2006年03月17日

平成17年度 大阪学院大学 情報学部情報学科


創造的問題解決の技法
〜「裁縫で短くなった糸を止める問題」を例として〜


報告者 :下田 翼 学籍番号:02S0038



1.はじめに

私はゼミと卒業研究で「創造的問題解決の技法」というテーマで、TRIZ(発明的問題解決の理論)やUSIT(統合的構造化発明思考法)を学んだ。その技法を身近な問題で実際に使って習得することを目的として、「裁縫で短くなった糸を止める問題」に取り組んだ。

2.問題の設定

裁縫とは身近に古くから存在していて、小さな布の傷や糸のほつれを直す時や、ボタンを留める時にとても便利だと思う。しかし、裁縫の最後の玉止めは糸が短くなり過ぎると玉止めが困難に成なる。玉止めを考えた人はとてもすごいと思う。しかし、その欠点をそのまま放っていたことを残念に思い、自分の新しい方法を、USITを使い解決してみよう思う。

3.問題の分析

この玉止めの利点と問題点は糸を針に巻きつけて、結ぶ手間を簡素化している点である。針に糸を通したまま針に糸を巻き付けるため糸が針より長くないと糸を巻きつけることが出来ない点である。



望ましくない効果

裁縫で玉止めをするとき、糸の残りが針より短いと技術上、玉止めをすることができない。


根本的原因


これらは通常「当然の制約」であるが、この「制約を外す」方法を考えることが、「創造的解決策」に結びつく。


オブジェクト 

針、布、糸(残っている糸・縫っている糸)、


リソース(資源)

時間の分析



4.問題の考察


USITの解決策生成技法

(1)オブジェクト複数化法

(2)属性次元法

(3)機能配置法

(4)解決策組み合わせ法

(5)解決策一般化法



4.1 特別な道具や物を使わない方法

(a) 
布に縫い込んだ部分の糸を引っ張り出して、一時的に余りの部分の糸を長くし、玉止めをする。(玉止めの位置に要注意。糸を布に戻したときにちょうどよいようにする。


(b) 糸を (切って) 針から外し、いくつかの縫い目を解いて、余裕のある余長の位置で糸を結ぶ。(二重縫いの場合には、片方の糸を一目少なく解いてもよい。


(c) 針の先端側を持ち、余長部の糸で輪を作って、(結び目ができるように) その輪に針の穴の側から通し、途中で止め、糸を切ってから針を抜き戻し、糸の結び目をしっかり結ぶ。一般的に使われる方法だが、糸で輪を安定的に作るのが難しく、練習を要する。


(d) 糸を布地に縫い込んで、布地の中で結び目が (実質的に) できるようにする。このためには、針から糸を一旦 (切って) 離し、針だけで途中まで縫ってから、針の穴に糸を通して、縫込んでしまう。[あまり知られていない]



4.2
「余分の物」を導入する方法


(e) 釣りの鉛の重りのようなもので糸をはさみ、結び目の代わりとする。糸から外れやすい (糸がぬけやすい) のが欠点。

(f) フックのような形の紐止めを小型にしたもの (穴を合わせて糸を通して、グッと押し込む) 。さらに小型化した二重の筒の形状。

(g) 糸を隙間に挟んで固定するもの (例えばプラスチック製)

(h) 複数の細いスリットを持つ小型のボタン状のもの (糸をからめると効果的。服の裏などでは、邪魔にならずにそのまま使える)。

(i) 余長の糸を布に接着する (瞬間接着材または、熱硬化 (「アイロン」)接着剤を使う)。

(j) 余長の糸を簡単に丸めてそれを瞬間接着剤で固める (糸を結ぶ必要はない。糸だけを固めるので布地を痛めないのが利点)。



4.3 いままでとは違う糸や針を使う


(k) 糸に鱗状の表面構造を持たせ、縫う方向には進むが、逆行しないしくみにする。(糸を止める必要がない。使用時に問題の恐れあり。)

(l) 「アイロン」接着剤を染み込ませた糸を使う。必要な部分で熱をかけて、布と接着。

(m) 針が中央でねじ込み2段式にしてあり、玉止めの必要が生じたときに取り外し、「短い針」として使う(「長さを変えられる針」)。

(n) 後部にある針の「穴」の最後部に切欠きが作ってある針。

(糸の先を穴に通さなくても、糸の途中をこの切欠きに押し込むと穴に糸が入る。またもう一度糸の途中を切欠きに押し込むと、(二重縫いの) 糸が輪になったまま針から外れる。)

問題状況で玉止めをするには、一旦糸を(切らずに) 外し、玉止めの要領で糸を針に巻き付けてから、再度糸を針に通して、通常のように針を前に引き抜く。



4.4 新しい簡単な小道具を使う

以上の検討の中で、(c) の方法をより容易にすること、また、(n) の「切欠きがある穴」の発想を有効に利用することが有益であると考え、以下のような小道具の解決策を得た。

(o) ストローの先端を 1〜2cm 切り欠いた小道具 (図4)。(c)の要領で、この先端に糸を巻き、手前からストローの溝に沿わせて針の後部を入れる。その状態で糸を切り、糸を引っ張りながらストローを抜き取る。(c) での糸の輪を安定に作る方法。


(p) 「玉止め専用の針」という小道具。縫う必要はないので、先端は尖っている必要がなく、全体が細い必要なし。全体を短く、2cm弱。後部の穴は (切欠きがあってもよく) 、2mm程度で糸を通しやすく、スリット状で糸を抜けにくくする。プラスチック製または金属製。


 

(q)  (p) の改良版で、後部に穴はなくスリットで糸を止める形式。より簡便である。




(r)  (p , q) の改良版で、穴の後ろの本体を長くして、持ちやすくしたもの。

 


6.おわりに

USITの解決策生成技法は思い込みによる制約の解決策生成に大きく役立った。

問題の分析は、思い込みによる制約、時間の分析、空間の分析、など今まで考えて来なかったがアイデアの有用性の確認や、使うタイミングの確認、アイデアを出すこと等、さまざま使うことが出来、問題の分析の必要性を確認しました。

USITの解決策生成技法は思い込みによる制約の解決策生成に大きく役立った。

USITは「身近な問題」の解決の技法の1つとして数えても良いと思う。

私はもともとアイデアを考えることが好きである。このゼミを知り、学べたことは人生の大きな出来事だと思う。難しかったけれど楽しい時間だった。

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