論文付随資料 |
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日本創造学会論文誌への投稿論文に関する |
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編集ノート (中川 徹、2021年 5月30日)
本ページは、前ページの論文の編集ノート後記の付属資料です。
日本創造学会論文誌に投稿した著者らの論文に対する、「不採録」の通知に接して、編集委員長に異議申し立てを行い、著者らの立場を述べました(2021年2月5日)。
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「不採録」異議申し立て書 (中川 徹、2021年2月5日)
日本創造学会 論文誌編集委員長 xxxxx 先生
2021年 2月 5日 中川 徹 (大阪学院大学)
大変お世話になっております。
昨年12月21日に投稿いたしました、下記論文につきまして、
「創造的問題解決の諸方法論のウェブサイト: 世界カタログ集の開発(WTSPプロジェクト)」
中川 徹、Darrell Mann、Michael Orloff、Simon Dewulf、Simon Litvin、Valeri Souchkov本日、論文誌編集委員長より、下記の非掲載の判定の連絡を受けました。
「編集委員会といたしましては、本誌の規定に照らしまして、形式・内容ともにご投稿いただいた 原稿は
ご掲載することができないという判定になりました。」査読意見も示されずに、非掲載の結論だけを連絡いただくのは、異常なことかと思います。
上記のようにTRIZ (創造的問題解決の大きな方法論)の世界のリーダー計6名の共著論文であり、非掲載の論拠を共著者にも説明できるように、明示いただけないでしょうか?私が投稿規定を再度読み返して、考えられる論点と、それに対する私の立場を以下にまとめてみました。
(1) 規定: 「論文は他の刊行物に未発表のもので、...」
本論文は、創造学会研究大会(2020年10−11月)で発表し、予稿集に掲載(8頁)したものを、拡張して16頁にしております。秋の研究大会で発表し、翌春の論文誌に正式掲載するのは順当なことです。逆に、秋に論文投稿、翌春論文掲載、その秋研究大会発表では、研究大会発表は1年遅れの陳腐なものになります。
また、同時期(昨年9月〜10月)に4つの国際会議(オンライン)で、基本的に同じテーマですが、形式・内容を調整しつつ、発表しております。スライドと口頭発表が基本です。欧州でのものは、査読付き論文も提出していますが、昨年5月の段階の原稿です。本論文はそれよりも発展しています。本論文の内容が既発表であるわけではありません。
昨秋に口頭発表したのは、ロシア、米国、欧州(ルーマニア)、アジア(台湾)の4つの国際会議と、日本の創造学会です。これらはそれぞれ世界でブロックをなしており、参加者・読者がほとんど重なっていません。日本の創造性の関係者が(日本人著者の)英文論文を読む機会は極めて少ないと思われます。(2) 規定: 「上記領域における理論・方法論・手法・解法・実験結果・機械・機器・システムなどに関する新しい内容を含む研究成果報告として、その目的と結論が明確に示されていなければならない。研究の予告的又は中間報告的なもの、単なる事象の列挙あるいは実施事例は不適当である。」
この規定の内容的な(研究テーマに関する)項目を読みますと、本論文はそのすべてに関係していますが、どの一つにも収まっていない、と言えます。それは、いままで、特定テーマでの研究が考えられていて、全体を包むようなテーマを取り上げることがあまりなかったからであろうと思います。本論文が、創造学会が扱う分野の研究全体に、大きな寄与をすることは明白です。
本論文は、創造性の分野での研究を推進するための一つの運動の、「実施事例である」という見方ができるかもしれません。しかし、それは、いままでに(世界でも、他分野でも)試みられなかったものであり、そのために、新しい思想、目標、成果物の構造、開発の方法などが必要で、だから新しい研究を必要としたのです。それらの研究内容が、3年間の活動で、明確になったことを、論文としてまとめています。
世界カタログ集というのが、明確な成果物としてできてきています。それは現在「ベータ版」と位置付けており、本当の目標のレベルに達するには、きっともう5年が必要かもしれません。しかしこの段階で、論文発表し、日本のそして世界の人々の協力を得ることが大事なのです。このプロジェクトが日本から、日本創造学会を一つの母体として、開始され、実現しつつあるのだ、ということは、創造学会の誇りであってほしいと思います。
(3) 以前に別件で、「他者の従来研究がレビューされていない」と批判されたことがあります。
この点に関しては、本論文でも、他者の文献を引用していません。引用するべきものがあるとすれば、「ある(研究)分野またはテーマでの、世界または各国などでの、Webサイトを広く収集し、それぞれを紹介し、評価分類した上で、カタログとして示したもの、(またそのための活動)」です。
私は、総計2000件以上のWebサイトを訪問し、紹介してきましたが、そのようなものに出会いませんでした。ときどき出会うのは、関連サイトの「リンク集」です。ほとんどが、サイト名とドメインURL、そして良くて1行程度の紹介です。どんな範囲で、どんな基準で収集したのかは、わかりません。それぞれの紹介もほとんどありません。いままで日本と世界の沢山の人々にプロジェクトの目的や進行を報告して来ていますが、先例となるようなものや似たアプローチを紹介されたことはありません。参考文献として挙げるべきものが、いまはまだないのだと思います。
(4) 規定: 「論文は、査読プロセスの公平性を高めるために、著者や指導者等がわからないように著者名・所属・文献・謝辞等をマスキングしたものも用意する。」
私は、論文投稿時に、マスキングしたものを添付せず、次の文面を添えておりました。
「なお、投稿規定を読みましたが、マスキングした原稿は添付しておりません。その理由は、本編は、研究大会での発表論文を推敲・更新したものであり、タイトルと著者(6名)は全く同じ、 内容も主要部は同じですから、マスキングしても著者などは自明です。
また、マスキングするのは膨大な作業になり、査読者の読み取りを困難にするだけであろうと思います。 査読の先生方は、誰が著者であるかには関わらず、論文内容で公正にご判断されるものと考えます。」マスキングした原稿を提出しませんでした趣旨はこの添え書きのとおりです。本研究のプロジェクトに関しては、TRIZ関係者だけでなく、創造学会のリーダーの方たちの多数にこの3年間度々報告のメールを送っております。私の論文を査読下さるような先生がたは、原稿をどんなにマスクしても、タイトルだけで、主著者がだれであるかは正しく認識されるでしょう。その意味で、マスキングは何の役にも立ちません。
なお、マスキングの規定は、ダブルブラインドの査読の方式です。誰が査読者かを著者に知らせない(シングルブラインド)のは、査読者が公正な査読を行い、その査読が厳しくて著者側から不当な反応が査読者に起こるのを避けるためです。査読者が公正であることで不利益にならないように守るためです。
一方、マスキングは誰が著者であるかを査読者に知らせず、査読者が著者によって異なる斟酌をするのを防ごうとするものです。(著者を守るという面もありますが)著者を知ると査読者が必ずしも公正な判断をしない恐れがあるという前提に立っています。競争の激しい世界のトップジャーナルでは必要な前提でしょう。しかし、日本の中で、創造学会という小さな集団で、この前提は悲しいことです。査読者は著者に斟酌せずに公正な判断をすると、期待できるようであってほしい。もし、不公正な判断であると著者が思えば、査読意見に異議申し立てをすることができ、さらに、編集委員長や編集委員会がしかるべき処置をとることができるはずです。
要するに、マスキングは (a) 「マスキングしても、たいてい著者の推定が可能であり、実効性がない」、また(b)「査読者の公正さを信じない前提であり、査読の公正さを保証する査読後のプロセスを想定していない」と考えます。これらの理由で、マスキングを必須とすることは、無用な作業を強要するだけで、望ましくないと考えます。著者が自分の判断でマスキングすることは、許容してもよいかもしれませんが、あまり必要ないだろうと思います。
本論文の非採用の主理由が、このマスキング原稿の不提出にあるのだとすれば、創造性を重視する学会にふさわしくない、杓子定規な処置であると、思います。
ご多忙の中で申し訳ありませんが、ご検討いただきたくお願いいたします。
以上
再提出説明書 (中川 徹、2021年 2月 9日)
日本創造学会 論文誌編集委員長 xxxxx 先生
2021年 2月 9日 中川 徹 (大阪学院大学)
大変お世話になり、感謝しております。
一昨日2月7日にいただきましたご指摘に従い、(A)マスキング原稿および(B)従来発表との差異についての説明を提出いたします。どうぞご査収お願いいたします。
(A) マスキング原稿を提出します。
ファイル:創造学会論文誌-WTSP3-Masked-210208.docx
著者名、著者所属、著者サイトなどが分かる部分を、すべて xxxxxxxxx で置き換えました。
ファイルの情報の著者情報も削除しています。(B) 既発表のものに比べて、新しい記述が十分にあること。
いろいろな論点があるために、何とどのように比べるのかがなかなか難しい状況です。最終的に、投稿原稿の各段落(各文)の内容および表現がどの(発表)段階で確定していったかを、 原稿欄外に示した図を作りました。提出します。 [本ページ末尾に縮小して示します。]
客観的にご理解いただくために、長くなりますが、いかに説明いたします。
まず、下図に、本プロジェクトの各種の発表について、概要を年表形式に示しました。
全般的な説明は以下のようです。
(a) 本プロジェクトは、全世界の約200人の人々に直接によびかけて、オープンに活動しており、Webサイト[1] を基盤とし、その中にプロジェクトのサイト[2]を設けて、方針、活動、通信、成果、学会発表内容などのすべてを、常時掲載しています。活動は主として海外&英語ですが、要所要所で国内&日本語でも案内・報告しています。
(b) 学会発表は、毎年秋に日本TRIZ協会のシンポジウムで発表(アブストラクト審査、スライドを日本語と英語で提出、予稿集に掲載)してきましたが、2020年は中止になりました。
(c) 国際会議は、TRIZ分野で最も活発なETRIA(欧州TRIZ協会)のTRIZ Future Conference (TFC)で毎年発表しています。毎年、論文審査があり、Proceedingsに掲載されるとともに、Springerから後日正式出版されます。2020年は論文提出5月中旬、開催10月中旬でした。
(d) 2020年のTRIZ関連の国際会議(4つ)はすべてオンライン開催となりました。ETRIAに投稿後、この開催形態の案内があり、物理的に可能になったので、全4学会に参加することにしました。
[11] ロシア: スライドの審査あり。審査に通ったのですが、件数制限のため、ポスター発表となる。
[12] 米国: アブストラクトの審査あり。スライドとビデオを事前提出。
[13] 欧州(ルーマニア): 論文審査あり。論文、スライド、ビデオを事前提出。
[14] 台湾: スライドの審査あり。スライドとビデオを事前提出。これら4学会のすべての主催者と親交があり、彼らは同時投稿を承知の上で、発表を歓迎した。 特に、[13] ETRIAでは、一般発表15分のところを、本件のみ発表30分の優遇をしてくれた。これは、WTSPプロジェクトが良く理解されていて、単なる一つの研究というよりも、TRIZ (とその関連分野)の世界的な推進運動の面を持ち、世界のそれぞれの地域での関係者に聞いてもらうことが有益と判断したためであると思われる。
(e) 結局、比較するべきは、
[15] 創造学会研究大会の発表が、[9] ETRIA (2019年10月)に比べてどれだけ新しいか?
本投稿論文が、[13] ETRIAの論文(2020年5月中旬提出)に比べてどれだけ新しいか?
そして、本投稿論文が[15]創造学会研究大会の発表(特に予稿集)に比べてどれだけ新しいか?以上の考察から、本投稿論文の各段落について、どの段階の知見・表現であるかをマークしました。
@ [9] ETRIA (2019年10月)での論文&発表、およびそれ以前の知見・表現のもの
A [13] ETRIA(2020年)の論文(2020年5月中旬提出)の段階の知見・表現のもの
B [15] 創造学会研究大会(予稿集)(2020年9月提出)の段階の知見・表現のもの
C 本投稿論文(2020年12月提出)での、新しい知見・表現のもの[注: 2020年秋の学会発表5件は、9月末〜11月1日の約1か月に集中しており、基本的なデータはほぼ共通で、学会の地域ごとに異なる関心・歴史にあわせて、発表のタイトルやスライドを調整し、重点を違えて発表しています。]
なお、これらを左欄外に色別の縦線で、マークしています。なお特に、
点線はその段階での知見(または前の段階の知見の内容・表現を修正したもの)であるが、表現がその後修正されている部分、
実線はその段階の知見と表現であり、本投稿論文の(最終)表現になっている部分、です。(f) 内容的には、大雑把に言って、次のような展開をして、最終原稿になっています。
@ 本プロジェクトの、当初からの目標・方針に従って、活動し、WTSPカタログを構築した。日本カタログの作成、世界カタログ(初版,α版)を作成。カタログ作成の方法、データの収集実績、カタログの構造などを確立した。「支持者は多いが、活動する人が少ない」という組織面での困難がずっとある。
A 世界カタログα版を使いやすく、わかりやすくして論文にした。β版の完成間近だが、まだ出来上がっていない段階。 [注: 発表時には、β版をベースに話した。]
B 世界カタログβ版の完成を踏まえて、記述をしている。予稿集に8頁の論文を提出した。
C 基本的には、予稿集の論文を拡張したもの。世界カタログβ版をさらに良くするためには、ボランティアの活動を活発化することが必須であり、そのガイドラインを一層明確にし、困難の原因を考察し、呼びかけをしている。
なお、「本投稿論文の新しさ」を評価するには、3つの立場があり得ます。
[9] ETRIA (2019) (論文+発表)以後のものを「新しい」と考える 実線部の A+B+C
[13] ETRIA (2020) (論文)以後のものを「新しい」と考える 実線部の B+C
[15] JCS (2020) (予稿集)以後のものを「新しい」と考える 実線部の Cまた、「本投稿論文の価値」の評価としては、 @+A+B+C と考える方が自然かもしれません。
以上、返答のうえ、本投稿論文の掲載を再検討いただけますように、お願いいたします。
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最終更新日 : 2021. 5.31 連絡先: 中川 徹 nakagawa@ogu.ac.jp