地震予知研究-TRIZシンポジウム-発表 | |
地震短期予知の研究に TRIZの考え方を導入する |
|
|
|
掲載: 2024. 9. 5 |
Press the button for going back to the English top page.
編集ノート (中川 徹、2024年 9月 4日)
これは8月29日にTRIZシンポジウムで発表したものです。TRIZを学び実践している仲間たちへの発表ですから、表記のタイトルにしましたが、TRIZに関わらずに、「地震予知研究」について、読んでいただければ、幸いです。
「地震予知の研究」について、その目的、背景、暗中模索からの脱却、画期的な観測結果(筒井稔)の紹介、今後の発展のための考察と提案、地震予知の技術システムの構築、地震予知の注意報/緊急警報の公的運用のビジョン、などを分かりやすく体系的に記述・提案しています。
次のような資料一式を掲載いたします。
発表スライド(2024. 7.11 提出) 和文スライド(21枚、pdf) 英文スライド(21枚、pdf)
発表 (スライド+テキスト) (2024. 9. 4) 本ページ(html)
発表ビデオ (2024. 8.27収録、8.28発表) 和文 (mp4, 23分30秒)(2024. 9. 4)
|
|
|
|
地震短期予知の研究に TRIZの考え方を導入する
中川 徹 (大阪学院大学)、日本TRIZ協会 TRIZシンポジウム2024 [概要提出 2024.5.12]
概要
日本は地震による大規模な災害にしばしば襲われてきた。そのため日本地震学会が1880年に創設され、戦前・戦後を通じて地震観測網が広範・高度に開発され、海溝型および内陸型の地震の歴史的経過、分布、機構などが随分と明確になった。地震予知の研究も行われ、中〜大規模地震の(地域を指定した)長期/中期予測が確率論的に出されるようになっている。
しかし、阪神・淡路大震災(1995年)、東日本大震災(2011年)の地震は「想定外」で、全く予知できなかった。このため、日本地震学会と政府は、「地震の短期/直前予知は現在の技術では到底不可能である。今後、短期地震予知研究に重点を置かず、地震の観測と解析に重点を置き、地震の基本的理解に務める」と宣言しました。それでもやはり、「地震の短期予知を可能にし、人的/物的/社会的被害を減少させたい」と国民の大多数は願っています。そこで「日本地震予知学会」が2014年に設立され、私も加入しました。電磁気的現象に注目することが、当初からの方向でしたが、最近まで有効な方法の目処が立ちませんでした。2022年末に地中電場の変動の観測例が報告され(筒井稔)、私はその素晴らしさと有効性を確信しました。そこで私は、この方法を支援・発展させるプロジェクトを興すことを地震予知学会内で提唱し、実用技術にまで高めることを大目標にして活動を始めました。
私は、TRIZ(および実験科学)の考え方を土台にして、この観測法の意義とプロジェクトの方向付けを考えています。要点は:
(a)従来の地震学の力学的/測地学的観点では、地震という破壊現象のタイミングを予期できない。何らかの前兆の観測が必要である。
(b) 前兆現象の種々の可能性を考え、実測(実験)により選択していく。
(c) 岩盤内での圧電効果により起こる電磁気学的な種々の現象が大きな鍵である。力学的技術から電磁気学的技術への転換は、TRIZが奨める大きな方向である。
(d)岩盤内での電磁気現象の種々の伝搬形態と付随効果を考える。
(e) 信号の検出場所(地中、地表、空中、観測衛星など)の選択が重要。現象の種類や混入ノイズが異なる。
(f) まず1サイトの観測を繰り返し、地震との相関性を見る。
(g) 次に、複数サイトでの並行観測により、相関性を確認する。
(h) さらに多数の観測で、この前兆を示す地震のタイプを判定し、予知する地震の場所・時・大きさなどを推定する方法を創る。これらができて初めて、一つの技術システムになる。
(h) 異なる前兆現象の観測法をも統合して、より広範で確実な技術体系を創る。
(i) 学界・社会の認知を得て、全国規模でこの技術体系を実装する。
(j) 技術体系の運用を通じて、実地検証し、実績を積んで、公的な地震予知警報体制を確立する。
(k) これらの過程で、国際協力をし、世界的実装の可能性を探る。筒井の地中電場の変化の連続観測の方法は、上記の一連の発展の可能性を持つものと確信していますが、現在は1サイト段階(f)であり、第2および複数サイト段階(g)への展開のための、実際的な課題(協力研究グループと研究予算の獲得、プロジェクト体制の確立)の解決に直面しています。
内容説明
筒井は、紀伊半島南端の紀伊大島で、地下に150mのボアホールを作り、長さ100mのDCダイポール電極を設置して、地中のDC垂直電場を、1秒間隔で連続観測した。右図は2021年5月1日の24時間の観測データである。ノイズは定常的で約0.5μV/m。08:50から激しい(±)の変動が現れ、 46分続いて一旦静止した。10:27にスパイク状信号が観測された。その後、19:00から68分間再び激しい変動が見られた。後日の調査で、10:27に宮城沖(750 kmの遠方)深さ50kmで、M6.8の地震があったことを知った。このデータは、10:27の地震に由来していると考える。
地震短期予知の研究に TRIZの考え方を導入する
中川 徹 (大阪学院大学)、日本TRIZ協会 TRIZシンポジウム2024
発表スライド +テキスト [スライド(2024. 7.12) + テキスト(2024. 8.28)]
スライド 目次
タイトル: 目次 (概要) ... 1
1. はじめに: 地震(予知)研究の背景 ... 2, 3
2. 地震予知研究の位置づけ: ... 4
2A. 地震研究、地震予知研究、防災(減災)の対策
2B. 地震の研究 (従来の地震学) ... 5
2C. 地震予知研究の状況: 暗中模索の中に明確な光明 ...63. 筒井の方法(2022.12) : ... 7
3A. 実験方法: 地中の垂直電場+地上の水平電場
3B. 観測結果 (1) 形態1: 2021年5月1日 観測 激しい±の変動 ... 8
3C. 観測結果 (2) 形態2: 2021年5月6日 観測 平均電場の上昇と数時間の持続 ... 94. 地震予知研究の方策を考える (1)準備検討段階 ... 10
4A. 準備検討段階の概要
4B. 短期地震予知のための前兆現象に対する要件 (Requirements) ... 11
4C. 種々の「前兆現象」とその観測法: 選択のための観点、考察 ... 125. 地震予知研究の方策を考える (2) 開発段階 実験、測定、分析) ... 13
5A. 開発段階(実験、測定、分析、体系化 )の概要
5B. 開発段階の (I) : 単一観測サイト段階の 研究課題 ... 14
5C. 単一サイト段階の事例: 筒井稔(2022) の研究プロセスと成果 ... 15
5E. 事例. 筒井の方法を複数サイトで実施する計画の課題 ... 16
5D. 開発段階の (U) 複数観測サイトでの開発段階の 研究課題(一般論) ...17
5F. (V) 一つの方法を技術システムとして確立・展開する段階 ... 18
(例: 筒井の方法を全国規模で展開し、技術システムとして確立する)
5G. (W) 他の方法を統合して、地震短期予知警報システムを確立する。 ... 19
(例: 筒井の方法を、神山の方法、日置の方法などで補強する)6. 地震予知研究の方策を考える(3) (X) 公的認知と実用の段階 ... 20
7. おわりに: まとめと今後 ... 21
大阪学院大学の中川 徹です。
「地震短期予知の研究に TRIZの考え方を導入する」 というテーマで話します。
地震予知研究の位置づけを話してから、筒井の方法を紹介、地震予知研究の方策を、段階を追って話していきます。
日本は地震大国ですから、地震研究についても世界の最先端にあります。
地震予知研究も行われ、中〜大規模地震の長期/中期予測が、確率論的に出されるようになっています。しかし、阪神・淡路大震災の地震、東日本大震災の地震は、全く予知できなかった。
このため、日本地震学会と政府は、「地震の短期/直前予知は現在の技術では到底不可能である。」として、短期・直前予知の研究を忌避する政策を採っています。
しかし国民は、 「地震の短期予知を可能にし、さまざまな被害を減少させたい」 と願っています。
そこで「日本地震予知学会」が2014年に設立され、私も加入しました。
電磁気的現象に注目することが、当初からの方向でしたが、 最近まで暗中模索の状況でした。22年12月に、京都産業大学名誉教授の筒井稔が、地中電場の観測で、 地震前兆現象の素晴らしいデータを発表しました。
私は、筒井の方法を支援・発展させるための、研究プロジェクトを興すことを 地震予知学会内で提唱し、活動を始めたところです。
はじめに、地震予知研究の位置づけを簡単に話します。
ここには、地震の研究、地震予知の研究、防災の対策、 そして、人々の願望と備え、を関連付けて描いています。
大事なことは、地震および地震予知の研究は、防災の対策と、車の両輪として、 並行して進むべきことです。
これは従来の地震の研究の概観です。
過去の地震の調査、地震計ネットワークによる観測、 そして最近の測地衛星による地殻移動の観測があります。
これらをベースにして、地震の物理の理解が進められています。
そして、地震の長期/中期の予測が、確率論的にできているのです。しかし、「短期・直前予知ができない」というのが、地震学の現状です。
その原因は、「従来の地震学が、力学的観測に偏ってきたことの限界である」と、 私たちは考えます。
地震予知研究の状況を概観しておきます。
根本の困難は、「地震エネルギ―の蓄積は数千年〜数十年かかるのに、 地震という破壊現象は数秒〜数分で終わることです。 そのため、いつ地震が起こるのかが、分からないのです。
震源の物理的状況だとか、破壊のプロセスとか、破壊に伴う現象だとかが、 まだよく分からないのです。地震の前に起こる何らかの現象を捉まえようと、さまざまに研究されてきました。
動物の異常行動とか、地上での電磁波の観測など、いろいろですが、 客観的な測定が不十分だったり、ノイズが大きくて不明確であったりして、 今まで暗中模索の状況でした。最近、筒井稔が、地中の垂直電場の変動を、連続測定して、地震の1.5hr前から〜9hr後にかけて、非常に明瞭で微細構造を示す信号を観測しました。
他にも、神山らの方法や、日置の方法が最近発表されました。これらの新しい方法を発展させて、「地震直前予知警報」を20年後に実現させたいというのが、いまの私のビジョンです。
まず、筒井の方法について紹介します。
震源地域で起こる電場の変動を、遠隔地の地下で直接に、観測しようとします。 地下の岩盤を通って直接に来る信号を、地上の雑多なノイズと混じらせないで 測定することが、大きな長所です。これが筒井の実験装置です。 紀伊半島の南端の小さな島で、人工ノイズの少ない場所をサイトに選び、 地下 150mの竪穴を造り、 そこに長さ100mの線形ダイポール型DC電場センサーを設置しています。 信号は1秒間隔で連続観測し、デジタルでPCに記録します。
筒井はまた、同じサイトで、地上の東西・南北の電場を連続観測しています
筒井の観測結果を示します。
装置は、21年4月〜7月の2か月半順調に稼働し、二つの貴重な結果を得ました。これは21年5月1日のデータで、0時から24時までの丸1日です。
ず〜と定常ノイズの状態でしたが、ここで急に激しい変動が現れ、 しばらく静穏になって、ポンとパルス状の信号があり、 その後8時間ほど静穏な後に、再び激しい変動がありました。後で分かったのは、ちょうどこの10:27の時点で、宮城沖でM6.8の地震があった。 それは水平距離で約750kmの遠方です。 最初の変動は、その地震の前兆と考えられます。 後の変動にはこれ以外に対応しそうな地震が見当たりませんので、 この地震の後過程の現象と考えられます。
地上の電場の観測でも、これらのように地下の電場と同様な変動がみられます。 ただし、地上の電場のデータには、昼間の間ずっと、ノイズが重なり、 これだけで地震の信号と判定するのは難しい。
この地中電場のデータは、静穏なバックグランドノイズ、高いS/N比、 顕著な微細構造、地震発生の時との完全な一致、地震との相関性の証明、 などすべての点で画期的です。
観測されたパターンは、地震の破壊プロセスについて興味深い情報を含んでいます。
これが第2の形態の測定データです。
最初静穏な状態で、ここですーっと電場が上がり、5時間持続した後、静穏に戻り、 この時点でポンと上がって、その後変動しながら、6時間後に静穏に戻りました。後にわかったのは、この13:32の時点で、紀伊水道、水平距離約100qの所で、 M3.7の地震があったことです。
地上の電場の観測データは、ノイズが多く、地震の信号は判別できません。
さてこれから、地震予知研究の方策を、段階を追って考えて行きましょう。
大きく言うと、準備検討段階、開発段階、公的実施の3段階ですが、 開発段階はさらに4段階に分けて考えるのが適当です。
準備検討段階では、前兆現象としてどんな現象を選ぶか、 それをどんな方法で観測するか、ノイズを抑制できるか、 将来の地震予知警報の公的実施に使えるか、を判断します。
短期地震予知のための前兆現象の要件を考えましょう。
根本の要件は、「(各種の地震に対して)その現象が地震と関係し、地震によって 引き起こされ、その現象が現れた短時間の後に地震が発生すること」です。 しかしそれは、広範な観測・解析の後でないと、確認できません。
そこで、開発から実施までの段階に応じて、満たすべき要件を書き出しましょう。基本要件: 高いS/N比で、明確に観測・測定できること。 単一サイトでの観測で、満たすべき、基本的な要件です。
つぎに、「多くの地震について、複数サイトで同様に観測でき、予知したように地震が発生することを確認できること」
そして、実用要件はサイトを全国配置した段階で、「測定が自動的/安定的/連続的に行え、地震が(いつ、どこで、どの規模で)発生するかの予知方法が得られること」です。
高度要件は、複数の方法を統合した段階で、「システムとして統合し、地震からの因果関係を証明できること」です。
社会的要件は、「短期地震予知/警報システムを信頼できる形で運用する。」で、 これには、学界、社会、政府などから認知/承認されることが必要です。
次に、 種々の「前兆現象」とその観測方法を選択することを考えましょう。
地震は基本的に力学的現象ですから、力学的現象の観測が行われてきています。 しかし、破壊の明確な前兆現象が捉えられず、タイミングの予知が困難でした。 最近、測地衛星による地殻の移動の測定精度が向上し、 神山らが、地震の3年ないし3か月前から、移動速度が速くなることを見出しました。
次に電磁気的現象を考えます。 岩盤内の圧電効果により、電圧が生じ、電磁気的現象が現れます。 二次的効果で、小さいでしょうが、震源域が大きいので、観測可能になります。 電磁気的現象は、現象が多様で広域伝搬すること、 多様で高感度の測定法があることが大きなメリットです。 力学的技術から電磁気的技術への進化は、TRIZが強く勧めています。
いままでは地上での観測が主流でした。多様な現象があり、測定が容易ですから。 しかし、ノイズが多いので、明瞭な信号が得られませんでした。
地中の電場を測定したのが、先ほどの筒井の方法であり、信号の直接性と、 高いS/N比で、画期的な方法になりました。
イオン層の電気的性質を、人工衛星で全球的に観測することが、最近行われてきて、それを使ったのが、日置の方法です。
次は開発段階ですが、ここには、4つの段階があります。 まず一つのサイトで観測して、地震との相関性を見る。 つぎに、複数のサイトで並行観測して、相関性を確認する。 さらに、全国規模の多数サイトの観測で、この前兆を示す地震のタイプを 判定し、予知する地震の場所・時・大きさなどを推定する方法を創る。 そして、異なる前兆現象の観測法をも統合して、地震予知の技術体系を創る。
まず単一サイトの段階での研究課題ですが、一般論ですので、飛ばします。
ここには、筒井が、さきほどの研究課題をどこまで達成したかを、まとめました。 青字は顕著な成果、赤字は困難点・未達成の点です。
前兆現象として、震源からの直流電場の変動を選び、 直接のルートである、地中での連続測定の方針を立て、 紀伊半島の南端で、地下150mの穴を造り、 大規模センサーや各種のフィルターで、非常に高いS/N比を実現しました。 ただ、信号の飛来方向を知る方法が不十分です。 1秒間隔での連続測定を実現し、PCにデータ保存。 データの自動転送が未完です。
顕著な一群の信号を観測した。高いS/N比、微細構造あり。地震との相関が明瞭。 2件のケース以外の、観測データは未発表です。 実験法、観測データ、地震との相関の証明などを、学会発表ずみ。総括すると、実験装置にときどきトラブルがあり、孤軍奮闘中。 この方法は、画期的な成果を出しており、複数サイトの段階に進むべきです。
そこで、筒井の方法を複数サイトで実施する計画を考えます。
最大の課題は、筒井の方法の、第2、第3サイトを造り、共同研究を始めることです。 この方法の意義と将来性を理解して、共同研究する研究グループを得る。 研究グループの近傍で、ノイズが少ない観測サイトを選定する。 サイトに、深いボアホールを造り、センサーや観測設備を設置する。 これらの設備費用は1千万から2千万円かかるでしょう。 (研究ポストと人件費ももちろん必要です) 全体として、研究プロジェクトを興し、財源を獲得し、運営する必要があります。
複数観測サイトの段階での、研究課題をまとめました。
まず5つ6つの観測サイトを造り、並行して運用します。 信号が、ノイズか、有意のものかがはっきりします。
有意のデータを解析・蓄積すると、地震(のタイプによる)相関性が分かります。
つぎに、予知する地震の、発生時間/場所/規模(マグニチュード)の推定法を創る
これらのデータを蓄積したうえで、信号受信開始後に、どのタイミングでどのように 地震予知の判断をするか、その方法を創って行かねばなりません。
その次は、筒井の方法を全国規模で展開し、技術システムとして確立します。 それには、学界で認められる努力をし、科研費などを得る必要があります。
全国をカバーするように、約40サイトを設置します。 また、10程度の研究拠点を持ち、 各サイトのデータは、研究拠点を通じて、中央に集約し、分析/監視などを 行い、結果を全研究拠点にフィードバックして、共同研究を行います。
この段階で明確にするべきことは、 予知地震の推定法(どこで、いつ、どの規模)の作成と検証、 この予知方法の特長、汎用性、などと、その限界の認識、などです。
その次は、他の方法を統合して、地震短期予知の技術システムを創り上げること。
ここには、筒井の方法と共に、神山の方法と日置の方法を書きました。 関単に、その特徴だけを説明します。
神山らの方法は、地殻の歪の進行を静止衛星でモニターして、 進行の速度が、地震の3年前ないし3か月前から速くなることを検出しました。ただ、いつになったら地震が差し迫ってきたか、がまだ分かりません。
日置の方法は、多数の移動衛星と多数の地上サイトの交信データから、 震源上空の、イオン層の全電子数の局所的増加を判別します。 M7以上の地震で、地震の1時間ほど前から増加すると分かってきました。 全球規模で、大地震の直前予知ができる可能性があります。 ただ、増加の検出には、複雑なアルゴリズムの常時稼働が必要です。本当に有用な技術システムにするには、 この他にももっといろいろな特長を持つ方法が必要です。
最後に、社会の認知を得て、公的に地震予知の注意報・緊急警報を出す段階です。
まず、前段階で作った地震予知の技術システムを、全国規模で実装して、 開発関係者の内部で、数年以上の運用・改良と実地検証をします。 この間に、種々の地震研究の成果を取り入れるべきです。 中規模地震を予知した場合、事前情報を関係機関だけに知らせ、事後公表。 大規模被害地震を予知したときは、1-2時間前に、地震予知緊急警報を発表。
十分な運用・検証の後に、公的な地震予知警報体制を確立します。 学術的・公的な議論をへて、公的な制度として気象庁から発表します。 (地震の)数日〜1日前に「地震予知注意報」を出し、 数時間〜半時間前に「地震予知緊急警報」を発表する。 これらを出す前に、1年程度前から、技術システムが異常を検知し、 異常がだんだん高まっているとの内部情報を、関係機関が共有し、 準備を整えて行くべきです。
これらの過程で、国際協力をし、世界的実装の可能性を探ります。
まとめます。
地震予知は今まで不可能と思われ、その研究は暗中模索でした。
22年12月に、筒井稔が地中での直流電場の変動の観測データを発表し、 地震予知が実現可能なことをはっきりと示しました。
いまは、一つのサイトでの孤軍奮闘の研究ですが、 この方法の意義と可能性を理解する研究グループを得て、 複数サイトで並行観測すれば、地震予知の方法が大きく進展するでしょう。 そのための共同研究プロジェクトを日本地震予知学会内で呼びかけています。観測と実証をくりかえして、順次技術システムを作り上げ、 研究体制を強化して、学界や社会の認知を拡大して行けば、20年後には、 (地震の)数日前の「地震予知注意報」と 数時間前の「地震予知緊急警報」を 公的に運用できるだろうと信じます。
本研究はすべて、TRIZの考え方と、実験科学のアプローチに基づくものです。
皆さんをはじめ、多くの人々の理解と協力をお願いいたします。
編集ノート 後記 (中川 徹、2024年 9月 4日)
本件のテーマ(あるいは本ホームページ全体)に関連して、ご意見・ご感想・ご寄稿などをお寄せいただけますと幸いです。「読者の声」のページ、その他適切な形式で掲載せていただければ、ありがたいことです。
|
|
|
|
EQP News 2023 |
|
最終更新日 : 2024. 9. 5 連絡先: 中川 徹 nakagawa@ogu.ac.jp