TRIZフォーラム: 読者の声: ETRIA国際会議に
ETRIA TFC2011 国際会議に参加して:  感想と報告

牧野 公一 (早稲田大学大学院)、
泉 丙完 (泉精機 & 早稲田大学大学院)、
佐藤 彩乃 (芝浦工業大学 修士2年)、
長谷川 浩志 (芝浦工業大学)、
澤口 学 (早稲田大学)、
中川 徹 (大阪学院大学)

責任編集: 中川 徹(大阪学院大学)

掲載:  2011. 12. 5

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  編集ノート (中川 徹、2011年11月28日)

11月2-4日にアイルランドのダブリンで開かれた、ETRIA主催のTRIZ国際会議には、今年は日本から6名が参加し、5編の発表を行いました。澤口学先生 (早稲田大学) と中川は常連ですが、今回 4人の新しい方が出席されました。そこで、それらの方に参加の感想を書いていただきました。新鮮な感覚で、強い刺激を受けておられます。

国際会議の概要:

(1) 会議名:       ETRIA (欧州TRIZ協会)主催   TRIZ Future Conference 2011
     ホスト:         Institute of Technology Tallaght (タラ), Dublin、アイルランド
     会場:          DCU Ryan Academy Building, Citywest Business Park, Dublin
     期日:          11月 2日(水)〜 4日(金) 3日間

(2) 参加者:       約120名 (26ヶ国より)
     発表論文:    基調講演 4件 (各 45分)、 Tutorial 3件
                       Scientific Papers:  Full Papers 17編 (発表30分)、Short Papers 5編 (発表 15分)
                       Practitioners Papers:    Full Papers 12編 (発表30分)、 Short Papers 16 編 (発表 15分)

(3) 日本からの 発表   5件   (出席 6人:  牧野、泉、澤口、佐藤、長谷川、中川)

(a) ○牧野公一、澤口学 (早稲田大) 「機能ダイアグラム」 "Study of a Functional Diagram to Facilitate the Effective Utilization of“Effects” "

(b) ○泉丙完、小池 (泉精機)、澤口学 (早稲田大) 「コスト削減法」 "Proposal for an effective cost reduction method based on TRIZ"

(c) ○澤口学 (早大)、三原祐治、泉丙完 「改良 矛盾マトリックス」, “A study of Effective Manufacturing Activities” based on a Number of Redesigned Contradiction Matrices”

(d) ○佐藤彩乃、長谷川浩志 (芝浦工大) 「ユーザの感動を設計に活かす」 "Considering User’s Kando for Conceptual Design on CDSS"

(e) ○中川徹、三宅貴久(大阪学院大) 「草取りの方法」 "Problem solving in everyday life: On methods and tools for weeding (or removing weeds)"

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  ETRIAの感想:  牧野 公一 (早稲田大学大学院)  2011年11月10日

(私は) 会社ではプロフィットセンターの業績を向上させるために、製品競争力強化活動の支援を業務としています。
機能分析は無くてはならない手法であり、今回のカンファレンスで各国の機能分析に関する最新の研究に触れることができて非常に有益でした。

さらに各国の優秀なみなさんと交流することができてとても楽しい学会となりました。たまたま日本から参加した(早稲田大学大学院の) 学生はすべて社会人でしたが、企業からの派遣はありませんでした。一方、韓国からは三星、LG に、POSCOと、企業から派遣されているのでしょうか?日本企業も負けていられないぞと感じます。

  ETRIAの感想:  泉 丙完 (泉精機 & 早稲田大学大学院)  2011年11月11日

今回、初めてのETRIAでの発表とセミナー聴講を行いましたが、ETRIAはTRIZ分野における最先端の学会であることをあらためて感じました。

大学関係者と企業関係者が同じくらいの比率で参加しているようで、内容的にも、アカデミックな研究発表と実践的な発表が半々くらいで、研究と実践のバランスのとれた学会という印象です。特に、フランス、イタリア方面では大学関係者の活躍が目立ち、UKや米国関係ではコンサル関係者が多いようでした。

EUの学会の割りに、米国やアジアからの参加者も多く、特に韓国から10名くらい参加していたのには驚きです。

なお、当方の「TRIZを用いた実践的なコスト削減手法」の発表の後、何名かの方から直接問い合わせがあり、また、韓国の企業関係者から自分のセミナーでも流用したいとの申し出があり、この分野が注目されていると実感しました。

  ETRIAの感想:  佐藤 彩乃 (芝浦工業大学 修士2年)  2011年11月11日

今回の学会で印象的だったことは、TRIZの汎用性の広さについてです。TRIZを扱うようになってまだ半年たらずな私にとって、さまざまな分野での研究発表はTRIZの新たな一面を感じるとてもよい機会となりました。特に、TRIZの評価法についての発表が面白かったという印象を持っています。

さらに、自分の発表の中でキーワードとなった「感動」について、発表後数名の方から声をかけていただきました。日本人特有の感性が伝わるのかという不安もありましたが、少しは聞いてくれた人の関心を得ることができたかと感じています。

また、サムスンやLGの方の発表はもちろんのこと、韓国の方々のアグレッシブさがとても印象的でした。同じアジアの人間が積極的に活動しているのを見て、自分ももっと頑張りたいと思います。

   ==> 注: 中川がさらにいろいろメールでお聞きして、佐藤さんが書き足して下さいましたものを、別ページに掲載します。
「初めての国際会議で英語で発表して (ETRIA TFC 2011、アイルランド)」(佐藤彩乃)

  ETRIAの感想:  長谷川 浩志 (芝浦工業大学システム理工学部 教授)  2011年11月12日

最も印象に残った点は、Samsungの講演や他の韓国企業の方々の話から、日本の製造業が最も手薄に感じている概念設計を支援する部分に、TRIZを適用し、様々な問題解決手法と組み合わせてシステマティックに活用しているという点です。

すりあわせや暗黙知にまだまだ依存している日本企業と比較すると、体系的に問題解決を進めていくアプローチを一歩先に取り入れ、ものづくりの上流工程に力を注いでいる。この点が、現在の韓国企業の強みではないかと思いました。

研究発表については、TRIZ単体の研究よりも、設計プロセスを支援する ために、様々な問題解決手法やデザイン論、進化論などの考え方に、TRIZの手法を組み込み、新たな設計論を提案する研究が多数、見受けられました。この点が十分に参考になりました。

  ETRIAの感想:  澤口 学 (早稲田大学理工学術院 創造理工学研究科 教授)  2011年11月12日

TRIZの研究では、ETRIAが世界でもっとも信頼性・新規性等が高いということが改めて認識できました。(MATRIZは私は出席経験がないのでわかりませんが、アカデミックという点では明らかにETRIAがリードしていると思います。) CIRP(生産管理系の欧州では格式の高い学術団体)が後援団体になっていることも有利な点だと感じます。

しかしながら、過度に理論に偏っているわけでもなく、実務的論文と科学論文が半々でバランスもとれていると感じました。

もちろんこの分野での韓国の影響力も高く、特にサムソン、LG,等のプレゼンスが高いことも改めて感じましたが・・・・。

内容的には、カバルッチのIDM-TRIZやカッシーニの研究など、より高度なイノベーションツールの開発を目指した研究が挑戦的に行われている半面、TRIZがますます複雑化することを危惧して、手法を矛盾マトリックス等のある一点に絞り、使いやすいを志向した研究も一方で盛んになっていることを感じた次第です。今後は、このような2つの流れが併存しながら、アカデミックかつ実務的に研究が進んでいくことを期待しております。

日本も、学会とまでは言わなくても、実務系だけでなく、もっと大学等のアカデミアの参加を促し、論文を研究論文集として年一回はシンポジウム開催時期に合わせて発行できれば幸いと考えます。


  ETRIA TFC 報告:  中川 徹 (大阪学院大学) 2011年11月6日

注: 以下、本件は、速報として、帰国した日に、日本TRIZ協会幹事会メンバーに報告した内容の一部です。

(1) 組織のしかたは、二者の完全な役割分担による。

ETRIA: プログラムの(学術的・産業的な) 内容に責任をもつ。発表募集、発表の審査、プログラム編成、論文集作成
【TRIZシンポジウムでの「プログラム委員会」に対応】

ホスト (ITT, Dublin): 会場設営、参加登録、イベント設定、特別バス便の運用、ホテルの設定、受付、参加者との連絡、その他一切
【TRIZシンポジウムでの「実行委員会 (事務局を含む)」 に対応。予算収支の一切に責任を持つ。実質の活動はずっと大きく、学科を挙げて、10人ほどのスタッフでやっている。】

(2) 組織・準備の面では、例年問題が多い。

(a) プログラムが発表されたのは、開催 10日前。 アブストラクト集は事前には発表されなかった。

「Full Paper」は、5月 (6ヶ月前) のアブストラクト提出、6月 論文提出、(査読)、 学会的な(2名以上での) ブラインド査読を行なう。9月カメラレディの提出。
「Short Paper」は、7月アブストラクト提出、 9月 スライド提出。 簡易の査読を行なう。

「査読によって、TFC の質・ステータスを上げる」ことを目指す。 しかし、そのために、プログラムの発表が遅れており、発表や参加が広がって行きにくい。

(b) ホストは毎年変わる。各国に持ち回り。 それぞれ、ホストが組織を上げて準備しており、非常に立派にやっている。 ただし、ETRIA としてのノウハウが蓄積されず、各国の各組織のそれまでのノウハウで行なわれている。

今回は、当初予定していた、会場 (フットボール競技場の地下のイベント会場) が、「アイルランドが欧州リーグに残り、その試合が会議期間に開催されることになった」 ために、急遽変更。新会場は駅から3 km ほど離れていて、3箇所のホテルから 特別のバスを朝夕に仕立てた。新会場自身はこじんまりした良い会場であった。

(3) 参加者は 約120名 (初日の参加者リスト(Emailつき) は112人)、26ヶ国から参加があったという。例年並みで、成功です。

実際の発表は (各日に渡された当日プログラムでは)

第1日 Tutorial 3件、Keynote 2、 Long 6
第2日 Keynote 1、 Long 12、 Short 14
第3日 Keynote 1、 Long 10、 Short 7

発表時間は(質疑込みで) Keynote 45分、Long 30分、Short 15分。約2時間ごとに 30分のコーヒータイムあり。
[アブストラクトも読んでなくて、タイトルだけで選択して、ダブルトラックの発表を聴いている。]

(4) 大きな傾向としては、例年と違いはない。

欧州の大学からの発表が多く、よいものがある。INSA Strasbourg (仏)- Denis Cavallucciがリーダ。イタリアのグループ - Gaetano Cascini がリーダ。 ベルギー - Joost Duflou。 オランダ -- Tom Vaneker。

欧州の企業の発表で具体的でよいものがある。 Siemens (ドイツ);  オーストリアの 小企業 -- 「斧 の改良」

アジアからの発表が増えており、実践・実績の質が高い。 韓国 - サムソン、LG、 および コンサル。マレーシア - Intel。 日本 - 今回発表 5件。

他に、アメリカ、ロシア などの寄与もある。
中身をよく読んでみないと、全体の評価はわからない。

(5) 特に面白かったもの、良いと思うものは:

(a) Ellen Domb (米) チュートリアル「TRIZの組織への導入」:  企業内のTRIZ推進者をトレーニングするもの。 「Train the Trainer」を実際に参加者に行なったもの。

(b) Mi Jeong Song (韓国 SAIT): サムソンでのTRIZ推進のやり方、実績を中心に述べる。
-- 個人的討論での彼女の発言: 「ロシアのTRIZ専門家たちのTRIZ (古典的TRIZ) から、この2-3年自分たちのTRIZの方法に発展してきている。その具体的な方法や事例をまだ発表していないが」 ==> 来年のTRIZシンポで話して貰えるようにするとよい。

(c) Denis Cavallucci (仏) IDM-TRIZ: Khomenko のOTSM-TRIZ を吸収して、自分たちでの改良を してきた。Interactive なソフトウェアツールも開発してきている。 -- 澤口先生が 学会前に 1日訪問して、詳しく聴いたとのこと。今後注目すべきものと思う。

(d) Jeong Ho Shin (韓国、LG) LG でのTRIZと「Invention Song」: サウンドオブミュージックの 「ドレミの唄」の替え歌。発明原理のうちの8 つを、取り込んで表現した。 韓国語、英語、中国語 のバージョンあり。Shin 氏の 長女 (小学2年位) と 長男 (幼稚園) が 韓国語 と英語とで唄っているデモあり。楽しい。 よくできている。 ==> 日本語版を作るとよい。大きな宿題。

(e) L. Mueller, Juergen Jantschgi (オーストリア) 「斧 の改良」: 林業、薪割り用の「伝統的手作り斧」の小企業での新製品。 TRIZを使って、改良した製品 2種を写真で見せた。 ダイナミック性を取り入れたもの、柄が短くても危険でないもの

(6) 今回の収穫の一つは、日本からの発表が 5件、出席 6人 あり、特に若い人たちの発表があったこと。

特に、芝浦工大の佐藤彩乃さんは修士2年だが、ホームステイで英語を習得した とのことで、非常にはっきりした、堂々とした発表でした。長谷川浩志先生は、川面恵二教授の後継の研究室とのこと。

(7) 来年のETRIA TFC2012 は リスボン (ポルトガル) 開催に決まりました。期日はこれから決定。

 

 

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最終更新日 : 2011.12. 5     連絡先: 中川 徹  nakagawa@ogu.ac.jp