TRIZフォーラム: 学会参加報告
TRIZ Future Conference (ETRIA) 2013 参加感想

泉 丙完(早稲田大学)、2013年11月 5日

掲載:  2013.11.17

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  編集ノート (中川 徹、2013年11月10日)

10月29日〜31日にパリで開催された、表記の国際会議について、早稲田大学の泉丙完さんに参加の感想を書いていただきました。学会中に原稿を依頼したのですが、11月5日に早々と寄稿くださり、感謝いたします。

なお、早稲田大学大学院の澤口学教授の研究室では、(社会人)大学院生の人たちに、この欧州での国際会議に積極的に参加発表するようにしてきており、今年は下記の4件の発表をしています。

・ Manabu Sawazuchi (Waseda University): "Research on the Efficacy of Creative Risk Management Approach based on Reverse Thinking"

・  Heikan Izumi, Manabu Sawazuchi (Waseda University): "Optimizing Process for Improvement Design basedon TRIZ and Information Integration Method"

・  Yui Kato, Manabu Sawazuchi (Waseda University): "Design Process Management based on Redesigned Contradiction Matrixin Aethetic Field"

・  Koichi Makino, Manabu Sawazuchi (Waseda University): "A quantifiable evaluation method for generated ideas with many variables"

なお、中川の参加報告を別ページに掲載しました。(2013.11.13)


  参加感想(泉)  PDF 

 

TRIZ Future Conference (ETRIA) 2013 参加感想

2013/11/5 泉丙完(早稲田大学)

 

今年10月28日〜31日にパリのArts et Métiers ParisTechで行われたTRIZ Future Conferwence(ETRIA)2013に研究発表のため参加しました。 以下に、Conferenceの様子や主な発表内容等を報告させていただきます。

 

1、概要

 TRIZ Future Conference(ETRIA)は毎年欧州で行われている、TRIZに関する国際Conferenceで、毎年、欧州以外にも米国、アジアや中東等からの参加者も参加している。このConferenceの大きな特徴は、企業の実務者と大学の研究者らがほぼ半々くらい参加していることであり、今回の発表でもScientifice sessionが41件、Professional sessonが35件あり、実務と研究のバランスのとれたConferenceであった。今回注目すべき点としては、140人の参加者の中で韓国からの参加者が20人と多く来ており、韓国のTRIZ熱を感じさせられた。

 

2、主な発表内容

 今回のConferenceへの発表応募が110件に対し、76件が採択され、ほぼ例年並みの採択率であるとのことであった。Scientific sessionの中では、"イノベーション効率化"や"発明向け教育"の分野が最も多く、次に、"TRIZの改定"や"TRIZと他の手法による連携や最適化"の分野の発表が多く、"経験に基づくTRIZの多様化"、"IP等に関する研究"の分野の発表等も多数あった。 また、Professional sessionにおいては、"事例研究"や"TRIZ教育導入"や"TRIZを応用した方法論"、"TRIZと他の手法との連携による支援"や"TRIZ導入手法"等の発表があった。

 当方が特に注目した発表としては、以下のような内容があった。

・Using  ARIZ to improve Pinhole Photography 

Philips社のChristoph Dobruskinの発表で、ARIZを用いて具体的な開発事例の説明が行われたが、ARIZがVEの機能分析と似た感覚で使われており、技術的問題を解決する上でARIZの重要性を再認識させられた。発表後、Dobruskin氏に聞いたところ、彼はPhilisps社の社内コンサルタントとして働いており、社内でにARIZに基づく問題解決がとても有効であるが、社内の事例を出せないので自分の趣味のPinhole Photographyで発表を行ったとのことであった。

・Collective intelligence to solve creative problems in conceptual design phase

  フランスのToulouse大学のRene Lopez Floresらの発表したTRIZと知的データベースにより概念設計を支援するするシステムに関する研究で、当方の研究テーマとも通じる点があり興味深かった。フランスでは、Denis Cavallucciを始めとする多くのTRIZの実用化システム開発に関する研究が活発に行われているようで、研究者層の厚さを感じた。

・Enhanced Unlatch Operation of Disk Drive for Low Temperature Environment

 Samsung社のKyoung-Whan Ohが発表した、低温時のHDDドライブのトラブルをTRIZの発明原理を使って解決した事例発表。特に複数の優先度の異なる問題に対し、どのように問題を整理し解決したかがよくわかる大変いい事例発表であった。Samsung社はこのような具体的な開発事例はめったに発表しないが、Samsung社がHDD事業を売却したため、このような研究の開示が可能になったようである。

・TRIZ education using Pictographs and Music

 日本にも来日し馴染みのあるJeongho-ShinがTRIZを分かり易く教育するための絵カードや音楽を紹介した発表で、いつものことながら彼のプレゼンの魅力には注目すべきものがある。今回は特に、子供向けに独創力を高めるためのカードを紹介した。彼はこのカードを1ユーロの寄付(ETRIAを通して慈善団体に寄付)を集め280ユーロの寄付があったとのことである。また、日本語版のカードも完成しているとのことで、日本での販売先を模索していた。

 

3、当方の発表

今回は、"An Optimizing Process based on Information Integration Method" という発表を行った。本研究では、TRIZ等を用いて設計改案を進める際、NamP. Suhや中沢らが提唱したInformation Integration Methodを用いて客観的に評価に基づいて、最適な改善案を導くプロセスを提案した。発表では、Information Integration Methodをなかなか理解してもらえず苦労したが、発表後、何人か興味深い発表であったとの感想を示してくれた。

 

4、その他、感想

 私は、ETRIA参加が今回で3回目で、何人か親しい研究らにとも再開でき、何となく年に一度のイベントのような感覚で発表や聴講を楽しむことができた。このようにTRIZを通じて各国研究者らと気軽にネットを広げられるところがこのConferenceの魅力の一つだと思う。

 


(ETRIA発表会場で、チェアマンのTomと)

今回の会場はパリの市内にある名門の技術系の大学であったが、長い伝統のある学校のようで、建物がとても風格を感じるところであった。食事はランチも含め、毎日フレンチのフルコースという贅沢な内容であったが、やはり何日かこのような食事が続くとアジアンテーストが恋しくなり、知り合いの韓国人らと行ったラオス料理屋がとても美味しく感じた。

                                       以上

 

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最終更新日 : 2013.11.17    連絡先: 中川 徹  nakagawa@ogu.ac.jp