました。その内容は英語版の当時の和訳を少し推敲してくりこんでいます。いろいろ大事なことがありますので、PDF版だけでなく、ここにHTMLページで読めるようにしておきます。

なお、今後、分冊の発行に応じて変化があれば、このページを補筆・修正するようにいたします。

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PDF版 

表紙

英訳版の公開(中川)

序(著者)

全体目次

英訳版へのメッセージ(著者)

英訳版の連載完了(中川)

日本語版の掲載開始(中川)

参考文献

jCID 親ページ 英文ページ

  

「導入編」の目次       [注:  は本ページ内でのリンクにしています(2019. 2.23)]

表紙 〜 目次                                                                                 

英訳版の『TRIZ ホームページ』公開にあたって  (中川 徹、2001 年1 月22 日)    

コースへの原著者の序     (Natalia Rubina, 1998)      

全体目次: 創造的想像力の開発コース(CID)                            
          おとぎ話の学校(1年生) 、不思議な都市 (2年生) 、未解決の謎の惑星 (3年生)

英訳版への著者メッセージ   (Natalia Rubina, 2000 年12 月25 日)    

英訳版の連載完了にあたって  (中川 徹、2002 年 2 月19日)     

日本語訳の掲載開始にあたって    (中川 徹、2019 年 2 月20 日)    

参考文献                                                                               

 


  

 「導入編」の 表紙など

   

 

  


 

英訳版の『TRIZホームページ』公開にあたって (中川 徹、2001年1月22日)

子どもたちが創造的になるように導くためのコース教材を、この『TRIZホームページ』の英文ページに掲載開始できることは、私にとって大変うれしいことです。これは1999年8月に私がロシアとベラルーシに取材旅行をしたことの成果の一つです。その旅行記に書きましたように、さまざまな年齢の子どもたちとその先生たちの教育に携わっているTRIZの専門家に沢山会いました。小学校やさらに幼稚園の子どもたちにTRIZの考え方を教えているというのは、私にははじめ信じ難いことでした。「TRIZの何を子どもたちに教えようとしているのだろう?そんなことができるのだろうか?子どもたちがTRIZのエッセンスを理解するのだろうか?高度な教育を受けた技術者たちでさえ、難しくて分からないと感じることが多いのに。・・・」 私の質問に応えて、ペトロザボーツクのNatalia Rubina(ナターリア・ルービナ)さんが、彼女の教材の一セットを私にくれました。

そのコースは、「創造的な想像力の開発(Creative Imagination Development、CID)」という名前です。そのコースは、旧ソ連でゲンリッヒ・アルトシュラ―が開始し、その後彼の多くの弟子や共同研究者が加わって、ほぼ40年間にわたって開発されてきたものです。コース名は、ロシア語の略称の英語つづりで「RTV」と書かれることもあり、Salamatov のTRIZ教科書では「Improvement of Creative Imagination (ICI)」と表記されています。創造的な想像力(例えば、新しいSF(サイエンスフィクション)を書くような力)の必要性を、アルトシュラーは技術者にTRIZを教えた初期から認識していました。また彼は、創造的な思考法を若い人たちに教えることも努力していました。例えば、1961年ころには、発明を考えるパズルを、子供向けの新聞の日曜版に連載していました。そこで、CIDコースにはいつも二面がありました。一方は子供向け、他方は大人向けです。

ルービナさんは、このコースをペテロザボーツクの第17学校の(小学)1年生から3年生の子どもたちにこの7年間教えてきています [注: ロシアでは、1年生から11年生までが同じ学校に通うとのこと]。いまここに英訳している教材は、1998-1999年のクラスのために作られたものです。子どもたちが使うワークブックと、先生たちのためのガイドブック(「方法論的指導の手引き」)とから成り、1年生から3年生までの前・後期合わせて6冊ずつのフルセットになっています。そのセットは、実際にどんなことがどのように教えられているのかを私たちが理解するのに、大変貴重なものです。

ロシア語から英語へは、イリーナ・ドーリナ博士が素晴らしい翻訳をして下さり、心より感謝します。同博士はモスクワ外国語大学を卒業し、ソ連科学アカデミーの東洋研究所で研究をしました。1993年以来、夫君と一緒に日本に在住です。彼女は2年半の間、私のロシア語の先生でしたが、その後(柏から)東京の都心に転居されました。この教材の英訳は随分難しいものです。ロシア語でのなぞなぞや言葉遊び、そして空想の物語が沢山あるからです。

このWebページへの技術的な編集は中川が行いましたが、原本のレイアウトをできるだけ保つように心がけました。ハイパーリンクを使っていますので、教材中のいろいろな関連部分への参照がらくにできるかと思います。

(ロシア語や日本語でなく)英語で翻訳・掲載しますのは、この教材をできるだけ広くかつ早く開示したいと思うからです。私たちは今後2‐3年かかって、このシリーズを章ごとに翻訳・掲載していく予定です。このサイトの読者の皆さんとともに、いままでまだ英語では出版されていないCIDコースの全容を学んでいきたいと思っています。

これを読んで下さった皆さんが、子どもたちの教育やTRIZ自身の理解に、このコースが新しい洞察を与えてくれると感じて下されば、原著者にとってもまた訳者・編者にとっても、うれしいことです。TRIZのエッセンスをより深く理解することによって、いろいろな年齢の子どもたちへの教育が、一層創造的で実り豊かになることでしょう。この非営利のWebサイト『TRIZホームページ』への掲載を、なんらの商業的対価なしで許可してくださった原著者ナターリア・ルービナさんに厚く感謝いたします。本ページの末尾に掲載していますルービナさんからのメッセージは、この教材を読んで下さるだろう世界の子どもたちと先生たちの皆さんへのクリスマスの贈り物として、電子メールで届いたものです。

読者の皆さんのご感想を、原著者と英訳編者にいただけますと、幸いです。この教材を、できることなら将来、英語および日本語での本のシリーズとして出版したいと思っております。この英語版の著作権を尊重いただけますようお願いいたします。もし、本教材をあなたのクラスで使用したり、あるいは広く出版・案内などを希望なさる場合には、原著者および英語版編者まで予め電子メールでご連絡下さい。

原著者: Natalia V. Rubina:  tds-2015@yandex.ru 
英語版編者(著作権者): 中川 徹: nakagawa@ogu.ac.jp 

[訳注] 上記の二人の電子メールアドレスは、2019年1月17日現在。


 

コースへの原著者の序 (Natalia Rubina, 1998)

私たちは変化の激しい世界に生きています。過去を凍りつかせたような単なる知識は、新しく起こってくる問題を解決するための十分な助けにはなりません。創造的に問題を解決する能力や高度な想像力が、明日だけでなく今日の人格を規定する重要な資質です。

発明問題解決の理論(TRIZ)を基礎にして、本書の著者は「小学生のための 創造的想像力の開発(CID)のコースのプログラム」を創り、テストしました。制御された想像力は、変化する状況に自分自身をすばやく簡単に適応させることを可能にしますから、CIDコースは心理学者たちが小学生たちを診断し心理的矯正をするのに、活発に使われています。

本プログラムの枠組みでの仕事を簡単にするために、生徒用のワークブックと先生用のガイドブックを作成し、ここに提示します。

プログラムは全体で3学年を対象としています。「おとぎ話の学校」:1年生。「不思議な都市」:2年生。「未解決の謎の惑星」: 3年生。このプログラムはペトロザボーツク第17学校の1年生から3年生の子どもたちを教えるのに, 4年間使われてきました。授業は毎週 1回行い, 各クラスを二つのグループに分けて授業しました。

著者はTRIZの創始者G.S. アルトシューラーに深く感謝し, また, I.N. ムラシュコフスカ, A.N. ネステレンコ, M.C. ガフィチュリン, セルゲイおよびスベトラーナ・シチョフス, N.N. ホーメンコ, V.I. チモホフ, アナトリおよびスベトラーナ・ギン, M.S. ルービンに感謝します。これらの人々の仕事がこのCIDコースとワークブック集を創るのに多大の助けになりました。そしてもちろん, ペトロザボーツクの第17学校の 1年生〜3年生の子どもたちの助けが大変貴重でした。ありがとう、私の小さなマジシャンたち!

読者の皆さんのご意見やご提案をつぎのアドレスに送ってきてください。
Natalia V.Rubina:  tds-2015@yandex.ru (2019.1.17)

 


 

全体目次:創造的想像力の開発コース(CID)  (小学校1年生−3年生向け)

[注: 第2〜第6分冊は、英語版作成時のものです。(2019.2.24)]

 

 

 

 

 


 

英訳版への著者メッセージ  (Natalia Rubina, 2000 年12 月25 日)

はじめに、小さな奇跡と大きな奇跡

思いがけない奇跡が、私たちの人生に起こることがあります。あなた(中川さん)に出会ったのは、私にとって本当に奇跡でした。沢山の人たちが、私がまったく知らない人たちが、私の考え、私の夢、私の仕事を、(このウェブサイトで)学んでくださるのだと知ったのは、素晴らしい喜びでした。ちょっと残念なのは、こちらの子どもたちのはじける笑い声と考えている目の深みを伝えられないこと、そしてまた、しばらくの間童心に戻っている一人の大人の喜びを伝えられないことです。

私が子どもだったとき、まわりには奇跡と不思議があふれていました。私は毎日それらを創り出していました。カールソンとくまのプーさん、吟遊詩人と恐ろしい森の盗賊たちが私の友だちでした。それらはみんな、おとぎ話を読んでくれる私のばあやと同じほどに、私にとって現実のものでした。そして私は自分でおとぎ話をつくり、その中に自分自身のエピソードを組み込むようになりました。私はそんな話を何時間も話し、両親はそれを辛抱強く聞いてくれました。

やがて人生は私に沢山の発見を準備してくれました。あるとき、小さくて、ふわふわして、楽しい生き物、コリーの子犬が私の家にやってきました。その犬は私の親友になり、熱心な聴き手になってくれました。私の大好きな犬で、地球上の生き物たちへの私の興味をかき立ててくれました。それは大変面白く、素晴らしいことでした。けれども、夢見る人という職業はありません!どこで、どのようにして、自分の夢と空想を実現できるでしょうか?

私がTRIZに出遭ったのは、「必然的な偶発の結果」というべきものでした。TRIZのクラスで、まったく異なる世界が私の前に開かれました。制御された空想の世界であり、問題を解決するアイデアの偉大さ、美しさ、優雅さに私は魅了されました。TRIZの素晴らしい世界を知ったのは、私がペトロザボーツク大学の植物学部の4年生のときでした。すべての学生たちと同様に、私は自分の将来、仕事、人生、その目標と意味、などについて考えており、人生を本当に興味深くする道を探していました。

初めは、TRIZのクラスは、あまりきつくない私の大学の時間割の中の、もう一つの(多分一番大事な)科目になりました。それは本当にわくわくするもので、素晴らしいアイデアが私たちの目の前で、またときには私たち自身の頭の中から生まれることに、私たちは魅了されました。沢山のセミナー、TRIZ専門家たちとの会合、本、また本、がありました。

その後、大学5年生の初めに、小学校での教習授業がありました。もちろん私は子どもたちにTRIZの話をしたいと思いました。そしてもちろん、私の最初の授業では私が蓄積してきた情報のすべてを盛り込まないといけないと、私は信じていました。当たり前ですが、子どもたちは、私の混乱した実演からは、ほとんど何も覚えていませんでした。それでもすぐに、私が教えていたクラスの数人の生徒たちが、創造性クラブ「異端者」に入りました。そのクラブは、ペトロザボーツク第17学校で、私たちと私のTRIZの先生とで始めたものです。そのクラブの活動は、私にとって、TRIZのクラスの詳細を考え、準備し、実施すること、新しい教え方を模索すること、創造性のための楽しい雰囲気を作り出すことの本当の学校になりました。

残念なことに私は、TRIZの創始者のアルトシュラー先生に親密にお近づきになったわけではありません。私は、「先生の弟子の弟子」の世代ですから。それでも、その大先生に数回お会いしただけで、私の心に深く印象付けられ、世界観や行動のしかたや人生の選択をも、方向づけられました。先生のすばらしく澄んだ、思慮深く見つめる眼差し、未来を見はるかした人の眼差しを、私は大切に記憶しています。「時は、時間の網を潜って、人々にも、出来事にも、事実にも浸透する。人は未来を覗き見ることはできないけれども、その人生のすべての瞬間に、その謎に満ちた姿を創り出している。」

またもう一つのエピソードが私の記憶に残っています。1997年7月のTRIZ学会で、私たちはアルトシュラー先生の登場を待っていました。先生は話すことが困難でした。しかしその第一声が学会の雰囲気を完全に変え、その方向と内容を決定づけました。「この6月に、偉大な発明家Jacques Yves Cousteauが亡くなりました。彼の素晴らしい諸発明と、その見事な一生をレビューしましょう。」その1年後にアルトシュラー先生自身が亡くなられました。多くのものが変わりつつあり、多くのものがまったく違ったように見えます。そして、先生の考えが実現されつつあります。おそらく、私たちが見るのとまったく同じものを、先生の賢明な洞察はずっと前に発見していたのでしょう。

私は幸運でした。私の人生には、私に毎日教えてくれ、より賢く、より親切で、より発明的になるように教えてくれる人がいます。私たちはいつもお互いに興味深く思っています。私たちは一緒にいて、すべてがうまく行くだろうと、信じています。私の夫が、TRIZと創造性について私が知っていることのすべてを、私に教えてくれました。実際には、この数年間、学校の子どもたちと先生たちと一緒に仕事をして、私自身が興味深い経験をしてきました。そして私の夫が、「きみはそのことを私よりずっとよく知っているよ」ということが、どんどん多くなってきました。隠さずにいいますと、私は自分の経験を夫と共有し、ときには私がやった小さなことや大きなことを自慢するのが、うれしいのです。

もうひとつ、アルトシュラー先生が始められた素晴らしいことがあります。それはTRIZ運動、より正確には、TRIZの「兄弟愛」です。それは、創造性を人生の中核にしている人々の、素晴らしいコミュニティです。その人々とのコミュニケーションは、しばしば興味深く、深い意味を持っていて、前進するための助けになります。その世界もまた夫Michaelが私に紹介してくれました。私は、彼とそのすべての人たちに、私を彼らの世界に受け入れてもらったこと、知っていることを何でも教えてくれたこと、そのアイデアがいつも私を驚かせたことに、感謝します。

私の人生はすべて、いろいろな形で、学校と繋がりがありました。私の母は教師です。私は幼少のときからずっと、教師という困難で、予測不能で、すごく面白い職業について、さまざまな面を見てきました。しかしそれでも、CID(創造的想像力の開発)のクラスを(小学)2年生に始めようという提案は、まったく予想しなかったことでした。2年生はまだ随分小さな子どもたちですから。その子どもたちとどうやっていけばよいのでしょう?2年生のための最初の授業に向けて、私はまる1ヶ月準備をしました。疑問は山積みでした。

そしてついに授業が始まりました。最初の20分間で、私が授業全体のために計画していたことのすべてを話しました。私の前には30人の2年生たちがいて、授業の続きを待ち構えていました。その後ろの最後列には、2年生の担任の先生、心理学者、そして「支援グループ」のMichael Rubin がいました。私は、すぐにもクラスを逃げ出したいと思いました。「教え方を知っている人たちが教えるとよいのに。私にはできない、・・・」それでも、「異端者」クラブでの私の活動は無駄ではありませんでしたし、「解けない問題はない」というすべてのTRIZメンバーが持っている自信もまた助けになりました。

子どものための「Yes-No ゲーム」というのがあります。そのルールは極めて簡単です。プレーヤたち(子どもたち)は、なぞなぞを解くにあたっていろいろ質問ができますが、出題者(先生)は「Yes」または「No」という返事しかできません。私たちのTRIZクラスで、そのようななぞなぞの問題を沢山解いてきていました。そこで、私はこの難局を抜け出す道を見つけたのでした。残り時間のあいだ、子どもたちは沢山の質問をし、答えを探して、楽しく時間を過ごしました。そのとき私は、「子どもたちに、創造すること、考えそしてまた創造することを教えるのが、私の一生の使命だ」と、悟ったのでした。

[訳注: 「Yes-No ゲーム」は、戦後のラジオ放送で、夜のお茶の間を賑わせた「20の扉」という番組と基本的に同じものです。]

それからすぐに私たちは、「クラスで必要なものはすべて、自分たち自身で作らなければならない」という結論に到達しました。授業で配布する教材やテストカードのことだけを言っているのではありません。「何を?どのように?いつ?教えるのか」 沢山の疑問があり、ほんのわずかの答えしかありませんでした。

教材のファイルを作る仕事は、もうすでに7年間続いています。私たちが最初にCIDコースを教えた2年生の子どもたちは、いまはもう高校生になっています。あと1年でその子たちは、大人の世界に踏み出す各自の道を選択していきます。

私たちの学びが、その子たちに「どんな問題にも答えがあるのだ」と確信させ、出遭うだろう問題を創造的に解決することを教えた、と私は信じたいです。事実として、その子たちは、多くのテストでも全教科でも、本当の創造者たちです。「おとぎ話の学校」での教育を興味深く魅力あふれるものにしたのは、彼らの好奇心と多数の質問でした。「不思議な都市」の旅、そして「未解決の謎の惑星」での探求でも、同じです。これらは小学生のためのCIDコースの3部分の題名です。

私たちのCIDコースはステップを踏むように作ってあり、子どもたちが創造性の世界に入って行けるように、面白くて魅力のあるゲームを手段に使い、日常生活のルーチンを克服し、創造的な問題解決を学べるように、作ってあります。

CIDコースの仕事はいまも継続しています。子どもたちとの授業に並行して、この授業を自分自身のクラスで始めたいと考える先生たちへのセミナーも行っています。創造的な問題を解決するコンテストがあり、新しいコースが構想されており、また、新しい本が準備されています。

この数年のあいだ、私たちの生活にはさまざまなできごとがありました。喜ばしいものもそうでないものも、幸せなものも悲劇的なものもありました。しかしいつの場合でも私たちは忘れませんでした。「どんな問題でも解決できる。問題は解決するためにある」と。夫と私は新しい世界を発明する者であり、そこでの最も重要なことは、創造すること、創造性の幸せ、そして前進することです。

さあ一緒に、創造性の世界に、未来の世界に、行きましょう。

 


 

英訳版の連載完了にあたって  (中川 徹、2002 年 2 月19日)

今回の掲載で、この「TRIZに基づく創造的想像力の開発コース(CID)」の全教材の英訳公表を完了しました。このコースは、小学校1年生〜3年生の子どもたちのためのもので、6冊の指導の手引きと 6冊のワークブックとからなっています。著者のナターリア・ルービナ夫人が このすばらしい教材を『TRIZホームページ』に掲載許可してくださったことに厚く感謝しますとともに、英訳者のイリーナ・ドーリナ夫人が分かりやすくそして予定よりもずっと早く英訳いただいたことに感謝します。

ルービナ夫人のCID教科書は、TRIZに基づく児童教育がどういったものかを、端的にそして深く私たちに指し示してくれました。TRIZのエッセンスを子供たちに、こんなにすっきりと興味深くそして楽しく教えることができるのを知って、おどろくばかりです。おとぎ話という設定で「創造的想像力」を刺激することにより、子供たちの (そして私たち自身の) 考え方を広く拡張することに役立っています。先生たち、あるいは子どもの教育に関心を持ついろいろな人たちが、TRIZおよびTRIZに基づくCIDコースを学んで、近い将来にそれらを実際に児童教育に導入して下さることを、私は願っています。また、現時点でTRIZを学習し実践しようとしている (その多くは技術畑にいる)人たちが、このように単純化されたTRIZのエッセンスを学び、TRIZでの考え方をマスターするのに役立てていただければ幸いです。

いままでに読者の皆さんからいくつものレスポンスをいただきました。米国・韓国・南アフリカ・ペルーなどからの便りがありました。近い将来にこのCIDコースの教材を、英語・日本語・韓国語などで、小冊子の形で出版できればよいと思っております。読者の皆さんの感想を下記にお寄せ下さい。 [訳注: 電子メールアドレスは、2019年1月17日現在。]

原著者: Natalia V. Rubina:  tds-2015@yandex.ru 
英語版編者(著作権者): 中川 徹: nakagawa@ogu.ac.jp


 

日本語訳の掲載開始にあたって (中川 徹、2019 年 2 月20 日)

この「子どものためのCIDコース」を英語版から翻訳して日本語版を作成することは、当初からの夢でした。ただ、その分量の多さのために、この20年近く取り掛かることができませんでした。このたび、ともかく第1分冊の日本語版を作成し、公開できることは、うれしいことです。

実は、2013年2月に、高原利生さんがこの第1分冊の指導の手引きとワークブックの一式を和訳して、中川に提出下さいました。当時私は多忙にしており、それを推敲して仕上げることができませんでした。そのため、そのまま立ち消えになり、本当に申し訳ないことをしました。

2018年10月になって、福田ちはるさんが英語版に感激され、新たに第1分冊の日本語版の原稿を作成くださいました。福田さんは、弁理士資格を持ち、二女一男の子育て中の若いお母さんです。私は、高原さん・福田さんのご努力を今度は無駄にするまいと思い、第1分冊の全章を推敲しました。全6分冊のうちの第1分冊をここに公開して、多くの方に読んでいただき、使ってみていただいて、今後、全編の日本語版公開に取り掛かります。

日本語版の作成の基本方針と注意点は以下のようです。

・ 全体構成や各章の記述内容は、原著・英語版に沿って忠実に訳しています。

・ 先生用の「指導の手引き」では、「基になっているTRIZやCIDの考え方をできるだけきちんと伝えるように」、忠実に訳すと同時に、必要な訳注をつけています。

・ 生徒用の「ワークブック」では、「子どもたちに分かるように」を最大の方針として、言葉遣いに注意し、やさしい漢字だけを使い、魅力があり、興味を引くように配慮しています。例えば、コースの名前も、子どもたち向けには『子どものためのCIDコース: あたらしいことを思いえがく力をつける』としました。

・ 原著には、ロシアの児童文学・詩・諺などが多く引用されており、英訳注を頼りにその雰囲気を残すようにしています。一方、なぞなぞや言葉遊びなど、言語に依存する部分は、英訳注・訳注を残したうえで、趣旨を踏まえて日本語での例に作り変えました。福田さんのセンスが生きています。

・ 「指導の手引き」では、教室で子どもたちに話し行うことの記述(黒字)、先生のための説明の記述(青字)、英訳者の注と和訳者の注(緑字)などを、フォントの色と字下げで区別して示しました。(原著でこれらの区別が混乱していると思われる所があり、修正しています。)

・ TRIZの概念・用語の、子どもへの説明に苦労する点が多くあります。特に原著で枠線で囲んでいる重要概念の記述が、原著・英訳版で子ども向けにこなれていません。そこで、趣旨を維持したうえで、子どもに分かるように、言葉を選び、説明を言い換えています。

・ 英語版は、Web上に掲載し、ハイパーリンクを活用して、相互参照の便を重視しました。しかし、日本語版では、学校やサークルで子どもの教育に実際に使うときの便利さを重視しました。プリントアウトすれば、すぐ小冊子になるように、PDFでの掲載を主体にしました。製本版も後日作成し、出版する予定です。

・ 本書を使って、実際に子どもたちに教えてみる経験をもつことが、非常に大事でしょう。その際、原著者自身が繰り返し書いていますように、教材ができていればうまく行くのではなく、先生と子どもたちとのその場その場での交流が大事で、臨機応変さが求められます。いろいろと工夫しながら、教材も内容も改良していくことが大事なことでしょう。

・ 実際に、福田ちはるさんが、小学校2年生のお嬢さんにところどころ教えてみて、なかなか難しかったとの感想でした。数人のグループ、あるいは十数人のクラスだと、かえって楽しく教えられるのかもしれません。

・ 「創造的想像力の開発(CID)」というテーマで教えるには、TRIZのような考え方を学んでいるだけでなく、先生自身が豊かな想像力(空想力)、とらわれない楽しいこころ、子どもに帰った心(童心)が大事なのでしょう。

・ いろいろな方が、いろいろな場で、このCIDコース、「新しいことを思い描く力をつける」ための教育を試みてくださることを、願っています。

・ 日本語版を作ってみて、原著者ナターリア・ルービナさんと、英訳者イリーナ・ドーリナさんの貴重な労作に、改めて感謝いたします。

・ さらに、第2分冊以降の日本語版の作成(英語版からの翻訳作業と日本語の教材としてのブラッシュアップ)に、ご協力いただける方を募っています。編集者までご連絡ください。
           中川 徹 nakagawa@ogu.ac.jp

 


 

参考文献 (原著 (英訳版))

 1.  Altov G.: "And Suddenly the Inventor Appeared", Detskaya Literatura, Moscow, 1989.

和訳: 超発明術TRIZ シリーズ2 導入編「やさしい事例に見る活用法」、G・アルトシューラー著、三菱総研IMプロジェクト推進室訳、日経BP社 (1997).

 2.  Bashaeva T.V.:  "Children's Developing of Perception", Akademia nauk, Yaroslavl, 1997.

 3.  Belobrykina V.G.:  "How to Become a Magician", Moscow, 1994.

4.  Granovskaya R.M.:  "Elements of Practical Psychology", Publishing House Svet, Sankt-Petersburg, 1997.

5.  Grinder and Bendler:  "From the Frog to the Princes (neirolinguistic programming)".

6.  "Children's Encyclopedia", Rosmen, 1994.

7.  "Games: Educating, Traning, Recreation", edited by V.V. Petrusinsky, Novaya shkola, Moscow, 1994.

8.  Kryazheva N.L.: "Developing of Emotional World of the Children",  Akademia razvitiya, Yaroslav,1997

9.  Kuryachaya M.: "Chemistry in Pictures",  Detskaya literatura, Moscow, 1992

10.  Seminar materials of Murashkowska I.N. and Nesterenko A.A., 1994-1995

11.  Murashkowska I.N.:  "When I Become a Magician", Theory of Knowledge, issue 5, Riga, 1993.

12.  Murashkowska I.N. and Valums N.P.: "The Non-stop Pictures", Publishing TOO "TRIZ-Shans", Sankt-Petersburg, 1995.

13.  Nesterenko AA.: "The Land of riddles. The Method of Using Riddles", TRIZ Magazine 3.4.92

14.  Rodari, J.: "Fantasy Grammar", Progress, Moscow, 1990.

15.  Rubina N.V.: "Creative Imagination Developing course for the elementary school", Petrozavodsk, 1996.

16.  Rubina N.V.: " Workbook on CID (Creative Imagination Development) for a first grade (first semester)", Petrozavodsk, 1998

17.  Magazine "Tram". 1.1.90

18.  Uralskaya V.L. and Litvin S.S.: "Conjuring Trick as a Subject of Education  and a Method", Magazine TRIZ. 3.4.92.

 

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英訳版の公開(中川)

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英訳版へのメッセージ(著者)

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最終更新日 : 2019.2.24      連絡先: 中川 徹  nakagawa@ogu.ac.jp