TRIZ 論文

SNマトリックスとTRIZの連携による 顧客ニーズの取り込み
〜7つのソリューションを繋げる機能ベースの展開〜

緒方 隆司、藤川 一広、土屋浩幸 (オリンパス株式会社)

第10回 日本TRIZシンポジウム、2014年 9月11日〜 12日、早稲田大学西早稲田キャンパス(東京都新宿区)

掲載:2015. 1.18; 更新: 2015. 3.27

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編集ノート (中川 徹、2015年 1月13日)

本稿は、昨年の第10回日本TRIZシンポジウム2014で発表され、参加者投票による「あなたにとって最も良かった発表」で受賞されたものです。私は、このシンポジウムの参加報告({Personal Report」)で、本発表をつぎのように紹介しました。

本発表が追及しているのは、自社の技術シーズ(S)をベースに、顧客のニーズ(N)に繋げること、特に顧客にとっての新しい魅力的品質を(技術開発により)提示し、潜在ニーズを引き出すような方法を作り上げることである。

その方法として、自社技術からの目的展開(どんな目的に使いたいのか(という願望))と、それを実現するための手段の展開を、「機能」の表現で一貫して記述する。その(階層的に表した)機能ごとに、機能達成レベル(目標と現状)、他社技術(レベルと内容)、顧客要求、優先度などを一覧表示し、それをSNマトリックスと呼んでいる。

これらの表現法を使うと、やりたいことを膨らませて(戦略に沿った)シーズを発想し、そのシーズからニーズを引き出し、さらにそのニーズに合った機能の実現手段を発想することが容易になる(これらの前段・後段の発想で、TRIZとその知識ベースツール(具体的にはGoldfire) が有効に使えるという)。

またこの機能による表現とSNマトリックスは、7つのカテゴリの問題解決プロセス(「ソリューション」)に共通して利用できる、という。

-- 足が地に着いた、そして同時に理論的な骨組を持った、素晴らしい発表であると思う。

発表者の緒方隆司さんたち(オリンパス)は、TRIZシンポジウムにこの4年間連続して発表し、しかも、参加者投票による賞を4回とも受賞されています。オリンパス社で「TRIZを中心とした科学的手法」の開発・適用・推進が、上層部から積極的にサポートされ、組織的に行えているからできているからだといいます。それらの発表は以下のものです。(なお、 は当サイト内のHTMLページ、 はTRIZ協会サイトのPDFファイルです。)

「TRIZを含む科学的手法の社内推進 〜開発 現場での時間対アウトプットへの挑戦〜」 、緒方隆司、中原尚寿 (オリ ンパス) 第 7 回 日本 TRIZ シンポジウム 2011  

TRIZを含む科学手法の社内推進 その2 〜技術課題の視える化と様々なソリューショ ンの提供〜 、緒方 隆司、藤川 一広 (オリン パス)、第8回 日本TRIZシンポジウム、 2012年 9月 

「TRIZの活用を拡大する7つのソリューション 〜設計リスクの回避にも使えるTRIZ〜」、緒方 隆司 、藤川一広 ( オリンパス)、第9回 日本TRIZシンポジウム、 2013年 9月  

SNマトリックスとTRIZの連携による 顧客ニーズの取り込み 〜7つのソリューションを繋げる機能ベースの展開〜 緒方 隆司、藤川 一広、土屋浩幸 (オリンパス),第10回 日本TRIZシンポジウム、 2014年 9月   [本ページ]

本ページには、概要説明(5月のシンポジウム発表申込段階でのA4 1枚の説明)のHTML版とPDF版発表スライドの画像HTML版を掲載します(PDF版はTRIZ協会ホームページにリンクします)。発表の全体像を理解する助けとして、目次を作っておきます。英文ページ(著者による英訳版)も同様の構成にしました。

 

スライド  目次

表題: SNマトリックスとTRIZの連携による 顧客ニーズの取り込み 〜7つのソリューションを繋げる機能ベースの展開〜

本日の報告

1. 会社概要

2. 科学的手法の当社での取り組み 

(1) テーマの目的に応じて7つのソリューションを提供
(2) 機能は7つのソリューションや手法を繋ぎ易くする

3.  TRIZに繋ぐためのQFD

(1) 顧客要求の優先度をきめるために簡易化したQFDの紹介
(2) 簡易型QFDでもテーマ探索、要素技術開発で使えない・・・

4.  現場の声を実現できるツールとは?

ニーズとシーズを繋ぐ機能を中心としたツールが有効では?

5. 当社で考案した新たなSNマトリックス

機能とその達成レベルを分け、時間と空間の観点を入れた

6.  やりたいことを膨らませてシーズを発想

(1) やりたいことからシーズを求め、ニーズを探索
(2) 技術(シーズ)を膨らませるために、新「願望系統図」を導入
(3) 目的展開の例: 機能を基に他の技術情報調査(TRIZの科学効果)
(4) 目的展開の事例: 機能を基にTRIZの科学効果を使ってアイデア出し
(5) 目的展開の事例: TRIZの9画面法を使って技術予測
(6) 新たな情報やアイデアを願望系統図にマッピング

7. シーズからニーズを引き出す

(1) 戦略と親和性のある技術に絞り、SNマトリックスでニーズ調査
(2)  技術シーズこそが潜在ニーズ(魅力的品質)を顕在化させる

8.  ニーズに合った機能の実現手段を発想する

確定した機能の実現手段をTRIZの願望型アプローチで発想
《参考》 願望型と撲滅型アプローチ: 願望型と撲滅型のTRIZを目的で使い分ける

9.  SNマトリックス、願望系統図の手ごたえ

思った以上に使えるSNマトリックス、願望系統図

10.  まとめ

謝辞、感謝

 

本ページの先頭 目次 概要 概要PDF スライド先頭 取り組み全容 QFD 現場の声を聴くツール SNマトリックス
やりたいことからシーズ シーズからニーズ 機能の実現 手応え、まとめ スライドPDF TRIZシンポ2014Personal Report(中川)     英文ページ

 


 発表論文概要    ==> PDF

 

SNマトリックスとTRIZの連携による 顧客ニーズの取り込み
〜7つのソリューションを繋げる機能ベースの展開〜

緒方 隆司、藤川 一広、土屋浩幸 (オリンパス株式会社)

2014年9月11日

第10回 日本TRIZシンポジウム、早稲田大学西早稲田キャンパス(東京都新宿区)

 

概要

当社では2009年より科学的手法としてQFD、TRIZ、タグチメソッド (TM) を開発プロセス改善のための施策として社内導入し、2012 年からは現場のニーズに合わせ、3手法をベースに目的別に効率的に組み合わせた7つのソリューションを展開している。

現在までの展開で現場の開発者には、手法連携を行う上で機能を中心とした考え方が重要であることが判ってきた。今回、新たに探索や要素技術開発段階で顧客のニーズを取り込むには、技術 (シーズ) を棚卸して機能に展開し、ニーズとの接点を求めるシーズ・ニーズマトリックス(以下SNマトリックス)、TRIZを組み合わせて使うことが有効であることが判ってきたので紹介する。

内容説明

1.TRIZの前段プロセス QFDの課題

当社では、従来、QFD→TRIZ→TMを理想的なパターンとして紹介し、QFDについては短時間で効率的に使ってもらうために顧客ニーズから優先技術課題を抽出することに特化し簡略化したものも紹介してきた。(2011年TRIZシンポジウム 当社発表

しかしながら、QFDは品質管理目的で製品仕様と顧客ニーズの関係を明確にしたい時には有効であるが、新製品や要素技術の探索段階、企画段階のようにニーズがそれ程明確ではなく、開発者も自分達が持っている技術の内容や用途の整理ができていない段階では、十分に使えない状況であった。そのような中、探索や企画段階で効果的にTRIZを使うためには、シーズからニーズを求めることができ、シーズ自体も膨らませることができるTRIZと親和性の高いプロセスが望まれていた。

2.新SNマトリックスと願望系統図の活用

SNマトリックスの考え方は、既に金沢大学の先端科学イノベーション推進機構(*注) 等でも紹介されている。

*注) 金沢大学 ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー客員教授 瀬領 浩 氏
http://www.o-fsi.kanazawa-u.ac.jp/about/vbl/information/seryou's-support/post-12/

当方では新たにSNマトリックスに時間と空間の観点やQFDの考え方を加えて、機能を明確にして他の手法と繋げ易くした。(図1,図2)また、シーズ自体も膨らませるために新たに願望系統図入れてTRIZとも連携できるようにした。

図1 機能を中心としたニーズとシーズの関係

 

図2 SNマトリックスの事例

(1) SNマトリックスで機能と達成レベル (品質目標)を分離することで顧客ニーズは求め易くなり、機能毎に競合他社の技術、ニーズを把握することで技術課題の優先度も決めることができるようになった

(2) 中心となる機能は、空間的分析と時間的分析ができるようにして広範囲のテーマで活用可能にした。

(3) 願望系統図とTRIZを用いることにより、開発者の経験や知識の枠を超えたシーズの顕在化ができるようになり、多様な潜在的なニーズを引き出しやすくした。

以上のアプローチ方法を導入したことで、顧客ニーズが明確でない段階でも機能を中心としてシーズ・ドリブン的なアプローチでニーズを探索できるようになった。

結果、その後の課題解決にTRIZを使う場合もスム ーズに繋げることができ、様々なソリューションへの展開も容易になった。

 


 発表スライド     PDF 

 

 

 

 

   

   

 

 

 

   

   

 

 

   

   

 

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やりたいことからシーズ シーズからニーズ 機能の実現 手応え、まとめ スライドPDF TRIZシンポ2014Personal Report(中川)     英文ページ

 

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最終更新日 : 2015. 3.27     連絡先: 中川 徹  nakagawa@ogu.ac.jp