TRIZフォーラム: 学会参加報告 (25) 
ETRIA TRIZ Future Conference 2012 
(リスボン、ポルトガル、2012年10月24-26日) 参加報告 [速報]

中川 徹 (大阪学院大学)、2012年10月29日

掲載:  2012. 11.15

English page will be posted in a week.

  編集ノート (中川 徹、2012年11月15日)

私は、表記の国際会議に参加・発表のため、10月22日(月)〜28日(日) に出張しました。

この報告は、帰国の翌日にTRIZ協会運営会議メンバの皆さんにメールしました「速報」にほんの少し手を加えたものです。本当はもっときちんとした報告をするとよいのですが、とりあえずこの速報の形で読者の皆さまにも報告いたします。

本ページの先頭 学会概要 運営 興味深かった内容 ETRIA 総会 所感    

 

英文のページ

  ETRIA TFC2012 参加報告 [速報]

リスボンで開かれた ETRIA の TRIZ国際会議に出張・発表して昨日帰国しました。ここに簡単に報告しておきます。

(1) 会議の概要

ETRIA (欧州TRIZ協会) 主催
TRIZ Future Conference 2012 (略称 TFC 2012)
組織:       New Lisbon University (NLU), Lisbon, ポルトガル

期日:       2012年10月24日(水)〜26日(土)
会場:      Faculty of Science & Technology, New Lisbon University, Lisbon, ポルトガル

発表などの件数:     チュートリアル 2件、   基調講演 4件、  一般発表 59件 (Full 30分 45件、 Short 15分 14件)
                             (第1日 は 3トラック並行、他は 2トラック並行)

参加者:          参加者 82名 (27ヶ国 より)
                     日本から(7人): 澤口学教授・泉丙完(早稲田大)、長谷川 浩志教授・高橋 シュン (芝浦工大)、
                                          川上 浩司 准教授・内藤 コウスケ (京大)、 中川 徹 (大阪学院大学)

(2) 運営

発表申込 (概要提出) (4月 2日締切)    77 件受け付け、審査
論文原稿提出 (6月4日締切)               71 件受け付け、査読を実施
論文カメラレディ提出 (9月10日締切)    57 件受理

論文原稿提出、査読、最終提出のプロセスが ETRIA と 主催大学にとって 大変な作業。
プログラム (タイトルと著者、そのスケジュール) は 2週間前に初めて発表された (Web上)。
論文集 (印刷物 & デジタル版) の仕上がりは、前日 だったという。

プログラム内容は ETRIA と NLU (の一部の人) が責任をもち、
査読は、ETRIA 関連の査読者 (約30人) が分担し、
会場の設営、イベント、運営、経理など一切を NLU が負担する。 [これが各国持ち回りにしているETRIA TFC の運営法。]

学会のディナーの他に、オプションでの Fado (ポルトガルの民族音楽(歌謡)) とディナー が用意されていた。

(3) 内容で興味深かったもの:

基調講演: Pierre Collet (ストラスブール大学、仏)  「Artificial Evolution で、コンピュータが発明する」
-- 遺伝アルゴリズムを使って、いろいろなデザインが新規に開発されている。単なるパラメータの調整ではなく、構造そのものが新規になっている。

基調講演: Luis Esteves (Amorim Group、ポルトガル) 「たゆみないカイゼン」
-- ポーランドの重要産業のコルクの農園・製造業で、世界のトップシェアを維持して来た企業における、カイゼン (トヨタ方式) の導入とたゆみない継続。工場内の作業のビデオなど、説得力があった。

アドバンストセミナーと 一般発表: Olga Bogatyreva & Nikolay Bogatyrev (バース大学、英)、「Bio TRIZ」、「Biomimetics」
-- (アトバンストセミナーを中川は聞けなかった) 生物が獲得したしくみと人間の技術の対比。生物のしくみを 人間の技術に取り入れるための基本的なプロセスの提案

一般発表: Iouri Belski (メルボルン大学、豪) 、 「違法突破車を阻止するための Crash Barrier」
-- シンガポールの中小企業での適用事例。

一般発表:Kai Hiltmann (Coburg 大学、独)、 「ドラムブレーキのWOIS/TRIZによる改良 (騒音防止)」
-- Prof. H.J. Linde (昨年逝去) の後継教授。自動車のドラムブレーキから出るノイズを防止する という問題での実地事例研究。
WOIS のやり方を順をおって詳しく説明している。最後の結論はドンデン返し的。特許取得済み。

一般発表: Karen Gadd (Oxford Creativity、英)、 「BAE 社におけるTRIZの確立 (推進事例)」
-- 飛行機や潜水艦などの製造に関わる英国のグローバル企業BAE (従業員は全世界で 10万人) における、TRIZの推進活動 (1998年からの14年) の詳細と教訓。 BAE の人材育成プログラムにしっかりとリンクされて、 この14年間着実に推進されてきたという。 研修とコンサルティングの両方。貴重な資料。

一般発表: Andrew Martin (Oxford Creativity、英)、 「ただで使える TRIZ Effects データベースの開発」
-- Effects DB をだれでもが無料で使えるように開発中である。機能からの分類のためのリンクも作っている。協力者を求む。

==> これら (またはその他) のうちのいくつかを和訳して、 『TRIZホームページ』に掲載することを計画しています。和訳に協力して下さる方を求めます。(中川までメール下さい)

なお、中川はつぎのタイトルで一般発表を行なった (Full paper、30分の発表):
"Establishing General Methodologies of Creative Problem-Solving / Task-Achieving: Beyond TRIZ", Toru Nakagawa (OGU).
この発表スライドは、近日、英文ページに掲載するつもりです。(日本TRIZシンポジウムでの発表から少し発展させて、TRIZの普及の問題を考察する過程で、新しい目標として「問題解決の一般的な方法論の確立」を掲げるに至った論理を説明しています。)

(4) ETRIA 総会

会長交替:      Tom Vaneker (Twente 大学、オランダ、准教授) (3年間在任で今回退任)
               ==> Joost Duflou (Kathoric University Leuven、ベルギー、教授) (任期 2年)

2013年 の ETRIA TFC の開催計画
                     会場:              パリ、フランス
                     時期:             未確定 (11月初旬 (?))
                     組織責任者:    Pascal Sire (フランスTRIZ協会 会長)、(IBM)

(5) 所感:

例年と同様に、大学関係者の一般発表が多い。
教育だけでなく、実地適用事例や、ソフトツールの開発、適用分野の拡張など、いろいろな発表がある。
Cavallucci (仏)、Cascini (伊)のグループの発表もいくつもあったが、他のものを優先させたので、少ししか聞かなかった。

企業の発表はあまり多くない (これから 論文集を読んでみないとわからないが)。
上記の Karen Gadd の BAE での推進事例は非常に貴重である。英国では、この BAE と ロールスロイスで着実にTRIZが適用されてきたという。(適用事例の発表はない)。

Ellen Domb に言わせると、米国の Intel や GE でも着実に適用、推進されているという。 (ただ、Intel の場合は、グローバル企業として、米国以外の方が活発に使われているようである。)

日本から、4大学の関係者 7人 が参加しているのは特徴的で ある。学術的に評価される (査読がある) 発表の場として参加している (教授の立場でも、大学院生の立場でも) と思われる。
京大の 内藤君 (修士2年) の発表を聞いた。しっかりしたよい発表であり、興味深い内容だった。「不便益」 (わざと不便にしていることで、有益になるというケースを考える。)

発表の幅が広いのが特徴であり、日本のTRIZ推進者、企業の人たちも発表・参加してみると有意義だろうと思う。
特に次回のパリでの開催は、欧州の企業からの発表が期待されている。

韓国は企業からの参加が 8人(?)程あったが、発表は大学からだけ。
注: 今年 7月の 韓国でのGlobal TRIZ Conf. の参加者は 300人余という (約400人という日本参加者の推定はやや過剰であった)。

ETRIA TFC は、発表者と開催国関係者以外の一般参加者が極めて少ないのが、従来からの問題である。学術向きの「論文査読」に力点を置いており、最終的に受理したものだけを外部発表しようとしているため、プログラムの発表が開催2週間前という状況になっている。アブストラクトを審査・受理した段階  (5月) で、著者とタイトルを公表すると、一般参加者をもっと呼び込めるだろうと私は思う。[日本のTRIZシンポジウムは、アブストラクトを受理した段階 (6月初め) で、第1次のプログラムを編成し、アブストラクト集を公表して、参加者の募集に役立てている。]

とりいそぎの速報です。また、和文でだけ掲載します。
もっと論文集を読んでみないと、本当の評価はできません。きっといろいろ注目すべきものがあるでしょう。

 

本ページの先頭 学会概要 運営 興味深かった内容 ETRIA 総会 所感    

 

英文のページ

 

総合目次  新着情報 TRIZ紹介 参 考文献・関連文献 リンク集 ニュー ス・活動 ソ フトツール 論 文・技術報告集 教材・講義ノート フォー ラム Generla Index 
ホー ムページ 新 着情報 TRIZ 紹介 参 考文献・関連文献 リ ンク集 ニュー ス・活動 ソ フトツール 論文・技 術報告集 教材・講義 ノート フォー ラム Home Page

最終更新日 : 2012.11.15    連絡先: 中川 徹  nakagawa@ogu.ac.jp