TRIZ+VE 導入・適用事例
 JR東日本における
 TRIZ-DE と VEを融合させた
 価値向上技術の活用と適用事例
    (快適な鉄道車両トイレ空間の開発)
 井上敬治,松野政夫,浜本裕一,田中修司 
   (東日本旅客鉄道株式会社 研究開発センター)
 原稿受理:  2004年 1月 8日 
 初出:  第36回VE全国大会, 2003年11月 6-7日, 東京

  [掲載: 2004. 1.28.]     許可を得て掲載。無断転載禁止。

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編集ノート (中川  徹, 2004年 1月 8日)

本稿は, JR東日本の研究開発センターにおいて, 新幹線車両の将来像の開発のために行われたVE + TRIZの活動の一端を報告しているものです。組織の業務活動として行われ, 昨年末につぎの2件の形で発表されております。
「VE+TRIZ手法の開発の企画段階への適用事例 〜快適な新幹線車両用トイレ空間の構築〜」,  浜本裕一 (東日本旅客鉄道(株)), VE協会主催第36回VE全国大会, 2003年11月 6-7日, アルカディア市ヶ谷 (東京)

「新たな価値創造技術を活用した鉄道車両の快適性向上の研究(鉄道車両室内の快適性向上)」, ○田中修司(JR東日本),松野政夫,井上敬治,浜本裕一, 日本機会学会主催第10回鉄道技術総合シンポジウム (J-Rail 2003, 10周年記念大会), 2003年12月9-11日, 川崎市産業振興会館 (川崎市)

私は12月末に本件に関して, JR東日本研究開発センターの井上敬治課長さんのプレゼンテーション (60分) をお聞きする機会がありました。すばらしい活動であり, すばらしく充実した内容でありましたので, その場で本ホームページへの掲載をお願いした次第です。掲載を許可いただきました著者と所属機関に厚く感謝いたします。
東日本鉄道旅客株式会社  (東京都渋谷区)    WWW:  http://www.jreast.co.jp/
JR東日本研究開発センター (さいたま市北区)   WWW:  http://www.jreast.co.jp/development/center.html
井上 敬治 氏 (JR東日本研究開発センター, VE技術G課長)   Email: k-inoue@jreast.co.jp
以下には、今回のために書いていただきました「要旨」、本文スライドのPDF資料、そして中川の簡単なあとがきを掲載いたします。
このページの先頭 要旨 本文スライド (PDF) あとがき (中川)




JR東日本における
TRIZ−DE と VE を融合させた 価値向上技術の活用と適用事例
(快適な鉄道車両トイレ空間の開発)

井上敬治、松野政夫、浜本裕一、田中修司 
(東日本旅客鉄道株式会社 研究開発センター)

 
【要 旨】

JR東日本では、2001年にTRIZを導入し「新たな創造に結びつける手法」として活用を始めた。2003年には、TRIZ−DE(未来予測手法)まで活用範囲を広げるとともに、従来より活用していたVEとTRIZを融合させた新たな手法について技術開発部門を中心に活用している。

TRIZとVEを融合させた新たな手法については、企画段階から現状改善までそれぞれのステージに合わせ6つの適用パターンを準備し活動段階に適用している。まだまだ、活用を始めたばかりであり試行錯誤の連続ではあるが、企画段階で適用した活動において斬新なアイデア発想ができ抜本的改善につながるなど、大きな効果がでている。

【事 例】

社会環境、生活環境などの変化に伴い、個々人の価値観が大きく変貌している現在、トイレにおいてもデパートやホテルなどの建築物に見られるように、お客様のニーズとともに飛躍的に変貌してきている。

一方、鉄道車両のトイレにおいては、これまでも臭気防止対策や内装改善など様々な取組を行いイメージアップに努めてきたが、依然として「臭い」、「汚い」、「触りたくない」などのご意見・苦情が数多く寄せられているのが実態である。

このような背景を踏まえ、従来のイメージを一新した鉄道車両トイレ空間の構築を目的に、TRIZ−DE(未来予測)とVEを融合させた手法を活用し開発に取組んだ。

この取組を実施した結果、お客様の快適性・満足度を満たすことができる新たな鉄道車両トイレ空間を構築することができた。また、この開発事例により、「将来の技術進化を見据えた開発項目が明確になる」、「顧客像及び顧客の要求機能を明確にすることができる」など、TRIZとVEを融合させた新たな手法の有効性が確認できた。

 
 

発表本文のスライド [ここをクリック下さい] 

  スライド 37枚,  1スライド/ページ。  (PDF 1.6 MB) 




 

編集ノート あとがき (中川  徹, 2004年 1月28日)

この論文は将来の新しい製品を開発するための方法について, 具体的に適用した事例です。

TRIZには, (a) 具体的な問題の矛盾を解決する「問題解決」のアプローチの他に, (b) 技術進化のトレンドをベースにして将来の方向づけを考える「機会探索」のアプローチがありますが, この (b) のアプローチの具体例はいままであまり発表されてきませんでした。この (b) 「機会探索」のアプローチの方がより大きなスケールで技術開発・製品開発を考えるものですから, 企業におけるTRIZの適用方法としては, 今後ますます重要になっていくものと考えられます。

「機会探索」のアプローチに対してTRIZは, 第一に「9画面法」を持ち, 開発対象システムとその上位システム・下位システムを考え, またそれらの, 過去・現在・未来を考えるようにさせます。TRIZが第二に提供しているのが, 「技術進化のトレンド」の概念とその多くの事例です。これらのトレンドをベースにして, 過去から未来への進化を考えていくわけです。

このようなTRIZの技法をまとめたものの一つが, Ideation International社の Boris Zlotin や Alla Zusman らが提唱してきた TRIZ-DE (Directed Evolution) というアプローチです。

日本においては, ずっと前から産業能率大学のTRIZグループが, このTRIZ-DEを導入するとともに, TRIZ以前から使っていたVE (Value Engineering) と統合した方法の開発と適用を模索してきました。特に, 澤口 学氏が, 米国でのTRIZ国際会議に 2000年から昨年まで 4回続けてこのテーマで発表しているのが注目されます(本件の論文も澤口さんがコンサルタントとして指導したものと聞いています)。本件の論文はユーザ自身の発表であり, このTRIZ + VEのアプローチを非常に分かりやすく説明しています。

この統合した手法を具体的に表現した一つの図を、本論文のスライドから下記に引用させていただきます。

なお, ここでいう (b) 「機会探索」のアプローチについては, 新しい Darrell Mann のTRIZ教科書 "Hands-On Systematic Innovation" (CREAX, 2002) [和訳: 『TRIZ 実践と効用 (1) 体系的技術革新』(仮題), 中川  徹 監訳, 創造開発イニシアチブ, 2004年4月刊行予定] でも, 詳しく取り上げています。(事例としては, 本件論文が全体的・具体的で, 大いにお薦めです。)


 
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最終更新日 : 2004. 1.28.   連絡先: 中川 徹  nakagawa@utc.osaka-gu.ac.jp