TRIZフォーラム: 社会 | |
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック: 危機とその克服 (索引ページ) |
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2020年5月3日、5月10日 |
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掲載: 2020. 5.10 |
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編集ノート (中川 徹、2020年 5月 3日)
中国武漢市で始まった新型コロナウイルスの感染が、中国、韓国、そしてヨーロッパ諸国、米国に急拡大し、アフリカなどの開発途上国にも広がって、全世界を深刻な危機に陥れています。世界各国がさまざまに苦闘し、乗り越える努力をし、一部には成功した国・地域の例も報告されています。
その中で日本は、非常に特異な状況にあります。2月以後の感染確認者数の増加スピードが(諸外国での感染の急拡大期に比べて)遅いのですが、その増加がなかなか止まらない。感染症にたいしては、できるだけ早期に感染の有無を検査し、感染者を隔離し、重症化しないように適切な対症処置をし、重症者の救命治療をするという、基本的な医療体制が遅々として確立できない。感染検査を政府が抑制しているために、感染確認者数が増えていないだけで、実数は数倍から一桁程度多いのではないかと疑われている。無症状や軽症の感染者を、自宅でなく、適切な施設で安全に隔離・看護する体制が作れていない。その一方で、緊急事態宣言がさらに延長されて、経済活動の抑制、国民の外出自粛の要請が続けられようとしている。実情・実データを明確にしない安倍政権のもとで、医療体制も経済活動もますます悪化していくと思われる。
私は遅ればせながら、このページを作ることにしました。非専門の私が、このホームページでできることは、限られています。それでも、いろいろな人、グループ、組織の活動や情報で、気がついたものを紹介していきたいと思います。いろいろな性格のサイトや情報がありますが、大雑把に以下のように分類して示します。読者の皆さんからも情報をいただけますと幸いです。
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日本の政府情報、データに関するもの
政府(内閣官房)のサイト: 「新型コロナウイルス感染症対策」ホームページ https://corona.go.jp/
首相官邸のサイト: 「新型コロナウイルス感染症に備えて 〜一人ひとりができる対策を知っておこう〜」 主ページ https://www.kantei.go.jp/jp/headline/kansensho/coronavirus.html
厚生労働省のサイト: 「新型コロナウイルス感染症について」厚生労働省ホームページ https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html
政府の専門家会議有志の発信: 「新型コロナウイルス感染症に関する専門家有志の会」ホームページ https://note.stopcovid19.jp/
政府の専門家会議の内の主要メンバー(21人)が、「有志」として情報発信をし始めているものです。目的は、(1) 「今」伝えたいことを分かりやすく発信する、(2) 信頼のできる情報ソースを集約する、こと。4月5日開始。
(中川) 政府からの拘束を受けていない、医学・医療・感染症危機管理などの専門家としての見解を期待するのですが、、、、。それがどこまでできることなのか、できているのかは、よく分かりません。
国内データ: 「新型コロナウイルス感染速報」サイト https://covid-2019.live/
開発及び運営メンバー: 可視化開発、データ更新、主催: @swsoyee; データ提供: @kenmo_economics; 他 (詳細不明)
日本国内の各県別の(一部、区市町村別) 感染確認数(各日、累計)、検査数、退院者数、死亡者数など。毎日更新。詳細データがコンパクトに可視化されており、日による変動が動的に見える。分かりやすく、貴重なサイトです。
世界の情報、データに関するもの
世界のデータ: 「WHO (World Health Organization)サイトのCOVID-19ページ」 https://www.who.int/emergencies/diseases/novel-coronavirus-2019
「WHO COVID-19 Dashboard」 データ表示ページ https://covid19.who.int/
世界のデータ: 「Our World in Data」 サイト、 https://ourworldindata.org/
Oxford 大学が運営するサイト。世界の種々の大きな問題について、データを可視化して、考察しようとするサイト。COVID-19危機に関して、下記の記事で初期から継続的に取り上げています。
Statistics and Research: Coronavirus Pandemic (COVID-19)
by Max Roser, Hannah Ritchie, Esteban Ortiz-Ospina and Joe Hasell
https://ourworldindata.org/coronavirusECDC(欧州CDC)の統計データを基礎に、約30種のグラフを示し、毎日更新している。全世界の国別の状況がよくわかる。考察あり。
世界のデータ: 「Johns Hopkins Univ. Coronavirus Resouce Center」 サイト、 https://coronavirus.jhu.edu/
世界の状況、米国内の状況を詳細に伝え、多くの有用な情報を発信している。
世界の基本方針(ドイツ): ドイツ メルケル首相の国民向けスピーチ (2020年3月18日) 、 同 (2020年4月 9日)
A. 動画、全文、(首相自身のスピーチ(ドイツ語)+(画面下部に)英文字幕) ドイツ政府公式サイト
https://www.bundesregierung.de/breg-de/themen/coronavirus/-this-is-a-historic-task-and-it-can-only-be-mastered-if-we-face-it-together--1732476B. 日本語訳(公式) 全文 ドイツ大使館 「新型コロナウイルス感染症対策に関するメルケル首相のテレビ演説(2020年3月18日)」
https://japan.diplo.de/ja-ja/themen/politik/-/2331262C. 4月9日のスピーチ: 日本語訳 【全訳】メルケル首相、自宅隔離から復活のスピーチ「"その後"は必ず訪れます」、 Courrier、
https://courrier.jp/news/archives/196465/?ate_cookie=1588582771(中川) 非常に説得力のあるスピーチです。国民の命と生活を守るために、検査と隔離・治療の体制を整え、失業が出ないように政府が補償する体制を整えたので、旅行・外出などの日常の自由を一時抑制してほしい。「自由な社会」の本質を維持するための基本方針を訴えています。感染者が増大したにもかかわらず、死亡率が少なく、医療崩壊を起こさず、社会不安を起こしていないドイツの実績を作り上げたスピーチ。
日本での 情報発信、主張、提言などに関するもの
山中伸弥教授のホームページ 「山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信」 https://www.covid19-yamanaka.com/
3月29日開始。毎日2回更新。
10のカテゴリ: 新型コロナウイルスとは、証拠の強さ(エビデンス)による情報の分類、5つの提言、解決すべき課題、科学論文で学ぶ、専門家・書籍から学ぶ、データから学ぶ、世界の対応、報道から学ぶ、動画で学ぶ5つの提言(3月30日掲載、4月9日改訂): (各提言には、丁寧な説明がついています) http://www.covid19-yamanaka.com/cont6/main.html
提言1 自分を、周囲の大切な人を、そして社会を守る行動を、自らとろう
提言2 感染者受入れ体制を整備し、医療従事者を守ろう
提言3 検査体制の強化
提言4 国民への長期戦への協力要請と適切な補償
提言5 ワクチンと治療薬の開発に集中投資を医学の最先端で研究しておられる山中先生が毎日貴重な時間を割いて、COVID-19の危機の最新情報と克服の方向を執筆くださっている、貴重なサイトです。
阪大平野前総長のブログと提言: 平野俊夫先生(前大阪大学総長)のブログ と、それをベースにした8人の提言
平野俊夫 ブログ COVID-19 ページ http://toshio-hirano.sakura.ne.jp/Hirano/xin_xingkoronauirusu_gan_ran_zheng_COVID-19.html
「なぜCOVID-19はこれほど恐れられているか??過度に恐れる必要はないが、決して敵を甘くみてはいけない!? 」 第1報 (2020. 3.27) 、
「希望の光が灯る? しかし、決して油断をしてはならない」 第2報 (2020. 3.29)、
「愛・信・恕; COVID-19は人類にかく語る」 第3報 (2020. 4. 5)、
「COVID-19克服への道」 第4報 (2020. 4.11)、
「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する提言」 (令和2年4月28日、平野俊夫他 8名)
(中川) 現在(2020.5.9)、日本の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の状況を理解し、克服するための最も重要な文書(提言書)と思います。上記 4.26の平野提言を推敲した上で、8名の共同提言としたものです。
提言者: 小川久雄(国立循環器病研究センター理事長)、 里見 進(前東北大学総長)、 土岐祐一郎(大阪大学医学部付属病院長)、中西宏明 (日本経済団体連合会会長)、 濱口道成(前名古屋大学総長)、 平野俊夫(前大阪大学総長)、 松本 紘(前京都大学総長)、 松本正義(関西経済連合会会長) (現在の国家的危機に鑑み、個人の立場で本提言をするものである。)
提言1: 長期戦であると言う認識: 免疫学的には、再生産数R0(一人の患者が感染させる人数、例:2.5)のとき、集団の免疫獲得率が1−1/R0 (例: 60%) になるまで収束しない。ワクチンがない現状では、(日本および世界の)60%の人が免疫を獲得するには2−3年はかかる可能性がある。
提言2: 医療崩壊を止める: これが緊急の課題。(1) 医療機関の役割分担を確立する(重症、中等度、軽症、無症状者に対する医療分担。救急医療やがん等の医療崩壊の防止)。(2) 重症者を取り扱える病院やICUを確保。(3) 医療の充実(医療物資・機材の充実と国内での確保、他)。(4) 医療機関や医療従事者の疲弊防止 (医療従事者の長時間勤務回避、COVID-19受け入れ医療機関への補助、歯科医師・獣医師・医学部生等の動員・参加とその補償、医療従事者への感謝と支援)
提言3: 現状把握と情報共有: PCR検査の充実・拡充(医師が必要と認めた患者のPCR検査をすぐに行い、早期診断確定と隔離。院内感染防止のための検査。リアルタイムでの感染状況の把握。抗体検査の早期実施。)
提言4: 最悪の事態を想定した出口戦略の策定: 現場の医療状況に詳しい医療関係者等を政府対策会議メンバーに参加させる。保険診療と非保険診療の混合診療を緊急時特例で認める。ワクチン開発を国が支援する。既存薬の臨床試験促進のための十二分な財源確保(アビガンやアクテムラなど)。長期戦を想定して、国・組織・個人レベルを含めて、すべての面で国民生活を可能な限り維持しながら危機を乗り切るさまざまな工夫を考え、実行していかなければならない。
提言5; 今後の危機管理のありかた: (国家レベルでの)危機管理センター(仮称)の設立。その下に、感染症センター(仮称)や高度被ばく医療センター等を設置する。Chief Medical Officerの設置(常時、政府に政策助言を行う)。将来を見据えた感染症センター(総合的な研究・検査・調査・総合対策などの体制を作る)。感染症病棟の拡充、感染症分野の基礎研究の充実、感染症医学を担う人材育成。
科学的な解説、研究に関するもの
科学的解説の動画: Ninja Nerd Science , Ninja Nerd Corvid-19
米国の若い3人のグループによる、科学的・専門的でいて分かりやすい解説の動画シリーズ。2017年1月に開始、医学・医療の広い分野を扱い、膨大な講義動画の蓄積がある。そのバックの上で、今回のCOVID-19の問題も詳細に取り上げている。
あらかじめ骨格を描いたホワイトボードに、話しながらどんどん書き加えていくスタイル。 詳細だが、非常に分かりやすい。図がよく考えられている。断片的でなく、基本からきちんと体系的に説明している。
グループのサイトはFacebook上、一連の動画はYouTube上で公開している。名前は「忍者オタク」といった意味らしい。Ninja Nerd Science https://www.youtube.com/channel/UC6QYFutt9cluQ3uSM963_KQ 、
FACEBOOK | https://www.facebook.com/NinjaNerdScienceカテゴリ別の動画数 (Playlist) (動画は、15〜50分程度、長いのが多い。)
Created playlist: Embryology 5, Ninja Nerd Medicie 3, Molecualar biology 2, Pathodology (病理学) 22, 他 20, 19, 12, 41, 12, 20, 31, 10
Human Physiology: 17, 24, 8, Immunology (免疫学) 8, 32、12、10, 8, 20, 41, 12, 19
Human Anatomy: 20, 6
Chemistry: 35, 9, 4
Pathophysiology: Pharmacology 15, Pathology 22
特に Covid-19 に関する動画:
COVID-19 | Coronavirus: Epidemiology, Pathophysiology, Diagnostics (2020. 3.17) (50:39)
COVID-19 | Coronavirus: Epidemiology, Pathophysiology | APRIL UPDATE (47:28) (2020.4.21)COVID-19 | Coronavirus: Treatment, Prognosis, Precautions 2020.3.18)( (36:00)
COVID-19 | Coronavirus: How is Coronavirus Diagnosed | APRIL UPDATE (2020.4.22) (42:00)(中川) 私には、専門用語の英語は大部分が分からないのですが、言おうとしていることの全体的なことはよく伝わります。
医学関係の素養のある方(OBの方でも、若い学生・院生等の方でも)で、ホワイトボードの図(最初と最後の図)を和訳いただけないでしょうか?日本のテレビでの専門家のいろいろな解説よりも、ずっと体系的で、一般市民に分かりやすいと思っています。論文: 「新型コロナウイルスの蔓延に関する一考察」(SIQRモデル) 小田垣孝 (九州大学名誉教授) 2020.5. 5 (投稿中)
(注: 中川 (2020. 5. 9): 朝日新聞デジタルの記事(5. 6) で知り、小田垣先生のHP http://www001.upp.so-net.ne.jp/rise/ でその論文(プレプリント)を読んで、以下の紹介をします。)
感染症のパンデミックに関する従来理論「SIRモデル」を改良し、感染者の隔離を採り入れた「SIQRモデル」を作り、新型コロナウイルスの日本の状況を分析した。SIQRモデルでは、集団(国民)を未感染者S, 市中の感染者I, 隔離されている感染者Q, 快復者+死者R、を区別し、市中感染者のみが未感染者を新しく感染させると考える。各群の人数の変化を微分方程式で表し、パラメータに変化がない(と思われる)一定期間を考えると、I(t)は指数関数 I(t0)・exp(λ(t-t0)) となる。λ= (日ごとに一人が感染させる率β’)−(検査し隔離する率p)−(回復と死亡の率γ)で表せる。また、日ごとに感染を検出し隔離する人数ΔQは、pI(t)で表せる。
日本全国の感染判明者のデータをこのモデルで分析した。グラフの状況から、4つの時期を区分した。第1期(3.1〜4.2)が感染の初期で、データからλ=0.096、(γ=0.03を仮定して)、β’=0.126と推定できた。第2期(4.2〜4.11) は検査・隔離が始まった時期。第3期(4.11〜4.19)は大雑把にΔQが一定(λ=0)であり、第1期からのβ’を使い、p=0.096を得た。第4期(4.19〜4.29)はデータからΔQの減少が見られ、λ=-0.075、(pは第3期と同じとして) β’=0.051を得た。このβ’は、第1期のβ’の約4割だから、自粛効果が6割減と評価できる。
これらのパラメータ値を使うと、今後の自粛および検査・隔離のやり方について、種々の場合の効果をシミュレーションできる(効果は、ΔQが1/10になる日数で分かる)。パンデミックの抑止には、(a) 新規感染者をできるだけでないようにする(β’を下げる)ことと、(b) 市中の感染者をできるだけ速やかに隔離する(pを大きくする)ことが基本である。自粛はβ’の項の操作であり、8割自粛でλ=-0.101 (23日間で1/10)、完全ロックダウンでλ=-0.126(18日間)となる。一方、検査・隔離の率は現在p=0.096であり、これをもし4倍とすると、(活動自粛無しで)λ=−0.288となり、8日間で1/10になる。すなわち、検査・隔離の強化・迅速化がずっと良い効果を生むことを認識したうえで、両者の適切な併用(例えば、5割自粛、検査2倍でλ=-0.159 (14日間で1/10)) が望まれる。これは従来から多くの人が指摘していたことであるが、本論文は実績データをもとにそれを理論的に示した。
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最終更新日 : 2020. 5.10 連絡先: 中川 徹 nakagawa@ogu.ac.jp